2月22日
ビールストリートの恋人たち
今年度アカデミー賞3部門にノミネートした作品がいよいよ公開です。
なんというか、ポスターが良くないですかこれ?
監督の前作「ムーンライト」と同じで、色遣いがまたきれいできれいで。
たしか「ムーンライト」ってカラーリストを入れて、映像の上からさらに色をつけたなんて話を聞きましたけど、今作も同じ手法を取り入れてるのでしょうか。
予告を見るとやってそうな気がしますが、今作もその色で覆われた素晴らしい愛の物語の予感です。
そして監督は黒人ですから、きっとマイノリティーな面が描写されてることでしょう。
てことは酸いも甘いも詰め込んだ話なのかな?
まぁ当然か。
というわけで早速鑑賞してまいりました!!!
作品情報
性と人種的マイノリティに苦しむ一人の黒人男性が自身と向き合っていく物語「ムーンライト」で、強敵「ラ・ラ・ランド」を抑えアカデミー賞作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督。
彼が以前から映画化したいと臨んでいた作品がこの「ビールストリートの恋人たち」。
ジェイムズ・ボールドウィン原作の同名小説は、70年代のニューヨークに生きるカップルの物語。
どんな困難な状況になっても決して諦めることなく愛をはぐくんで言った恋人たちのラブストーリーを監督自ら脚色し、人種や社会的に差別を受けることが再び強くなってきた現代にもう一度抵抗するために強いメッセージをこめて書き記した。
その甲斐もあって、今年度アカデミー賞で脚色賞にノミネート。さらには助演女優賞と作曲賞にもノミネートされている。
愛よりももっと深い“運命”で結ばれた恋人たちのラブストーリーが、あなたをロマンティックな世界へと誘う。

オリジナル・サウンドトラック『ビール・ストリートの恋人たち』
- アーティスト:ニコラス・ブリテル,Nicholas Britell
- 出版社/メーカー:ランブリング・レコーズ
- 発売日: 2019/02/20
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
あらすじ
恋人たちに訪れた過酷な運命。
愛の試練はふたりをどこへ連れて行くのか。
「赤ちゃんができたの」
1970年代のニューヨーク。ティッシュ(キキ・レイン)は19歳。恋人のファニー(ステファン・ジェームス)は22歳。
幼い頃から共に育ち、自然と愛を育み、運命の相手を互いに見出した二人にとって、それは素晴らしい報告のはずだった。
しかし、ファニーは無実の罪で留置所にいる。
彼はティッシュの言葉を面会室のガラス越しに聞いた。
小さな諍いで白人警官の怒りを買った彼は強姦罪で逮捕され、有罪となれば刑務所で恥辱に満ちた日々を送るしかない。
二人の愛を守るために家族と友人たちはファニーを助け出そうと奔走するが、そこには様々な困難が待ち受けていた...。
魂を試されるようなこの試練を乗り越え、恋人たちは互いの腕の中に帰ることが出来るだろうか。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのはバリー・ジェンキンス。
冒頭でも書いたとおり、前作「ムーンライト」でアカデミー賞作品を受賞した監督。
キャスト、監督、脚本が総て黒人という作品が、作品賞を獲得したのはこれが初なんだとか。
そういう意味で言えば歴史に名を刻んだ監督とも言えますね。
今作は賞レースを見る限り、前作ほどの勢いはありませんが、アカデミー賞3部門ノミネートは素晴らしい快挙。
特に脚色賞は、脚本に定評のある監督だけに期待が持てそうですね。
監督に関してはこちらをどうぞ。
キャスト
恋人を待ち続ける女性・ティッシュを演じるのはキキ・レイン。
TVや舞台で活躍されていたお方だそうで、今回が長編映画初の出演とのこと。
一体何に出てたんだろうって検索したんですけど、全然出てこなくてw
経歴よりも、マイケル・B・ジョーダンとのスキャンダルしか出てこない・・・。
まぁこれからの方だと思うので注目しておくことにしましょう。
他のキャストはこんな感じ。
ティッシュの恋人・ファニー役に、「 栄光のランナー/1936ベルリン」のステファン・ジェームス。
ティッシュの母・シャロン役に、TVシリーズ「アメリカン・クライム」、「ザ・エージェント」、「エネミー・オブ・アメリカ」のレジーナ・キング。
ジョーゼフ・リヴァース役に、「リンカーン」、「大統領の執事の涙」のコールマン・ドミンゴ。
アーネスティン・リヴァーズ役に、「幸せの始まりは」、TVシリーズ「グッド・ワイフ」のテヨナ・パリス。
ダニエル・カーティ役に、スティーヴ・マックイーン監督最新作「妻たちの落とし前」が控えているブライアン・タイリー・ヘンリー。
ペドロシート役に、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のディエゴ・ルナ。
レヴィー役に、「グランド・イリュージョン」、「21ジャンプストリート」のデイヴ・フランコ。
ピエトロ・アルバレス役に、「キングスマン/ゴールデン・サークル」、「グレートウォール」のペドロ・パスカル。
ペル巡査役に、「デッドプール」、「アリータ:バトルエンジェル」のエド・スクレインなどが出演します。
今回イントロダクションの中身が薄くてスイマセン・・・。
ムーンライトは色でいうと様々な「青」が強調されていたように思いますが、今作はそこまで色彩を強調しているようには感じません。
しかしここぞの場面では監督ならではの色の演出が冴えているように感じます。
果たして2人はどんな運命にあるのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
美しすぎる2人の愛と映像、それとは裏腹につきつけられる過酷な環境。
アフリカ系アメリカ人の物語を甘く苦く詩的に描いた映画でした!!
以下、核心に触れずネタバレします。
ほのかに色づく赤と黄色。
まだ結婚もしてない二人の男女が、刑務所という1枚のガラスに隔てられながらも、逆境にくじけず愛を育み真実を追い続ける物語を、過去での馴れ初めや二人のエピソード、現在での刑務所の中で耐えに耐えるファニーの姿、そのファニーを救うべく弁護士とともに真実を追うティッシュの家族たちの姿、そして初めての出産に苦しみながらも確かな愛の結晶を感じていくティッシュの姿、そして彼らを通じて黒人たちが強いられてきた歴史を、行間溢れる美しい映像の数々と共に描いた、ビタースィートシンフォニーな物語でございました。
ムーンライトに続いて作られた「愛の物語」は、中々報われることが無い二人がそれでも無実を信じ永遠の愛を貫く、甘くもあり切なくもある映画でした。
監督の前作は途中でも書いた通り、青を基調とした色彩で彩っていましたが、今作は暖色系、特に赤と黄色が印象的な色合いで彩っていたような気がします。
どことなく登場人物の顔がほのかに赤く染まっており、二人の間に確かな愛が芽生えていたようなそんな感覚を与えてくれえていました。
撮影監督であるジェームズラクストンが被写体を接近して撮ることで、その色合いは余計に感じることができると思います。
ファッションも原色をふんだんに使った衣装でしたし、街並でのライティングやマニファクチャ―といった細かなものまで当時のものであるかのような配色になっており、「色」を堪能する映画でもあったと思います。
それとは対照的に白人警官や被害に遭ったとされるプエルトリコ人の女性はどこか寒色系の配色が施されており、黒人=温かい、白人=冷たい、という印象を与えていたようにも思えます。
この暖かな色をふんだんに使うことで、ティッシュとファニーの純愛が誰にも邪魔されないようなオーラを纏っているようでしたし、序盤で描かれるティッシュの妊娠を祝う家族の映像はごくありふれた幸せな家族の風景を助長させていたように感じます。
我々が暮らす日常がこんなように描かれていたら誰も不幸にはならないのに、とも感じられるシーンにも思えました。
全てが甘く進むわけではない。
この色合いを楽しみながら鑑賞していたわけですが、二人はこの幸せの絶頂をガラス1枚で隔てられた場所で味わうことになります。
プエルトリコ人の女性が暴行を受け、その犯人はファニーであることを面通しで証言したことで、彼は刑務所に入れられることになります。
実際ファニーは当時友人と共に現場からかなり離れた場所におり、仮に彼が犯人だったとしもて距離的にあり得ないことが分かっているにもかかわらず、「警官が彼が逃亡する姿を見た」というだけで逮捕されてしまいます。
ファニーは無実であることを信じ、ティッシュやティッシュの家族が働いて費用を工面し、弁護士を雇い真相を追い求める姿が中場以降描かれています。
過去では二人が運命によって結ばれるかのようなエピソードが散りばめられている反面、現在では一向に事件の真相が見えない状態が続き、突発的に苛立ちを見せるファニーの姿、それに戸惑いながらも二人の愛はこんなことでは決して壊れないことを強く願うティッシュの姿が描かれていました。
また、ファニーの友人も些細なことで逮捕されますが、それが警官の罠であること、そして刑務所での生活が本当に苦痛であったことを重く語り、黒人がどれだけ不条理な社会で生き抜いてきたかが理解できるシーンでした。
黒人というだけで人生が決まってしまうような人たちが多々いる中で、ファニーは己の道を突き進むことを選択します。
その甲斐もあってティッシュと愛を育むことができたわけです。
確かに白人は彼らを下に扱い、警官は神の如く絶対君主として我が物顔で町を練り歩くような時代だったわけですが、それでも良心的な人たち(ユダヤ系やメキシコ系といった様々な人種)がファニーとティッシュを支える姿はひと時の希望にも感じる一幕。
常に希望と絶望が付きまとう時代だったんですね。
このように、ごくありふれた2人の過去と現在を、登場人物の近すぎる眼差しによって甘く苦く映していたわけです。
しかし肌に合わない。
そんな監督の最新作。
正直僕はムーンライトの方が好きです。
あの映画はずっと不遇な人生を送ってきた主人公がようやく自身を解放していく物語だったと思うんですが、今作は物語が平行線のままだった気がします。
何というかカタルシスが無い、とでも言いましょうか。
確かに劇中では二人の様々な表情に、家族たちの応援に心動かされるわけですが、ファニーの家族の女どもは狂信的な考えのせいで全く二人を助けようとしないし、途中に出てくるバーテンや不動産業者はほんの一部分にすぎず2人を救うようなキーマンにもなってない。超ざっくり言えば出てくる必要性が無い。
もっと言えば二人の物語がきれいに終わる話でもないんですねこれ。
2人の愛はどんなものでも壊れない、ってことだけしか描かれてないんですよね。
確かに今も昔も変わらないんですよ黒人たちが受けている状況って。それがラストシーンでうっすら感じるようになってるんですが、そこはほのかな希望でなく大きな希望を描いて欲しかったというのが本心です。
とはいえ、この物語は本当の犯人を捜すような物語ではないし、白人たちが何か罰を食らうような話でもない。ごくありふれた黒人二人のラブストーリーなわけでそこに当時の社会的抑圧を加えて描かれたってだけの事なんですよね。
あとはこれ、本当に申し訳ないんですけど、余韻というか行間が空きすぎて、そこまで溜める必要あるか!?ってくらい長いシーンが近距離撮影が続いて。
表情をあれだけの近い距離でセリフも少なく描くのは、中々圧が大きくそれでいて話も進まない。僕にとっては中々の拷問でした。
ムーンライトも同じだったんですけど、あそこまで行間なかったし、3章で構成されている分進み食いが分かりやすいんですよね。
しかしこっちは過去と現在が並行して進むので、時間の進み具合がとにかく遅い。
ちょっとお腹が大きくなったかかと思えば再び回想シーンになり、ティッシュの説明が挿入される。
ここまで映像で圧倒しておきながらそこは説明なのか・・・と。
最後に
どうしたって肌の色で記号的に見てしまう僕ら。
中身は同じはずなのに、なぜ彼らは社会的抑圧を受けなければならないのか。
彼らは僕らと同じように決して多くを望んでいるわけではありません。ささやかなお金と愛があれば誰にも迷惑をかけることなく暮らしていけるのです。
不条理な社会の中で確かな愛を育む二人の姿に心打たれる物語でありました。
しかしながらその物語を甘い余韻と苦い現実でスローペースで描くことが僕にはちょっときつかったです。
彼らを通じて、普通の愛を育めなかった人たちを知るという意味では非常に感慨深い作品であったために、ちょっともったいなく感じたモンキーでございました。
今回短いなw
まぁいいや。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10