ウィキッド ふたりの魔女
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カンザスに住む少女がひょんなことからオズの国に迷い込んでしまう姿を描いたミュージカル映画「オズの魔法使」。
ジュディ・ガーランドのかわいらしさと歌のうまさ、そしてカカシやブリキやライオンらと共に冒険を繰り広げる姿は、大人から子供まで強く記憶に残る物語だったと思います。
今回鑑賞する映画は、そんなオズの魔法使いの物語よりも前に遡り、良い魔女と悪い魔女の過去にまつわる物語の前編。
劇団四季で何度も上演されているミュージカルなので、そっちのファンの人も興味津々かと思います。
僕自身全く触れたことのない話なので、どんな物語なのか楽しみです。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
全世界で6,500万人以上の観客を魅了し、100以上の演劇賞・音楽賞を受賞、約60億ドルの興行収入を上げ、舞台で最も愛される傑作のひとつとして今も記録を更新し続けている「ウィキッド」が、圧倒的な世界観と驚異の映像美で生まれ変わる。
魔法と幻想の国「オズ」で出会うことになった正反対の二人の魔女が、友情を育みながらも運命を変えられてしまう姿を、色彩豊かな幻想の世界を舞台に、実力派俳優とスーパースターの二大競演による圧倒的な歌唱パフォーマンスで楽しませる、極上のミュージカル映画。
「クレイジー・リッチ」や「イン・ザ・ハイツ」など、移民の物語をゴージャス且つユーモアに長けた演出に定評のあるジョン・M・チュウ監督が手掛ける本作。
本作が持つメッセージ性を意識しながら、観客に極上の映像体験を得てもらうために、キャストには生歌で演じるよう強く求めたとのこと。
そんなキャストには、世界的歌姫のアリアナ・グランデが後の「善い魔女」グリンダを、トニー賞、エミー賞、グラミー賞受賞経験を持つ圧倒的実力は俳優シンシア・エリヴォが後の「悪い魔女」エルファバを演じる。
他にも、魔法学の権威モリブル夫人を「クレイジー・リッチ」や「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のミシェル・ヨー、オズの魔法使い役に「ジュラシック・ワールド」「マイティ・ソー:バトルロイヤル」のジェフ・ゴールドブラム、ハンサムな王子フィエロ役を「ジュラシック・ワールド/復活の大地」に出演予定のジョナサン・ベイリー、話すヤギのディラモンド教授の声を「スリー・ビルボード」、「パーフェクト・ケア」のピーター・ディンクレイジなどが演じる。
また本作は、第97回アカデミー賞に作品賞はじめ10部門ノミネートされ、衣装デザイン賞、美術賞の2部門を受賞した。
やがて世界に善い魔女と悪い魔女として語られることになる、二人の眩しくて切ない物語。
なぜふたりは運命に引き裂かれてしまうのだろうか。
あらすじ
魔法と幻想の国オズにある<シズ大学>で出会ったふたり―
誰よりも優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバ(シンシア・エリヴォ)と、誰よりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダ(アリアナ・グランデ)は、大学の寮で偶然ルームメイトに。
見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。
ある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、そこでオズに隠され続けていた“ある秘密”を知る。
それは、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。(HPより抜粋)
キャラクター紹介
- エルファバ(シンシア・エリヴォ)…緑色の肌をもち周りから誤解されている。誰よりも優しく聡明でありながら、家族や周囲から疎まれ孤独に過ごしている。シズ大学の寄宿舎でグリンダと偶然ルームメイトになり、当初は反発しあいながらも友達に。周囲から偏見や不当な先入観を受け、まだ自分の本当の力を見いだしていないのだが、やがて世界に「悪い魔女」として語られることになる。
- グリンダ(アリアナ・グランデ)…野心的で、周囲の人気者。まだ内面には葛藤があり自分の本当の心を見いだしていない。ルームメイトのエルファバとは正反対の性格で衝突し合うも、徐々に友情を深めていく。やがて世界に「善い魔女」と語られることになる。
- フィエロ(ジョナサン・ベイリー)…エルファバやグリンダが通うシズ大学に転校してきた、ウィンキー国の王子。色気たっぷりの甘いマスクで女子生徒のみならず学校中を虜にしていく。当初はグリンダに惹かれるが……。
- マダム・モリブル(ミシェル・ヨー)…シズ大学の学長。魔法学の権威で天候を操る。多くの学生が彼女の元で学びたいがためにシズ大学に入学してくるほどのカリスマ性を誇り、エルファバの魔法の才能にいち早く気付く。物語の鍵を握る女性。
オズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)…オズの国を統治し、最も偉大で恐れられている魔法使い。エルファバの才能に目を止め彼女をエメラルドシティに呼ぶ。
- ネッサローズ(マリッサ・ボーディ)…エルファバの妹。足が不自由で車椅子で生活をしている。父からの愛が姉エルファバとの関係をややこしくする。姉の過保護から自立したいと願っている。
- ボック(イーサン・スレイター)…ひそかにエルファバに好意を寄せている、マンチキン国出身の青年。ネッサローズに近づくが……。
- ファニー(ボーウェン・ヤン)…シズ大学でグリンダと共に行動する友人。ゴシップ好きの皮肉屋。
- シェンシェン(ブロンウィン・ジェームズ)…ファニーの相棒。グリンダの大学時代の友人で、グリンダの華やかな学生生活の仲間。
- ディラモンド教授(ピーター・ディンクレイジ)…シズ大学のヤギの教授。歴史学部を率いる動物教師のひとりで、動物の権利を擁護する。
(以上FassionPressより抜粋)
あくまで本作は前編。ミュージカルだとちょうど第一幕が終わるあたりだそうです。
2時間41分もあるので疲れそうですが、歌がノレれば。
ここか鑑賞後の感想です!!
感想
#映画ウィキッド#ふたりの魔女観賞。2時間41分もの長尺を飽きさせないパワフルな歌とゴージャスな色彩。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) March 7, 2025
まさかがっつり学園ドラマだとは思わなかった。確かにこれは早く続きが見たくなる締め方。
歌が凄いので良い音の映画館を薦めます。 pic.twitter.com/soGJ1Bmofz
結構力で持っていく物語なのね。
前半は学園ドラマ、後半はオズのからくりによって嵌められるエルファバ。
ジョン・チュウ監督のいいとこと悪いとこがしっかり出た前編でした。
以下、ネタバレします。
前半の学園ドラマは楽しい。
オズの魔法使いは見ているけれど、ミュージカルがどんな物語なのかは全く知らない僕でしたが、割と楽しめた作品でした。
特に前半のシズ大学で起きるガリンダとエルファバを軸にした「ザ・学園ドラマ」なテイストがある意味新鮮。
魔法を学ぶための大学とはいえ、全く魔法を勉強せずにクラス内で人気取りばかりするガリンダと、いかにもいい人を装って他者を傷つけている彼女に腹が立っているエルファバの対比が見事。
冒頭では我々が良く知る「オズの魔法使い」のその後を軽く見せていましたね。
西の魔女が死んだことをマンチキンの民に伝えるグリンダでしたが、魔女の死に喜ぶた身とは少し様子の違うグリンダが、初めてカミングアウトする「西の魔女と親友だった」という話。
物語はそこから大昔に舞台を変えて、2人の魔女のオリジンを映し出していきます。
エルファバは母の不倫相手との間に生まれた子供であることに加え、肌が緑色であったことから家族に見放され、足の不自由な妹にたくさん愛を注ぐ素敵なお姉さんとして暮らしていました。
そんな妹ネッサローズが大学進学するために付き添いでやってきたものの、感情的になったことで放った魔法がモリブル夫人の目に留まり、特待生として入学を許されるのであります。
片やガリンダは、いかにもスクールカースト上位の陽キャ的なキャラで、周りのご機嫌を伺いながら自分いい人アピールをして周囲の信頼を勝ち取っていくいやぁ~な女。
いい人に思われたい気持ちはわからんでもないが、そのやり口が下劣。
自分に好意を抱くボックに対し、ネッサローズをダンスに誘ってあげたら考えてあげるなどと、まるでか弱い人を救う素敵な女性として振る舞ってますが、実際はボックが邪魔で自分は意中の男性フィエロと一緒にいたいという自己中女。
エルファバとのファーストコンタクトも、彼女の肌が緑色であることに冷ややかな視線を送っておきながら、彼女に引いてる周囲に対し「同情する」と言って周りから「なんて素敵!」と言われて悦に浸るというしたたかさ。
エルファバは慣れっこなのか、一瞬ムッとするけど適当にあしらうのが最高です。
大学生活で環境もヒエラルキーも肌の色も性格も魔法のポテンシャルも全く対照的な二人がルームメイトになる設定、そこに現れる遊んでばかりで何も考えてなさそうなイケメン男性、彼の登場により生まれる三角関係、ヒエラルキーの頂点に取り巻く生徒たちなどなど、日本でもかつてよく見られたスクールドラマそのものです。
見慣れた光景とはいえ、いちいち動きが特徴的で終始テンションが高く、なんでもかんでも周りのチューニングを合わせるのが格別にうまいガリンダに笑ってしまうし、そんな彼女に嫌悪感を抱きながら我が道を行くエルファバの芯の強さが、物語のコントラストを作り出してましたね。
中盤でのダンスパーティーで二人は急接近します。
黒い帽子を被らせて恥をかかせてやろうと画策したガリンダでしたが、周りがクスクス笑う中弱さを見せずに堂々と変わった踊りで周囲を戸惑わせるエルファバを見て、ガリンダは「彼女は強がってるだけ」だということ、実はものすごく辛い気持ちであることに気付かされ、エルファバの踊りを真似して心を解放します。
このように、エルファバはずっとみんなから冷笑されて生きてきたことで弱さを見せられなくなっていたこと、そしてガリンダは本心で人に優しくするにはどうすればいいかを悟っていくんですね。
こうして全く対照的な二人は仲を深めていくのが、前半の大きな見どころです。
後半は一気にシリアスな展開へ
モリブル夫人の計らいでオズのいるエメラルドシティへ招待されたエルファバは、グリンダと改名したガリンダと共に、列車に飛び乗ってエメラルドシティへ。
そこで機械仕掛けの大きな像を裏で動かしていたオズと対面し、ここで一緒に暮らしてほしいと提案されます。
グリマリーという魔法の呪文が書かれた書物をエルファバが読めるかどうかを試したオズとモリブル夫人は、見事に使いこなすエルファバを見て益々気に入ります。
しかし彼女が唱えた呪文は兵隊の猿に翼を生やさせるもので、目の前で苦しんでる猿を見て、急激に戸惑います。
なぜ自分はここへ呼ばれたのか、それはモリブル夫人がグリマリーを使いこなせるポテンシャルのある魔法使いを探していたこと、それを解ったうえでこの場に呼び寄せたオズの仕業だということ。
そもそもこの2人は動物を排除することに力を入れており、その役目を彼女にやらせようとしたわけです。
もちろんエルファバは、世話になったディラモンド教授が急に解雇されたこと、彼が夜な夜な仲間を集めて排斥運動に脅えていたことを知っており、フィエロと共に動物を逃がしたことなどから、この運動には大反対であることは明白。
オズとモリブル夫人に反発したことで、夫人はオズの国全体にエルファバを「悪い魔女」として促すのであります。
グリンダに一緒に逃げてほしいと願うエルファバでしたが、グリンダは同行しないことを決意。
其々の道を進むことを互いが理解しながら物語は後編へと向かうのであります。
歌の力強さが凄い
2時間41分という長尺にも拘らずしっかり楽しめる最大の要因は、何といっても「歌」です。
オープニングから大量の民衆が広場に繰り出し、井戸や歯車に乗りながらアクロバティックに踊り歌う姿を、縦横無尽なカメラワークで見せるマンチキンでのシークエンスは一気に心を掴みます。
その中心に降り立ったグリンダの美しさと高音域にもかからわず軽やかに歌い上げるアリアナ・グランデの歌唱力は、私たちに一瞬で魔法をかけてくれることでしょう。
それ以外でもシズ大学の広場でのシンクロしたダンスや、フィエロが本を踏んだり蹴ったりしながら「夜は遊ぼうぜ!!」と促す図書室でのダンスシーン、ルームメイトになったエルファバとガリンダが互いを嫌うシーン、それとは打って変わってエルファバを垢抜けさせたいと願う朝の部屋でのシーンなど、どれもこれもかなりの尺を使って、大胆に描写していました。
ジョン・チュウ監督のミュージカル作品「イン・ザ・ハイツ」でもそうだったように、彼のミュージカルはとにかく歌に力があり、それに比例するかのような大掛かりなパフォーマンスが特徴的です。
本作も過去作に倣って、平面的なモノで終わらせず、様々なモノを使ってより立体的に見せることで映画を大きなものへと昇華させていました。
そんな派手なパートもあれば、フィエロと手が触れたことで戸惑うエルファバの動揺を静かに歌うシンシア・エリヴォの魅力を損なうことなく映し出すシークエンスも見事だったように思えます。
そしてクライマックスで描く壮大なシーンは観る者の気持ちをさらに高揚させる力がありました。
モリブル夫人の命令によって翼の生えた猿に追われる二人。
彼らの言うことを聞くべきと促すグリンダに対し、私は私であること、誰かの言いなりにはならないという気持ちを「Defying Gravity」という歌で語り合うんですね。
互いの性格や行動に対して「それで満足か?と問いながら言い合いながらも、今ではかつてのようにいがみ合うのではなく互いの幸せを祈る2人。
それまで社会からの重圧を受けてきたエルファバが、重力に逆らうことしかできない、今こそ逆らう時だと声高に訴え、グリンダと共にこの場から逃げようと誘うエルファバ。
それに対し、ただただあなたの幸せを願うと伝えるグリンダ。
別々の道を歩むことになる親友同士のやり取りを歌で見せながら、物語は覚醒したエルファバが堂々と空を舞って「西の魔女」になっていく姿を力強く描くことで幕を閉じるんでんすね。
おいおい、劇中で一番盛り上がるシーンを見せておいて終わりかい!!と不満を漏らすかと思いきや、どこか清々しい思いで劇場を後にしてましたね。
早く続きが見たいという気持ちも強いですが、今はただ「なんて力強い映画だ、これが大作映画だよなぁ…」という思いです。
最後に
概ね満足ではあるんですが、どうしても物語の中で描かれた動物排斥描写や、エルファバとグリンダの心変わりに不満はあります。
ジョン・チュウ監督ってこんなもんだよなぁという思いがある故に思ってしまうんでんすが、元々差別されてきた人がどうして悪い魔女になったのか、その背景を描いた物語で、要は最初から悪い人はいない、社会がそうさせてきたからだ、って話だと思うんですけど、いくら前編だからと言って何も解決してないわけですよ。
あくまで動物を排除しようとしていた黒幕がモリブル夫人で、なぜ彼女がそれを活発にやっていたのかもわからない。
それは後編に描かれるのかなと一旦置いたとしても、今度はどうしてもグリンダが改心したように思えない。
エルファバには彼女のバックボーンが描かれてるから、色々理解できるけど、グリンダにはそうした背景がないわけですよ。
なぜ彼女はあんな陽キャで人の心を対して理解できない女性になったのかまるでわからない。
心変わりした理由もぶっちゃけ弱いし、エルファバを理解したとて何かが劇的に変わったわけじゃない。
フィエロが好きだし、彼がそっぽ向けることをエルファバに愚痴るだけ。
せめてボックとネッサローズに詫びるショットとか入れれば改心したと判断できるんだけど、結局陽キャのままなんだよなぁ。
あれじゃただのギャルですよ。
でもそんなグリンダをエルファバは親友として受け入れたんで、俺が挟むような不満じゃないよなと、今は冷静になっております。
とにかく後編はどんな物語になるのか楽しみですね。
めっちゃ華やかだったのに対し、エルファバがこの後動物たちを守るためにどうやって社会に盾突くのか。それをグリンダはどう見守るのか。
ここで採点するのもいかがなものかと思いますが、概ね満足でした。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10