6月24日
ありがとう、トニ・エルドマン
今回はドイツ映画です。ドイツ映画、最近何見ただろう。それくらい見ようと思ってみない国の映画をどうして見たくなったのか。
今年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートした作品というのも理由のひとつなんですが、ノミネートされた時点でこの映画本命だったんですよね~各映画人の予想では。
しかも、この映画は既にハリウッドでリメイクが決定していて、久々のジャック・ニコルソンが演じるというのも話題になってるというんだから期待したい!
そういった注目度や話題性に敏感なモンキーですから、見ないわけにはいかない!と至ったわけです。
というわけで早速鑑賞してきました。
作品情報
世界各国の有力紙が2016年のナンバー1に上げ、カンヌ国際映画祭でも話題騒然、見るものの心を鷲づかみにした今作。
アカデミー賞ノミネートはじめ、全米、ニューヨーク、ロンドンなどの批評家協会映画賞でも数々の賞を受賞し、世界中を席巻。
これを見たハリウッド俳優ジャック・ニコルソンは、引退表明していたにもかかわらず、出演を熱望し、今作の父親を演じるという。
心配するあまり変装してまで娘に構う父と、その行動にうっとうしさを感じる娘。
互いに思い合っているのに、今ひとつ噛み合わない父と娘の普遍的な関係をユーモアに描きます。
あらすじ
悪ふざけが大好きな父・ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)とコンサルタント会社で働く娘・イネス(ザンドラ・シュラー)。
性格も正反対なふたりの関係はあまり上手くいっていない。たまに会っても、イネスは仕事の電話ばかりして、ろくに話すこともできない。
そんな娘を心配したヴィンフリートは、愛犬の死をきっかけに、彼女が働くブカレストへ。父の突然の訪問に驚くイネス。ぎくしゃくしながらも何とか数日間を一緒に過ごし、父はドイツに帰って行った。
ホッとしたのも束の間、彼女のもとに、<トニ・エルドマン>という別人になった父が現れる。
職場、レストラン、パーティー会場──神出鬼没のトニ・エルドマンの行動にイネスのイライラもつのる。しかし、ふたりが衝突すればするほど、ふたりの仲は縮まっていく…。(HPより抜粋)
監督
監督はマーレン・アデ。
もうヨーロッパの映画なんて、俳優も監督も有名な人じゃないとわかりませんw
今作が長編映画3作目だそうで、デビュー作は大学の卒業制作作品がサンダンス映画祭で賞を取り話題になったとのこと。
続く2作目の作品が「恋愛社会学のススメ」。完璧な熱愛カップルを演じる恋人の、理想と現実の狭間で揺れながらも、新しい生き方を模索してく恋愛ドラマだそうで、この作品もベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞する快挙を成し遂げています。
日本ではまだ名が知れ渡ってない感じですが、今作含め注目したいお方だと思います。
キャスト
主人公のお父さん、ヴィンフリート/トニ・エルドマンを演じるのはペーター・ジモニシェック。
なんとも呼びづらい名前。もちろんこの方も存じ上げません。
オーストリアの生まれだそうで、家業を継ぐはずだったものの、大学で建築を学んだ後、演劇に目覚めたとのこと。
過去にはミヒャエル・ハネケとも仕事したそうで、長きに渡り映画やTVドラマなどで活躍してるようです。
娘のイネスを演じるのは、ザンドラ・ヒュラー。
はい、この方も知りまっせん!世界は広い!!
彼女はドイツ生まれの女優さんで、10年前まで舞台女優として活躍されてたそうです。
その後映画に進出し、悪魔祓い実施中に栄養失調で死亡した少女という実際に起きた事件を元に製作された、彼女のデビュー作「レクイエム~ミカエラの肖像~」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞しています。
他にも多くの作品に出演し、賞を受賞しているそうで、ドイツを代表する数少ない女優さんとのこと。
今回イントロダクションが短いですが、文字量以上に期待しています。
父と娘がどんな掛け合いをしていくのか、そのユーモア描写は、そこから浮かび上がるものとは。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
上映時間長すぎるよ!!でも、娘への愛が詰まったハートフルでユーモア満載の映画でした。
以下、核心に触れずネタバレします。
とにかく長い。
もちろん座席予約をする際に覚悟はしていました。武蔵野館がリニューアルしたことで座席がフカフカになって座り心地は良くなったものの、やはり長時間座ってみるのはそれ相応の集中力がいるわけで。
でもふたを開けてみれば、意外とすんなり鑑賞してしまうくらいの体感時間で一安心。
その理由はやはりヴィンフリート=トニ・エルドマンのあまりにもくだらないオヤジギャグがあったから。
それは出だしからかましだすという先制攻撃で幕を開けるのでした。
郵便配達員の荷物を受け取る際、俺は頼んでないよ、トニじゃないかな?と彼を呼び出すわけです。
出てきたそいつはグラサンをかけ、手には手錠をはめ、血圧計を体に巻いたいかにも危なそうな姿。
それはどうみたってヴィンフリート本人が変装したものであり、しかも小包の中身は爆弾かもしれないぜ、なんてカマすもんだから郵便配達のおじさんもちょっとあせる始末。
もちろん冗談だよ、さっきのオレさ、ときちんと釈明するのがヴィンフリート流。
こんな冗談老人ヴィンフリートが娘のためにひと肌脱いで、人生の何たるかを約2時間30分以上にわたりお届けするハートフルヒューマンストーリーが幕を開けるのです。
小見出しにも書いたとおり、とにかく長い。なぜもっと尺を削ることをしなかったのか。すんなり見られたとはいえ、もっと改善する余地はあったのじゃないだろうか。
特にイネスの会社でのゴタゴタを中心とした一連のやり取り、トニエルドマンが出てくるまでのヴィンフリートとイネスの絡みなど、もっと簡潔に出来るよね、これ、と思いながら見てしまう。
でもなんだかんだで、終盤のイネスの突飛な行動からの件で会場も自分自身も爆笑に告ぐ爆笑だったので、これがあった分、結果オーライかな、といったところ。
これなかったらちょっと辛かったかな・・・。
娘イネスの、パパに腹が立つ話。
アタシにとって仕事は全て。これを失ったら人生終わり。そんな充実した毎日をここブカレストで一人気ままに生活してる。
あ、自己紹介がまだだったわね。アタシはイネス。
ブカレストで石油事業のコンルティング会社に勤めるバリバリのキャリアウーマン。wwて自分で言うのもなんだけど。
一応彼氏アリ。仕事のキャリアアップのために来年上海支社に転勤希望を出してるの。
仕事も一生懸命だけど遊びもそれなりに楽しんでるわ。クラブにも行くし、シャンパンがおいしいお店にも行くし、女子会だって定期的にやってるわ。たまぁにハイになりたくて白い粉に手を出したりしちゃうけどw
もうすぐアタシ誕生日ってことで、この前実家に帰ったの。
パパもママも元気そうでとりあえず一安心。でもこんな休日でもひっきりなしに電話がかかってくるから、なかなか気が休まらないわ。でもそんな仕事に追われてるアタシ、好き。
翌日、早速帰って得意先の企業の人たちに契約延長してもらうためにあれこれ根回しってことで、部下達と念入りに準備を進めていたら、会社のロビーに見慣れたでかい図体の男があたし達の横にぴったりついてきて何事かと思ったわ!
だってそれパパだったんですもの!
もう来るなら事前に連絡頂戴よ!!まったく!これから得意先の方のレセプションがあるってのに!
なんかず~っと飼っていた愛犬のヴィリーがなくなって気が滅入ってたみたい。さすがにそれは追い返すのも気の毒だから、この後のレセプションについてきてもらうことにしたの。
そしたらパパ!得意先のお偉方に、娘の替え玉を探しに来たんだ、なんて冗談言って困らせたの!何考えてるのもう!
その後もう1杯付き合うことになって、仕事の話をしてたら、先方にパパの冗談がヒントになって、こっちが不利になるような提案してきたの。
あ~もうパパのせいでせっかくのチャンスが台無し!
次の日先方の娘さんの買い物に付き合う約束したから、パパの観光ついでに付き合ってもらったわ。結局待たせてばかりで疲れさせちゃったけど。
また夜に食事の約束したから家で仮眠してたの。ほんと仮眠のつもりだったのよ。
気がついたら・・・朝!?
何よパパ!!!なんで起こしてくれないの!!!
着信が4件も入ってるじゃない!?
あ~もう最悪!!
そんなこんなでアタシの仕事をかき回してくれたパパもようやく帰ってくれて、これでまた仕事に精が出せるわ。
その日の夜に、久々に女友達と飲みにいったの。いつも満席で今回も席が空くまでまたされちゃったの。
そしたら、奥からシャンパンが余ったので一緒にどうですか?って明らかにヅラで、入れ歯で胡散臭い男性がこちらに近づいてきて。
名前はね、トニ・エルドマンだって。フリーのコーチングだとか何とか言ってたけど。
・・・って何アタシ冷静になってんだろ。この人アタシのパパよ!!
友達2人はなんとか苦笑いでトークをかわしてたけど、アタシは全く笑えない。てかここどうやって探し当てたの!?
しかも何その格好!?ただの黒いジャケットかと思ったら、日が当たるとちょっとワインレッドに変わるのね。意外とオシャレじゃない。
なんて感心してる場合じゃないの!!!
いくら冗談が好きだからって何考えてるのよ。そもそも帰ったんじゃなくて!?
・・・とにかく、この場は彼アタシのパパなんて言えないから他人のフリ他人のフリ。
それからというもの、パパ、いやエルドマンさんは会社にも現れたり、パーティーにも現れたりと何かと目障りだったわ。
なんかどこどこの大使だとかいってたっけ。
その後も勝手にアタシんちに忍び込んでまたいつもの冗談で手錠かけたはいいとして、そのカギ無くしちゃった・・・ってこれからアタシ仕事なのよ!!!もうしょがないこのまま連れて行くしかないか・・・、と取引先まで同乗したり、この前のパーティーで仲良くなったご婦人の家でイースターエッグの描きかた習いに行って。しかも感謝の印に1曲歌いますとか言い出して。アタシ歌わされたの!ホイットニー・ヒューストンの曲を!でも久々に大声出して歌ったわ・・・うん、いい曲。
何かとパパと衝突してばかりだったけど、パパはアタシの今の生き方にはユーモアが足りないって言ったの。最初なんかオマエは人間か?とか言われて。正直何を言ってるのパパ?って。ほんとよくわからなかったわ。
でもね、目の前のことに必死になりすぎていたアタシに、パパは安らぎを与えてくれてたの。今になって気がついたわ。アタシの前であれこれやらかしてきた冗談は、あたしに迷惑をかけるためじゃなくて、カマって欲しいわけでもなくて、今のアタシに足りないものを教えるためだったの。
だからね、アタシも誕生日パーティーでおもいっきりハメをはずしてみることにしたの。
何したかって?
ダメ!言えない!絶対に言えないわ!!
あんなことしたの初めてだったし、まさか会社の同僚も同調するなんて思わなくて・・・。
とにかく今度はアタシがパパにユーモアを与えようって。パパが落ち込んでいたらそうしようって。
・・・ハイ。イネスになりきって話の内容を書いてみましたが、うまくいかないっすね、なんとも・・・。
最後に
本心としては、もっと詰めて欲しかったわけですが、後半は一気に見所が満載になりクライマックスは大爆笑になること請け合いです。
なんだかんだで親子だなwwと思わせるシーンです。で、案外わ~お!な展開です。
なぜこの女優さんが娘役に選ばれたか、そのしかめっ面が全てを物語っています。このしかめっ面を何とか笑わせようと頑張るお父ちゃんを、そのお父ちゃんのあらゆる場所での暴走を食い止める、いやその場を何と乗り切る気転ぶりを楽しんでください。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10