1月25日
十二人の死にたい子どもたち
少年少女たちに「死」がまとわりつく群集劇。
過去には「バトルロワイヤル」、「ハンガーゲーム」、「悪の教典」、「神さまの言うとおり」なんかが挙げられますね。
いわゆるデスゲーム系の映画ってやつですね。
今作も若い男女に「死」が絡んでくるお話ですが、今挙げた作品たちとはちょっと違う。
登場人物たちは「死にたい」んですね。でも、殺されるのはイヤだってことで。
わがままだな!
なんだ!カレーは良いけど、カレーうどんはイヤだってか!
それならオレも同じだ!
よし、大目に見よう。
そんな死にたい子達が集まって、みんなで死のうね~!いえ~い!あれちょっと待って、呼んでない人がいる!しかも死んでる!誰殺したの!?いやぁぁっ~~!!
っていう密室集団心理スリラー映画です。
恐らく犯人は誰だ!?ってのが先行される映画になるとは思うんですが、若者が死にたいと思う理由から現代の闇みたいなものを読み取ってみてみたら、この映画の価値が変わってくる気がします。
しかもこれ要はオフ会ですよね。
死にたいって思う子達の。
多分同じ思いをもっている人たちに会いたいってほうの気持ちが強いんじゃないかなぁ。
そんな映画じゃねえのかなぁ。
と、あれこれ予想妄想を膨らませています。
そんな期待を胸に早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「マルドゥック・スクランブル」「天地明察」の沖方丁が原作の同名小説を、「SPEC」や「ケイゾク」から「人魚の眠る家」と幅広いジャンルの人気作品を世に送り出している監督によって映画化。
集団自殺をするために廃病院に集まった見知らぬ12人の未成年の前に、見知らぬ死体が発見されたことで事態は一変し、犯人探しのために皆が疑心暗鬼になっていく、リアルタイム型密室ゲームを含んだ新感覚密室サスペンス映画。
これから生まれる作品にきっと欠かせなくなるであろう有望な若い俳優陣が集結し、作品に華を添えると共に、彼らの芝居によって上映中気が抜けない緊迫感を体感できる作品として完成された。
果たしてこの中に殺人鬼がいるのか?
ウソと騙しあいが交錯していく中で、彼らの死にたい理由から現代の若者の抱える闇が浮かび上がっていく。
あらすじ
安楽死を求めて廃病院の密室に集まった12人の未成年者たち。
主催者のサトシ(高杉真宙)、いじめられっ子のケンイチ(渕野右登)、ゴスロリ少女のミツエ(古川琴音)、推理好きのシンジロウ(新田真剣佑)、ファザコンのメイコ(黒島結菜)、高度な知性を持つアンリ(杉咲花)、吃音のタカヒロ(萩原利久)、学校の人気者ノブオ(北村匠海)、不良のセイゴ(坂東龍汰)、ギャルのマイ(吉川愛)、目立つことが嫌いなユキ(竹内愛紗)、そして、謎の少女・リョウコ(秋川莉胡)。
ところが、彼らはそこで13人目のまだ生温かい死体を発見する。
あちこちに残る不自然な犯行の痕跡や、次々起こる奇妙な出来事に彼らの安楽死は阻まれる。
計画は彼らしか知らないはずのため、この12人の中に殺人鬼がいるのかと探り合う一同。
死体の謎と犯人をめぐって嘘と騙し合いが交錯するなか、彼らの死にたい理由が生々しくえぐられていく。
いつ誰が殺人鬼と化すかも分からず、パニックは最高潮に達する。
彼らは安心して死ねるのか、それとも怯えながら殺されるのか……?(MovieWalkerより抜粋)
監督
今作を手がけるのは堤幸彦。
いろ~んな映画を撮っております。
それもTV局製作が多いですかね。いわゆる何でも屋のイメージ。
去年は「人魚の眠る家」がありましたね。
恐らく日本アカデミー賞に絡んでくるでしょう。松竹代表で。
でもブルーリボン賞には入ってないな・・。
今回密室サスペンスということですが、これまで複線を張り巡らせたサスペンス映画をいくつか手がけているので、ある意味得意のジャンルかもしれません。
最近だと「イニシエーションラブ」とか作ってましたね。
とりあえずお手並み拝見ということで。
監督に関してはこちら。
登場人物紹介
左上から。
- 1番サトシ(高杉真宙)・・・15歳。高校1年生。安楽死の集いの主催者。冷静沈着。「僕は死に取り憑かれてしまったんです。」
- 2番ケンイチ(淵野右登)・・・16歳。高校2年生。いじめられっ子。空気が読めない。「僕なんて人を恨んだり憎んだり・・・がっかりすることばっかりだったもんなぁ」
- 3番ミツエ(古川琴音)・・・16歳。高校2年生。ゴスロリ。大ファンのバンドマンはゲリ閣下。「死ぬときはいちばん美しいと思う姿でいたいから」
- 4番リョウコ(橋本環奈)・・・17歳。高校2年生。芸名:秋川莉胡。天才子役から人気女優へ。大人びて冷静。「死ぬときまで誰かに利用されたくありません」
- 5番シンジロウ(新田真剣佑)・・・17歳。高校3年生。推理好き。クスリや医療機器に詳しい。「自分の死は自分の意志で決めたい」
- 6番メイコ(黒島結菜)・・・18歳。高校3年生。ファザコン。利己主義。「ろくでもない女が多すぎるんです」
- 7番アンリ(杉咲花)・・・17歳。高校3年生。全身黒。高度な知性。「自分は生まれてこないほうがよかった」
- 8番タカヒロ(荻原利久)・・・16歳。高校1年生。吃音。クスリを常用。「とにかく深い眠りにつきたい」
- 9番ノブオ(北村匠海)・・・18歳。高校3年生。爽やかな青年。学校の人気者。「無昔っから大抵のことは人並み以上にできちゃったから」
- 10番セイゴ(坂東龍汰)・・・15歳。高校1年生。不良キャラ。弱者には優しい親分肌。「ババアの周りには殺しなんて屁とも思わねえのがゴロゴロいるからな」
- 11番マイ(吉川愛)・・・17歳。高校3年生。ギャル。難しいことがわからない。「ごめん。マイ、全然追いつけない。」
- 12番ユキ(竹内愛紗)・・・15歳。高校1年生。おとなしい。目立つことが嫌い。「もう楽になってもいいはずだって・・・そう思ったんです。」
- 13番・・・???
キャスト発表並びに4番は誰か!?に話題が集まった今作。
なんか、ホームページから#廃病院集合のページに飛ぶと、時計のように数字が並んでてカーソルもっていくと様々なワードが出てくるんですけど、「11」だけ輪からはみ出てるんですよね~。
ミスリードでしょうか。
そもそも犯人いない説がオレの中にはあるんだが・・・。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
まぁみんな死ぬわけないよね、ってわかりきっていたから、もっと「死」を煽ってほしかったよね~。
というわけで色々中途半端に感じたお話でした。
以下、核心に触れずネタバレします。
結局何がしたかったのでしょう。
12人の若者たちが廃病院に集まって集団安楽死を遂げようとした矢先、招いていない13人目の、しかも死体があることで、それぞれの意志統率に乱れが生じ、事態は13人目は誰なのか、13人目はなぜここにいるのか、13人目が死体ならば自殺なのか他殺なのか、という犯人探しに発展していく流れとともに、個々の死にたい理由が明らかになり「死にたい」絶望感を共有し呼応することで、それが「生きたい」希望へと導かれていくサスペンススリラーでありながら青春群集劇へとスライドしていく作品でございました。
冒頭でデスゲーム系の映画、とはちょっと違う話なんだろうと自分で言っていましたが、予想通りの映画でした。
だってそもそも「十二人の怒れる男たち」をもじったタイトルですよ、そんなの「死にたい」って思ってる人の中に反対意見が一人いて、話がこじれていくって筋道が既に予想できるわけで。
だからこれは希望に向かって話が進んでいく映画なんだろうと。
ふたを開けてみればまさにその通りで、招かれざる客がいたことで集団安楽死実行に足並みがそろわなくなっていくわけです(ぶっちゃけそんなの無視して実行すればいいのに)。
しかも都合のいいことに趣味が推理だという人物がいたことで、どんどん安楽死の事など忘れて犯人探しへと発展していく。
そしてこの事件が二転三転していき・・・ってことなんですが。
率直な感想を申し上げれば、予想できた結末であったことに異論はありませんが、その答えにたどり着くまでの過程が非常に浅く、結局何をしたかったんだろうとつい感じてしまいました。
その理由の一つは自殺という決断に至った彼らの意志の弱さ。
基本的には皆「生きたいけど誰かや何かによって生きていく自信を無くした」という理由で集まったわけです(まぁ当たり前か)。
いじめ、家庭内でのゴタゴタ、病気という理由が分類されますが、なんだろう病気はしょうがないとして、それ以外は何とかして逃げれば生きていけるという選択をしないまま自殺を望んでいる子たちばかりだなぁ、と思っちゃいまして。
そりゃあ子供ですから親の保護下にあるわけですから、勝手に逃げるという選択はできないんでしょうけど、せめてぎりぎりまで悩んで自殺するって決断に踏み切った奴が一人でもいてほしかったなと。
で、そいつによって自殺しないって空気の中、場を荒らしてほしかったなぁと。
まぁそんなに死ぬことの意志が強い奴は、みんなで一緒に死のうね!なんて思わないんでしょうけど。
あとは自殺を望んでいるのにどいつもこいつも明るいし、我が強いし、本気で自殺したいように見えない奴らばかり。
本当に自殺したいんだなぁってやつ12番の女の子だけに感じましたね。
一番誰とも会話しようとしないし暗いオーラガンガン出ていたし、あぁマジで生きてるの辛いんだなと。
他のメンツはどこかまだ生きていてもいいことある、みたいな部分がちょっと出ていて、そんな子たちが犯人探しするからどうも死ぬ気あるのかこいつらと。
あとはこれ原作通りだからしょうがないんでしょうけど、いるはずのない13人目を連れてきたのは誰なのかっていうイベントが発生したことで、メッセージ性が弱くなってしまっていること。
もちろん映画を面白くするためのエピソードなのだからそこいらねぇってどういうことよ?ってなるんですけど、この13人目は結果殺されてないんです。
既に死んでいて誰かが運んできた、その犯人は誰かってことなんで、「死にたいから殺さないで」ってキャッチコピーがもう全然間違ってるんですよね。
誰もそんな殺さないでって劇中で言ってないし。
だったらもう誰かが殺したことにして、殺人犯が紛れていて、みんな本気の疑心暗鬼になってやっぱり生きたい!って方向の方が話が盛り上がるし、こんな危険を感じた、生きててよかった!って方がメッセージ性も強く響いたりしないかなと。
僕としては本気で自殺したい人たちが集まったのだから、本当にこれで人生終わりにしていいの?って議論を若者なりの価値観や考え方で2時間とことんやってもらってそれで答えを出すっていうガチの会話劇の方が面白い気がするんですけどね。
「真剣10代シャベリ場」みたいな感じで。
そしたらお客さん来ないかw
一応テーマとしては、一人で「死にたい」と悩んでる気持ちを他者に打ち明け意思疎通していくことで、心の重さは軽くなるからみんなオフ会に行こうぜ!ってことなんすかね。
ただでさえ今の社会色々な人が出てきては悩み戦い生きているって人が多いわけで、そんな同じ気持ちを持った人が近くにいるだけで案外救われることが多くて。
もちろんそれだけじゃ何の解決にもならないんだけど、誰かがいるってことで生きる希望になるんだよな、そんなことをこの映画は伝えているんだなぁと。
とにかく一人で抱え込んでないで誰かに打ち明けてみませんか、死を選択する前に。
生きてりゃいいことあんだよ、いつか。
今すぐってわけじゃないけどね。
ザックリ解説。
エンドクレジットで時間軸を説明する映像が流れるので、それを見ればどういうトリックだったのかってのが簡単にわかると思いますが、それやると核心に触れるので、とりあえず12人の死にたい理由なんぞをザックリ書こうかなと。
1番サトシくん。
彼は舞台となる廃病院の院長の息子でした。
院長である父は鬱により自殺、その理由は兄が医大に落ちたことが原因で母と共に無理心中を図り、別々に暮らすことになったから。
急に自分の周りに死が蔓延したことで、死に憑りつかれてしまったことが理由でした。
彼は基本自分の意見をあまり言わず、周りを見るのが役目。
だから12人の中では一番不気味。
2番ケンイチくん。
彼は空気が読めない性格のため周りからよくウザがられてしまいがちで、それがいじめに繋がってしまった。
いじめの発端は担任の先生から。
典型的ないじめのパターンですね。
みんなが集まって集団安楽死の実行を最初に反対したのは彼から。
3番ミツエさん。
死にたい理由は大好きなビジュアル系バンドのメンバーが自殺してしまい、生きる理由がなくなったから。
急に方言で喋るシーンがあるので地方の子かと。
4番が人気女優の秋川莉胡だと知り、あなたが死んだらファンが後追い自殺する、だから死なないで、そういうのは私で終わりにするから、と彼女の自殺に猛反対する。
4番リョウコさん。
人気女優であるが故に、今の自分は大人が作り上げた商品でしかないことにストレスを抱えている。
だから芸能人としてでなく、自分の意志を貫くために自殺を志願している。
結構な喫煙者。
5番シンジロウくん。
劇中13人目の死体が現れたことで、趣味を生かして推理を勝手にはじめる。
両親は警察官。
彼によって今回の事件の犯人が暴かれていく。
余命いくばくの病気を患っているため医療機器やクスリの効果などはかなり詳しい。
髪の毛はカツラ。
6番メイコさん
愛する父が何人も母親を変えており、ろくでもない母親は排除されるという考えをもっている。
父の会社が倒産しており、自分が死んで江保険金が入れば大好きな父は私のおかげで助かった、だから一生私の事を忘れないと考えている。
が、自殺したい理由はそんな父親に自分も排除されてしまったことが原因。
劇中ではひたすら我を貫くことで場を荒らしている。
7番アンリさん
左脚全体に大きな火傷の痕。
幼少の頃ろくに子育てせず帰宅しない母がたまたま帰ってきてタバコを吸ったのが原因で火事になり、弟はそれによって死亡、自分は屋根の下敷きになり左脚に大きな火傷を負う。
集団安楽死をすることが公になれば、社会に対して生まれてきてしまったことへの抗議になると考えている。
8番タカヒロくん。
吃音障害を患っているため、小さいころから母親に色々な薬を飲まされており、その結果頭の中がいつもぐしゃぐしゃしているために死にたいと決断。
序盤で13人目を殺した人物を特定しており、意外な観察眼を持っている。
9番ノブオくん
昔から大抵の事は人並み以上にできるため、いじめの対象にされていた。
その主犯格を階段から突き落とした過去がある。事故死と断定されたが本人はそのことが頭から離れず自殺を使用と考える。
10番セイゴくん。
母親の事が大嫌いで、その母親と付き合っている連中は恐らく暴力団関係者。
自分に保険金がかかっており、それが母親の手に渡らないようにするには自殺することが一番と考え今に至る。
不良だが意外と兄貴肌の持ち主で、ケンイチのいじめに関し、ここで出会ってなければ俺が何とかしたのにと吐露する。
11番マイさん。
ギャル。
気持ち悪いオヤジに無理矢理ベロチューされたことで、病気が感染ってしまい自殺しようと考える。
その病気は口の中にできたヘルペス。(笑うところです)
劇中みんなの事を勝手にあだ名で呼ぶ。途中難しい話題になると「マイには難しくてついていけない」といちいち自分の今の心境を話す。
12番ユキさん
事故の後遺症が原因で、早く楽になりたいと願っている。
このメンバーの中では一番口数が少なく、本当に自殺したいオーラを放っている。
振り分けられた番号は廃病院に到着した順番を現しています。
11時に部屋の鍵を開けているので12時までに来てくださいというメールがサトシによって事前に送信されており、皆病院の裏口から金庫にある番号札をもって部屋に向かいます。
冒頭では全員が集合するまでに、何かしら不自然なモノ、音、出来事に遭遇します。
- 主催者サトシが到着する前に配電盤の電源が入っていたこと
- 裏口からしか入れないのに、正面玄関のドアが開いていたこと
- そこにモップが落ちていたこと
- 女子トイレに男物のスニーカーが片方落ちていたこと
- 受付に帽子とマスクが置いてあったこと
- 人が落ちたような物音がしたこと
- エレベーターが椅子でつっかえて6階でとまっていたこと
- そして1番のベッドに死体がねむっていること
一体誰の手によって事件は起きたのか、この不自然な事象をみんなで究明していくわけです。
はい、劇中で語られていた自殺したい理由とおかしな部分はこんな感じです。
犯人はだーれだ?ってのを、ヒントを残して書いてあります。
ちなみに一人じゃないです。
それと振り分けられた番号は到着順、というのも実は大きなトリックに繋がっています。
本当にこの到着順なのか?ってのはセリフを聞いているとすぐわかるかと思います。
最後に
なんかもうね、全てにおいて順序が良すぎるというか、演技も何もかもお行儀が良すぎるというか。
予定調和過ぎるんですよねぶっちゃけ。
心理サスペンスって、予定が乱れる出来事が起きるから面白いわけじゃないですか。なのに物事全てが順番どおりなんですよね。
最初に不自然なことをこれ見よがしに見せるのも優しすぎるし、どんでん返し的なことも正直弱い。
会話劇なのに、誰か途中で口を割って意見を言うなんて状況もない。
誰か言ったら次の人が言う、そいつが話し終わったら次の人って具合に。
誰もアドリブ的なことしてないというか。
気になったのは、途中誰かフェードアウトするんですけど、みんな探しに行かないんですよ。戻ってくるだろって。で、いないなら仕方ない、決を採りましょうっていうんですよ。
いやいや!探しに行けよ!
12人全員揃って安楽死実行なんだろ?
あたかも戻ってくる前提で話が進むんですよ、しかもそのいなくなった人物は事件の全容を知ってるってことだったんですよ。それを把握するまで次にいけないのにそいつが来ないから話進めるって変でしょう。
とまぁ色々不満な点は多く、こちらを欺くようなトリックにも感じず。
とりあえず生きる希望を見せる映画を作るなら、こういうテイストの映画でなく、もっとど真ん中の映画を作ってくれ。
てかあれなんだよな、死生観を見せる映画だったのかもしれないけど、命の重さ的なことは一切語られなかったな。
とにかくこれからの芸能界を引っ張っていくであろう役者大集合って事だけは価値のある映画でした。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10