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Channel: モンキー的映画のススメ

映画「教皇選挙」感想ネタバレあり解説 コンクラーベで根比べなんてもんじゃない。

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教皇選挙

ローマ教皇を題材とした映画はイタリアを中心にいくつか製作されてますが、教皇を決めるための選挙「コンクラーベ」を描いた映画って、僕はあまり知りません。

 

一番有名なのってたぶんラングドン教授シリーズの「天使と悪魔」くらいじゃないですかね。

それまで僕はどうやって教皇が決まるか知りもしなかったので、映画の評価は置いといて興味深く見た記憶があります。

 

確か世界中の枢機卿が集まって、完全に外界をシャットアウトして決まるまで何度も投票する仕組み。

投票結果を外で固唾を飲んで待ってる人たちに向けて煙が上がるんでしたよね。

決まらない場合が黒で決まった場合が白。

 

後の詳しいことはわかりませんが、概要はそんな感じだったでしょうか。

なので今回鑑賞する映画は、もっと内側のドロドロした駆け引きを見せてくれることでしょう。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

第95回アカデミー賞で国際長編映画賞ほか4部門を受賞した「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。

第97回アカデミー賞に作品賞含む8部門にノミネートし、脚色賞を受賞した。

 

カトリック教会の元首であるローマ教皇が亡くなったことにより、新たな教皇を決める選挙が行われる中、様々な陰謀や駆け引き、差別、スキャンダルが横行し、執り仕切ることになった主人公が政治闘争に翻弄されていく姿を、手に汗握るスリリングな展開で描く。

 

外部からの立ち入りが禁じられ、密室で行われる選挙。

監督のエドワード・ベルガーはそうした秘密の会議を探求したい気持ちから製作を決めたとのこと。

神聖な行事にも関わらず、保守対リベラルや、立候補を陥れようと画策するなど疑惑と野心が渦巻く中、信仰心さえも揺らぎ始めてしまう主人公の葛藤にも惹かれたそう。

 

そんな主人公で選挙を執り仕切ることになる枢機卿ローレンスを、「シンドラーのリスト」や「イングリッシュ・ペイシェント」、「ザ・メニュー」のレイフ・ファインズが演じる。

監督は、内面で起きている思いを表情で伝える演技が巧いファインズを抜擢し、より感情を抑制して演じるようリクエストしたとのこと。

 

キャストは他にも、「プラダを着た悪魔」、「キングスマン:ファースト・エージェント」のスタンリー・トゥッチ、「ガープの世界」、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のジョン・リスゴー、「ナルニア国物語第2章」のセルジオ・カステリット、「ブルーベルベット」、「永遠に美しく…」のイザベラ・ロッセリーニなどが出演する。

 

これは選挙か、それとも戦争か。

あなたの目で「知られざるイベント」の内幕を目撃せよ。

 

 

天使と悪魔

天使と悪魔

  • トム・ハンクス
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あらすじ

 

全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派、カトリック教会。

その最高指導者にしてバチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去した。

 

悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。

 

世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まった。

 

票が割れるなか、水面下で蠢く陰謀、差別、スキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まっていく。

そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発するのだった……。(HPより抜粋)

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キャラクター紹介

  • ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)…ローマ教皇の逝去に伴い、コンクラーベを執り仕切ることになった首席枢機卿。しかし、新教皇候補者の誰もが暴露されたら教皇への道を失うほどの秘密を抱えており、水面下でうごめく陰謀や差別、スキャンダルの数々に頭を悩ませる。信仰に悩みを抱える。

 

  • ベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)…ローレンスの親友。米国出身で、バチカン教区のリベラル派急先鋒。テデスコやトランブレを敵対視している。
  • トランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)…カナダ・モントリオール教区の保守派。心臓発作で突然死去した前教皇と、死の直前に会っていた?
  • テデスコ枢機卿(セルジオ・カステリット)…ベネチア教区で、伝統主義の保守派。前教皇を批判していた。
  • アデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)…ナイジェリア教区。もし教皇となれば、初のアフリカ系教皇となる。
  • シスター・アグネス(イザベラ・ロッセリーニ)…枢機卿たちの宿泊施設を運営する責任者。ローレンスをサポートしつつ、トランブレに疑惑の目を向ける。

(以上FassionPressより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

熾烈なパワーゲームの中、文春もびっくりの特大スキャンダルが選挙にどんな影響を及ぼすのか。

案外ゲスな気持ちで見ることになるんでしょうかw

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

票集めの根回しに画策など、誰もが野心に満ち溢れていた「閉ざされた選挙」に文字通り「風穴」を開けた1作。

正直好みではないが一筋の希望へ向かうクライマックスが、今起きている全ての争いに通じる答えになっていて胸がスカッとしました。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ

心臓発作で亡くなった教皇の周りに、ローレンス枢機卿が他の聖職者たちとともに集まる場面で物語は始まる。

 

教皇の死が宣告された後、ローレンスは涙を流し、友人のベリーニ枢機卿と亡くなった教皇について語り合う。

 

3 週間後、枢機卿団はローレンスの先導のもと教会に集まりコンクラーベを開始する。

他の枢機卿や修道女たちも投票の準備のために到着する中、リベラルなベリーニのほかに、伝統的保守派のトランブレ枢機卿 、社会的に保守的なナイジェリアのアデイエミ枢機卿 、イタリアのテデスコ枢機卿 が顔をそろえる。

 

ローレンスとベリーニは、テデスコ枢機卿の古風な考え方が教会を後退させると考えており、二人とも教皇の地位を望んでいないが、彼の支配下に置かれることを好ましく思っていなかった。

 

その夜、ローレンスは困惑している様子のウォズニアック大司教に呼び出される。

大司教はローレンスに、教皇と最後に面会したのは、教皇によって重大な不正行為で解任されたトランブレだったと震えながら打ち明ける。

 

その後、ローレンスはカブール大司教のベニテス枢機卿に会う。

他の男たちはベニテスが資格証明書を偽造したのではないかと疑うが、彼曰く、前年に教皇が枢機卿に任命したと語っており、戦地で宣教活動も行っていたことなどから、ローレンスはベニテスを新たな枢機卿として招き入れることを決断、食事の時間に他の枢機卿に紹介するのだった。

 

ベリーニ枢機卿はテデスコ枢機卿が教皇にならないようにしたいという希望を改めて表明。

その後ベリーニ枢機卿はトランブレ枢機卿と会い教皇がなぜ彼を解任したのかを訪ねるが、トランブレイ枢機卿は容疑を強く否定。

ウォズニアックが容疑を主張した当時は飲酒していたと示唆した。

 

 

コンクラーベの初日。

第1回の投票は、アデイエミがリードしているように見えるが、ローレンスにも5票はいるなど、トランブレ、テデスコ、ベリーニと共に有力候補の一人となっていく。

 

ベリーニはアデイエミの同性愛嫌悪を容認しないにもかかわらず、テデスコの勝利を避けるため、ローレンスと共にアデイエミを支持することにしぶしぶ同意。

 

ローレンスはモンシニョールに、なぜトランブレは相応しくないのかを尋ねようとするが、それを裏付ける証拠はないことが判明。

さらにローレンスは夜中に 2 人の修道女の口論を耳にする。

 

 

2 日目。

通りで爆発音騒ぎがおきたが投票者が左右されないようにするため、ローレンスは選挙民にこのニュースを隠すことに。

結果はアデイエミは引き続き投票でリードしているが、勝利に必要な 3 分の 2 の多数票は確保できず、次の投票に持ち越されることに。

 

しかし、昼食中にアデイエミはシスター シャヌミという名の修道女に大声で叱責される。

 

それを目にしたローレンスはシスター アグネスに許可をもらい、シャヌミと話すことに。

実は彼女は、19 歳のときにアデイエミの子を妊娠したと告白。

当のアデイエミは若気の至りだと言いますが、教皇の名に相応しくないどころか、教会全体が疑われる一大スキャンダルになりかねないことを告げる。

ローレンスは秘密にすると告げるが、結局あの騒ぎで噂は広まってしまい、アデイエミの票は大幅に減少します。

 

その後オマリーはローレンスに、教皇がベニテスをジュネーブに飛行機で連れて行き、非公開の医療処置を受けさせたという事実を告げる。

それを聞いたローレンスはベニテスと面会するが、ローレンスに投票したことを告げる。

自分に入れても意味がないとローレンスは少々怒り気味に話すが、ベニテスはそれでも「入れるべき人に投票する」と信念を曲げない。

 

 

アグネス修道女は、トランブレがシャヌミをバチカンに移送したことをローレンスに告げる。ローレンスは、トランブレがアデイエミを陥れて票をそらすためにそうしたのだと考えて、トランブレに詰め寄る。

 

トランブレは、シャヌミの移送を手配したことは認めたものの、それは教皇の要請にに従ったまでで、教皇は彼女がアデイエミと関わっていることを知らなかったと言う。

逆にトランブレは、ローレンスが教皇の座に就く野心を抱いていると非難するが、ローレンスは怒ってそれを否定する。

 

ローレンスは真相を確かめるため教皇の閉ざされた部屋に侵入。

そこでノートと、票を得るために他の枢機卿に賄賂を渡したトランブレの記録を見つける。

それが教皇がトレンブレイの辞任を求めた理由であると確信したローレンスは、ベリーニに文書を見せることに。

ベリーニはこれが公になれば選挙どころか教会全体の威信にもかかわることに繋がると考え、文書を燃やすよう促すが、ローレンスはベリーニも賄賂を受け取っていたことに気づく。

 

 

3 日目。

ローレンスとアグネスはコピーを作成し、トランブレの票買収を暴露。

トランブレは騒動を落ち着かせるため言い訳を話すが、アグネスはアデイエミを陥れるためにトランブレが画策したことを枢機卿らの前で打ち明ける。

 

ベリーニはローレンスに賄賂を受け取ったことの許しを得るが、テデスコを強行にさせないための策を練っていく。

 

次の投票中、自分の名を書いたローレンスが投票箱に入れ様とした瞬間、バチカンの外で自爆テロが発生。

システィーナ礼拝堂の窓が損傷し、路上で数人の死傷者が出た。

 

これを受けて枢機卿らは別の部屋に集められることに。

そこでテデスコ枢機卿はイスラム過激派を非難し、教会は彼らと戦うべきだと述べた。

皆が声を荒げる中、ベニテス枢機卿は立ち上がり、戦争の恐ろしさについて自分が経験したこと、暴力にさらなる暴力で対抗すべきではないことを熱弁。

 

果たしてローマ教皇は誰に選出されるのか、というのがあらすじです。

 

ローマ教皇にしてやられましたね。

普通の選挙のように、誰がどこに入れたとか言う出口調査がある「開かれた選挙」ではなく、枢機卿たちが一切の情報をシャットアウトして投票する「閉ざされた選挙」。

女人禁制という古臭い風習に沿って今もなお行われてる、我々の知らない世界をよくここまで見せたなぁという意味では非常に見ごたえある作品でした。

 

そしてその中身では、票集めのために用意周到な準備をしている者もいれば、その場で票集めをするためのロビー活動に勤しむ者などやり方は様々。

さらに投票を進めていくと、有力候補のスキャンダルがガンガン出てくるので、飽きることがありません、

 

そりゃ世界で一番有名な存在になるわけですから、素質はもちろんクリーンな人材でないと困ります。

しかし叩けばホコリが出るってもんで、どいつもこいつも保身のために色んな事やってますね~って話で、それを知るたびに主人公ローレンスの顔がやつれてくやつれてく…。

終いには目の下にでっかいクマまで出てたじゃないですか。

カメラがいちいち彼にクローズアップするので、段々彼に同情してくるように仕向けた作品でしたねw

 

 

アカデミー賞で脚色賞を受賞しただけあって脚本が優れた内容だとは思います。

流れるように誰かの秘密が暴かれる中、ローレンスはどう対処するのか、それがだんだん外の連中からしたら「あいつも強行狙ってるのか?」と見て取れる。

ベリーニらも交えた熾烈な票集めの争いと、その都度見せるローレンスの葛藤を上手に絡めながら見せた秀逸な作品だったと思います。

 

時折挿入される壁画や光が差し込む広間を引きで見せるショット、誰も入ってはいけない前教皇の部屋を奥行きを与えながら映すシーンなど、さすが「西部戦線異状なし」さながらの重厚感あふれる映像が、これまた素晴らしかったと思います。

 

とはいうものの、これ前情報なしで見るとキャラクターの名前を覚えるのが結構大変だったりするんですよ。

それこそジョージとかライアンとかトムとか聞き慣れた名前ではなく、ベリーニ、テデスコ、ベニテス、トランブレと聞き慣れない名前が飛び交うため、「え?誰だっけ?」となってしまう。

第1回目の投票で名前を呼ばれた枢機卿が抜かれる親切な見せ方があったのにもかかわらず、前情報を調べた俺でさえ「あれ、トランブレってどいつだ?」となってしまう。

 

要は結構集中力のいる作品だったんじゃないかなと。

ただでさえカトリックの事なんて知らない俺たちが、カトリックのトップを決める選挙の内幕を覗くんですから、宗教の事含めちょっと俺にはノットフォーミーな内容でしたかね。

 

具体的に言うと、室内劇ってこともあって動きがないんですよね。

顔と顔が抜かれ、サシでの会話が続く。さらには重厚な劇伴が入ることもあるけれど、基本的には無音状態。

結構眠くなってしまうという・・・。

 

でもね、物語が佳境に入っていくとものすごく面白くなっていくわけですよ。

有力候補がどいつもこいつも何かしらの秘密があって、幾らやっても強行が決まらない、自認しようと考えてるローレンスが、仕方ねえ俺が一肌脱ぐかって自分の名前を書いた紙を投票箱に入れ様とした瞬間、この選挙をどうにかしようと文字通り「風穴」が開くわけですよ。

 

そこから本音合戦が始まり、前時代的で他の宗教と戦う姿勢を見せるテデスコが主張して場が荒れる中、ベニテスが口火を開くことで、礼拝堂に空いた穴の如く、枢機卿たちに光が差し込んでいく。

無論教皇に選ばれたのは彼でしたが、彼にも秘密があったという。

 

これまでのコンクラーベがこんなゴタゴタの中で決められていた、それで仕方なく選び続けられていたってことを考えると、これ、全ては亡くなった教皇が裏で色々糸を引いていたんじゃないかって思えて仕方ないんですよ。

 

自分の命があとわずかとなった時に自分がすべきことは何か。

それはカトリック教会の未来なのではないかと。

次の教皇に相応しい人が選ばれるためには、不正を働くものを見過ごすわけにはいかなかったんだろうし、古い仕来りを少しでも変えるためにベニテスに事前に会って色々促すとかを見ていくと、そう思えてならないというか。

 

もしかしたらトランブレの言ってることは少しは本当の事にも思えるんですよね。

シスターを呼んだのもアデイエミの過去を知っていたからで、賄賂を送ってるトランブレに呼ぶのを頼んだのも、賄賂がバレなかった時の予備の策というか。

 

 

物語ではそこに直接言及はされなかったけれども、冒頭でベリーニが「前教皇はチェスで常に8手先を読んでいた」って言ってましたよね。

そう思っても良い解釈を与えてくれた作品だったのではないでしょうか。

 

 

最後に

選挙で勝たなければ政策を進めることはできないですから、票を集めるための策は必要です。

ただそれが保身のためとか戦いに勝つためなのなら、改めて何のためにトップに立ちたいのかを考えなくてはならない。

ベステスの発言は、正に今世の中で起きていることに対して今一度立ち止まって考えるべき発言でした。

 

こういう演説をする人の言葉を聞き逃さないために、我々は候補者をしっかり見極めなきゃいけないですよね。

ネットで書かれたことが正しいのか、それとも偏った報道ばかりするオールドメディアが正しいのか。

色んな判断材料を加味して選挙で投票しないとなぁと。

 

このままじゃほんとに戦争が起きちゃうよとさえ思ってしまいます。

どうかベニテスのような人が人の上にちゃんと立てる社会が訪れますように。

なんちゃって。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10


映画「BETTER MAN/ベター・マン」感想ネタバレあり解説 さぁロビーよ、俺たちを沸かせてくれ!!

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BETTER MAN ベター・マン

僕とロビーの出会いは、「Feel」という曲のMVを見た時。

メロディと渋い声に惹かれたのを記憶してます。

その後リリースされたアルバム「Intensive Care」の「トリッピング」という曲にハマったのち、ベストアルバムを聴いてました。

 

当時は彼が「テイク・ザット」に在籍していたことも知らなかったんですが、今度は再結成したテイク・ザットのアルバム「ビューティフル・ワールド」の中の「ペイシェンス」と「シャイン」をヘビロテしてました。

 

彼らのハーモニーとメロディセンスはすごく親しみがあり口ずさみやすいのが特徴。

さすがUKポップスだなと、当時バンドをやっていた僕にとって大きな刺激にもなりました。

 

最近だとカタールで開催された「FIFAワールドカップ」でパフォーマンスしていたのが印象的。

僕の大好きな曲「レット・ミー・エンターテイン・ユー」を熱唱していて興奮したのを覚えてます。

 

今回鑑賞する映画は、そんなボーカルグループを脱退し、イギリスで最大のエンターテイナーへと上り詰めたロビー・ウィリアムスの伝記映画にしてミュージカル映画。

 

本人が演じるのか?と思ったら、なぜか「猿」が演じてる…。

これはどういうことだ?

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

1990年から1995年、2009年から2011年の間までテイク・ザットのメンバーとして活動し脱退後はソロのアーティストとして7500万枚以上のレコードセールスを記録、全英アルバムチャートで最も首位を獲得し、ブリット・アワード史上最多の受賞歴を誇る世界で最も偉大なエンターテイナーの一人、ロビー・ウィリアムスの波乱の人生を、「グレイテスト・ショーマン」の監督によって製作されたミュージカル映画。

 

10代にして一躍スターダムにのし上がった主人公の栄光と挫折、そして再生するまでの波乱万丈な人生を、猿の姿という奇抜なアイディアで描きながら、ショーマンの名にふさわしい没入型のミュージカルシーンをふんだんに取り入れた、極上のエンターテインメント映画。

 

多くのファンに愛されながらも常に他人の目にさらされてきたことで辛さを感じてきたロビーウィリアムス。

自らパフォーミングモンキーと捉えていることから、監督のマイケル・グレイシーはロビーを「サル」の姿に見立て、彼の視点で物語を描くことを決めたそう。

 

サルと化したロビーはモーションキャプチャーによって描かれるが、声はロビー本人が担当する。

他、「銀河ヒッチハイク・ガイド」のスティーヴ・ペンバートン、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のデイモン・ヘリマンらが出演する。

 

ロビー自身も真実に忠実な物語だと断言。

問題のある性格や過去をむき出しにして表現できていると太鼓判を押している。

 

これまでの伝記映画とは一味違う本作。

その型破りな表現と心躍る数々のミュージカルシーンを刮目せよ。

 

 

グレイテスト・ヒッツ

グレイテスト・ヒッツ

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あらすじ

 

イギリスで生まれたロビー・ウィリアムスは、1990年代初頭にボーイズ・バンド、“テイク・ザット”のメンバーに選ばれ、チャートトップを連発するポップスターになる。


しかし、その一方で10代にして世界的なスターダムにのし上がったことによる不安とあくなき夢を追い求める中で、愛されると同時に常に他人の目に晒される辛さに苦悩する。


仲間や大切な人との出会いと別れ、そして人生の絶頂とどん底を経験した、彼が選んだ人生とは——(HPより抜粋)

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感想

エンターテイナーは見られる商売。

だからこその辛さが画面いっぱいに広がる。

ロビーのヒットパレードに圧巻だけど、意外と幻覚シーン多くてうわっとなるかも。

猿のCGもなかなかでしたね。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

エンターテイナーの一長一短

いきなり自分の話から入りますが、僕も若い頃はバンドマンとして歌を歌ってたこともあり「客前に立つ」ことによる良い面と悪い面をそれなりに理解しているつもりです。

僕の場合目立ちたがり屋なのに人前だとアガッたり緊張することが多く、当時も今もそれに直面して苦しかったことが多々ありました。

 

本作は父から「脳なしなのかギフトを持ってるのか」と問われたことがずっと脳内に残っていたせいで、ライブシーンではトラウマの如く過去の自分から追い詰められる描写が多々訪れます。

彼の場合ドラッグやアル中がたたって幻覚を見ていたんでしょう。

とにかく常に不安が付きまとうロビーの姿をずっと見つめることになります。

 

そんな映画を見ながら、どこか自分が体験した様な辛さが画面いっぱいに広がっていたこともあり、結構辛かったです。

あの時お客さんの顔を見れなかったのは、一体俺を見て彼らは何を思ってるんだろうという邪念を取り払うためでしたが、もしかしたら過去の自分が睨みつけてくるかもしれない、なんて思ってたんでしょうか。

今となっては良い思い出ですが、本作を見てそんなことを思い出してしまいました。

 

 

さて本作に関してですが、常に調子乗って自惚れて自己中で勝手気ままなロビー・ウイリアムスを堪能できる伝記映画の姿、そしてどんなにメンタルがズタボロでもオーディエンスを「沸かせろ!」とばかりに懸命に歌い踊り楽しませる、ライブさながらの圧巻のパフォーマンスで見せる音楽映画の姿、そして偉大なミュージシャンなら誰もが通るドラッグ依存における内面崩壊、さらには父や母、そして祖母という家族の愛を渇望した、壮大なドラマでもありました。

 

全体的な内容としては、少年期からテイクザットのオーディション、ロバートからロビーという仮の姿になったことでもう一人の自分に戸惑いながらも成功を噛みしめる描写、メンバーとの不和により脱退しソロに転向、オールセインツのメンバー・ニコールとの熱愛、どんどんスターダム街道を駆け抜けていくと同時に増えていくドラッグの量、そして祖母との別れから父への思いと、彼の歴史をよく知らない僕でも聞いたことのあるエピソードや歌が並び、これぞエンターテインメントショーといった内容でした。

 

まるで令和版「オール・ザット・ジャズ」のように、ステージ袖で自分に「沸かせろ」と鼓舞してステージに立つロビーの姿に感動する箇所もあれば、その度に過去の自分と対峙して呼吸が乱れていく葛藤の瞬間が苦しく思うシーンが連続するんですよね。

 

正直後半あたりからそれが強く描かれるので、見てる側は結構しんどいと思ってしまいそうなんですが、あくまで本作はロビーの視点で描かれてる以上必要な描写だったんでしょう。

吸っては歌い、歌っては酒を飲むことで、ロバートではなくロビーとして表も裏も振る舞う姿は、「ボヘミアンラプソディ」や「ロケットマン」などといったイギリス音楽映画のそれを彷彿させる場面であり、如何にエンターテイナーのメンタルが不安定かが読み取れる映画でもありました。

 

その最たる理由は、父への過剰なまでの愛だということが見て取れるのではないでしょうか。

僕も男ですから、父に対する思いってのは母親とは違うものだったりします。

男って知らぬ間に父親を追いかけてるところってあるじゃないですか。

ロビーの場合、我々以上に追いかけてたんだなぁ、愛を欲しがってたんだなぁというのが窺える映画でしたね。

 

司会業やスタンダップコメディアンである父親が、フランシナトラやサミーディヴィスJr.に憧れていたことからロビー自身も好きになり、父親と共にシナトラの「マイウェイ」を歌うシーンから始まるんですが、父親みたいに有名になりたい(実際有名ではないんだけど)と願う息子は、父親から「有名になれる才能があるのか、それともただの脳なしか」と問われて戸惑うロビーの姿が映ります。

 

しかも父親はFA杯の決勝戦を見に出かけたのをきっかけに家を出て行ってしまうロクでもない父親。

なぜ自分を置いていってしまったのかという思いが、やがて「脳なしだから捨てられた」と追い込まれていくわけです。

こうした子供の頃に受けた出来事はトラウマになりやすいのか、どれだけ有名になってもお金持ちになっても、父親から認めてもらえない、または愛されていないという葛藤を生むことになっていくんですね。

 

いくら大舞台でライブをしても、ブリットアワードで受賞しても、アルバムをたくさん売っても、満たされない愛。

ファンからたくさんの愛を受け取りながらも埋められない隙間を、身を亡ぼすかのようにドラッグに依存することしかできない辛さ。

 

きっと音楽を辞めても苦しむんでしょう。

だったら沸かせるために、父に認めてもらうためにやり続けるしかない。

 

そんな彼の生々しい姿が見られる映画でもありましたね。

 

何故猿なのか。

しかしなんで猿にしたんでしょうね。

普通に考えれば、俳優をやってないロビーが本人を演じるのもおかしいし、俳優を起用してもロビーそのものを描けることは難しい。

 

監督のマイケル・グレイシーは「グレイテストショーマン」で大成功を収めたにもかかわらず、大きな映画のオファーを断って、自分の会社を立ち上げ色んな企業から出資してもらって本作を製作したと聞きました。

 

要するに監督は「挑戦」を選んだんだと思うんですね。

そして挑戦をするなら誰もやったことのないものを。

それがロビーが自身の事を「猿」と呼ぶことをヒントに作ったようなんです。

 

だからと言って劇中ではこれと言って「猿」である理由を明確にしていません。

 

自分なりに考えてみます。

 

猿は、猿回しやサーカス、動物園などで芸を覚えられる動物として「人に見られる=見世物」にしやすいものです。

人に見られてナンボのエンターテイナーは、ある意味猿のようなものですし、それに応えるべくワーキャーはしゃぐロビーは、猿そのものだったんでしょう。

 

特にテイクザット時代は、マネージャーから酒も薬も女も禁止と厳しい規律がある中で、ゲイリー以下のパフォーマンスと小バカにされながら、やりたいこともできない、いわれたことしかできないという「猿」のような扱いをうけてたわけですし。

 

とはいえ我々観衆は、そんな素晴らしい芸当を見せたり様々な苦悩を見せる猿を見せられることで興奮を始めとした色んな感情を引き出すことができる。

下手すれば人間以上に色んな感情を引き出せる可能性があるかもしれないと。

 

それが成功してるかどうかは各々の判断によると思いますが、僕はこの挑戦には肯定的に受け止めています。

 

こうやって整理してみると、猿であることに合点がいく挑戦だったのではないでしょうか。

 

圧巻のパフォーマンス

音楽映画の面を強く押し出している本作。

やはりライブパフォーマンスやミュージカルシーンを語らないわけにはいきません。

 

まず驚いたのはテイクザットデビュー前のドサ周り。

僕自身再結成後のテイクザットしか知らなかったこともあり、まさかゲイバーを回ってお尻丸出しの衣装を着たりレザージャケットを羽織って歌や踊りを披露していたなんて驚き。

その後女性だらけのクラブでのパフォーマンスも、完全にセクシーを売りにしたパフォーマンスで、当時15歳だったロビーはよくこんな屈辱とも取れる衣装で人前に出れたなと。

 

デビュー決定後の「RockDJ」のシーンは本作一番のハイライトでしょう。

どうやら街を4ブロック使っての撮影だったようで、CGを駆使したハイパフォーマンスは圧巻でした。

実際この曲はロビー自身の曲でテイクザットの曲ではないんですが、5人全員が洋品店のスーツや街を歩く人の服をはぎ取って早着替えをしたり、ホッピングに乗りながらリズムを刻んで踊るシーン、老人が乗るシニアカートにまたがってユニゾンダンスをしたり、OK GoのMVさながらの空撮映像で見せたかと思えば、ラストはマイケル・ジャクソンばりの大人数ロックダンスをかますなど、およそ3分の映像で一気に没入させてれます。

 

他にも、クルーズ船で新年を祝うシーンでは、恋人になるニコールとの馴れ初めからその後の未来までを網羅した映像になっていると同時に、フィギュアスケートを彷彿とさせるアクロバティック且つエレガントなペアダンスを披露。

名曲「She's the One」を二人で歌いながら互いを求めあう姿は、ミュージカル映画ならではの瞬間だったと思います。

 

また12万5000人を動員したとされるネブワース・フェスでのライブでは、宙づりになった状態で登場し、代表曲「レット・ミー・エンターテイン・ユー」を熱唱するロビーの姿が超絶カッコイイです。

しかし、ここでは重度のドラッグ依存により意識が朦朧としてる中でのパフォーマンスになっていて、過去の自分の幻影が多数登場。

やがてそれを断ち切るために、猿同士の壮絶なバトル描写へとシフトしていく映像になっておりました。

進撃の巨人のような人体模型的猿の姿が襲ってきたり、KISSの格好をした過去の自分、終いには「プライベートライアン」かよとツッコみたくなる、ナイフをを胸部にゆっくりと刺すシーンがあったりと、中々の映像描写になっておりました。

 

そしてクライマックス。

ドラッグ依存を克服し復帰した際のアルバートホールでのコンサートでは、幼少期に父とよく歌っていたシナトラの「マイウェイ」を白タキシードを着て披露。

2番に入る手前で父を壇上に上げデュエットを披露するシーンを、縦横無尽のカメラワークでフレキシブルに二人を捉えながら、ようやく父に認めて貰えたことへの喜びと、父からの祝福を表現する映像になっていて、僕は初めて「マイウェイ」を聴いて泣いてしまいましたw

 

そもそもこの歌は人生を全うした人が過去を振り返る歌。

ぶっちゃけ死ぬ前のような歌ですよw

それを物語の最後で、父が愛した歌を父と歌い、父に認めてもらって、人生道半ばにして酸いも甘いも経験したロビーだからこそ「心のままに」という言葉が説得力のある歌として物語を締めくくるわけです。

これはものすごく最高でした。

 

 

最後に

個人的にはもっとヒットチャートを駆け抜けるような成功への道をドラマチックに見せてほしかったんですが、それだときっとただの自慢話になると思ったんでしょう。

あまりそうしたオーディエンスや世間の反応は除外して、ロビーの視点一つに絞って描いたことは正解だったといえるでしょう。

 

やっぱね、アーティストが自分を切り売りすることって避けて通れない道だと思うんですよ。

それが共感を生んだり、アーティストのドラマやストーリーにもなる。

だから応援したくなるんですよね。

ただ楽しませるだけの歌はその場しのぎで歌い継がれることって大してないと思うんですよね。

 

だから本作は「RockDJ」や「レット・ミー・エンターテイン・ユー」よりも、「She's the One」や「Angels」のような自分自身を謳ったバラードの方がより鮮明に残る。

もちろんどちらもないと印象に残らないから削るわけにはいかないんですけどね。

 

しかしオアシスが登場したのは笑ってしまいましたね。

オアシスが売れた90年代中盤は確かにテイクザットと被っていたし、オアシスが好きだってのは本当なんでしょう。親交もあったろうし、きっとどっちが売れるか勝負っていういい意味で張り合ってたんでしょうね。

 

しかも恋人ニコールはロビーと別れてリアムと結婚て、出来過ぎですよw

兄ノエルは「ファックオフ」しかセリフがないのが最高でしたw

 

また、これは文句ではなくこうしてほしかったというお願いでもあるんですが、不仲だったテイクザットのメンバーゲイリーとは腹を割って話し合って、テイクザット再結成の際にロビーも参加するという事実があるので、そこで締めても良かったよなぁと思ってしまいました。

 

今回観賞するうえで、5人そろった時のアルバムを聴いたんですけど、めちゃめちゃカッコよかったんですよ。

それこそザ・キラーズのようなロック調のEDMを基調にしてて、これは聴きごたえあるなと。

特に「SOS」はマジでカッコイイです。

気になる方は是非。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

映画「ベイビーガール」感想ネタバレあり解説 雌犬と化したニコールキッドマンが見てられない。

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ベイビーガール

昨今ハリウッドでは、女優自身が映画のプロデューサーを務める傾向があります。

エマ・ストーンは「哀れなるものたち」、マーゴット・ロビーが「バービー」、シドニー・スウィーニーが「恋するプリテンダー」と、プロデューサーに名を連ねることで資金を集めたり内容を指揮し、有望な女性クリエイターを起用できるなど、ハリウッド映画業界がそれまでなかった形でフェミニズムを表現してきていることがうかがえます。

 

またその中でも、熟女が年下の男性と恋愛する映画や、女優自身がヌードを披露する映画も少しずつ増えているとのこと。

それまで男性優位だった業界で女性主体の内容を描いた作品が増えていることは、まさにフェミニズムな部分であり、今後もますます「女性のリアル」が描かれた作品が増えることでしょう。

 

今回鑑賞する映画、実は官能映画を予感させる1作。

なんでも地位も名誉も手に入れた女性CEOが、インターンの男性によって欲望を探求してくというもの。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

新進映画スタジオ「A24」が放つエロティックエンターテインメントを、本作でヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞したニコール・キッドマン主演で描く。

 

すべてを手に入れたはずの女性CEOが、満たされない欲望をインターンの青年に暴かれていくことで、「昼はCEO、夜は犬」と化していく姿を、官能的かつスリリングに描いたエロティックスリラー。

 

監督は、ポール・ヴァーホーヴェン監督の「ブラックブック」など女優として多数出演経験のあるハリナ・ライン

前作「ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ」とは違い単独で脚本を執筆したところ、主演を務めるニコール・キッドマンの目に留まり、キッドマンプロデュースの下製作が実現となった。

 

主演の女性CEOロミーを演じるのは、「LION/25年目のただいま」、「聖なる鹿殺し」のニコール・キッドマン。

女優としての美しさを保ちながら数々の映画賞を受賞してきた彼女は、「役者として、人として、すべてをさらけ出した」と告白する圧巻の演技を披露し、ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞を獲得した。

 

そしてそんなCEOを誘惑するサミュエル役に、「キングスマン:ファーストエージェント」、「ザリガニの鳴くところ」、「逆転のトライアングル」のハリス・ディキンソン、彼に妻を寝取られてしまう夫ジェイコブ役を、「ペインアンドグローリー」、「アンチャーテッド」のアントニオ・バンテラスが演じる。

 

最高の挑発的と評された本作。

主人公は年下の男との刺激的な賭けひきによって、何を見出してくのか。

 

 

 

 

あらすじ

 

NYでCEOとして、大成功を収めるロミー(ニコール・キッドマン)。

舞台演出家の優しい夫ジェイコブ(アントニオ・バンテラス)と子供たちと、誰もが憧れる暮らしを送っていた。

 

ある時、ロミーは一人のインターンから目が離せなくなる。

彼の名はサミュエル(ハリス・ディキンソン)。

ロミーの中に眠る欲望を見抜き、きわどい挑発を仕掛けてくるのだ。

 

行き過ぎた駆け引きをやめさせるためにサミュエルに会いに行くが、逆に主導権を握られてしまい… (HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

野心と道徳はまるで違う。欲望に従うのは道徳心じゃないってか。

ロミーもサミュエルも行動心理がよくわからん。

久々にハズレのA24映画。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

案外物語は薄い。

女性が目指したい地位にいるロミーが、インターンの身分であるサミュエルに徐々に着飾った鎧を剥がされ、従順な雌犬と化していく権力逆転エロティックゲーム。

 

冒頭からいきなりロミー演じるキッドマンが騎乗位でお出迎えしたかと思ったら、旦那とのエッチに満足いかなくてひとりポルノ動画を見ながら奥歯噛みしめて一人エッチを始めるというトンデモないオープニング。

 

要は自分の奥底に眠るマゾっ気、いや変態願望を隠したまま、旦那にも打ち明けられず悶々と歳を重ねてきたのがロミーってわけ。

しかもイェール大学卒業後に様々な試験を受け、最終試験の難しさに頭が着てファックといったら採用されるという、途轍もなく野心溢れる女性ロミー。

現在はアマゾンのような巨大物流システム=ロボットの自動化を導入して企業として更なる飛躍を遂げようとしている一流企業のCEOでもあると。

 

このように人前では、社長として、主婦として、そして母親として、他者から見られる立場故に着飾っていたけれど、一人の男に全てを見透かされて、彼とのパワーゲームを繰り広げながらついに本性を晒してしまう=敗北を喫するという流れなのであります。

 

そこからはというものの、勝手に理由付けてロミーの家にやってくるという一体どういうつもりで訪れたのか全く理解できないサミュエルの行動によって、ロミーは動揺を隠しきれず困惑するも、彼と「飼い主と犬」の契約を結んで、夜な夜なホテルやオフィスでイチャイチャしまくる光景が幾度となく描かれていく。

 

もちろんそんな情事などすぐさま誰かに覗かれたり勘付かれたりするわけで、他者からの「地位ある女性モデルとしての品格」を指摘され、破滅寸前まで追い込まれていくというお話。

 

ひたすらEDMが流れたと思ったら絶頂を迎えるロミーとサミュエルの情事ではジョージ・マイケルが流れたりと、雰囲気だけは一丁前な映画でしたけど、どうも俺としてはノットフォーミーな映画でしかなかったです。

 

何でこれを見ようと思ったかって、一応ゴールデン・グローブ賞にノミネートするほどニコール・キッドマンの芝居が評判良いってことで見に行ったわけですよ。

見終わって思ったけど、確かに下着脱げとか股開けとか服を脱げとか言われて辱めを受けながらも興奮を隠しきれない演技を、57歳の女優がやる、しかも自身がプロデューサーになって演じるって中々すごいこと。

 

凄すぎて私生活でも性生活に不満があるんじゃないかと疑ってしまうくらいニコール・キッドマンが全力で喘いで感じて絶頂するんですからそりゃすごい。

 

しかも終盤ではそんな自分を旦那の前でさらけ出すことができずにいたことに対する苦悩を涙ながらに白状するシーンはお見事でしたよ。

 

とはいえ映画全体の感想で言えば、一体どうしてサミュエルがロミーの本性を見抜けたのかさっぱりわからないし、あれだけ虚勢を張ってCEOとして然るべき態度でサミュエルに接していたのに、どうして我慢できなかったんでしょうかね。

 

そんなにサミュエルの蔑んだ目に興奮を隠せなかったんですかね。

 

しかしサミュエルもサミュエルですよ、他所の犬を平気で躾けられる、というかコントロールできるってブリーダーでも難しそうなことを瞬時にやってのけてしまう存在って貴重すぎやしねえかと。

終いにはロミーだけでなくロミーの旦那まで落ち着かせるほどの能力ですよ?

 

人心掌握術でも持ち合わせてんじゃないかって思ってしまいましたよ。

なんなら東京のカワサキなんかに就職せずにセラピストでもやった方が将来安泰じゃないって思っちまいましたよ。

 

しかしこの手画の映画を見ると色々女性って役割が多すぎて辛いよなって思えて仕方ありません。

男のてめえが全て押し付けるからこうなってんだよって怒られるかもですけど、女であり妻であり母であり、加えて企業のトップなわけですよ。

一体いくつ顔を持ってなきゃいけないんだって話じゃないですか。

 

一応これ見て浮かんだのが成田悠輔がいつだったか「セックスと愛情と親心をぜんぶ家族の中に収めるのは荷が重すぎませんか」って話なんですよ。

 

結婚して家庭を作っていくうえで、一番大事なのは子供を育てることだと思うんですけど、それ以外に様々な役割を相手に求めてしまうのが上手く行かないことなのではってことだと思うんですね。

彼の場合、それぞれ担当の役割を持つ相手を見つければ問題なく家族でいられるっていう中々の極論をほざいてるんで、簡単には受け入れられない提案で、相変わらずこの人はって思ってたんですね。

 

でも、本作においてロミーは、正にこの案件に当てはまる人なんじゃないかと。

順風満帆だけど一つだけ物足りないことがセックスだと。

それを相手に求めても満足できないでいる、悶々としている、その悶々を解消してくれる存在と出会ってしまった、でも彼は自分の会社に研修生としてやってきている。

倫理がモラルが体裁がと建前という名の鎧によって平静を保っていたけれど、相手は一回りも二回りも上手の能力者で、結局彼の前ではベイビーガールでしかいられない。

 

成田さんの提案通りに従うのであれば、ロミーの旦那がこの関係を認めれば色々ややこしくならないんじゃないのかと。

でも、この提案では彼女は報われないのが本作のめんどくさいところ。

 

それは会社の社長であるってことなんですよね~。

彼女のアシスタントの女性が、終始自分の昇格を相談したい姿を見せるんだけど、ロミーはいつも後回しにしている。

結局アシスタントは、サミュエルとの関係を知っていることを告げ、それをネタに揺さぶるかと思いきや「彼と別れてほしい」とお願いするんですね。

賭け引きとかじゃなく権力者として権力者らしい存在を押し付けていたんですよね。

 

もちろん人の上に立つこと、人よりも目立つ存在であること、そうした誰かに見られている、その場に立たせてもらっているような存在が、女より妻より母親よりも一番重い鎧を着させれらてるんじゃないかって思ったんですよね。

その鎧を着ている以上、本作における上で性癖含めた本性を晒すことや知られるということは社会的抹殺を意味すると。

 

 

そうした要素を含んだ映画なのに、なぜかあんまり面白くないのはどういうことなんだろうと、勢いで書きながら悩んでおりますw

 

単純にロミーとサミュエルの関係に納得がいってないんですよ。

サミュエルはロミーほどの年齢でも性の対象として良く平気でいられるなと。

下手したら親子の差もある年齢ですよ。

しかも相手はもうすぐ還暦を迎える年齢ですよ。

 

恋に歳の差なんてって話じゃないですからねコレ。

体の関係の話ですからね?

 

劇中でサミュエルはロミーに対して、別の恋人がいるからロミーのことを思えるとか言ってたんですよ。

自分にとってその人には別の役割があって、ロミーにはロミーで別の役割がある。だから対等に愛することができるみたいな。

要は成田方式の話ですよね。

 

だったらさ、サミュエルの恋人を登場させた方が良いんじゃないかって思ったわけですよ。

それこそロミーのアシスタントでもいい。ちゃんと彼の恋人を登場させることでロミーの心がいろいろ揺らぐ描写があっても良いのかと。

ロミーには旦那がいてサミュエルには相手がいないって、なんかあの契約においてフェアじゃないというか。

傍から見たらただの不倫ですし、それじゃ面白くないっていうか。

 

あとは、サミュエルには他にもそういう契約で飼い慣らしてる女性がいるとかね。

最後旦那にバレてしまったことが原因で関係を解消してしまったわけで、ロミーは旦那の腕に抱かれながら彼を思い出すという描写で幕を閉じたわけですけど、一方のサミュエルはどうなったんだと。

ぶっちゃけ反省せずにまた別の相手、それこそカワサキの女性重役でもいいや、同じことを繰り返してるって所を見せたら、彼を悪者のように見せらるし、ロミーは結局コントロールされてただけみたいになれたのになぁと。

もちろん洗脳は解けてないみたいな解釈で終わらせる前提ですけど。

 

 

最後に

結局もっと一悶着を入れてほしいという話ですよ、不満としては。

 

サミュエルに対しての抵抗が長い、家族の前に現れても同じことの繰り返しでしかなく、さっさとッ従順な雌犬になって情事を繰り返し、行動がエスカレートすることで色々ややこしいことになって、建前としての役割と本能がロミーの中でせめぎ合っていくみたいな話にすれば面白かったのになあと。

 

サミュエルの言い分とか要らんのですよ。

ただのドSでいてほしかったなぁ。

立場?知らねえよ、四つん這いになれ。

家族の前に現れるな?しらねえよ、ミルク飲め。

同僚とじゃれ合うな?知らねえよ、クッキー食え。

ホテル来いよ、子供?知らねえよ、服脱げ。みたいなw

 

色々と物語の本質を読めてないかもですけど、ちょっと求めていたのと違った話でしたかね。

しかしハリス・ディキンソンのあのSっ気満載の目は最高でしたね。

そしてアントニオ・バンテラスは可哀想でしかない。

でもあなたがちゃんと性生活でも妻を満足にしてたら、こんなことにはならなかったんですよw

難しいですけどねw

 

年上の男性と二回り以上下の女生徒の不倫よりも、こうした熟女と若い男性の物語のほうがウケが良いんですかねえ、今は。

どっちもあって良いと思うんですけどね。ぶっちゃけフィクションだし。

不謹慎だとか不健全だとか、いちいち映画に突っ込むのは野暮ですよね。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「片思い世界」感想ネタバレあり解説 絶対届かない思いなんてない。

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片思い世界

2024年の邦画でマストとなった「ファーストキス1st kiss」。

松たか子松村北斗という年齢差の離れた二人が織りなすSFラブストーリーに、僕を含め多くの方が涙したことでしょう。

 

そんなファーストキスの脚本を手掛けた坂元裕二の作品が早くも公開。

今度はこれまた大ヒットした「花束みたいな恋をした」でタッグを組んだ土井裕泰監督だから期待値は増すばかり。

予告編を見た段階では同じ家に住む3姉妹が一人の男性に想いを寄せるような物語なんだろうと思ったら、どうも3人は一緒に住んでるだけで血は繋がってないようで…。

 

全く展開が読めない!

とにかく観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

「花束みたいな恋をした」「怪物」、そして「ファースト・キス 1st kiss」と昨今TVドラマから映画へと主戦場を変えた脚本家・坂元裕二が、「罪の声」や「花束~」の土井裕泰監督と再びタッグを組んだオリジナル脚本作品。

 

東京の片隅で暮らす固い絆で結ばれた3人の女性を主人公に、楽しく気ままな日常を映しながら、それぞれが抱える「究極の片思い」を何とか伝えようと奮闘する健気な姿を、想像の斜め上を行く展開で描き出す。

 

「花束みたいな恋をした」の大成功を客前で噛みしめた坂元裕二は、もう一度同じ監督で、しかも旬の女優3人を起用して映画を作りたい意欲を持ったと語る。

近い年齢の3人をTVドラマの様なキャラクター作りをせず、一人の中にあってもおかしくない人格が3つあるようなイメージで作り上げていったそう。

 

主演には、「流浪の月」、「キリエのうた」、そして今年は本作のほかに「ゆきてかへらぬ」含む3作の映画が控えている広瀬すず、「青くて痛くて脆い」、そして「市子」での高評価でステップアップした杉咲花、「線は、僕を描く」、「青春18×2」の清原果耶の3人が、同じ屋根の下で暮らす3人を演じる。

他にも、「正体」の横浜流星、「ミッシング」の小野花梨、「雨の中の慾情」の伊島空、「嗤う蟲」の田口トモロヲ、「大きな玉ねぎの下で」の西田尚美などが出演する。

 

一方的に相手を思う「片思い」にはどんな意味があるのか。

「推し文化」や「投げ銭」といった新たな形の「片思い」が溢れる今、彼女たちを通じて我々にどのような無償の愛を与えてくれるのだろうか。

 

 

 

 

あらすじ

 

現代の東京の片隅、古い一軒家で一緒に暮らす美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)。

 

仕事、学校、バイト、それぞれ毎日出かけて行って、帰ったら3人一緒に晩ごはん。

リビングでおしゃべりして、同じ寝室で寝て、朝になったら一緒に歯磨き。

お互いを思い合いながら穏やかに過ごす。

楽しく気ままな3人だけの日々。

 

だけど美咲には、バスで見かけるだけの気になる人がいて、そのことに気付いた2人は・・・。

 

もう12年、家族でも同級生でもないけれど、ある理由によって固い絆で結ばれている3人。

それぞれが抱える、届きそうで届かない<片思い>とは…。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

声は風 風は夢 飛んでけ

元気でね 元気でいてね じゃあね またね

この歌で涙腺決壊

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

実は予想出来ていた展開。

事前に行われた試写会では「ネタバレ厳禁」だったことから、きっとこの映画には何か知られてはいけない、知ってしまったら楽しみを削いでしまう要素がきっとあるんだろう。

そんなことを鑑賞前から感じていたため、坂元裕二のインタビューや主題歌「声は風」の歌詞、そして予告編を何度もリピートしていたんです。

 

冒頭で展開が読めないとか書いてましたが、実は嘘ですw

 

そもそも血の繋がっていない3人が12年も同じ屋根の下で過ごしていること自体、どこかおかしいわけですよ。

12年前って幼いころから一緒に住んでるの?

親御さんは?

どうやって生活できたの?

あんな大きな家で。

 

そんな疑問と、「アニメ作品のように『世界に抗う物語』にしなければ実写作品は立ち向かえない」という坂元裕二のインタビュー、そして「ファーストキス」よりも先に完成させていた脚本などから推測するに、

「彼女たちは生きていないのでは?」という答えにたどり着いたんです。

 

結果、本作を鑑賞すると冒頭から大きな違和感に遭遇することになります。

 

渋谷の明治通りを歩くさくらが、子供が落としたおもちゃを拾わず素通り。

通勤に使うバスに間に合わない美咲とさくらが運転手に「乗ります!」と手を振ってもあかないドア。

 

その後も大学で授業を受ける優花に誰も気づかない周囲の生徒。

オフィスで頼まれたデータの打ち込みを一人黙々とこなす美咲。

仕事を辞めたいスタッフに「ペンギンに心を開けば大丈夫」とアドバイスする男性スタッフ、その横で同じく励ますも2人の反応は無し。

同僚との飲み会で端っこに座って美咲が相槌を打っても、誰も反応しない。

 

こんな「?」な状態がずっと続く冒頭。

 

バスに乗り合わせたアホ毛の青年に視線を送る美咲、それに気づくさくら。

優花と二人で「声をかければいいじゃん」と背中を押すが、美咲は「絶対気づかないんだから無理」とつっぱねる。

 

その青年が女性と出かけたラフマニノフのピアノ演奏コンサートで、静かな状況の中声を荒げて邪魔しようとするさくら。

 

最初に抱いた違和感は徐々に確信へと変わる。

 

やはり3人はこの世にいない存在だった。

 

 

きっと捻くれた心で本作を追うと、一気に邪念が生まれることでしょう。

彼女たちはどうやってバイトに受かったのか、大学に受かったのか、就職できたのか。

スーパーで買った食材はどうやって金を払ったのか。

そうした現実的な疑問が次々と生まれ、やがて本作を「駄作」とか言う輩も出てくることでしょう。

 

別に各々が抱いた感想にケチをつけるつもりはないが、スーパーで買った支払いシーンも端折っていれば、生きている人から見た彼女たちの家がボロボロなのに、彼女たちからすれば家がしっかり整っていることに対する理由、誰かがエレベーターに乗らないと乗れない理由など、ありとあらゆる理由を「敢えて」説明していないことは、そういうことなのだと受け止めないといけない映画だったと思います。

 

そんな重箱の隅をつつくような粗探しをして見てしまっては、本作の本質を見失ってしまうから、やめた方が良いよって話。

 

実際俺もそんな邪念が時折顔を覗かせたけど、割り切ってみていくと、自ずと3人が暮らす「片思い世界」に没入できる気がします。

 

 

彼女たちはとにかく誰とも接することができない。

赤ちゃんを置き去りにしたまま放置してる車を発見しても、誰にも知らせることができない。

目の前に大事な人が現れても気づいてもらえもしない。

 

だから彼女たちは3人肩を寄り添って暮らしているわけです。

 

 

本作はそんな彼女たちが半ば諦めた気持ちを抱きつつも、ずっと思いを寄せていた存在に遭遇することで物語が動き出していきます。

 

それまでは、ホラー映画を見て「なぜあの幽霊はみすぼらしい姿をしているのか?」と、ちゃんと身なりを整え、食事もしている自分たちと比較するユーモアなシーンもあれば、素粒子を学んだ優花の説に倣って、「もしかしたら私たちは元の世界に戻れるかもしれない」という淡い希望を抱いて行動しようとしたりと、坂元裕二ならではの視点や、彼が製作前に念頭に置いていた「世界に抗う物語」へと展開していきます。

 

 

世界に抗うとはどういうことか。

これは「ファーストキス」でもそうだったように、時間の不可逆性に抗って主人公の世界を変えようとするお話で、本作も「死んでいる者が生きている者に想いを伝えようとする」話になっていることから、世界に抗うことをテーマに作られたと思います。

 

確かに私たちは死んだ人の声を聴くことはできない。

触れることもせっすることもできないわけですが、それは死んでいる人にとっても同じ。

彼女たちの場合、なぜか「無」の状態ではなく、私たちと同じように生活をしており、同じ世界にいながら、どこか別世界の場所に追いやられている設定になってます。

 

そうした大きな壁を壊すために彼女たちがどう抗うのかが本作のハイライトになっていると思います。

 

美咲は合唱クラブでピアノ伴奏をしていた典真という青年に。

優花は自分を生んでくれた母親に。

そしてさくらは、自分たちを殺害した犯人に。

 

片思いという言葉が「一方的に好きな人に向けた思い」だけに留まらないよう、様々な感情や思いが分裂したものになっていました。

 

届かない思いを伝えるために

僕自身、幽霊の存在を信じてはいません。

霊感があるわけでもないし、誰かいるかもしれないなんて勘が働くこともない。

 

でも本作を見て感じたのは、「あの時起きたことはもしかしたら、自分を思ってくれている死者によるものだったのかもしれない」ということ。

車に轢かれる寸前だったこととか、家に鍵をかけ忘れて戻ったこととか、そうした危険だったことや思い出したことは、自分が気付けたからなのではなく、守護霊のようにずっと身近で死者が見守っていて、声をかけてくれたからかもしれないと。

 

 

本作では美咲と典真のエピソードが中心となっています。

冒頭、音楽劇を創作していた美咲は完成した本を典真に見せようとしますが、彼の姿はなく、外まで探しても姿はありませんでした。

生徒たちが集まって合唱の練習をする前に、集合写真を撮ろうということになりましたが、そこで不審者が現れ、美咲、優花、さくらは殺されてしまったのです。

 

なぜ典真は姿を消してしまったのか。

それはお腹がすいたためにコンビニへ行き、肉まんを買っていたからです。

 

典真は自分のいない間に起きた悲劇に、罪悪感を抱え、それまで続けていたピアノを辞め、細々と暮らしていたのです。

そんな彼をバスの中で見つけた美咲は、彼がピアノを辞めてしまったこと、ピアノを続けてほしいこと、自分のせいだと思い込まないでほしいことを伝えようと努めます。

 

やがて典真は合唱コンクールのピアノ演奏を依頼され頑なに拒んでいましたが、あのリハーサル室を訪れた時に、美咲が書いていた音楽劇のノートを読んで、彼女に背中を押してもらうことになります。

 

もう二度と同じ世界で暮らすことはできないけれど、ちゃんとわたしはここにいるし、あなたを見守っている。

互いが抱いていた一方通行の思いが、このシーンで交差することにより、12年間心の中にしまっていた言葉が要約と毒というドラマチックな場面でした。

 

 

刑期を終えて出所し、真面目に働くも全く人の心が理解できず再び犯行を行おうとする犯人に憎しみをぶつけるさくらのまた、相手に対して一方的な思いを持っているという点で「片思い」ですし、亡くなった娘への思いを引きずりながらも前を向いて再婚し、新たに娘を設けた優花の母親も、優花への思いは決して失っていないことを示唆したシーンもあり、それぞれがこうしてずっと抱いていた思いを言葉にして相手に伝えた瞬間が多々あった作品でもありました。

 

 

また本作の面白い所は、もしかしたら元の世界に戻れるかもしれないという可能性を秘めた部分。

3人が常に聞いていたラジオは、いつも外れてばかりの天気予報でした。

 

しかしまだ発見されていない素粒子を見つけることができる装置によって、自分たちを見つけてもらえれば、誰かに気付いてもらえるかもしれないという思いつきから、物語は意外な展開へと向かっていきます。

 

その装置がある研究所には、かつて無断で侵入した男性がいたそうで、その男性こそがラジオの声の主だったのであります。

彼曰く、自分は一度死んで元の世界に戻ってこれたと語っており、元の世界に戻るには思っていた人に想いを伝えることだとラジオからまだ見ぬ死者へ向けて話していたのです。

 

それを聴いた3人は、元の世界に戻るためにあれこれ行動しますが、結果うまくはいきませんでした。

因みにラジオの声の主は、聴けばすぐわかると思いますが松田龍平が担当していましたね。

果たしてあの声の主は、本当に死んで蘇ったのでしょうか。

それともただのデマだったのでしょうか。

 

でもなぜか3人にはその声が届いたという点においては、まだ見ぬ死者への「片思い」が届いたと言い切ってもいいのかもしれません。

しかし真相は藪の中・・・。

 

「声は風」が素晴らしすぎる。

本作のクライマックスでは、美咲と優花とさくらが、当時の合唱団の衣装を着て、合唱コンクールで子供たちと一緒に歌を歌うシーンとなっています。

 

観賞前からこの主題歌「声は風」を聴いていたんですが、JPOP調の美メロと合唱団のハーモニーになっていて、しかも歌詞が正に「片思い」がテーマになっていることや、明らかに自分の姿が見えていない相手に対しての思いを、優しい言葉で集めた歌詞になっていて、聴くたびにウルウルしていました。

 

でも本作では、それまでずっと堪えていた涙が溢れるほど感動してしまいました。

結局元の世界には戻れない、この世界で生きていくしかないといった諦めよりも、ずっとため込んでいた思いを伝えられたという達成感に満ちた表情で、典真の伴奏と共に子供たちと歌うんですね。

 

3人が片思いしている人にどんな気持ちでいたのかを総括した様な歌詞になっていることを事前に理解していたこともあって、より3人の気持ちに感情移入できたんです。

 

さらに映画は、彼女たちが殺害されてからどういう経緯であの家にたどり着いたのかをフラッシュっバックして見せるんです。

ボロボロの衣装を着ながら土手の下で少ないパンを二人に分け与える美咲の姿、3人でどうすればいいかわからないまま彷徨い、ようやく見つけた家に喜ぶ3人、太い柱で身長を計る3人。

 

もし2人だったら、もし1人だったら、きっと辿りつけなかったかもしれない。

それこそホラー映画の幽霊のように食べるものもなく、ただただ浮浪してただけかもしれない。

3人が寄り添って暮らせたから、今があるのだという回想と、歌のメッセージが重なって、僕は涙腺決壊しました。

 

映画を見て泣く事ってしょっちゅうあるんですけど、本作に限ってはずっと抑えてたのもあって、蛇口がバカになってエンドロール流れても泣いてましたねww

なんでここまで泣いてしまうんだろうと、自分でも不思議に思ってますw

 

 

最後に

広瀬すず、杉咲花、そして清原果耶という20代の女優を代表する3人が、どこか少女の様な振る舞いで仲睦まじく生活をする姿が、非常に微笑ましいのも本作の見どころのひとつ。

 

長女的な存在の美咲が「死んだら何やってもいいっしょ」というスタンスの2人に、生きている人と同じように生活しないとダメ、という躾けがちゃんと生かされた暮らしぶりになってました。

逆に2人よりも大人でなきゃいけないと思い込んでる美咲を、冒険しちゃいなよ!と後押しする2人もかわいらしい。

 

サプライズ誕生日がうまくできないことにツンツンなさくらが、一人先に部屋に籠って隠れてサプライズするのもものすごく微笑ましかったですよね。

 

3人の役柄がそれまでの「片思い」からある種の卒業をしたように、10代から活躍してきた女優3人が、本作を持ってようやく「少女」を卒業した様な立ち位置の映画でもあるんじゃないかとも思いました。

 

本作を見たら、ぜひ感じてほしいですね。

それが生きている人でも向こう側の人でも、自分を思ってくれている人を。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

映画「HERE 時を越えて」感想ネタバレあり解説 時代のコラージュが多すぎてついていけない。

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HERE 時を越えて

ロン・ハワードデヴィッド・フィンチャー、そしてロバート・ゼメキス

みんな大作を作ってきた大物映画監督です。

 

ですが彼らの作った劇場映画に、全く客が入らない。

どうしたことか。

フィンチャーはNetflixに逃げちゃうし、ロン・ハワードも新作は配信だったりする。

そしてあのゼメキスも劇場公開されたとしても客が来ないという。

 

悲しいですね、かつては「監督〇〇」だけで客が呼べたのに。

今じゃスピルバーグでもイーストウッドでもスコセッシでも呼べない、ヒットしない。

ギリギリ客が呼べる監督ってノーランとタランティーノだけじゃないか?

 

今回鑑賞する映画は、ロバート・ゼメキス監督による久々の劇場公開作。

あの「フォレスト・ガンプ」の主演俳優と女優が揃ったことも話題ということで、早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

20か国以上で翻訳され、最も素晴らしいグラフィック・ノベルの一つと絶賛されて2016年にアングレーム国際漫画フェスティバル最優秀作品賞を受賞した、リチャード・マグワイアの同名作品を、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ、「キャスト・アウェイ」のロバート・ゼメキス監督の手によって映像化。

かつて手掛けた名作「フォレスト・ガンプ」の脚本とキャストが30年の時を経て再集結し、壮大な時間旅行をひとつの舞台でのみ描くという、未体験の物語を作り上げた。

 

地球上のある地点に置かれた定点カメラを視点に、恐竜が生息した太古の時代から現代に至るまで、その場所で暮らした幾世代もの家族の姿を、監督の代名詞ともいえるVFX技術によって映し出すことに成功した、記憶と希望の物語。

 

数百年前に泊った家を眺めたことが本作のきっかけとなったと語るゼメキス監督。

これまで過去や未来をタイムトラベルしたバック・トゥ・ザ・フューチャーや、一人の男の人生を走馬灯のように駆け巡ったフォレスト・ガンプなど、映画で「時間」を操作することで物語をドラマティックに描いてきた。

一つの場所での「歴史」を描く本作は、彼にとってある種の集大成的な意味合いを持つ映画なのかもしれない。

 

そんな作品に出演するのは、ゼメキス監督作品にはかかせないトム・ハンクス、そしてそんなハンクスと「フォレスト・ガンプ」以来の競演となったロビン・ライト

二人は、若年から老齢まで演じる難役をこなした。

他にも、「アベンジャーズ」シリーズのポール・ベタニー、「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」のケリー・ライリー、TVシリーズ「ダウントン・アビー」「ジェントルメン」のミシェル・ドッカリーが出演する。

 

VFXと本作のために開発されたレンズで見せる革新的な映像。

そこに宿るのは、様々な時代の人たちが「ここ」で過ごした証と、歴史の重み。

きっと誰もが、自分が暮らした部屋を思い出し、次の世代を思うだろう。

 

 

 

 

あらすじ

 

時は流れ、緑が芽吹き、オークの木が育ち、ハチドリが羽ばたき、先住民族の男女が出会う。

さらに時を越えて、オークの木が伐採され、土地がならされ、1907年に一軒の家が建つ。

 

そう、この物語の舞台となるのが、この家のリビングだ。

 

最初にこの家を買ったのは、ジョンとポーリーンの夫婦。

やがて女の子が生まれるが、予期せぬ運命に見舞われ引っ越してゆく。

 

次にレオとステラというアーティスティックなカップルが入居し、個性的なインテリアで部屋を生まれ変わらせる。

約20年間、仲良く暮らした2人は、ある“発明”に成功し、新たな世界を求めて旅立ってゆく。

 

そして第2次世界大戦が終結を迎えようとしていた1945年、この物語の主人公となる男の両親が登場する。

戦地から負傷して帰還したアル(ポール・ベタニー)と妻のローズ(ケリー・ライリー)だ。

ローズから妊娠したと知らされたアルは、予算を上回っていたが、思い切って家を購入する。

やがて長男のリチャードが生まれ、続いて長女のエリザベス、次男のジミーが誕生する。

 

高校生になったリチャード(トム・ハンクス)は、絵描きになることを夢見ていた。

そんな中、別の高校に通うマーガレット(ロビン・ライト)と出会い、2人は恋におちる。

マーガレットは、高校卒業後は大学に進学し、弁護士になることを目指していた。

だが、マーガレットの妊娠が発覚し、リチャードと10代で結婚することになる。

 

感謝祭、クリスマス、家族のバースデイ──楽しい時が過ぎてゆく。

 

ヴァネッサの反抗期、夫婦げんか、家族の病気──悲しい時も過ぎてゆく。

 

そして、マーガレットが50歳を迎えたその日、
2人の人生は思いもかけない時へと迷い込んでゆく──。(HPより抜粋)

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感想

「ここ」に歴史とドラマあり。

ジュラ紀からコロナ禍までを行き来しながら、とある家族にスポットを当てた異色の「定点カメラ」映画。

はっきり言ってカメラが動かないと飽きるので実験失敗だと思う。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

「ここ」でしか見れないドラマ。

恐竜が暴れ員石器の落下と共に氷河期を迎え、雪解けを迎えたと共に緑が生い茂り、同部鬱を狩る種族が現れ、やがて新たな民族が開拓をしていく。

アメリカという土地ならではのフロンティアな歴史を垣間見せながら、作品の多くは、云十年前に建った家に住む人たちを描く。

 

全体的な内容を語ると、定点カメラで映し出された風景の中に、いくつもの小窓が現れ、そこから別の時代へとタイムスリップしながら、その時代のドラマをコラージュしていく作り。

そのほかにも、キャラクターを自由に動かして奥行きを出したり、人を増やして余白を埋めたり、その都度起きる出来事を数分で語っていくといった、定点カメラ故の弱点を克服するような配慮と、飽きさせない工夫が詰まった作品でした。

 

そこで描かれるのは、生命の誕生や他人と結ばれ家族を築くことで起きる複雑な事情、家族が増え、成長していく度に起きる摩擦、それらを乗り越えて振り返る家族の末路など、生と死という喜びと悲しみを繰り返しながら強固になっていく家族の絆を、希望を込めて描いた物語だったように思えます。

 

 

とある家族は、リクライニングチェアを開発しながら優雅な暮らしをし、またとある家族は飛行士を夢見て家を担保に飛行機を購入、危険な趣味に妻は脅えるも、夫はそれが原因で死ぬのではなく、インフルエンザで命を落とすという笑ってはいけないのに笑ってしまうようなエピソードが、スピーディーに流れていく。

 

また黒人家族は息子に警察官に職務質問された時の対処を教え、コロナウィルスによって命を落としてしまうという、つい最近の出来事を盛り込んだエピソードも垣間見える。

 

 

そしてメインとなるリチャード一家とその両親のエピソード。

退役軍人である父アルと、妻ローズは、妊娠を機に今の家を購入し、仲睦まじい姿を見せていく。

耳が悪いせいか少々怒鳴り気味のアルだが家族には優しく、ローズもそんな夫に支えられながら子育てに奮闘していく。

 

物心ついたときから絵を描くことに没頭していたリチャードは、思春期真っただ中にマーガレットという彼女ができ、家族に紹介しながら仲を深めていく。

弁護士になりたい夢を持つマーガレットだったが、若くして妊娠が発覚。

画家を夢見ていたリチャードと共に夢を諦め、家族を養うために保険の営業として働くことになっていく。

 

国は違えどよくあるホームドラマとして親近感がわく内容だった本作。

やはりどこの過程も子育てに奮闘するし、仕事に追われたりリストラされそうになったりしながら、すくすく育つ子供の成長に喜ぶ姿が印象的。

 

そう、本作を見ながら思い出すのは自分が押さなかった時の家族の風景だ。

もちろん子供が悪さをすれば親は怒るし、何かサプライズを仕掛けようものならば、親はそれにちゃんと乗っかる。

笑顔の絶えない景色が、どの家族にもあったことを思い出させてくれる。

 

やがて子供が大きくなるにつれて、夫婦の問題も増えてくる。

特にマーガレットに関しては「引っ越したい」という思いが強く、幾度もリチャードに相談を持ち掛けるが、リチャードは二言目には金の話ばかり。

税金がどうだ、貯金がもう少しでたまりそうだと巧くスルーしてばかり。

 

その間義母ローズが脳卒中で倒れ、介護もしなくてはならず、さらに義父アル病魔に襲われていく。

 

結果的に、弁護士の夢を掴むことができなかったことから積み重なった苛立ちがマーガレットを襲い、別居生活する羽目になっていく。

 

笑顔の絶えない家族の風景が続いた前半とは違い、後半はそうした年齢による現実的な問題が降りかかり、一筋縄ではないかない事態へと展開していく。

 

2世帯生活できるほどの広い一軒家にも拘らず、一つの家族として暮らしたいというマーガレットの思いは、個人的には非常に理解ができるし、逆に親の面倒を一緒に見ることができるという点ではリチャードの気持ちも理解できる。

 

こうした家族内の問題に、たくさんの世帯が壁にぶつかり妥協しながら乗り越えてきたことを考えると、本作は見る人によっては思い出したくないことまで思い出す羽目になるかもしれない。

 

しかしクライマックスでは、そうした苦難を乗り越えてきたリチャードとマーガレットが、「ここ」で起きたすべての事に感謝を述べる姿で幕を閉じる。

様々な選択を余儀なくされながら、たどり着いた場所。

別の景色があったかもしれないが、今こうして二人肩を並べて座って笑みをこぼせるのは、そうした様々な出来事があったからだと振り返る。

 

自分はリチャードのような人生を歩んでないし、まだ両親も健在だ。

しかし今後どんな奇跡や問題が起きるか見当もつかない。

両親がいなくなった時に実家をどうするのかも考えていない。

それらをすべて乗り越えたとき、自分はリチャードとマーガレットのように喜びながら振り返ることができるのだろうか。

 

それはまだ先の話・・・。

 

しかし面白みに欠けるな…。

なんかコラムみてえな書き方をしてしまいましたが、個人的には今回のゼメキスの実験は成功とは言い難いなぁと受け止めました。

 

原作からの意図や創意工夫など、なぜこのような作品にしたのかはある程度理解はできますが、それが果たして面白く機能していたのかと言われると、素直に頷けない部分は多かったです。

 

そもそも恐竜の時代とか必要だったのでしょうか。

先住民が子を授かり、子供が成長して親が死んでいく、その時にしていた首飾りが時代を経て発掘される、そんな繋がりを見せていくので、先住民時代は必要だったと受け止めました。

しかしウィリアム・フランクリンがかつて住んでいた家のエピソードはそこまで必要だったんでしょうか。

設定ではリチャード邸ではなく、窓の奥に映る家が彼の家ということで、歴史的建造物として話題にあがりはするモノの、本筋にそこまで絡む内容とは思えず。

アメリカが建国するうえで重要な部分なんでしょうが、だったら彼のエピソードが時代を超えて絡むような内容にしないと、必要性に乏しいのかなと。

 

 

また、アル夫妻とリチャードの夫妻のエピソード以外にも、その家に住んだ家族のエピソードが盛り込まれていくわけですが、これが物語をややこしくさせているのも事実。

 

上でも書いたように、画面上にいくつもの小窓が現れ、別の時代へスライドする役目になっていくんですが、いつの時代のエピソードなのか思い出すのに一苦労する。

キャラクターもかなり登場するし子供が成長するので、今度のエピソード?となり、物語を追うのが非常に大変。

 

10秒後に何とか思い出せるものの、その前に何が起きたっけ?と記憶を辿らないといけない仕組みになってる点で、100分という比較的短い尺にも拘らず結構疲れる。

 

確かにアメリカは日本と違って中古住宅を幾度も引っ越して暮らすのが主流だし、購入したら家ごと引っ越すようなお国柄。

だから本作は「ここ」に拘ることで、その家にたくさんの歴史があることを解らせるんだけど、わざわざ時系列をバラバラにして、さらに時代を行き来させながら物語を組み立てた意味って何だったんだろうと。

ただただ複雑な仕組みにしてるだけとしか思えなかったんです。

 

誰かが死んだタイミングで別の時代の誰かが死ぬ、それとは逆に誰かが生まれた際に重ねたエピソードにしていくのは理解できるけど、そこ以外のエピソードに関してはさっぱり。

特にリクライニングチェアを発明した夫婦のエピソードは、一体何だったんだろうと。

彼らがあの家から去った理由って描かれてましたっけ?

もう色々思い出せないくらい情報量が多い映画でしたね・・・。

 

 

そもそも本作はエピソードを詰めに詰めた上に、100分に収めてる事もあって、物語が休むことなく続くのがきつい。

数分も描かないシーンの連続に、余韻もなければ余白もない。

しかもカメラが定点のため、画に動きがなかなかないのも飽きが来る。

 

人を動かすことで事なきを得てるようで、そこまで動くというわけでもない。

ソファが変わったり、クリスマスツリーがあったりなかったり、ハロウィンや感謝祭で家族が集う温かさもあったけど、何故そんな手前にテーブルを置くのか。

またアルが寝たきりになった際も、なぜかリビングでソファを使って寝ている。

自分の部屋は?

とにかく定点カメラの前でなければならないために、半ば無理矢理その場で出来事を起こさないといけない作りになっているのも、正直不自然と感じました。

 

どこかで誰もいない風景を挟むくらいの小休憩は考えなかったんだろうか。

それくらい忙しい映画でした。

 

 

最後に

VFXでデジタルメイクを施したトム・ハンクスとロビン・ライトの若かりし顔は、なんとか見れたけど、声をどうにかできなかったモノか。

どれだけピチピチの肌で「父さん、僕のガールフレンドだ」ってトム・ハンクスが登場しても、声はめっちゃダミ声なんですよ。

 

なんだったら貫禄さえ感じる。

 

その点ポール・ベタニ―は声がこもってないし、若かりしときから怒鳴ってるのもあって違和感はないんだけど、どうしても主演二人の声の老けっぷりは大いに目立ってましたね。

この辺もデジタル処理するべきだったのでは?

 

太古の時代から描かずに、アル夫妻とリチャード夫妻の2世帯住居生活のみを、時系列順に見せていく手法の方が上手くいったように思えました。

結局知りたいのはその家族の物語だけでしたから。

 

ただゼメキスの映画を劇場で見れたというのは非常に感慨深く、彼らしい実験を堪能できたのも良かった。

今回は個人的に満足いくものではなかったけど、彼の新作を再び映画館で見たいモノです。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「アンジェントルメン」感想ネタバレあり解説 ブラッカイマーだもん楽しいに決まってる。

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アンジェントルメン

みんな大好き「007」が、プロデューサーであるバーバラ・ブロッコリの手を離れ、AmazonMGMが製作に関するすべての権利を獲得したという報道がありました。

これにより007は今後、新たなボンド役の選定から新シリーズの製作、さらにTVシリーズやスピンオフなどの製作にも力を入れるそうです。

 

また一つ映画が死んだ印象を受けました。

 

果たしてお父さんのアルバート・R・ブロッコリや原作者のイアン・フレミングはどんな気持ちでいるんでしょうか。

 

なぜ急に007の話をしてるかって?

今回鑑賞する映画は、007の生みの親イアン・フレミングがウィンストン・チャーチルと設立した秘密諜報機関の実話が元になっているというスパイアクション映画だからなんです。

007の元ネタでもあるし、イアン・フレミングがキャラクターとして登場するっていうから楽しみ。

 

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ジェントルメン」、「オペレーション・フォーチュン」そして「コヴェナント/約束の救出」と、近年精力的に製作し続けるガイ・リッチー監督が、「トップガン:マーヴェリック」、「バッドボーイズ/RIDE OR DIE」を製作したジェリー・ブラッカイマー製作指揮のもと作り出した、近代最初の極秘ミッションを描いたスパイアクション映画。

 

第二次世界大戦中の英国を舞台に、特殊機密機関からの命により、「非公式」で任務を受けた少佐ら型破りな精鋭部隊の勇姿を、豪快且つ痛快に暴れまわるアクションをふんだんに盛り込みながら、実在した作戦をエンタメチックに描く。

 

後の英国諜報機関「MI6」となる「特殊作戦執行部(SOE)」を描くにあたり、監督のガイ・リッチーは、のちに世界各国で機関が設けられたほどの奇跡の作戦を知り、ぜひ映画にしたいと思ったそう。

また実在した人物を映画のキャラクターにするために、歴史調査をしながら人物の根本的な性格を探り落とし込んでいったとのこと。

 

そんな魅力あふれるキャラを演じるキャストとして、「ジャスティスリーグ」のヘンリー・カヴィル、「ベイビー・ドライバー」のエイザ・ゴンザレス、「ワイルド・スピード/ファイヤー・ブースト」のアラン・リッチソン、「TIME/タイム」のアレックス・ペティファー、「デューン 砂の惑星PART2」のバブス・オルサンモクン、「クレイジー・リッチ!」のヘンリー・ゴールディング、そして「イングロリアス・バスターズ」のティル・シュヴァイガーなどが出演する。

 

超娯楽大作を製作し続けるジェリー・ブラッカイマーと、無骨で荒々しく男くさい野郎を描くガイ・リッチー、ありそうでなかったタッグがついに実現する。

 

 

 

あらすじ

 

第二次世界大戦中、独ナチス軍の猛攻により英国は窮地に追いこまれていた。

ガス少佐(ヘンリー・カヴィル)は特殊作戦執行部に召喚され、ガビンズ‘M’少将(ケイリー・エルウィズ)とその部下イアン・フレミング(フレディ・フォックス)から任務を言い渡される。


「英国軍にもナチスにも見つからず、北大西洋上のUボートを無力化せよ――」

 

“イカれた”メンバーを集め漁師を装い船で現地へと向かうガス。

潜入工作員のマージョリー(エイザ・ゴンザレス)、RH(バブス・オルサンモクン)らとともに作戦決行に向け準備を進めるが、予想だにしない展開により事態は暗礁へと乗り上げてしまい……。(HPより抜粋)

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キャラクター紹介

  • ガス(ガス・マーチ=フィリップス)(ヘンリー・カヴィル)…007ジェームズ・ボンドのモデルとなった実在の人物。大胆不敵で型破りで手癖が悪い。「上の命令を聞かない」ことから作戦のリーダーとして任命された。
  • マージョリー(マージョリー・スチュワート)(エイザ・ゴンザレス)…女優、歌手であり凄腕スパイ。射撃の腕前も超一流。母方がドイツ系ユダヤ人。実在の人物がモデル。
  • ラッセン(アンダース・ラッセン)(アラン・リッチソン)…別名“デンマークの怪力男”。ボウイナイフと弓矢の名手。兄をナチスに殺された。実在の人物がモデル。
  • アップル(ジェフリー・アップルヤード)(アレックス・ペティファー)…チームの“頭脳”で計画の達人。チェスのグランドマスターで外科医。実在の人物がモデル。
  • ヘイジー(ヘンリー・ヘイズ)(ヒーロー・ファインズ・ティフィン)…一流航海士、賢く物静かで策略家。兄がUボートの魚雷に殺されナチスを心底憎む。実在の人物がモデル。
  • RH(リカルド・ヘロン)(バブス・オルサンモクン)…隠密行動と秘密通信に長けた諜報員。ナチスの高官相手に裏ビジネスを営む。
  • フレディ(フレディ・アルバレス)(ヘンリー・ゴールディング)…潜水工作員で爆破のスペシャリスト。放火で逮捕歴があり趣味は破壊活動。

 

  • ルアー大佐(ティル・シュヴァイガー)…作戦決行の場であるフェルナンド・ポー島の指揮官。RH曰く「ナチスより邪悪な存在」。
  • ガビンズ准将‘M’(ケイリー・エルウィズ)…特殊作戦執行部(SOE)の指揮官。実在の人物がモデルで、007シリーズのMのキャラクターにインスピレーションを与えた人物。
  • イアン・フレミング(フレディ・フォックス)…Mの部下で元海軍情報部部長の代理。SOEと特殊部隊の連絡係を務める。のちに小説007シリーズを執筆する実在の人物がモデル。
  • チャーチル首相(ロリー・キニア)…英国首相。ナチスの猛攻に対抗すべく、秘密裏に「オペレーション・ポストマスター」を指示する。実在の人物がモデル。

(HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

昔のガイリッチーに戻ってくれたら最高なんですが、果たして。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

イングロリアス・バスターズをストレスなく見られるスパイアクション。

007の元になったモデルは紳士なんかじゃなくならず者でしたw

しかし都合よく進んでいくのに壮観だから文句言えませんw

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

何と都合のいい。

第二次世界大戦下のイギリスはナチスから総攻撃を受けているため、向こうの条件を飲んで譲歩するしかない。

しかし!チャーチルだけは違った!

アイツの本を読んだけど、あんな洗脳めいた本読んだら向こうの思うつぼだ!

決して屈してはならん!ネバーネバーネバーサレンダーなのだ!!

 

アメリカからの援護を待つイギリス軍だったが、国の周りをナチスのUボート船が囲っているため、アメリカもうかつに近づけない。

だったらUボートを給油する船を襲ってしまえば、アメリカも近づけるぜ!?

 

でもそんな任務を誰に頼む?

あ、一人いましたよ、全く命令効かなくてムショにぶち込まれてる男が。

 

そんな「非公式な任務」に抜擢されたガス・マーチ=フィリップスことガスは、自分の配下に置きたい仲間をリクルート、さらにナチスに捕らえられた仲間を救出しながら現地へ向かうミッションに挑む。

 

一方、現地の島に金のディーラーとして潜入しているRHとマージョリーは、ヒトラーよりもおっかないとされているルアー大佐を騙しながら、現地の情報収集に挑む。

 

こうしてイギリス絶体絶命の中、非公式な奴らによる非公式なミッションが幕を開ける!というもの。

 

 

ガス一行の行動とRH&マージョリーの視点を主に見せていく過激なミッション。

冒頭から軽快にナチスの軍人を一網打尽にしていくツカミのアクションで幕を開きながら、スムーズにキャラの説明をし、キャラの特徴を生かしたアクションを挿入していくという、アクション娯楽大作のお手本のような導入に、俺ちゃん大興奮。

 

誰もがナチスを心底憎んでおきながらも感情を表に出さずに目の前を敵を瞬殺していくその姿は、正に諜報員。

特にアラン・リッチソン演じるラッセンが最高なんです。

 

冒頭では慣れない英語を話すマッチョな船乗りを装ってましたが、突如戦闘開始の合図とともに、持っていたナイフで敵を思いっきりサクサク刺しまくるではないですか!!

剛腕から繰り出される一刺しはどう考えても避ける術はなく、相手もただ刺されるしかないくらいヘナチョコ伏兵になってましたねw

 

だけど彼の凄さはこれだけじゃない。

皆が拳銃やマシンガン、ライフルといった銃器で応戦する中、なぜか彼だけ弓矢!!

チームの頭脳とも言えるアップルを救出するために乗り込んだアジトでは、隠密行動など一切せず、弓矢でガンガン兵隊の急所を百発百中で射止める能力を持っている。

しかも、その威力は相手の体を貫通し、後にいる兵士まで届くという力技。

 

こんなの敵にしたら絶対勝てないだろう!!

それほど圧倒した力で敵を粉砕していきます。

 

まだあります!

アップルを救出した際、まだ息のあった敵に「とどめだ」と笑みを浮かべながら心臓をくり抜くというヤバさ!

ガスよ、こんな奴一体どこで見つけてきたんだ!!!

 

他にも爆弾の名手や船の操縦ピカイチの男なども加わってるんだから、チームとして向かうところ敵なしなんです。

 

 

一方先に島に潜入したRHとマージョリー。

アフリカを走る列車の中でUボートに積む予定のリストを奪うべく、敵兵に近づくマージョリー。

 

最初は「なんでドイツの飯ってソーセージとキャベツとライ麦パンしかないの~?あたしスペインとかフランス料理とかの方が好きなんだけどぉ~」とわがままを言うマージョリー。

そりゃナチス占領下の列車なんだから仕方がない。

でもこのミッションを成功させなければ、ずっとこの飯を食わなきゃならなくなる・・・

でも、イギリスはフィッシュ&チップスしかないけどね、なんて小粋なジョークを挟みながら実行開始。

 

酒に酔ってるせいでウザ絡みしてくる相手を巧くかわすマージョリーでしたが、奥に座っている上官に足止めを喰らってしまいます。

紳士たる者女性に荷物を持たせるなんて言語道断!

でもその荷物の中身は、さっき盗んだリストが入ってるのよね~・・・と半ば緊張の表情を浮かべるマージョリーでしたが、すかさずRHが「では私が荷物を」と見事なコンビプレー。

 

すかさず逃げ込んだ奥の部屋で、急いで上司のM宛てにモールス信号を送ります。

 

サクッと報告を終え食堂車の席に戻る2人の前には、先ほど仕方なく頼んだソーセージとキャベツとライ麦パンが!

 

やはり英国製のスパイアクションは、こうしたスマートなミッションがたまりません。

 

 

このように、一応それなりの難ありな状況が舞い込んでくるけど、基本的にはそこまでの危機にはならず、難なくミッションコンプリートしちゃうですね。

正直物足りなさもあるかもしれないけど、ストレスフリーで見れちゃうのが楽しめる要因でもあります。

僕が考えた最強のスパイアクションとでもいうべき、ガイ・リッチーの野郎臭むんむんな匂いと、野郎だから醸し出せるチームワークと渋さ、そこに男だから考え付くセクシー&ビューティホ~な女スパイが紅一点として華を添えてるのが最高です。

 

中盤からは打ち上げ花火連発。

一応本作のヴィラン的存在であるルアー大佐は、ずる賢さと度胸でその場を乗り切るマージョリーで冴えも脅える存在。

自身がユダヤ人であるが故に、正体がバレてはいけない。

そんなドキドキの状態で疑ってばかりのルアー大佐を、ギリギリのところで交わすマージョリーとの心理戦は見事です。

 

しかし予定していた船が3日早く出港する情報を手に入れたRHは、急いで現地へ向かうガスに連絡。

ガスらは、陸地近郊に待機しているUボートに見つからないよう現地に向かわなければならないが、逆に警戒し過ぎて沖ばかり進むと、今度はUボートを監視しているイギリス艦にバレてしまう。

 

結局イギリス海軍の巡視艦に見つかってしまった一行は、敢えて素性を明かすことに。

するとUボートがイギリス艦をキャッチしたことで、戦闘モードに。

そのどさくさに紛れて二つの国を煙に巻くという大胆な行動に成功します。

 

 

RHが現地で一儲けしている元クリケットの代表メンバーだったリーダーを仲間にいれ、ナチス兵200人VS20人足らずのならず者が、終盤火花を散らしていくのであります。

 

イタリアから借りている船を爆破して沈める作戦でしたが、かなり重くしているという情報を掴んだマージョリーは、RHを介して作戦中止を促すことに。

しかし、アップルの『だったら船を盗んじゃおうぜ」という機転の利いた作戦変更により、ガス一行は敵にバレたら総力戦になりかねない大バクチに打って出ます。

 

給油タンクを爆破して、イタリア船の怒りを爆破。

これが夜ではあるモノの、大きな大きな打ち上げ花火となっていて、ガスも思わず「壮観だ」とこぼすほど美しい炎が拝めます。

 

結局ナチス兵が陸地からバカスカ銃を撃ちまくるので銃撃戦へと発展していくのですが、やはりアクション映画はこうでなきゃといわんばかりのシーンに。

船員と戦うシーンでも、狭い船内で暴れまわるアップルやラッセン無双状態が痺れます。

 

ガスもガスで、妙な高笑いをしながら敵を一撃で仕留めるから怖い。

なぜかお気に入りのナチス高官のコートを羽織って敵を撃ちまくる姿もまた、壮観であります。

 

 

最後に

悪役となったティル・シュヴァイガーのコワモテっぷりをもっと出してほしかったし、このままでは危機一髪!な場面もことごとくスカすガイ・リッチーの演出が都合よすぎる部分も多々ありますが、何度も言うようにストレスフリーでサクッと見れちゃうのが本作の良さ。

 

全てが全てそういう映画だと嫌になっちゃうけど、たまにはこういう強すぎてあっという間に終っちゃうアクション映画も見ていいもんです。

 

キャラのほとんどに見せ場があるのも個人的にはグッド。

爆弾を仕掛けたのが見つかってしまい、一触即発な状態の中、袖からするっと小銃で応戦するも、最後の一発が詰まってしまってあたふたしながらなんとかとどめを刺すRHも良かったですし、ルアー大佐と共にクレオパトラ妃の衣装で魅了したかと思えば、ユダヤ人であることがバレてしまってさぁ大変だったマージョリーも、女狐と呼ばれるだけあって用意周到に銃を出してルアー大佐を一発で仕留める姿もエロカッコイイ!

 

マカロニウエスタンめいたBGMとビッグバンドジャズのリズムで彩ったこともあって、全体的にカッコイイ映画になってたのも楽しかったですね。

 

007がよりスタジオ主導になった今、どんどん007を意識したスパイアクションが出ても大歓迎。

だってもうかつての007は作られないかもしれないんだもん。

さらに言えば、現在ボンド役は20代を探してるという情報もあり、ますますヘンリー・カヴィルにボンド役が回ってこないことを考えると、本作でスパイを演じたことってすごく貴重かもしれない。

コードネームU.N.C.L.E.の続編も製作してほしいけど、アーミー・ハマーが干されてるから無理だろうし…。

 

とにかく見たいスパイアクションが詰まった娯楽大作でした!

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

映画「アマチュア」感想ネタバレあり解説 ちゃんと素人感出てたよラミ・マレック。

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アマチュア

我々がよく知るスパイ映画「007」や「ミッション・インポッシブル」のキャラクターは、どんな危険も顧みず作戦を成功させる、いわば「プロ」。

 

その流儀を肌で感じながら、普通の人間では到底無茶であろう戦闘や格闘をしてくれるから「非日常体験」を味わえるというもの。

おまけにカッコいいからたまらない。

 

しかし今回鑑賞する映画は、スパイアクション映画だけどプロじゃない。

戦闘の訓練も受けてなければ実践すらもしていない。

唯一の能力は「頭脳」ときたもんだ。

 

かつて分析官が現場に出て諜報活動をする「エージェント・ライアン」なんてのがありましたが、あっちは不慣れとはいえそこそこ腕が立っていたので、今回はそれ以上に「素人」なんでしょう。

こんな地味なキャラで「スパイ映画」になるのか…。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ロバート・リテルの同名小説で、かつて「ザ・アマチュア」として映画化された作品をTVシリーズでキャリアを積んできたクリエイターの手によってリメイク。

 

愛する妻をテロリストによって殺されたCIA分析官が、「アマチュア」ならではのやり方で敵に復讐する姿を、誰にも予想できない斬新な戦い方で追い詰め、想像を超えたスリルとサスペンスを生み出す、新しいスパイアクション映画。

 

ブラック・ミラー」シリーズを手掛けたジェームズ・ホース監督は、今回様々なロケ地で撮影を敢行したが、あえて有名なランドマークでは行わなかったそう。

その理由に「ユニークで新鮮な印象を与え、他とのスパイ映画と差別化を図るため」とのこと。

 

「観光映画」ではないことを強調づける判断によって、より主人公の心の旅が浮き彫りになり、彼のスマートな戦法と巻き込まれた陰謀に度肝を抜くことだろう。

 

そんな「アマチュア」な主人公チャーリーを演じるのは、ラミ・マレック

 

ボヘミアン・ラプソディ」で大ブレイクして以降、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」ではヴィランを演じるなど幅の広い役を演じてきた彼。

本作では「ダークナイト」のヒース・レジャーからインスパイアを受けて、爆破シーンに臨んだなど、「リアル」を追求した演技を披露。

ずば抜けたIQを持つ頭脳派スパイとして、どんな活躍をするかに期待だ。

 

他にも、チャーリーを導くCIA教官ヘンダーソン役を、「マトリックス」シリーズ、「ジョン・ウィック」シリーズのローレンス・フィッシュバーンが、チャーリーの妻サラ役を、ジェームズ・ガン監督「スーパーマン」でロイス役に抜擢されたレイチェル・ブロズナハンが、ムーア役を、「ミッション・インポッシブル/ファイナル・レコニング」に出演予定のホルト・マッキャラニーが、チャーリーをサポートするインクワライン役を、「フォードVSフェラーリ」のカトリーヌ・バルフが、そしてCIAエージェント・ザ・ベア役を「ザ・コンサルタント」のジョン・バーンサルが演じる。

 

ラミ・マレック自身がプロデューサーも務めたという渾身の1作。

果たして頭脳だけでテロリストに復讐できるのか。

そして彼にも予想できなかった敵の「陰謀」とは。

 

 

 

あらすじ

 

CIAで分析官として働くチャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)は、愛する妻と平穏な日々を過ごしていた。

 

しかし、彼の生活はロンドン出張中の妻がテロリストによって命を奪われたことで一変。

最愛の妻を殺害したテロリストたちへの復讐を決意したチャーリーは、CIAの上官ヘンダーソンに特殊スパイとしてのトレーニングを志願する。

 

そして、ヨーロッパ各地に潜むテロリストを“彼ならではの方法”で追い詰めていく。(Movie Walkerより抜粋)

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キャラクター紹介

  • チャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)…殺しはアマチュアのCIA分析官。人は殴ることはおろか、銃の扱いさえままならない彼は、愛する妻の命を奪った国際テロ組織へたった一人での復讐を決意する。
  • サラ・ヘラー(レイチェル・ブロズナハン)…チャーリーの最愛の妻。出張先のロンドンのホテルでテロに巻き込まれて命を落とす。
  • ヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)…CIAの訓練プログラムでチャーリーをトレーニングする教官。人も殺せない、銃も扱えないスパいらしからぬアマチュアぶりに半ば呆れつつも心を寄せる。無骨で不愛想なところもあるが、相手を観察する能力、格闘戦での能力は長けている。
  • インクワライン(カトリーヌ・バルフ)…チャーリーの情報提供者で彼の復讐をサポート。ある仕掛けが施されたアジトで身元を隠して暮らしている。冷静沈着で、データの扱いに慣れたクールな佇まいだが、いつも孤独と寂しさを抱えている。
  • ムーア(ホルト・マッキャラニー)…CIA本部の幹部で、チャーリーが愛する妻を失うことになったテロの真相をひた隠しにする。

(HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにラミ・マレックって派手なアクションよりも、こうした知能で敵と戦うタイプの俳優ですよね。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

終始地味。

想定してた通りなので、その地味さがキャラをしっかり引き出してる。

果たして彼は静けさを埋めるためだけに暗殺を実行したのだろうか。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。

ロンドンへ向かう妻のためにコーヒーを淹れる主人公チャーリー。

彼女を見送った後、CIA本部の地下5階にある分析課で働くチャーリーは、仕事前に情報提供相手のインクワラインとチャットをしながら素性を探るやりとりをする。

 

そんなインクワラインからCIAがひっくり返るような情報を提供される。

中身はここ数日世界各地で起きていた自爆テロ事件は、実は上司であるムーアの手引きによって隠蔽されていたという事実。

 

同様を隠せないチャーリーは同僚から「俺たちは分析するのが仕事、だから目を瞑るのが正しい」と促される。

 

翌日、そんなムーアからロンドンで起きたテロ事件に妻が巻き込まれ、殺されたというニュースを聞かされ、チャーリーは信じられずにいた。

呆然とするチャーリーは遺体を受け取った後、独自で実行犯の身元を特定し、ムーアたちにするべきことをしてもらうよう直談判する。

 

しかしムーアは、様々な事情を考慮した後に実行に移すとだけしか言わず、重い腰を上げようとしなかった。

 

再び居ても立っても居られなくなったチャーリーは、インクワラインから提供された情報をムーアにつきつけ、自分にエージェントとしての訓練を受けさせるよう願い出る。

ムーアにとっては決して外に漏れてはいけない機密事項だったことや、上司の命令に背く行為をしていること、それが反逆罪にも繋がることを通告するが、チャーリーは自分の要求を飲めなければ、直ちに報道各局にこの書類が届くよう、前もって準備していたのだった。

 

こうしてヘンダーソン教官のもと訓練を受けるようになったチャーリー。

銃の扱いも射撃の腕前も素人並みのチャーリーにヘンダーソンは「向いてない」と一蹴するが、爆弾作りは誰よりも早いチャーリーに一目置くようになった。

 

一方チャーリーが訓練を受けている間、ムーアたちは別の分析官をつかって、ここ数日のチャーリーの行動範囲を探り、機密事項をどこに隠したのかを徹底的に洗い出した。

なんとかたどり着いた在り処は、チャーリーによるフェイクだったことが判明。

その間しっかり訓練を受けられたチャーリーは、盗聴がバレたタイミングで訓練所から脱走、ロンドンへと移動することに。

 

まず標的にしたのは、テログループの連絡係だった女性。

彼女が足しげく通うパリのパン屋で姿を現すまで張っていたチャーリーは、彼女の部屋に侵入しスケジュールを確認後、彼女がぜんそく持ちだったことを特定し、ヒマワリの花粉を入手して、検査中の彼女に吸わせる作戦に打って出る。

 

他のメンバーの居場所を中々吐かない彼女が苦しむ姿を見て、躊躇したチャーリーはへらから出そうとした瞬間、彼女の反撃にあう。

逃走した彼女を追いかけたが、彼女は車に轢かれて命を落とす結果に。

 

目の前で人が死んだ姿、しかも自分が関与したことに動揺を隠せないでいたチャーリーは、クラブでテキーラを飲み干し朦朧としていた。

亡き妻の幻影を見てしまうチャーリーの前に、ヘンダーソン教官が姿を現す。

実は彼はムーアが送り出した刺客だったのだ。

 

別のバーに逃げ込むことに成功したが、テログループの女が持っていたスマホの位置情報で居場所が筒抜けだったという凡ミスにより、すぐさまヘンダーソンにバレてしまっていたのだ。

人を殺すのに鳴れていないチャーリーに、ヘンダーソンは「ここまでだ」と引導を渡す。

 

しかしチャーリーは「誰にでも得意不得意がある」と告げた瞬間、トイレが爆発。

チャーリーがあらかじめ仕掛けておいた爆弾が起動し、そのはずみで再び逃走することに成功する。

 

翌朝マルセイユに移動したチャーリーは、次の標的を探すも手掛かりがない。

そこでインクワラインに協力を求め、いると思われるイスタンブールへ移動する。

 

相手の指示通りやってきたカフェに現れたのは、なんと女性だった。

彼女は6年前に夫であるインクワラインを亡くしたことで、彼の仕事を引き継いでいたのだった。

海岸沿いの家出一人孤独にチャーリーに情報提供していた彼女は、チャーリーの協力を受け、サポートをはじめていく。

 

次の相手はSNSに投降した写真からスペインのホテルに滞在していたことが判明。

2棟を繋ぐ屋上のガラス製のプールを独占していた彼に、スキューバダイビング用の酸素ボンベを利用して、プールそのものに圧縮をかけるという誰も思いつかないやり方で彼に詰め寄る。

 

しかしそこにもヘンダーソンが現れ、妨害されるのを恐れたチャーリーは、装置のボタンを押し、結局何も聞けないまま標的を殺してしまう。

 

何とか逃げ切ったチャーリーは、インクワラインから最愛の相手を失ったことで世界が物凄く静かである話を聞く。

あなたは静けさを埋めるために復讐をしてるの?と聞くインクワライン。

答えの出ないチャーリーは夜中、これまでずっと一肌恋しかったインクワラインからお願いされ、隣で眠ることに。

 

しかし、ムーアが送り出した部隊に場所を特定されてしまい、急いで逃亡を図る。

車で逃げ切ったかと思われたが、インクワラインは遭えなく被弾、命を落としてしまう。

 

インクワラインが蒔いた種に引っかかった標的に、インクワラインに扮して取引を持ち掛けたチャーリーは、ブツの中にセンサーに反応すると起爆する爆弾を仕掛け、相手を待つ。

見事にひっかかった標的は、グループのリーダーのアジトを明かした後、チャーリーの罠によって殺される。

 

バルト海近郊の港町に潜んでいたリーダーと、いよいよ直接対決をしかけるチャーリー。

果たして彼の復讐は成功するのか。

 

 

というのが、本作のざっくりしたあらすじです。

 

終始地味だが味わい深い。

全体を通して感じたのは、スパイアクションとはいえかなり地味だったということ。

大した格闘要素もなければ、驚きの展開が待ってるわけでもない。

 

妻を失ったことに対するチャーリーの悲哀が終始消えないまま、復讐することでしか静けさを埋められない主人公を捉えながら描かれた、一風変わったスパイアクション映画でした。

 

そもそも黒幕は長官の許可を取らずに、アメリカの利益だと妄信してドローン攻撃を繰り返していたムーア。

彼が手配した実行グループと取引上の決裂をしたことが、今回ロンドンで起き、それに妻が巻き込まれてしまったことが発端だったわけです。

 

よって、大きな陰謀は、実は序盤で全てわかってしまうので、そういう驚きは特にありませんでした。

しかし、それをチャーリーが知ってしまい機密情報を持っているということから、チャーリーは復讐を実行しながらもムーアから狙われていたって話です。

 

ぶっちゃけ、標的のスマホを持ち歩いちゃったり、一人目との対峙では優しさからつい油断してしまったりと、素人感丸出しの詰めの甘さが露呈していたチャーリー。

アマチュアというタイトルだけあって、そうした部分は正直見てられない部分がありました。

 

しかし、ヘンダーソンにも語っていた通り、人には得意不得意があるってことで、IQ170もある彼だからこそできる絶妙なパズル的計画が、今回見事に映画の面白さを引き立ててましたね。

 

例えば序盤でのムーアたちを見事に撒く手引き。

命を狙われる可能性を示唆して、自分がしっかり訓練を受けられるようムーアたちには別の事をしてもらうと。

 

具体的には、機密情報をどこに隠したのか徹底的に探るムーアたちに、チャーリーは嘘の場所へと導く準備を事前にしていたってわけです。

ロビーのフロアに40分も隠れていたこと、妻が亡くなってから入り浸ったバーなど、とにかくエサを用意して導くやり方は、分析官っぽい方法だったように思えます。

 

そんなチャーリーはしっかり盗聴しながら様子を伺い、ヘンダーソンの手荒い訓練で色々学ぶという。

まぁ、銃の扱い方しか学んでなかったですけどねw

実戦訓練とかやってなかったしw

 

他にも、命を前に銃の引き金を引くのに躊躇してしまう不向きな性格から、どうやって敵を追い詰めるのかという方法も面白い。

最初の女性は喘息持ちというウィークポイントを利用し、診療所で検査をしているところを狙い、閉めきられた空間に花粉をばら撒いて苦しめる。

 

2番目もガラス製のプールで一人泳ぐ標的に対し、あらかじめ爆弾をしかけ、向こう側にたどり着く前に落下させるという、中々残酷なしかけ。

3番目の敵も取引を持ち掛けて、箱の中身に「閉じても離れても起動するしかけ」を施したセンサータイプの爆弾を仕掛ける。

最後のリーダーも、恐らく連行されることを予想して、あらかじめ船をハッキングし、暗号を書き換えてチャーリーがリモートで動かせるよう細工をし、相手が及ばないフィンランド領に移動させて御用。

 

 

これらを「ドヤ顔」せずに演じたラミ・マレックが素晴らしかったですね。

基本的にオーバーアクトはせず、いかにも陰キャっぽいデスクワークを得意とする理系男子なイメージを保ちながら、冷静さと冷徹さを兼ね備えて演じてたような気がします。

それこそ妻が亡くなった際も、同様の色を隠せない表情を一度はするモノの、その後は家で黄昏たり、心ここにあらずといった表情で我々にチャーリーが今どんな気持ちでいるかを見せていく。

 

その後端を発したかのように何かにひらめき黙々と計画を立て上層部に訴える姿は、怒りという感情をなるべく潜めて演じていたように思えます。

他にも、人を殺めてしまった際の動揺やそれを乗り越えて実行する姿は、他のハリウッドスターでは出せない色香を醸していたように感じました。

 

スパイアクションなのに、めちゃめちゃ繊細さを出す主人公の映画って、正直あまり思いつかない。

だからこそ本作はその分特殊なタイプの作品だったんじゃないか、それを大きな予算をかけて製作した20世紀スタジオは、いい度胸してるなとさえ思ってしまいましたね。

 

 

最後に

「空に舞い上がり過ぎて、迷子にならないように」

亡き妻が最後にチャーリーに送ったパズルの中身にはそんなメッセージが刻まれていました。

この言葉がなければ、もしかしたらチャーリーは舞い上がり過ぎて、復讐に失敗していたのかもしれません。

リーダーとの対面で、ヘンダーソンに言われた時と同じように「俺を撃ってみろ」と言われたチャーリーは、きっと妻からのメッセージが無ければ復讐心に駆られ引き金を引いていたかもしれません。

 

だからこそラスト、ずっとセスナの修復作業をしていた彼が、完成したセスナで舞い上がった瞬間は美しかったですね。

 

あくまでリメイク作品ではありますが、どこかオリジナル感ある、それこそ15~20年前に製作されたようなハリウッド映画にも思えたし、そういう意味で懐かしさも感じた作品でしたね。

変にプロットをこねくり回さず、シンプルな設定の下、悲哀を抱く主人公に寄り添ったスパイアクション映画でした。

 

たまにはこういうのも良いと思うんだよ。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

映画「ブリジットジョーンズの日記4/サイテー最高な私の今」感想ネタバレあり解説 やっぱり彼女は最高だ!

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ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今

00年代最高のロマコメ映画といっても過言ではない「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズ。

あれから20数年が経ち、前作で晴れてマークと結ばれたブリジットでしたが、なぜ今になって続編!?と首をかしげております。

 

前作では、めでたくブリジットが妊娠したわけですが、相手がマークとジャックのどちらか判明できないややこしい事態がメインの物語でした。

 

1作目から何かとブリジットとうまくいったり行かなかったりとすれ違いの恋愛を続けてきたこともあって、ようやくお前たち結ばれたか!めでたしめでたしだな!と半ば親心のような気持ちで本作を堪能したのに、なぜ続編!?(2回目w)と。

 

なんと、マークが亡くなってしまったところから話が始まるそうで、これまた一波乱ありそうな気配。

しかも!前作の最後で事故で死んだと思われていたダニエルが、なんと生きていたことが明かされたので、非常に楽しみです。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

酒豪&ヘビースモーカー&オーバー気味な体重で、補正デカパンが相棒。何をやってもドジだが、いつも前向きに爆走し、恋もキャリアも大事な女性の本音を体現した主人公の魅力で大ヒットした、レネー・ゼルウィガーの代表作「ブリジット・ジョーンズの日記」の最新作。

 

前作で妊娠が発覚し、晴れて幼馴染のマークと結婚、二人の子をもうけ幸せいっぱいのブリジットに再び災難が起こり、新たな人生の一歩を踏み出す姿を、アラフィフとなった彼女を通じて等身大の女性を余すことなく見せる完結編。

 

高額当選した宝くじの賞金を使い果たしどん底に落ちたシングルマザーの再起を描いた「To Leslie」のマイケル・モリスが監督を務めた本作。

本作について監督は、人気シリーズのこれまでらしさに加え、それまで無縁だった問題を向き合うために「悲しみのコメディ」に仕上げたとのこと。

人生の上で誰もが避けて通れない経験を、ブリジットを通じて敬意を払いたいと願う映画になっているそう。

 

キャスト陣は、これまでブリジット・ジョーンズを演じ続けてきたレネー・ゼルウィガー、夫マーク役のコリン・ファース、そしてまさかの生存が発覚したかつての恋人ダニエル役のヒュー・グラント、産婦人科医として前作に登場したローリングス役のエマ・トンプソンらが続投。

そして、今回新たな恋の相手として、年下男子のロクスター役をNetflixドラマ「One Day/ワン・デイ」のレオ・ウッドールが、息子の理科教師ウォーラカー役を「ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス」のキウェテル・イジョフォーが演じる。

 

夫の喪失を抱えながら子供の世話や職場復帰と、再び社会の荒波にもまれていくブリジットに、幸せは訪れるのか。

 

 

 

 

あらすじ

 

弁護士のマーク(コリン・ファース)は4年前にスーダンの人道支援活動中に命を落とし、2人の子供の母親ながら再びシングルになったブリジット(レネー・ゼルウィガー)。


立ち直れない日々が続いていたが、親友たちや元彼・ダニエル(ヒュー・グラント)にも支えられ、仕事に復帰。

 

更に、公園で出会った29歳のロクスター(レオ・ウッドール)とアプリで繋がり、意気投合。

一方、厳しい理科教師のミスター・ウォーラカー(キウェテル・イジョフォー)とは、彼の息子ビリーへの真摯な優しさを知り、次第に距離が縮まる。

 

子育てや仕事に追われながら「いつでもマークが恋しい」と子供に話すブリジットだが・・・(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

まるで同窓会。そしてファンムービー。

だけどちゃんと完結編になってたのが素晴らしい。

最愛の人は失っても、ちゃんとそこに存在するんです。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

マークが亡くなって4年。

最愛の人を失い、子供2人に翻弄されながら暮らすブリジットが、アラフィフになって職場復帰に新たな恋人と大忙しの1年を迎える完結編。

 

監督が「悲しみのコメディ」と語ったように、マークの姿がチラつく序盤。

仕事もせずに一体どうやって生計を立てていたのか(遺産?)わからないが、相変わらず部屋は汚いし髪の毛はボサボサ、料理もロクにできないブリジット。

子どもたちもわんぱくで、長男はニンテンドーswitchに夢中、長女はお母さんに似てどこかぶっ飛んだ性格を思わせる言動や行動に、正直マークがいなくても賑やかじゃねえかと思わざるを得ないオープニング。

 

そこへやってきたのはダニエル!

前作で生存確認された彼が早々と登場し、なんとブリジットの子供たちのシッターを買って出るという意外な展開。

あれ?結局ダニエルと再び付き合うことになったの?

 

違うんです、その日はマークの誕生日。

夜にマークの友人たちと食卓を囲んで祝うという日だったんですね。

そこには旧友のシャザ―の姿も見られ、賑やかに彼を祝うかと思いきや、どいつもこいつも性差別発言ばかり繰り返して散々な羽目に。

 

結局いつものメンツであるジュードやトムらと酒を飲み交わしては哀しみを癒す時間を過ごすことに。

皆は口をそろえて「新しい人を探したら?」「セックスしないと塞がっちゃうぞ」と、相変わらずストレートに物事を言っちゃう感じなのは本シリーズそのもの。

 

産婦人科の先生からもちゃんと職務復帰しなさいということで、ようやく哀しみから解放されるためにブリジット行きま~す!と新たな一歩を踏み出すのであります。

 

 

序盤はとにかくマークの幻影が姿を見せるのが印象的。

彼の誕生日を祝う会では玄関の前に現れ、ここで待ち合わせたかのように口づけを交わす2人。

またある時は、眠れない子供たちの前に現れ子守唄を歌う姿まで。

4年という月日が流れても、未だ喪に服す状態のブリジットが、未だ彼との生活から抜け出せないでいることが窺える序盤でした。

 

ティンダーで繋がる新たな恋。

「ベイビーガール」という映画で、昨今熟女が年下の男性と恋愛を描く作品が増えていることに触れましたが、本作でもその傾向が。

これまでダーシー、ダニエル以外にもダンディな男性が登場しては、ブリジットを翻弄させてましたが、今回の相手はなんと年下の男性ロクスター。

 

うるさい子供たちを前に一人になりたいブリジットが、子供たちを連れて公園になってきたのはよかったんですが、子供たちが木から降りれなくなってしまう事態が発生。

母親としてここはしっかりしなきゃと木に登って降ろそうとするんですが、なんとブリジットも降りれなくなってしまう。

 

するとそこにジョギング中のウォーラカー先生に遭遇。

恥ずかしい所を見られるも、自分でできると助けを断ってしまうブリジット。

すると今度はレンジャーが登場。

逞しい体で3人を木から降ろして一件落着・・・かと思ったら、ミランダに勝手に登録されていたティンダーの「セフレ募集」という画面を見られてしまうことに。

 

さらに赤面状態のブリジットでしたが、なんと数日後ロクスターからティンダー経由で連絡が来るという驚きの展開に。

 

初デートで29歳であること、レンジャーのバイトをしながらゴミの研究をしている学生であることに、さすがのブリジットも「こりゃ恋愛には発展しないか」と思いつつも、家まで送った勢いでキス&エッチを果たしてしまう。

 

その後もパイを土産にやってきたロクスターと幾度も身体を重ね、子供たちからも快く受けいれられるほど良い関係に。

 

一番爆笑したのは、ブリジットが職場復帰した女性向けの情報番組の司会者タリサの誕生日パーティーに遅れてやってきた時。

目の前にあるプールにタリサの犬が飛びこんでしまい、皆が慌てて犬を抱えようとするんですが、みんな濡れたくないから中に入れないと躊躇。

そこへ遅れてやってきたロクスターが、すかさず着の身着のままで飛び込む瞬間をスローモーションで映し出します。

 

なんていうんでしょう、若さとは誰もが憧れるもので、彼の抜群に素晴らしいプロポーションに、とっくにピークを過ぎた中年男女は目が釘付け!

しかも犬を救出した後、すぐさま「遅れてごめん」とブリジットにキスした瞬間の女性陣の羨望の表情たるや!

未だあったことのない噂のブリジットの彼氏が、あんなにイケメンでセクシーボディの持ち主だなんて!みたいな顔で見つめるしかない姿を、しっかり見せつけるシーンは爆笑モノでしたw

 

 

しかしその日を境にロクスターは、ブリジットの前から姿を消してしまいます。

連絡が途絶えたブリジットは数日間は塞ぎがちでしたが、吹っ切れて仕事に子育てにと再び奮闘。

番組のリハーサルの最中にパイを持ってやってきたロクスターは、あまりの年齢差と子持ちの女性であることに、このまま付き合うことに対して逃げ腰になっていたのでした。

覚悟を決めて再度プロポーズをしたロクスターに対し、ブリジットはあっさり断ってしまうのです。

 

実はタリサのパーティーの際、ダンスをしながらつい「タイムマシンがあればいいのに」と酔った勢いで口にしてしまっていたのです。

ブリジット自身もさすがにこの言葉によって現実に引き戻されます。

そしてプロポーズの際に「タイムマシンがあれば、私と同じ年齢になれるのに」と返し、彼を帰すのでした。

 

僕が凄くいいなと思ったのは、このタイムマシンの返しです。

自分が若返れば釣り合うのにというのではなく、相手が自分と同じ年齢なら釣り合うのにという点が、若さに固執してなくてよかったんですよ。

決して彼女はあの頃に戻りたいわけではなく、今を幸せにしたいと感じて生きてるんですよね。

 

確かにマークの思いをずっと引きずってはいるんだけど、それはそれ。

このセリフはすごく効果的だったと思います。

 

後半はウォーラカー先生と。

こうして若者との恋愛を終え、今を楽しく生きようと再び歩み出したブリジット。

今度はやたらと息子の担任であるウォーラカー先生と絡む機会が増えてきます。

 

先生は新任ということで、初対面はやたら笛を吹いて生徒たちの風紀を取り締まるかのようなめんどくさそうなタイプの先生でした。

物事を全て科学的に語ることで、息子が書いた「地球の上に浮かぶ天国」の画を、非科学的と評してC評価を下すほどの徹底ぶり。

 

このように悪印象から入ったウォーラカー先生。

さらに木登りから降りれない姿を見られたり、ロクスターとの初デートに備えてありとあらゆるコンドームを購入する姿を見られたりと、ここぞという時にバッティングすることもあって、会わすかのないブリジット。

 

やがて親の仕事ぶりを語る職業授業を担当することになったブリジットは、TVのプロデューサーがどんな仕事かを、生徒たちの前で披露することに。

ウォーラカー先生をゲストに迎えた対談番組をシチュエーションに、先生と「ハエの生涯」について語る流れになったブリジットは、息子からの「死んだらどうなるのか」という質問をきっかけに激論をしていく羽目になります。

 

死んだら終わりだというウォーラカー先生の言い分に対し、魂は天国のハエの親と共にあるのではないかと平行線をたどる議論に、フロアディレクターを体験している生徒から制止される一幕で決着。

 

しかし後半は、この息子が発した「死んだらどうなるのか」という疑問が付きまとう展開に。

そう、息子マーク譲りの賢い子だからか、亡くなってしまった父親の事をいつか忘れてしまうのではないかとずっと塞ぎ込んでいたのであります。

 

自然広がる山々でキャンプをすることになり、引率することになったブリジットが、子供たちを寝かしつけてる間に、先生とブリジットの息子はそのことに関して話し合うことになります。

これまで散々科学的な根拠を基にあれこれ言ってきた先生でしたが、この時ばかりは塞ぎ込むブリジットの息子に対し「姿かたちは消えてしまったけど、ちゃんと君の心の中に存在するんだ、だから決して忘れることはない」と語るのです。

 

そうした優しさをしっかり持っているウォーラカー先生は、クリスマス会でブリジットを喜ばそうとサプライズを仕掛けるんですね。

 

それが息子ビリーによる「I'd Do Anything」という歌の独唱です。

これ序盤にマークの幽霊が息子を寝かしつける際に歌っていた歌なんですよね。

マークが歌っていた歌を息子が歌うことで、彼の存在は決して消えないという意味を含ませたであろうこの演出は涙なしでは見られませんでした。

 

そんな先生の優しい一面を持っていることを知ったブリジットは、この後予定されている仲間たちとのパーティーに招待します。

遅れてやってきた先生は、中に入ることに躊躇。

ブリジットが追いかけて中に入るよう促すが、どこか及び腰の先生。

 

今度話したいことがあるといいながらその場を去ろうとしますが、意を決して先生は告白するんですね~!!

木登りの際に先生がブリジットに語ったニュートンの法則の第3法則に倣い、「等しく反対である」ことに惹かれていたのだと。

 

本シリーズを通して、結局結ばれるのはブリジットとは正反対の性格の持ち主だったりします。

最たる例がマークだったように、やはりブリジットを支えるのはこういうキャラなんだと。

 

ファン映画ですよ。

こうしてハッピーエンドを迎える本作は、一応これで完結とされているようです。

しかし今回一切おさらいせずに挑んだんですが、やっぱりブリジットジョーンズの日記は面白いなと再確認することができたロマコメでしたね。

 

元々は高慢と偏見をベースに作られた物語だそうで、実際にコリン・ファースが高慢と偏見に出演していた経緯もあって、こういうキャスティングになったそうですけど、そんなマークがいなくなってどう決着をつけるんだろうと。

 

やはりロマコメですから、いなくなってしまった後もブリジットの人生は続くわけで、これまでなかったパターンでシングルマザーの恋愛を、ブリジットを取り合うような構図にするのではなく、若者との恋と科学的なことしか言わない先生との恋を、1年という歳月をかけて描いた力作でした。

 

相変わらず男性の裸を見ては興奮し、めんどくさいママ友の前でご機嫌を伺いながらも腹の中では正反対のことをぼやくブリジット。

劇中では赤いパジャマ(過去作で着てたのまだ持ってるなんてw)を羽織って子供たちを学校に送ったり、デートに着ていく格好に迷うシーンでは、過去にオフィスで着てきてしまったスケスケの服や、かつて穿いていた勝負下着が登場したりと、ファンならクスッと来るアイテムがゾクゾク登場する喜び。

 

アイテムで言えば、一番感動したのは、終盤の大みそかの夜に、かつてマークが来ていたトナカイのアグリーセーターを息子ビリーが着ていたというサプライズ演出。

これにはグッと来たファンも多かったことでしょう。

 

懐かしいといえばダニエルの再登場もさすがでしたね。

恋人であるモデルの朗読会の最中に堂々と電話に出たと思ったら相手はブリジット。

相変わらず子猫ちゃん扱いで卑猥な言葉を平然と言うダニエルは、ジジイになっても変わってないし、何より静かにしなきゃいけない場で「お義母さんが危篤で」とかふざけたことを言いながら卑猥なことを言うダニエルに笑わずにはいられません。

 

それ以外にもシッターの相手をしながらダーティービッチなるカクテルを作ってたのも笑える。

これエンディンングで子供たちに作り方教えてましたね、バカかw

 

そんなダニエルにも体の不調を訴えるシーンは印象的。

ブリジットも未だに酒をガバ飲みする姿が映って懐かしいなあと思ったけど、いつかだ似るみたいにならないか心配になるシーンでしたね。

そこでダニエルは2歳の時から会ってない息子への思いを語り出すんです。

 

ブリジットを見ていると、自分もそんな人生を歩んでいたかもしれないと語るダニエル。

それでも相変わらず女に目がない姿をブリジットに知られるのがまた笑えるんですが、本作はそんなダニエルの変化も描かれるのが特徴だったりします。

 

 

最後に

イギリス映画ならではの演出も秀逸。

様々な楽曲を巧みに使用しながら、ウェットな部分はウェットに、それを跳ね返すかのようにハッピーな瞬間を思いきり彩る雰囲気は「ラブ・アクチュアリー」や「アバウト・タイム」を彷彿させるものでしたね。

 

また、デヴィッド・ボウイのモダンラブから景気よく始まる本作で何よりも魅力的なのは主演のレネーゼルウィガーが相変わらずブリジットであるということ。

彼女が悲しんでる姿はやっぱり見たくない。

どんなに辛い状況でも笑い飛ばして楽しい今を過ごすからこのシリーズが大好きなんです。

 

彼女と同じように歳を重ねた女性なら、今がどんなに辛い時だったとしてもきっと元気になるだろうし、それは男である自分も一緒。

今を楽しく生きることが何よりの幸せだし、困難やカオスな状況でも楽しめればこっちのもんだと。

最愛の人を失った悲しみを引き連れて、ブリジットの幸せを心から願いたくなる映画でしたね。

 

最後になって気づきましたが、あのフクロウはマークの生まれ変わりだったのかもしれませんね。

魂は決して死なないということを示したラストだったと思います。

サイテーだけど最高なブリジットに幸あれ!

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10


映画「シンシン SING SING」感想ネタバレあり解説 劇的な演出がないがジワっとくる。

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シンシン SING SING

かつてクリント・イーストウッドが、列車内で起きた銃乱射事件に立ち向かった青年たちを本人役に迎えて製作した「15時17分、パリ行き」という映画がありました。

 

鑑賞前は、素人のくせに演技なんて務まるのだろうか、ただの再現VTRになってやしないだろうかと思ってましたが、そこはイーストウッド。

彼の卓越した映画技法によって見事に「映画」の形を成し遂げておりました。

 

今回鑑賞する映画は、実際に刑務所にいた人たちが多数出演するというもの。

またもや演技経験0の人たちが登場するのかということで、イーストウッドの過去作を例に挙げましたが、それとは違い主役はれっきとした俳優ですし、内容は「刑務所内で演劇をする」という話だけあって、元収監者たちもそこそこお芝居ができるはず。

 

いったいどんな物語になるのか楽しみです。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

映画ファンに支持されるSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)映画祭で、観客の投票により選ばれる最高賞「観客賞」を受賞し、第97回アカデミー賞で主演男優賞、脚色賞、歌曲賞にノミネートを果たした感動の実話を、主人公のモデルとなった人物による原案を基に、新進監督グレッグ・クウェダーの手によって製作された。

 

NYにある<シンシン刑務所>を舞台に、舞台演劇を通して収監者の更生を目指すプログラム 内で友情と再生を描いた実話を、主要キャストの85%以上が元収監者であり、演劇プログラムの卒業生及び関係者たちで構成された、ユニーク且つ挑戦的なプロジェクト。

 

主演を務めたコールマン・ドミンゴは、わずか18日間という短い撮影期間のなかで、実際に刑務所にいた人たちという「本物」と混ざって芝居をする、しかも中心人物として演じることはものすごく挑戦的だったと語る。

さらに主人公と友情を深める役柄として、多くの賞レースで絶賛されたクラレンス・マクリンは、演技以外にも作品の中に「リアルさ」を追求するため、製作総指揮や原案にも携わり、かつての自信を思い出しながら「変化の過程」を意識して演じたそう。

 

刑務所内で弱みを見せればたちまち標的にされてしまう過酷な場所で、舞台を通じて様々な表現ができる喜びを感じ、より良い自分になれたと語る更生プログラムが、本作が持つ「感動」にどのような機能をもたらすかに注目だ。

 

また多くのキャストが元収監者という肩書だが、彼らは出所後も演劇に携わったり、自分と同じような道を歩まないよう支援する仕事に就いている。

 

元収監者とオスカー有力俳優の誰も観たことのないキャストアンサンブル。

そしてラスト、心地よい感動が観るものを包み込む。

 

Sing Sing : The Scripts

Sing Sing : The Scripts

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あらすじ

 

NY、<シンシン刑務所>。

無実の罪で収監された男ディヴァインG(コールマン・ドミンゴ)は、刑務所内の収監者更生プログラムである<舞台演劇>グループに所属し、仲間たちと日々演劇に取り組むことで僅かながらに生きる希望を見出していた。

 

そんなある日、刑務所いちの悪党として恐れられている男クラレンス・マクリン、通称“ディヴァイン・アイ“が演劇グループに参加することになる。

そして次に控える新たな演目に向けての準備が始まるが――。(HPより抜粋)

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感想

演技はプロセスが大事だけど、仮出所は結果が大事。

そんなジレンマにあうディヴァインGの救いや挫折が痛いほど伝わる。

このプログラムがもっと知られても良いと思う。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

思っていたのと違ったが。

ディヴァインGとディヴァイン・アイ、そしてディヴァインGの相棒でもあるマイク・マイクを中心に、どんな演劇をやるかから始まり、新入りで加入したディヴァイン・アイを交えて、これまでやってこなかった「喜劇」をやることに。

最初こそ不慣れな場から巧く演じることができないディヴァイン・アイのために、ディヴァインGが手鳥足取り教える面倒をみるが、中々殻を破ることができず苛立つディヴァイン・アイ。

 

皆の協力や演じるということはどういうことかを知りながらモノにしていくディヴァイン・アイは、仮出所を申請するがどうせ通らないと諦めていた。

そこに世話好きのディヴァインGが様々な書類を用意して準備をしようと持ち掛ける。

彼もまた減刑を嘆願している身であり、互いが希望を胸に演劇に時間を費やしていく。

 

しかし相棒のマイク・マイクが脳動脈瘤によって死んでしまったことを皮切りに、ディヴァインGの様子に異変が生じ、減刑を嘆願するための面接もうまくいかず、舞台のリハもままならないほど追い込まれていく。

 

そこ仮出所の決まったディヴァインGが、手を差し伸べる。

ここまで来れたのは相棒のおかげだ、だから今度は俺が助ける番だ、と。

 

こうして互いが悔い改めながら更生プログラムである舞台を懸命に費やすことで、彼らは「演じる」という希望を抱き、刑を務めていくのだった。

 

 

刑務所内の友情を描いた「ショーシャンクの空に」や出所不可能に苦しむ「ミッドナイト・エクスプレス」、長きにわたり脱獄を計りながら友情を育む「パピヨン」など、脱獄を含む刑務所内の映画が大好きな自分としては、それらと比べるとちょっと歯ごたえが違う映画ではありました。

 

基本的に手持ちカメラで演者を捉えながらのドキュメンタリーな質感漂う映像で、いわゆるごく普通の娯楽映画とは違い、劇的なドラマがあるわけでもなければ、肝心の演劇が最後にみられるわけでもない。

 

だから正直物足りなさのある作品でした。

しかし主演のコールマン・ドミンゴが無実である証拠を自身で探し、減刑を求めながらも、演劇で演じることで希望を見出し、皆をこぶするというまとめ役までこなすという見事な芝居で引っ張っていたことが、本作を楽しく見られたのは事実。

 

ただそれ以上に収穫だったのは、実際に収監されていたクラレンス・マクリンが、当時の自分を思い出しながら元ギャングの囚人を演じつつ、徐々に演技のコツを掴んでハムレットの役を演じ切るという難しい役柄に感銘を受けました。

 

最初こそずっと体を揺らしながらかったるい感じで、自分から志願しておきながらやる気のない雰囲気を出しており、さすが向こうに入ってただけの事はあるなぁと思っていましたが、ディヴァインGから演技のコツを教わって以降、メキメキ上達し、振り付きの本読みのシーンで、それまで見せてこなかった一部を覗かせた演技は、僕の中dものすごいインパクトがありました。

 

明らかに演じていることがすぐわかるし、それまでただセリフを読むだけのことを、このシーンで一気に「役に入り込んでる状態」と分からせる技量があることまでわかってしまうほどの芝居。

アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるのではと言われてたほどの実力があるなと思った瞬間でした。

 

自分が輝いてた瞬間を思い出し、それを語る。

またはこれまで出してこなかった感情を武器に別の何かを表現する、そんな演技メソッドをしながら、収監者は塞ぎ込んでいた自分の一部をさらけ出すことで、新たな喜びと兵の中という息苦しい環境の中で安らぎを手に入れていく。

それを繰り返すことで、少しずつ何かが変わり出し、更生の道を歩んでいく。

 

そんなプログラムが実際行われていること、それによってちゃんと更生し、社会で全うに暮らしているという事実を知れたことだけでも見て得な映画だし、何よりも実際兵の中にいた人たちが、自分の役を演じながら劇中劇までこなす器用さを見せている。

こんなすごい映画があるなんてという感覚でした。

 

一方で彼らが刑務所で過ごす、いつ出られるかわからなければ出られるという決まりもないという絶望感も惜しみなく描かれているのが本作の凄みでもある。

 

主人公であるディヴァインGは、劇中から読み取るに、第2級殺人を犯し25年以上の刑期を務めなくてはならない身だったが、自身で色々調べた結果刑期を減らせる可能性を見出し、プログラムに力を入れながらわずかな希望を抱いている存在。

しかしいざ面接となった途端、向こうのペースにハマってしまい、言いたい事すら言えない状況に。

この面接でさえもあなたは演じているのですか?という問いに戸惑うディヴァインGの表情は、これまでの苦労は何だったのかというあっけにとられた表情であり、絶望を通り越して虚無に陥った顔をしてましたね。

 

今こうして希望を抱きながら更生に務めてるけど、もし自分が違う人生を歩んでいたら、もっと違う人生だったろう。

そんな空想を思い浮かべながら、何も変えられない事態に嘆く姿も見ていて辛い。

 

マイク・マイクが自身の出自を語るシーンでも、そんな雰囲気を醸し出していたけれど、突然人生が終わりを告げるショックは大きかったですね。

 

 

とまぁ、全体的に褒めの感想ではあるんですが、個人的にはもっとドラマ仕立てにしても良かったのかなあとわがままな思いもあります。

 

そもそも本作でプログラムに新入りなのはディヴァイン・アイのみで、他のみんなは何度もプログラムで演劇を経験済みの状態。

だから演出家の話もディヴァインGの話も皆聞き分けがよく、好戦的なイメージのある囚人の姿はみてくれだけという設定。

 

ほぼ更生してるんじゃないか?という出だしから、新たな危険因子が入ることでもっと劇団自体がややこしいことになるのではないかと思ってたんですよね。

実際初心者のディヴァイン・アイが想定通り一悶着起こすんだけど、これもディヴァインGのアドバイスによって、物分かりの言い役柄になってしまっている。

 

様々な波乱を生みながらも一つになっていく過程が全体的にないため、やはり物語が単調なんですよね。

あくまで世話好きで希望を胸に抱いているディヴァインGが墜ちていく、逆にふてぶてしいディヴァイン・アイがディヴァインGの助言によって更生していくという、立場の逆転が物語を動かしているだけで、ぶっちゃけ予告編以上の何かは得られることはできませんでした。

 

 

最後に

こうした題材を映画という媒体を通じて世に知らせるという役割としては大いに買うんですが、いかんせん物語が物凄く面白いかと言われると、僕の中ではそこまでの満足度はありません。

 

あくまで評価できるのは、コールマン・ドミンゴの存在感と、実際に収監されていた人たちがナチュラルに自分を演じていたこと。

実際思い出したくもないことを思い出さなきゃいけない状況もある中で、当時の自分を引き出す作業って、辛いことかもしれない。

 

それでもこのプログラムを世に知らせるために一肌脱いでいる、また今も塀の中でこのプログラムに取り組んでいる人たちのために演じていることを考えると、簡単に「面白くない」とは言い難い作品ではあります。

 

社会に戻るということは、決して刑務所に入る前のまま戻ってはいけないのは当たり前。

しかし彼らにも人権はあり、刑期を務める中での安らぎや希望までは奪われてはいけない。

あくまで更生という名目で、この息苦しい場所で「別の誰か」になりきることで、本来もっていたはずの「社会性」を学び、自分の中に在るはずの一部を引き出す術を探していくプログラムを肯定したいと思います。

 

何かキレイごとばかり書いてしまったけど、そういう気持ちにさせてくれた映画だったんだよなぁ。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「ボイリングポイント/沸騰」感想ネタバレあり解説 こんな怒ってばかりのレストランは嫌だ!

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ボイリング・ポイント/沸騰

 

あらすじ

 

一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日、ロンドンの人気高級レストラン。

 

その日、オーナーシェフのアンディ(スティーヴン・グレアム)は妻子と別居し疲れきっていた。

運悪く衛生管理検査があり評価を下げられ、次々とトラブルに見舞われるアンディ。

 

気を取り直して開店するが、予約過多でスタッフたちは一触即発状態。

そんな中、アンディのライバルシェフ・アリステア(ジェイソン・フレミング)が有名なグルメ評論家サラ(ルルド・フェイバース)を連れてサプライズ来店する。

 

さらに、脅迫まがいの取引を持ちかけてきて…。

もはや心身の限界点を超えつつあるアンディは、この波乱に満ちた一日を切り抜けられるのか……。(HPより抜粋)

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感想

凄まじいほどの緊張感と臨場感。ピリピリムード。

全編ワンカットだからだけじゃない、負の連鎖だからこそ生まれる「沸騰」。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

全編ワンカットすごくね?

クリスマス前の高級料理店を舞台に従業員たちが「沸騰」するまでのの90分間を、狭いスペース、スタッフや客だけの少ない人数だけで「社会の縮図」を生み出す表現力と、手持ちカメラで駆けずり回りながら様々な人間模様を追いかけていくアイディアとセンスに脱帽した、お見事な作品でございました。

 

ヒッチコックが作り出した「ロープ」という映画でも「ワンカット」を試みた密室劇に舌を巻いたが、当時フィルムを交換しないといけなかったという事情故に、あくまで「ワンカット風」の映画としてしか作れなかった。

それから数十年の時が経ち「バードマン」や「1917」、「カメラを止めるな!」のような現代の技術と綿密なリハーサルの成果によって大ヒットを遂げたワンカット映画が次々と誕生したのは言うまでもない。

 

本作「ボイリングポイント」は、そんなワンカット映画の歴史に新たな1ページを刻んだ作品といっても過言ではない。

 

 

外から寒そうにしながら料理長アンディがやってくるところから物語は始まる。

仕事の忙しさ故に家庭を疎かにし、子供との距離がどんどん離れていく現状を何とか打破しようと一生懸命電話をかけ謝罪するアンディ。

そんな自身のトラブルに、更なるトラブルが追い重なってくる。

 

店に着くや否や衛生管理官から残酷な結果を言い渡される。

 

これまで「5点」を保ってきた衛生管理だったが、スタッフの衛生面に対する重要性の低さや、ほったらかしにした書類の記入ミスが仇となり、「3点」へと下げられてしまったのである。

 

ようやくシェフとして店を持てたにも拘らず、誰かのせいで、そして自分の怠慢のせいで不運な結果になってしまったアンディ。

 

そして今夜は金曜日。

クリスマス前の週末もあって予約はいっぱいであり、落胆している場合ではないアンディにとって、さらに厄介な出来事が降りかかる。

 

 

こんなオープニングから不穏な空気が充満している店内を、アンディやスー・シェフ、フロアのウェイトレスに支配人、バーカウンターの店員から、裏で作業してる洗い物担当やパティシエに至るまで、全員の視点をシームレス且つスムーズにすり替えながら、みんなが抱える「イライラ」を積み重ねていくのである。

 

 

驚きなのは店内の狭さ。

客席との感覚は普通に考えれば一般的だが、週末ということもあって満席。

しかも店内がムード漂う薄暗い照明というのも手伝って、かなり狭く感じるのだ。

そんな客席の中を縦横無尽にカメラが動き回る。

 

また厨房も客席から見える吹き抜けのような間取りとなっており、時に厨房の外から、料理担当だけで会話する際は、カメラも厨房の中に入って間近で捉えていく。

厨房にいるスタッフは、前菜担当や魚介類担当が作業している狭い通路を抜けてフロアで出ていく。

 

さすがにここはカメラは通れないだろうと思ったが、いとも簡単に通っていく。

回数的にはさほど多くなく、基本的にはフロア側から彼らを捉えることが多かったが、それにしても中を通ってでもワンカットにこだわったのかと驚いた。

 

 

カメラはどこまでも彼らを追いかける。

厨房やバーカウンター、客席だけではなく裏口やゴミ捨て場、時にはトイレにも行ったり店外へも回るのだ。

 

この店がワンカットにうってつけなのは一度裏口に行ったとしても厨房を回らずにフロアに行けるという点。

厨房でじっとしていられないアンディは、色々な場所から厨房へ入ったり、フロアから裏口へ行ったりと駆けずり回るが、カメラが遠回りしないで済むような設計になっているのが映画的に利点となっている。

 

 

しかし手持ちカメラのため、かなり映像がぶれるのが難点だ。

 

店内で沸々と湧き上がっている感情を表すのに、手持ちならではのブレが非常に良い効果をもたらしてるのだが、ずっとこの調子だと目が疲れてきてしまうのは否めない。

恐らく90分という尺は、このような気持ちを抱いてしまうかもしれない観客への配慮と、長編映画という枠に収めたい製作側の折衷案だったのかもしれない。

 

社会の縮図

さて肝心の物語だが、アンディにとってトラブルや不運が、どんどん度重なっていく。

 

多忙故に自分に課せられた役目を怠り、衛生管理官に高級なヒラメを「ラベルが貼ってないから」捨てられ、今夜分の食材を前日に発注しなくてはならなかったのに忘れてしまう。

 

衛生管理官に指摘されたスタッフには八つ当たりをしてしまったり、自分のミスを棚に上げて怒り出したりしてしまうアンディだったが、全ては自分のせいだと理解した瞬間、ちゃんと謝罪をするのは好印象だった。

 

 

冒頭からこんな調子で始まる本作。

この後どんな悲劇が待ってるのか、気が気じゃない状態で見つめることになる。

 

 

アンディ以外にも様々な「怒り」を抱えているスタッフがいる。

 

支配人に昇給をお願いするようアンディに頼んでいるスー・シェフ。

自分のミスを棚に上げて指示をするアンディに苛立ちを募らせるロティシエール。

フランス人が故にアンディの言葉が早すぎて聞き取れない前菜担当。

普段の持ち場でないのにカキを殻から取り出すのに苦戦している黒人男性。

妊娠しながら働くも相方が遅刻してるせいで一人で切り盛りしなくてはならない洗い場担当。

そんな相方の事など忘れ堂々と遅刻し、ゴミ捨てがてらに一服かましながら友人と落ち合い薬物を仕入れるもう一人の洗い場担当。

見らないパティシエがなぜ袖をめくらないのかを知ったことで涙ぐんでしまうパティシエと、そんな彼女から優しくハグされたことで、自分を慰めてくれる存在の素晴らしさを知る見習いパティシエ。

黒人差別を堂々とする客によってメンタルを削られるフロアのウェイトレス。

ゲイであることを隠さずにフレンドリーに接客するも、パリピな女性客から堂々と尻を触られて気分を害す男性ウェイター。

 

 

基本的には忙しさゆえに何かと集中力のないアンディに対してか、お客様第一主義の支配人への怒りがほとんどだが、客から辛い仕打ちを受ける者も多く、とにかく負のオーラがひしひしと伝わるのだ。

 

 

また厨房とフロアでも諍いが生じている。

注文されたウェイターたちは、バーカウンターの横にあるオーダーシステムにメニューを打ち込む。

その際焼き加減やアレルギーといったイレギュラーな注文にも対応しており、細かくオーダーできる仕組みになっているようだ。

 

だが、事前に予約した際アレルギーがあることを客は伝えていたにもかかわらず、支配人は厨房に紙切れ一枚渡して伝える。

これが後に悲劇を生むことになるのだ。

 

 

他にも黒人差別をする客から「ラムが生焼け」だというクレームが入り、厨房側は怒り心頭になる。

ラムは中がピンク色の状態で食べるのが最もいい焼き加減であり、厨房側が間違っているのではなく、こういう料理であることをウェイターがしっかり伝えないといけないと主張。

アレルギーの件然り、焼き加減然り、厨房とフロアの意思疎通がしっかりできてないのだ。

 

にもかかわらず、お客様第一主義の支配人からは「お客様の言うとおりに」の一点張り。

アンディはいちいち事を荒立てたくないのか、支配人の言うとおりにと仲裁に入るが、ロティシエールやスー・シェフらは激怒。

 

 

これを発端に、スー・シェフは支配人への怒りをぶちまけてしまうのだ。

 

そもそもこのレストラン、あまりにもガサツな環境整備によって負担が誰かにのしかかり過ぎてたり、アフターケア含め全ての管理がうまくできていない。

会社でも似たようなケースを見かけたり聞いたりするが、レストランでもあり得る事態なのは、本作でも見ての通りだ。

 

 

100%オーバーの予約率、裏メニューの指示、中途半端に怠ったオーダーシステムなど、スタッフの味方のはずの支配人がお客様の顔色を窺い過ぎていて、結局怒りを買うだけの仕事ぶりになっているのである。

 

スー・シェフは、自由奔放に厨房を離れてばかりのアンディをサポートする役目を担っていたが、さすがにストレスが蓄積しておりとうとう爆発してしまうのだ。

 

資本主義社会の如く搾取する者と搾取される者との諍いを店内で描く中、「お客様は神様」の如くわがままを言いまくる客、SNSの普及によって無茶な要求はやがて脅迫にも匹敵する要求へと変化し、店側と客との諍いにも繋がっていく。

 

さらには多様な人種故に差別も生まれ、正に本作が描く物語は「社会の縮図」を見ているかのように映し出されていく。

 

 

こうした様々な怒りは、家庭と板挟み状態のアンディにも重くのしかかっていく。

 

以前の店で経営者だった元同僚が、料理批評家を連れての来店してくるという悪バッドサプライズによって、アンディのメンタルはさらに悪化。

これまでの騒動や客がアレルギーによって救急搬送された全ての要因が自分にある事、これまでずっと支えてきてくれたスー・シェフの決断によって、彼は悲痛な末路を辿っていく。

 

 

なぜあのような結末になったのか。

彼がちゃんと家庭に帰れるよう、仕事を分担すればよかったのか。

彼にのしかかる重圧を皆で分担すればよかったのか。

怒りが生まれないようなコミュニケーションや環境整備をすればよかったのか。

何が原因かは正直わからないが、結局負の連鎖によって誰かが犠牲になるのだ。

 

社会も同じ構造だったりする。

皆が言いたい放題やりたい放題だから誰かにしわ寄せがいく。

喜びも痛みも分かち合い、思いやりを持つ社会でなければこの物語の結末のようになってしまう。

本作はそんな問題提起を孕んだ作品だったのではないだろうか。

 

 

最後に

だいぶ固い内容になってしまいましたが、すごく面白かったんですよ。

 

日本での公開が決まった時から楽しみにしてた作品で、90分という短い尺や、ワンカットという撮影技術、様々な問題を抱えた者たちによる群像劇や、意外な笑いどころ、唐突なラストに至るまで、かなりのエンタメ作品だったように感じます。

 

一応僕の推測なんですけど、遅刻常習で仕事サボりまくりのジェイクを、アンディはなぜクビにせず減給止まりにしたのかは、たぶんジェイクから薬物を安価で購入してたからじゃないのかなと。

 

他にも「みんなから嫌われている」ことが明かされた支配人が、自分を改めようとスタッフに「今度お酒でも飲みながら話さない?」とアクションを起こしていたことに関しては、物語の中で一番変化したキャラだったのかなと。

 

この店をよくしたいと一番思っていたのは、なんだかんだで支配人だったのかもしれません。

お父さんに弱音を吐いて「やめたい」と嘆いてましたが、七光りだけじゃねえぞ!って意地と、彼らからの不満を真摯に受け止めた証なのかなと。

 

やっぱり怒りをぶちまけるだけで消化するのではなく、どう改善すべきかを見つめることが「沸騰」を抑える一番の近道なのかなと。

そう簡単にはいかないんですけどね、怒ると。

 

とにかく、こんなに不満が飛び交うレストランにはいきたくありませんw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10

映画「ウインドリバー」感想ネタバレあり解説 シンプルで奥が深くて面白い現代西部劇。

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ウインド・リバー

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アメコミ映画好き故に、MCU以外でホークアイとスカーレットウィッチが共演だなんて!あの師弟愛が再び!みたいな興奮は忘れて堪能したい社会派サスペンスでございます。

 

今回鑑賞する映画は、脚本家として名を上げた人の監督デビュー作品。

彼の過去の作品を意識してみると、なんとなくこの映画が何を伝えたいのかが覗けるんじゃないかと。

 

早速観賞してまいりました!!!

 

作品情報

ボーダーライン」、「最後の追跡」などアメリカの地方を舞台に、我々の目に見えないアメリカの暗部を浮き彫りにし問題を投げかけ、そのテーマの奥深さから批評家達を唸らせ絶賛を受けた脚本家テイラー・シェリダン.

 

本作は雪深いネイティヴアメリカンの保留地で起きた殺人事件を背景に、現代のアメリカが抱える闇にフォーカスをあてた作品を手がけた。

 

心に傷を抱えた孤高のハンターと新人女性FBI捜査官という対照的な二人を主人公として進む物語は、荒れ果てた大地での慢性的な問題を下地に、なぜ少女だけが殺されるのかという謎を、苦難の連続にあいながらも寄り添い心を通わせながら殺人事件の真相に近づいていく。

 

スリリングな演出やアクションシーンも要所にいれることで、圧倒的な緊迫感と重みを加えたミステリー仕立てのクライムサスペンスとして完成させた。

 

今作で監督デビューした彼の評価は軒並み高評価であり、ついにはカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞する快挙を成し遂げた。

 

「ボーダーライン」、「最後の追跡」、そして今作とアメリカ西部開拓地域を舞台にした「フロンティア3部作」の最終章と位置づけした今作。 

少女殺害から浮かび上がるアメリカの闇にあなたは何を思うか。

 

あらすじ

 

なぜ、この土地(ウインド・リバー)では少女ばかりが殺されるのかーー 

 

アメリカ中西部・ワイオミング州のネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。

その深い雪に閉ざされた山岳地帯で、ネイティブアメリカンの少女の死体が見つかった。

第一発見者となった野生生物局の白人ハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、血を吐いた状態で凍りついたその少女が、自らの娘エミリーの親友であるナタリー(ケルシー・アスビル)だと知って胸を締めつけられる。

 

 コリーは、部族警察長ベン(グラハム・グリーン)とともにFBIの到着を待つが、視界不良の猛吹雪に見舞われ、予定より大幅に遅れてやってきたのは新米の女性捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)ひとりだけだった。 

 

死体発見現場に案内されたジェーンは、あまりにも不可解な状況に驚く。現場から5キロ圏内には民家がひとつもなく、ナタリーはなぜか薄着で裸足だった。

 

前夜の気温は約マイナス30度。肺が凍って破裂するほどの極限の冷気を吸い込みながら、なぜナタリーは雪原を走って息絶えたのかーー

 

監察医の検死結果により、生前のナタリーが何者かから暴行を受けていたことが判明する。

彼女が犯人からの逃走中に死亡したことは明白で、殺人事件としての立件は十分可能なケースだ。

 

しかし直接的な死因はあくまで肺出血であり、法医学的には他殺と認定できない。

そのためルールの壁にぶち当たり、FBIの専門チームを呼ぶことができなくなったジェーンは、経験の乏しい自分一人で捜査を続行することを余儀なくされ、ウインド・リバー特有の地理や事情に精通したコリーに捜査への協力を求める。

 

コリーとジェーンはナタリーの父親マーティンのもとを訪ね、事件発生の夜にナタリーが恋人に会いに行っていたことを聞き出す。

心を病んだ妻とドラッグ中毒の息子を抱えるマーティンは、かけがえのない存在である愛娘の命を奪われて憔悴しきっていた。 

 

捜査を進めるコリーとジェーンは、鬱蒼とした森の中で白人男性の遺体を発見。彼の身元はナタリーの恋人のマット・レイバーン(ジョン・バーンサル)だった。

 

 

その夜、自宅にジェーンを泊めてやったコリーは、つらい過去を打ち明けた。

 

3年前に娘のエミリーを亡くしたコリーは、それが原因でネイティブアメリカンの妻と離婚し、幼い息子とも離れ離れに暮らしている。コリーの留守中に失踪を遂げたエミリーは、ナタリーと同じように自宅から遠く離れた場所で変わり果てた姿となって発見され、事件の全容は未だ不明のまま。

 

コリーはそれ以来ずっと、娘を守ってやれなかった罪悪感に苛まれ続けていた。

コリーの心の傷に触れたジェーンは、部外者の彼が献身的に捜査に協力してくれている理由を察するのだった。

コリーとジェーンはベンが応援に駆り出した若い保安官4人を引き連れ、マットの同僚たちが寝起きする山奥のトレーラーハウスに乗り込んでいく。

 

やがて不自然な言動を連発する警備員たちとジェーンらとの間に一触即発の緊張が走り、両者が一斉に拳銃を抜いて対峙する非常事態が勃発する。

 

はたして事件当夜、この人里離れたトレーラーハウスで何が起こったのか。

ウインド・リバーの静寂を切り裂く凄まじい銃声が鳴り響くなか、ついに明らかになる衝撃の真実とは……。(HPより抜粋)

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監督

今作を手がけるのはテイラー・シェリダン。

 

冒頭や作品情報でも書いたとおり、脚本家として名を上げたお方。

「ボーダーライン」然り、「最後の追跡」然り、今回も似たような内容だなぁと思ったらこれ3部作だったんですね~。

 

しかも今作は過去2作の評価で立場的に言えるようになったから、かねてより作りたかった、アメリカ最大の失敗ともされるネイティヴアメリカンの保留地問題を題材にしたんだとか。

 

どちらかというとですね、僕は最後の追跡が大好きです。

2作目の「モンタナの目撃者」も素晴らしい現代西部劇スリラーなので是非。

 

キャスト

 野生生物局の白人ハンター、コリー・ランバートを演じるのはジェレミー・レナー。

 

冒頭でも書きましたが、「アベンジャーズ」のホークアイ役が有名ですね。

他にも「ミッション・インポッシブル」シリーズのブラント役や、「ボーン・レガシー」、傑作「メッセージ」にも出演していたのが記憶に新しいところ。

 

 

新人女性FBI捜査官、ジェーン・バナーを演じるのはエリザベス・オルセン。

 

彼女の歴史ですが、一応子役時代からお姉ちゃんにくっついて作品に出演していたそうですが、途中から学業に専念したかなんかで活動していなかったそうです。

 

その後ガチで演技の勉強を積み、カルト集団から逃げ出し姉夫婦の下で暮らし始めるも、洗脳の呪縛から逃れられない苦悩の姿をスリリングに描いた「マーサ、あるいはマーシー・メイ」で劇場映画デビューします。

 

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その後、20年間監禁された末に、突然解放された男が復讐を胸に誓うも、あまりに悲惨で悲しい末路を辿ってく韓国映画のリメイク映画「オールド・ボーイ」、日本が誇るポップアイコンが再びハリウッドで映画となって蘇った「GODZILLA」、戦後間もない時期に活躍したものの29歳の若さでこの世を去った伝説のカントリーシンガーの光と影を描いた「アイ・ソー・ザ・ライト」など大小問わずさまざまな作品で輝き続けています。

 

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そして彼女をスターダムに押し上げたのが「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」.

以降スカーレット・ウィッチ役として,ディズニー・プラスで配信されてる「ワンダヴィジョン」で主演を務めるなど、レギュラー出演を果たしています。

 

彼女のフィルモグラフィーを見てみるとですね、実は共演者の多くがMCUに出演している人たちばかりってことに気づくんですね~。

 

オールドボーイでは、主人公の男役はサノスを演じているジョシュ・ブローリン。しかも濡れ場までやってますからね~。

そしてアイ・ソー・ザライトではロキ役のトム・ヒドルストンと共演。

アベンジャーズAoUでクイックシルバー役のアーロン・テイラー=ジョンソンとは兄弟という役柄でしたが、GOZILLAでは夫婦役で共演しているややこしさ。

そして今回ホークアイ役のジェレミー・レナーとですから!!

 

なんという偶然でしょうw

今後もMCU出演者と共演を重ねていくんでしょうか。逆に貫いて欲しいなw

 

 

 

他の出演者はこんな感じ。

殺害された少女のボーイフレンド、マット役にNetflixドラマ「パニッシャー」や、「ベイビー・ドライバー」、「ザ・コンサルタント」のジョン・バーンサル

殺害された少女の父親マーティン役に、「ローンレンジャー」、Netflix映画「最後の追跡」のギル・バーミンガムなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

この広すぎる場所でどうやって殺されたのか。

その真実に近づいたときどんなアメリカの闇が浮かび上がるのか。

ここから観賞後の感想です!!!

 

感想

やっぱり映画はシンプルで奥深いのがいいよね。

またもや現代西部劇の傑作を作ってしまった監督の脚本が素晴らしい!

正にアメリカの闇だ!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

  

荒野を雪山に変えた西部劇。

ワイオミング州にあるインディアン保留地で起きた一人の女性の遺体発見をきっかけに、不毛の地であり無法地帯であるこの場所が、強者でなければ生き抜くことができない過酷な環境であることや、2人の主要キャラの置かれた状況やバックボーンを丁寧に抽出していく運び、そして突如訪れる緊張感と激しい銃撃戦といったアクション要素でエンタメ感を高め、シンプルでいて奥深さのある良質映画でございました。

 

監督の前作「最後の追跡」でもそうでしたが、アメリカ西部地方における貧困や過酷な環境、保守的な場所でのマイノリティなど、そこで暮らすためには避けて通れないような行動を描くことで、問題を下地にしながら物語を作り上げるのが本当にうまいなぁと。

 

今作でもそれが映画として完成されていたのをみると、今後この人脚本の作品は俺全部高評価にしちゃうんじゃないかってくらいな気持ちになりましたね、今作も。

 

 

物語の構造は至ってシンプル。

過去に娘を殺されたハンターと正義感の強い女性新人捜査官が、雪山の中を裸足で10キロも走って死んでしまった少女の原因を探るべく、タッグを組んで雪山の中を捜索するという流れ。

 

ウインドリバーは、警察官は6人、救急車を呼ぼうにも1時間もかかるほど何もない。

しかもいつ吹雪になるかも晴れるかもわからないような天候で、春でもマイナス20~30度の世界。

 

現地の人間は他の場所に住むことはできたのに留まり、ただただドラッグ三昧。

そんな奴らが他にすることは、は羊のようなか弱い女性に暴行を働きどうしようもない狼ばかりな現状を順序良く描いてく。

 

遺体で見つかった少女は、冷気によって肺を痛め血液が固まって呼吸ができなくなって死んだことが原因。

 

FBIは関与できない、捜査できない、応援も呼べないという三重苦。

結果少数精鋭で捜査しなくちゃいけない。

新人女性捜査官と地元のハンターだけで。

 

 

全く立場の違う正反対の2人がタッグを組んで互いを理解し合って絆を深めていくって流れもいわゆるバディムービーとして成立しているし、こういう不利な状況で悪を追い詰めていくって設定がまた映画を面白くさせている。

しかもこのハンターってのがいわゆる西部劇でいうガンマンになっているというか。

 

さらに彼は捜査官でも保安官でもないから犯人を裁くことができないっていう立ち位置なわけで、それが最後活きてくる構造になってるんですよね。

その時のジェレミーがほんとカッコイイ。

 

 

そして、何か起きた場合自衛するしかないからみんな銃を持ってるんですよね。

だから自然と力がないと生きていくことができない土地になってる。

 

で、誰かを殺したとしても警察官はこの地に6人しかいないため、簡単に死体なんて見つからない。

 

そして中盤と後半で行われる銃撃戦も用意されているし、ハンターである男が自分の過去との決着を今回の事件でしようとするこなど、西部劇要素も盛りだくさんなわけで。

 

 

エピソード的につらい描写もあったけれど、シンプルなのにいろんな要素が凝縮されたエンタメになってるってのが、非常に楽しかったですね。

 

 

あそここういう意味だよね。

まぁ大したことではないですが、あれこれ気づいた細かいことを。

最初ハンターのコリーが、雪山でうつぶせになって羊を襲おうとしているピューマを撃つシーンがあるんです。

彼は野性衛生局に勤めてるってことで、羊を守るためにハントをしているってわけですね。

 

で、この構図がそのまま終盤で描かれるんですよね

正にピューマが羊を襲ってる状況で、見えないとことからライフルで仕留めるという。

まぁピューマが誰で羊が誰かってのは本編を見てね。

 

 

それとラスベガスから直行してきたFBI捜査官ジェーン。

こんな寒い場所だなんて想定しておらず、薄着で来てしまってるんですね。

 

だからコリーの義理の父親の家で防寒着を切るんですが、この防寒着がコリーの死んだ娘のもの。

 

この服を着ることで、ジェーンがコリーの娘の代わりとして見せてるんですね。

だからコリーは終盤ジェーンを守るって行動に結び付くんじゃないかと。

 

守ることができなかった娘への思いを、ジェーンを守ることで補うというか、過去から脱却するというか。

そんな伏線になっていたんじゃないかと。

 

 

あとは銃撃戦ですよね。

これが凄い。

 

殺された少女の弟を探しに、あるトレーラーハウスへ行くとラリッてるやつが戸を開けて登場。

催涙スプレーをかけてジェーンにダメージを与えるんですが、ここから一気に緊張感が高まります。

 

部屋の中に入り、奥の廊下を歩くとスプレーを巻いた奴がライフルでスドンと反撃。

ジェーンは普通の銃なんですけど、向こうはライフルなんですよね。

このライフルの音がでかいでかい!

うわ、銃の音こんなに大きいのかよと。

 

 

で、終盤がガチの銃撃戦。

 

掘削現場の作業員たちに少女の恋人の家を案内してもらう道中、ある作業員がちょっとした墓穴を堀るんですね。

すると作業員たちがいつしかジェーンたちを囲むような歩き方をしている。

それに気付く警備員が急に気を高めて一触即発の状態に。

 

このあとジェーンがドアの前に立ってノックをし続けるんだけど、中にいるはずの同居人が出てこない。

すると警察官の無線にコリーから連絡が。

警察官はジェーンに大声でドアから離れろと警告します。

 

そこから一気に銃撃戦。

ドアの向こうからライフルでジェーンをズドンとしたあと、作業員対警備員の乱れ撃ち。

 

おいおいこんなのみんな即死じゃねえか、と思ったら一応防弾チョッキ着ていたみたいで。

ジェーンは何とか生きながらえるんですが、警備員たちは即死。

 

ジェーンピンチ!と思ったら遠くの方からどんどん作業員を撃ち落とす銃弾が!

 

コリーが遠くから作業員を仕留めてるんですね。

ガンガン仕留めます。

無敵です。無双です。

 

作業員たちはどこから狙ってきてるか把握できないんだけど、どんどん撃たれます。

しかもライフルだからすげ~吹っ飛ぶんですね。

あれ、こんな映画だと思ってなかった。

 

 

このように一気に緊張感が高まりドンパチしていく展開がまぁ最高で。

 

最後はこういう意味って話ではないですが、僕が唸ったシーンということで書いてみました。

 

最後に

この映画で伝えたいことは、ネイティヴアメリカンがこういう無法地帯な場所で暮らすことにアメリカ政府は何も対応してくれない、そしてその無法地帯で力の弱い女性が餌食にされてしまっていること。

 

これも政府は何も対応していない。

しかもエンディングで明らかになりますが、不明者のデータを調べていないという事実。

 

常に恐怖と悲しみを抱えながら生きている彼ら。

そんな場所に追いやった彼らにも目を向けてほしい、と監督は強く願った映画だったのではないでしょうか。

 

 

他にもですね、ジェレミーレナ―がめっちゃいい演技します。

 

獲物を狙う姿や犯人を追い込むときは強く鋭く、ジェーンを誘導する姿は父親にも似た逞しさ、そして自分の過去を明かすときは、目からこぼれない程度の涙を浮かべて語り、悲しさと繊細さを魅せ、最後にはそっと心に寄り添うようなほほ笑みと優しさを浮かべる。

 

あれ?ジェレミーでこんなに心動かされるの初めてかも!

ベストアクトなんじゃないのこれ!?

 

ぜひこの映画を見てゾクゾクしてほしいと思います。

ホラーとか表面的なゾクゾクではなく、描かれている内容でゾクゾクしてほしい。

しかも雪山が舞台ですから。

 

というわけで以上!あざっした!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10

映画「さよならくちびる」感想ネタバレあり解説 ハルレオとシマが僕の人生を肯定してくれた。

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さよならくちびる

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小松菜奈って、きっと音痴だから歌うたえないんだろうなぁって思ってました。

 

何故かというと「坂道のアポロン」て映画で、ラスト2人が演奏して彼女が歌う寸前で終わるんですよ。

何でここでブツっと切って終わりにしたのか、を考えたときに、あ、彼女歌下手なんだ、だからあそこで切ったんだ・・・と勝手ながら思ったんですね。

 

そしたら何ですか、今回フォークデュオで歌うって!

歌えんなら、坂道のアポロンの最後歌って締めろよ!って。

 

でも、劇中歌聞きましたけど、門脇麦の方が全然うまいですね。

 

はい、今回の映画、フォークデュオの解散ツアーから始まるって話で、どうやら男女の、女2人のもつれがからむっていう、百合のにおいも含んだバンドあるあるな話

 

私も元バンドマンですので、こういういざこざよく聞きます。

一体どんなお話なのか。

早速観賞してまいりました!!!

 

 

作品情報

互いの孤独を埋めるかのように始めた音楽活動。

やがてライブハウスをオーディエンスが埋め尽くすほどの人気者になったフォークデュオ「ハルレオ」は突如解散を決めさよならツアーに出る。

なぜ彼女たちは人気絶頂の中解散を決めたのか。

二人を支えるローディーとの関係を浮き彫りにしながら、友情以上の絆で結ばれた二人の思いが、歌の歌詞と共に描かれていく。

 

今を時めく若手俳優たちの共演と、秦基博、現在人気爆発中の女性シンガーソングライター・あいみょんが楽曲提供したことも話題の、これからの未来を生きる人たちに生きる希望を与える青春音楽映画です。

 

 

さよならくちびる

さよならくちびる

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あらすじ

 

「二人とも本当に解散の決心は変わらないんだな?」


全国7都市を回るツアーへの出発の朝、車に乗り込んだデュオ〈ハルレオ〉のハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)に、ローディ兼マネージャーのシマ(成田凌)が確認する。

うなずく二人にシマは、「最後のライブでハルレオは解散」と宣言するのだった。


2018年7月14日、解散ツアー初日から波乱は起きる。

別行動をとったレオが、ライブに遅刻したのだ。

険悪なムードの中、「今日が何の日かくらい憶えているよ」と、小さな封筒をハルに押し付けるレオ。

しばらくして、何ごともなかったかのようにステージに現れるハルレオ。トレードマークのツナギ姿に、アコースティックギター。

後ろでシマが、「たちまち嵐」を歌う二人をタンバリンでサポートする。

 

次の街へ向かう車の中、助手席でレオからもらった封筒を開けるハルを見て、「そうか、今日はハルの誕生日か」と呟くシマに、「違うよ。初めてレオに声をかけた日だよ」と答えるハル。

 

二人が出会ったのは、バイト先のクリーニング工場。

上司に叱られ、むくれていたレオを、ハルがいきなり「ねえ、音楽やらない?あたしと」と誘ったのだ。

 

その瞬間から、ずっと孤独だった二人の心が共鳴し始めた。

ハルからギターを習って音楽を奏でる喜びを知るレオ。

そんなレオを優しく見守るハル。

レオの歌とギターは上達し、二人は路上で歌うようになった。

 

少しずつ人気が出始め、ライブツアーに出ることにしたハルレオは、ローディを探す。

その時、「ハルさんの曲と詞のセンスが好きだから」と名乗りを上げたのが、元ホストのシマだった。

売れたバンドが使っていたというツアー車を用意し、「俺らも行けるところまで突っ走る」と煽るシマに、ハルとレオも自分の夢を叫んで拳を振り上げた。


地方ライブの集客も増え、若い女性を中心にさらに人気が広がっていくハルレオ。

だが、誰も予期しなかった恋心が芽生えたことをきっかけに、3人の関係は少しずつこじれていく。

さらに、曲作りにかかわらないレオが、音楽をやる意味を見失っていった。

 

各々が想いをぶつけ合い、名曲と名演奏が生まれていくが、溝は深まるばかり。

ついに、この解散ツアーへと旅立つまで心が離れてしまった。

 

三重、大阪、新潟、山形、青森と、思い出の詰まったライブハウスを巡って行くハルレオ。

もはやほとんど口もきかないが、ギターもコーラスもピタリと息が合い、その歌声は聴く者の心の奥深くへと届いていく。

 

そしていよいよ3人は、北海道・函館で開くラストライブへと向かうのだが──。 (HPより抜粋)

youtu.be

 

 

 

 

 

監督

 今作を手掛けるのは塩田明彦

 

ぶっちゃけこの人TBSの社員かと思ったら違ったんですね。

ほとんどの作品がTBS絡みだったもんで…。(「黄泉がえり」とか「この胸いっぱいの愛を」とか「どろろ」とか。ね?)

 

僕は監督の作品をほとんど見てないんですが、イメージとしては「泣かせ屋」な感じ。

別にいいも悪いもなく勝手にそう思ってるので気にしないでくださいw

とりあえず監督作品で一番好きなのは北川景子史上一番の作品として語られている「抱きしめたい~真実の物語~」ですかね。

 

 

 

 いわゆる難病もの余命ものって分類にはなってしまうし、ぶっちゃけ俳優とはいえ、方やアイドル、方やセリフ棒読みって二人が主演。

 

当時そんな偏見で劇場での鑑賞をスルーしたんですが、これを自宅で見たときにかなり後悔しました。

 

とにかく北川景子が素晴らしいです。

強気で頑固なんだけど、かわいらしい彼女の姿に世の男子が恋してしまうのもわかるし、彼女を不安にさせないように懸命に愛を注ぐ相手役の錦戸君がこれまた切ない表情で演じるんですな。

 

またクライマックスで話が急変するんですが、これも変に劇的に描かないのが好感持てます。

余談ですが、いったい何者なのかわからない役を演じる寺門ジモンがちょっと怖いですw

なぜジモンだw

ほかの役者はいなかったのかw

 

 

 

登場人物紹介

  • ハル(門脇麦)・・・作詞作曲を担当する。【ハルレオ】を結成し、大切な居場所とと感じている。レオが好き。
  • レオ(小松菜奈)・・・ハルに誘われ、音楽を始める。ハルに憧れており、ハルの自分への気持ちにもシマのハルへの気持ちにも気づいているが、シマを好きになってしまう。
  • シマ(成田凌)・・・元ホストの付き人。バンドの夢をあきらめた過去がある。ハルことが好き。(以上、HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

仲間との別れを決断した「終わりの旅」。3人がどういう気持ちで「始まりの旅」の入り口を見つけていくのか。

それ以上にどんな歌で感動させてくれるのか、僕としてはミュージシャンあるあるなんかが探せたら尚面白いんですが果たして。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

感想

痛くて脆い歪な心の持ち主3人がぶつかりながらも寄り添う様が愛おしい。

そして音楽を生み出した者の気持ちを代弁した歌に感動!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゃんとやってるよ。

解散ライブツアーに出発した三人が持つ心の傷に、泥を塗ったり癒したり愛を与えたりしながら、それでも前へ、終着地点へ進もうとする姿を、オフロードな運びと語り口が静寂を生み、音楽を作り出す人たちの喜びと悲しみ、旅立ちを込めた歌にのせてカタルシスへと向かうラストに、自然と涙が溢れだすステキな映画でございました。

 

本作で描かれた気持ちってのは、元ミュージシャンであるがゆえに共感できる部分が多々ありまして。

 

過去の自分と重なる箇所が多く、これ否定したら昔の自分を否定するのと同じことになるなぁと思ってます。

それくらい本作を肯定したい気持ちです。

 

劇中で、シマがこんなことを言ってました。

「生きてる間に音楽は絶対やるな」というシマの親友が息子に託した言葉を否定し、俺は音楽やってきて全然後悔してない、って言葉にすごく救われて。

 

この言葉が映画の核ではないんだけど、既に音楽の旅を終わらせた僕としては、この言葉が僕の人生を肯定してくれた気がして、自然と涙が出ちゃうっていうね。

 

音楽やってきたから音楽映画にはとことん厳しい僕の評価基準のひとつに、楽器を弾く場面がある場合は、何が何でも嘘ついてほしくないと思ってまして。

 

ミュージシャンを演じるんですから楽器くらい手元見ないで弾けよと。

カリスマ的存在のミュージシャンって設定に説得力を与えるには、そういうディテールにもこだわってほしいわけです。

 

だからね、BECKとかNANAとかぶっちゃけ寒気がする映画だったなぁと。

音楽なめんなよと。

そんな弾き方ねえだろと。

 

ダンスを題材にした映画で役者がしっかりダンスやるのと同じように、ミュージシャンの役やるなら、せめて中学生バンドくらいのレベルでやってほしいわけですよ。

 

じゃあ今回の映画、どうだったかというと、すげえ頑張ってたと思います。

 

細かいところで言うと持ち歌3曲しかなかったり、カポ使ってオープンコードのみで弾いてたり(俺もレオと同じの使ってたw)、「さよならくちびる」歌う時だけアルペジオの手元映してなかったり、どう聞いても音源当ててるじゃんって、指摘する箇所はそこそこあるんですよ。

でもハルレオの2人はしっかりコード抑えて手元見ないで、息ピッタリのストロークで演奏しながらちゃんと歌ってるんですよ。

 

二人がしっかり演奏していたことはホント評価したい。

結構練習したと思いますよ。

 

 

余談ですが、「さよなら歌舞伎町」って映画で前田敦子がCDデビュー目指すミュージシャンの役で、ラストシーンで窓際で弾き語りするんですよ。

抑える力が無さすぎてきちんと音が鳴ってないんですよ。

なのにデビューしようってどういう神経してんだよ、リアリティねえよって思ったんですよね。

 

だから、今後音楽を題材にする映画やるんなら、それなりの特訓をしてくれと、ここで強く言いたいわけであります。

 

賛否別れるんだろうなこれ。

いきなり説教みたいな話になりましたが、映画の内容は至ってシンプルなもの。

 

ハルレオの解散ツアーに向かう中で3人がどういう経緯で出会い恋をし分裂していくのかを、後悔を含ませながらも音楽に真摯に向き合い、旅の終着点へ向かうというもの。

 

時系列はバラバラだし、エピソードざく切りで経緯もなければ説明もない。

 

だから3人の物語の語られていない部分や抜け落ちた部分を、推測しながら見るんですね。

 

 

そんな物語の中で僕なりに好きな部分を言いたい放題言ってこうと思うんですけど。

 

まず歌に込めた意味をMCで吐露することで、説明的に見せないやり方がお上手。

 

特に「誰にだって訳がある」の制作秘話を語るハルがこんなことを言うんです。

 

路上で音楽やってた時、ホームレスがその辺の椅子使って「マッサージ10分100円」てペンで書いた紙をぶら下げて立っていたと。

 

それを見たハルは、「こんな人でも今の生活から頑張って抜け出そうとしてるんだ」と思った一方で、「でも一体誰があそこに座ってマッサージしてもらおうと思うんだろう、どう考えたって無理だろう」って気持ちも持ってて。

 

でもそこへ水商売をやってるような風貌の女性がおもむろに座って、マッサージを受けて至福の表情を浮かべていた光景を目にして、彼女のような人になりたいと思ったと。

 

僕は、隣の芝生が青く見えることが結構あるので、このエピソードに凄く共感したんですよね。

 

で、この回想シーンで水商売の女が突然レオに変わるんです。

あ、このエピソードはハルのレオへの羨望だったんんだなぁと。

 

 

また、音楽が主人公みたいなとこありますからBGMは、ほぼないんですね。

少ないんですけど1か所これナイスだな!ってBGMがありまして。

 

出会った当初ギターの弾けないレオにハルがコードの抑え方を教えるシーンがありまして、特訓の結果何とか覚えたのがCとGとAmなんですね。

俗に言うカノン進行ってやつなんですけども。

アコギやったことある人なら初歩中の初歩です。

この後Fを抑えられるか出来ないかで続けるか辞めるかってのがアコギあるあるの一つなんですけども。

 

で、これを延々と二人で弾くシーンがラストの函館のライブハウスへ向かう途中で流れるんです。

 

旅を終える二人に、出会った時の思い出と称した音をBGMにするんですけど、ここにエレキの単音が乗っかるんですね。

 

この意図を自分なりに解釈すると、実家に帰ったシマが戻ってくるってことを示唆したBGMになっていたんじゃないかと。

 

そもそもこの旅はシマあってこそできた旅。

彼の音が加わることで完成するアンサンブルなんですよね。

あ~これうめえなぁ!と。

 

 

他にも、コインランドリーでハルが遭遇した小さい女の子「レオ」のエピソード。

彼女に母親を訪ねると、コインランドリーの中にいると返すんだけど、お父さんを訪ねると機嫌を損ねてハルを追い払おうとするんですね。

 

このシーンをどう解釈するかなんですけど、もしかしたらレオは幼少のころお父さんから虐待を受けてたんじゃないかなって思ったんですよね。

レオはすごく孤独な身なんですけど、その分愛を欲しがっているというか、誰かに縋らないと生きていけないような感じでして。

ことあるごとに男といい関係になるんですけど、十中八九DV男なんですね。

 

 

一番笑ったとこで言えば、TVの収録で、インタビュアーがハルのことばかり褒めるシーンですかね。

普通デュオをゲストにしたら二人に満遍なく話を振ると思うんですけど、ハルばかり褒めるという。

結局レオは居酒屋の料理をどんどん口に運んで、終いには勝手に出ていくっていう件が最高でw

 

 

で、「さよならくちびる」って歌に関して。

観る前は離れ離れになる相手への哀しい思いを綴った別れの歌なんだろうと思ったんですけど、実際みたらそうじゃないって感じたんですよ。

 

ラストライブでハルが「ハルレオはここで終わりを迎えるけど、私たちが作った歌がみんなの心に残り続けるのか、それとも私たちが消えると同時に消えてしまうのか、自分の中に留めておきたいけど私たちはここで終わるから」と言うんですね。

 

この時に「くちびるってのは、きっと言葉や歌を指している」と思ったんです

 

作った歌や歌詞に込めた思いと離れたくない気持ち、そして歌に別れを告げ、自分以外の誰かの元へと去っていく、そんな思いが詰まった歌なんじゃないかなと。

 

ハルのラストライブで言った言葉と、さよならくちびるの歌詞を紐解いていくと、受け取る側の良しあしで簡単に消費されてしまうのなら、いっそのこと留めておいた方がこの歌にとっては良いことなんじゃないか、って。

 

もうすべてが推測で考察なんだけど、この映画は一見3人の恋のもつれに決着を付けるような別れと旅立ちの話に見えて、もっと音楽に真摯に向き合った、皆に音楽に向き合ってほしいって映画なんじゃないかなって。

ハルのレオに対する思いが歌に籠っていることとダブルミーニングなきがしてならないんですよ、この映画。

 

正直、全体的な構成や脚本は雑だなと思っているんですけど、この答えにたどり着いたときに、きっとそうだって妙な自信があってw

 

 

 

最後に

実はシマが原因でレオがかき回すっていう構図で、ハルは動いてないんですよね。

気持ちがってことですよ?

 

ハルはレオが好き。

それだけでいいんですよ。

 

レオとこうして歌ってるだけでいいと。

でもレオはハルの気持ちを受け止めたい。

だから髪の毛も切ってハルになり切ろうとした。

でもハルのような歌を作ることができない、自分の歌う意味はどこにあるんだろうと。

 

シマもハルの歌に救われ、ホスト人生にケリをつけ音楽と向き合う決心をした。

でもハルの苦しさを知って自分も苦しくなった。

彼女の傷を埋めようとしたけどどうにもできない。

そばにいることでしか支えることができない。

 

そんなハルを思うシマを見てやるせなくなり、自暴自棄に走るレオ。

孤独にさいなまれた彼女にとって、まばゆい光として現れたハルの手料理を食べただけで涙する感情豊かなレオにきっと心が動くでしょう。

 

あかん、とめどなくこの映画への想いや素晴らしさが溢れてくる。

やめとこ、俺もとどめておこw

 

 

どうでもいいけどひとつだけ!いや二つ!!

楽器店に行ったハルがアコギを試奏するんですが、普通店員に試奏させてくれっていいますからね!

勝手に弾きませんよ!

しかも飾ってある奴チューニング絶対くるってますからね!

あんな風に音あってませんからね!

 

そしてライブハウスに着いてギターをチューニングしますけど、チューニングの仕方あれじゃ音正確に合いませんよ!

ハーモニクスでやろうよそこは!

・・・どうでもいい不満でしたw

というわけで以上!あざっした!!

 

 

 

満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10

映画「ザ・プレデター」感想ネタバレあり解説 ならず者軍団全員ホーキンス説。

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ザ・プレデター

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一体何度目の新作なのか。

80年代後半に公開されて以来、今もなお愛され続けている地球外生命体プレデター。

森林から市街地にまで現れ、時にはあのエイリアンとも一戦交えた好戦的種族が再び地球にやってくるのであります。

 

子供の頃「プレデター」ってTVで散々やってたんですけど、当時映画なんて一切見てこなかったので、「コマンドー」と区別ついてないほど認識もなければ愛着もないという…。

 

全く興味のなかったプレデターの新作を大好きなシェーン・ブラックが手がけるということで楽しみにしていました。

 

いわゆる「バディムービー」の申し子と言っても過言ではないシェーン・ブラックがまさか「プレデター」をもバディムービーにしてしまうのか!?

 

そんな期待を胸に早速観賞してまいりました!!

 

作品情報

戦うことを最大の喜びとする戦闘種族・プレデター。

 

その生態は未だ謎に多く包まれているものの、強敵には敬意をはらい、弱きものには手を出さない武士道精神を持ち、戦いに崇高な精神と、高度な知能を備えた地球外生命体だ。

そして過去何度も地球に訪れては人々を恐怖に陥れてきたあの最強ハンターが、少年が起動させてしまった謎の装置によって呼び寄せられ、再び人類を恐怖のどん底に突き落とす。

強さ賢さといった能力をさらに高め、レベルアップして地球に襲来してくるヤツに、人類はどう立ち向かうのか。

 

過去最強クラスのプレデターに劇場で脅えるがいい!!

 

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ザ・プレデター (竹書房文庫)

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THE PREDATOR フジティブ・プレデター アルティメット 7インチ アクションフィギュア

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あらすじ 

 

少年が最凶最悪のハンターを呼び寄せてしまう!

元特殊部隊員で現在は傭兵の父親クイン(ボイド・ホルブルック)がメキシコで手に入れた謎の装置を、息子のローリー(ジェイコブ・トレンブレイ)が箱の中から発見。

彼が起動させてしまったその装置は、地球にプレデターを呼び寄せるシグナルを発信するものだった・・・。

父親とならず者兵士たちは、少年と人類を救えるか!?

プレデターと接触したことで、事態を隠蔽しようとする政府の極秘機関に監禁されてしまったクイン。

彼はルーニーズと呼ばれるならず者の兵士達と共に脱走し、危機が迫っている息子と人類を救うために奮闘する!

“究極のプレデター”出現!果たしてその正体は・・・?

 再び人類の前に姿を現したプレデターは、他の種のDNAを利用し、遺伝子レベルでアップグレード。

より強く、より賢くなっていた。

さらに、通常のプレデターをもはるかに上回る圧倒的なパワーをを秘めた、“アルティメット・プレデター”までもが突如出現!

人類はどのように立ち向かえばいいのか!?(HPより抜粋)

 

youtu.be

 

監督

今作を手がけるのはシェーン・ブラック。

 

実は監督、シュワちゃん主演の「プレデター」にホーキンス兵士役で出演していたんですね~。

劇中でも全然笑えない下ネタを仲間に話すキャラ設定が印象的でした。

 

きっと本作も彼のプレデターに対する愛がたくさん注がれているに違いありません。

 

シェーン・ブラック監督といえばこれまで「リーサル・ウェポン」や「ラスト・ボーイスカウト」といった作品の脚本、そして「アイアンマン3」や昨年公開した映画「ナイスガイズ!」など数々の作品を世に送り出してきました。

その全てがバディムービーのため、今回も同じ設定でプレデターを描くのか気になるところ。(アイアンマン3もちゃんとトニーと少年がバディになってますからね!)

おそらく父と子の物語になるとは思うのですが果たして。

 

監督に関してはこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

キャスト

元傭兵の主人公クインを演じるのはボイド・ホルブルック。

 

そんな彼の出演作をサクっとご紹介。

 

2011年から本格的に映画に出演し始めた彼。

近未来の地球を舞台に、宇宙生命体ソウルに寄生されるも抵抗し、二つの魂を宿った女性の活躍とロマンスを描いた「ザ・ホスト/美しき侵略者」や、妻の突然の失踪に、渦中の人物になってしまう夫の秘密と衝撃の顛末が描かれる「ゴーンガール」などに端役で出演。

その後、息子を守るため親友である組織のボスを敵にまわすことになった殺し屋の逃亡劇「ラン・オールナイト」、愛する夫と娘を守るために銃を手にし戦うヒロインを描いた西部劇「ジェーン」などにも出演し、少しずつ存在感を出していきます。

そして、アメコミ映画「X-MEN」のメインキャラウルヴァリンの最後の死闘と親子愛を綴った現代西部劇「LOGAN/ローガン」で敵役を演じ、認知度を高めていきます。

 

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こちらもどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

ネブラスカ役に、「ムーンライト」、「ホース・ソルジャー」のトレヴァンテ・ローズ

クインの息子・ローリー役に、「ルーム/ROOM」、「ワンダー/君は太陽」のジェイコブ・トレンブレイ。

コイル役に、「LEGOムービー」、「ピッチ・パーフェクト2」のキーガン=マイケル・キー

ケイシー役に、「X-MENアポカリプス」、「チャーリー・モルデカイ/華麗なる名画の秘密」のオリヴィア・マン

バクスリー役に、「ディープ・ブルー」、「ミスト」のトーマス・ジェーンなどが出演します。

 

 

プレデターの強さ

  •  特徴

基本的に彼らは宇宙を舞台に自分の腕試しをしており、気候的に暑く、さらに人と人が争うことで熱を持った場所に現れ狩りをしていく傾向があります。

そして戦い方ですが、強い敵には敬意を表して挑み、弱きものには手を出さないという彼らなりのルールや思考の様子。

「プレデター2」では子を身篭った女警官は武器を持っていたものの、殺されはしなかったですからね。

 

そんな武士道精神で戦いを好むプレデターは、最初は高いところからよじ登ったりジャンプしたりして獲物を観察

始末したら頭部の骨と背骨を抜いて持って帰り、それ以外は皮を剥ぎ、臓物は抜き、足からつるした状態で死体をみせしめるという手口で人々を恐怖に陥れます。

 

 

  • 武器

ヘルメット。

目にはサーモグラフがついており、赤外線によって標的を把握する役目を持っています。

ちなみに「プレデター」では、泥をかぶったダッチ(シュワちゃん)を探せなかったことで、ダッチはプレデター討伐の糸口を見つけます。

 

右腕にはリストブレイドとショルダープラズマキャノン。

リストブレイドは、接近戦用の武器として使われ、自由に格納できる切れ味の鋭い爪。

プラズマキャノンは、ヘルメットと連動し狙いを正確に定め、相手を攻撃する破壊力抜群の武器。

 

左腕にはリストコンピューターなるリモコンを装備。

ここから武器を稼動させたり、ケガした時のための救護キットを出したり、そして自爆をするときもこのリモコンで操作します。

 

他の武器にレイザーディスクという円盤型の武器も装備。

切れ味は抜群で、建物も切るし多少離れた場所でも攻撃できる優れモノ。

そして全身は光学迷彩を施しており、光の屈折を利用してカメレオンのようにカムフラージュし、完全に姿を消すことができます。

 

過去作では刀やヤリなども用いて戦闘していましたが今作では果たして使われるのか期待ですね。

 

ちなみにヘルメットを取ると、と~っても醜い顔をしてます

過去作でも「なんて・・・醜い顔なんだ」と地球人から絶句されてましたw。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回通常のプレデターを凌駕する「アルティメットプレデター」なる存在が登場するようで、プレデターの顔と背骨を持っているプレデターの手が写ったポスターが、それを想起させているように思えます。

果たしてパパは世界を救えるのか!?

ここから観賞後の感想です!!!

 

感想

だああぁっ!!忘れてたよシェーンブラックの持ち味を!

久々に支離滅裂な物語だけど、ダメな奴らが集結して勝利に向かって頑張る映画だよこれ!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正統的続編でした。

愛すべき醜いアイツの何度目かの地球襲来。

人類の危機を脱するために、エクスペンダブルズなヘタレ軍団と何故か銃を扱える女性科学者、裏を返せば人類の進化とも言える発達障害の息子というチーム編成で立ち向かう血沸き肉躍る戦い。

 

ユーモアと下ネタ満載の楽しい会話と激しすぎる銃撃戦、無残な死体と残骸のグロ描写、そしてついに現れるスタイル抜群のアルティメットプレデターa.k.a.ウーピー・ゴールドバーグとの熾烈な争いに、もはや脚本や後付設定などどうでもいい、俺のプレデターはこれだ!という監督の熱い熱い思いが詰まった最強映画でございました!!

 

 

はっきり言って物語は散々なものでした!

 

プレデターよりも強いプレデター―が出てくるのに、その強さが全く持って発揮されない可笑しさ。

1号プレデターが一体何のためにやってきたのかを理解した時、じゃあなんでお前人間殺したんだよwという可笑しさ。

1号からくすねたヘルメットとアームリモコンを活かさない下手さ。

人間との混血という無茶さ。

そしてとうとうプレデターがまともに喋る可笑しさ!

色々とおかしいだらけな話だったんです!

 

捕食者って「ハンター」のほうが名称的に正しいそうなんですが、「プレデター」のほうがかっこいいよね?って会話をしてるように、こういうプレデターの話の方が楽しくね?くらいの感覚で作られているんですよこの映画は!

 

さらに本作は、プレデターよりも人間たちの方が魅力的に描かれてます。

監督はバディムービーの申し子であるとともに、人生ダメな奴が時には勝つことだってできる、というメッセージ性も持ってる方。

そこを意識して解説していきます。

 

 

たまたま護送車に居合わせた軍人たちは、やっぱりロクな奴らじゃない。

アヘンのやり過ぎによる自殺願望、聖書好きなど、いろいろダメ奴らが集ってるんです。

だけどクインの一声で一致団結し、時にサボりながらもきちんと見せ場で活躍するわけです。曲がりなりにも最前線で戦ってきた奴らですよ!肝が据わってます。

 

そんな彼らと紅一点の科学者、さらにプレデターが持つテクノロジーを解読してしまう天才的頭脳を持つ息子という、肉体戦士と頭脳派2人というほぼオフェンシブな陣営で、プレデターと命がけで戦うわけです。

 

 

彼らのキャラ立ち具合が凄く愛らしいんですよ。

 

どいつもこいつも知能指数低いけど「やるときはやる」。

ケイシーが目覚めたら自然に振舞うために、ベッドの上にあれこれ並べたり、ユニコーンの折り紙置いたり、しかもその後彼女がどう出るか賭けてたり、アホだなぁと。

 

その後ローリーが行方不明って時に、みんな協力しない。

しかもそのうち二人は奥さんとテレビ見ようとしてネブラスカに怒られる。

そんなネブラスカも、過去に自分自身を銃で撃って一人で病院まで歩いて命からがらだったってエピソードが出てきて、マジでお前らどうかしてるぜレベルなんですよね。

 

 

護送車内でもずっと下ネタ。

お前の母ちゃんのアソコはユルいからここにいる5人分入るぜ!

お天気ギャルって書かれたクソエロいお姉ちゃんの写真が貼られたヘリ盗んでくる、おまけにプレデターと一触即発って時に「チ〇ポ!」って声出ちゃうキャラ(汚言症でしょうか)いたし、もうすべてがバカで愛おしい!

 

そんなおバカな集団が命を削ってプレデターとやりあい、終いには最高にかっこいい死に方で感動させてくれます。

 

 

監督は「プレデター」1作目でホーキンス兵士役で出演していました。

ひたすら下ネタばかり言ってるちょっと近寄りがたい奴で、仲間にその下ネタジョークを言って笑わせようとしていたんですが、そのホーキンスの遺志を継いだのかホーキンス5人分がでていたような感覚ですよね。

 

実際軍人チームってのもプレデター1で出てくるわけで、そういう点においては原点回帰、もしくは1作品目のオマージュともいうべき人間描写だったのかなと感じております。

 

プレデターに関して

今回プレデターが2体登場する時点で、だいぶ方向性を変えてきたなぁと感じました。

 

もう冒頭からこれプレデター?ちょっとしたスターウォーズになってない?と思える始まり。宇宙船が宇宙船を追いかけるシーンから始まりますからね。そこに地球が映って「ザ・プレデター」のタイトルバックですから。

 

しかもちゃんと1と2の続編として描かれていて、すでに政府の秘密組織がプレデターを追っていて、過去の武器とかヘルメットを押収してあるという新事実。プレデターズはなしなのか。

 

またプレデターのデザインも結構スタイリッシュになっているのも僕は好き。ヘルメットもどこかかっこいいのですよ。あと腕のやつも。トランスフォーマーとかアベンジャーズのウルトロンみたいなどこかアメリカチックでメタリックな感じ。よくわからんけど。

 

 

そこからはもう、新しい試みだらけですよ。

 

プレデターが犬を飼っている、プレデターが翻訳機を使って英語を話す、プレデター語も字幕が出た後いちいち英語に変わる、プレデター異種交配して進化している、しかも人間をも交配しようと企んでる、もはや狩りの目的が変わってきてるじゃん。

 

まだまだありますよ、プレデター脱走して普通に施設の上を走る、プレデターまさかの人間保護、プレデター3メートル越え、プレデター軍隊の手を使ってサムズアップするギャグまで披露などなどこれでもかとリニューアル、いいやアップグレード?どっちでもいいや、とにかく監督がやりたかったプレデターというものを見れた気がします。

 

 

そんなプレデターさん、今回まぁ人間たちをこうもあっさり殺しちゃいますかってくらい殺しちゃいます。その切れ味といったらもう。

毎回恒例の人間つるし上げ血まみれからの、臓物ドーン!大腸だらーん。

首チョンパもあれば胴体真っ二つまで描かれてます。

カニのようなお口で科学者の腕ガブリ、血がブシャー!からの腕もぎり。

 

殺戮描写は徐々にエスカレートしますし、実際プレデター1号はアルティメットプレデターに瞬殺されるんですが、これがもう圧巻といいますか、何もそこまでしなくてもというくらい木っ端みじんになりますし、そんなアルティメットプレデターも最後は無残な幕切れですし。

 

多分プレデターシリーズ史上一番血が流れた作品だったんじゃないですかね。1と2しか見てないんですけどwR15指定になったのもわかります。これヘンにレーティング下げようものなら全カットなんじゃないかってレベルですから。

 

こうだったらもっと盛り上がったのに。

物語のラスト、プレデター1号がなぜ地球にやってきたのか、アルティメットプレデターから追われながらも地球まで来て何を託そうとしたのか、という答えが描かれて、あ、これは続編に繋がっていくんだろうな、というところで終わった今作。

 

このシーンを見て僕が感じたのは、てっきり今回の映画でこれやるんじゃない?って思ったことがまさに描かれていて、その1号の答えをむしろ今回でやったら僕としてはもっと胸アツだったのに、と思って観てました。

えらく遠回しですが、ここ核心に触れるのご容赦ください。

 

要はですね、クインがメキシコでの任務の時にプレデターのヘルメットと腕に装着するリモコン、そして光学迷彩になれるアイテムを盗んで、自宅に送るんですね。

 

これを新しいゲームが届いたと思い込んだ息子のローリーが開けてしまい勝手にいじり出すことで、アルティメットプレデターに居場所を特定されてしまうわけです。

 

ローリーは学校でいじめられているので、お母さんが買ってきたハロウィンで着る衣装を着ずに、このヘルメットとアームを付けて出かけちゃうことから大変なことになってくるってのが今作の流れなんですけど。

 

で、何が言いたいかって、ローリーは発達障害ではあるものの、めちゃめちゃ頭いいわけです。勝手にヘルメット覗いてプレデターのテクノロジーを理解するし、そのヘルメットから爆撃もできちゃうわけです。

 

これをですよ、うまく使えば1号より強いアルティメットプレデターにと対等に戦えるじゃないかと。息子が指揮してお父ちゃんがそれ使って戦う。

例えばプレデターが光学迷彩使って姿を消したとする、それをローリーがヘルメットで探し出してお父ちゃんに指示する、3時の方角!とか。

 

そうすることで親子の物語に深みが増し、監督お得意のバディムービーへと変貌を遂げる。

みたいな。

 

こんな風にして戦うと、本来のプレデターの本質をだいぶ失う結果になってしまいそうですが、既に冒頭からかなりSFチックなわけでしたし、なんなら行くとこまで行っても良かった気がするなぁと。

 

これはあくまで僕がプレデターをバディムービーにするなら、という願望なので、まぁ聞き流してくださいませw

 

だからきっとこの展開が次回作でやったりするのかな、なんてちょっと思うわけですよ。息子が指示してお父ちゃんが戦うという構図。しかもプレデターの武器を使って。

あーだいぶ核心を突いてしまったか、大丈夫か。

 

 

最後に

きっとプレデターファンや、映画を真面目に見ている方は、今回のプレデターのあまりにグダグダな話の流れにつまらないと仰る方も少なくないと思います。

 

どうしてそうなった、プレデターが弱い、人間描写ばかり、とか。

 

そこはもう視点を変えていただいてですね、あくまでプレデターを使った男たちの熱いブロマンス映画だと思ってみていただいてですね、グロとアクションとバカっぷりを堪能していただけたらと思っております。

 

僕は監督ファンという立場から鑑賞したのでこんなことが言えると思うんですが、どうか頭で考えてみるのではなく、体で感じて楽しんでほしいなと。

というわけで以上!あざっした!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

映画「ザ・コンサルタント」感想ネタバレあり解説 ベンアフレックがかわいくて強い!

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ザ・コンサルタント

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昼は真面目に働く会計士、夜は殺し屋。

口が半開きのせいで、見た目頭よさそうに見えないケツアゴマッチョ(けなしてません、むしろ愛です)、ベンアフことベン・アフレックがスマートに演じる!・・・のかどうなのか。

 

 いいですよね裏の顔を持つ男。

かつてそんな役をベンアフはデアデビルやバットマンとして演じていましたが、今回はアメコミではございません。

 

なぜ彼は裏稼業に精を出すのかってのが最大の見所なんですかね。

早速鑑賞してきました。

あらすじ

田舎町のしがない会計コンサルタント、クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)に舞い込んだ、大企業からの財務調査依頼。彼は重大な不正を見つけるが、なぜか以来は一方的に打ち切られる。その日から、何者かに命を狙われるウルフ。

実は彼は、麻薬カルテル、武器商人、殺し屋、マネーロンダリングの達人など、世界でもっとも危険な顧客を抱える“裏社会の掃除屋”でもあった。数字に関して天才的頭脳を持ち、完璧な闇の計算術で悪人たちの裏帳簿を仕切る一方、命中率100%の狙撃の腕と暗殺術を身につけた彼は決して彼らの餌食になることはない。

アメリカ政府も彼の存在に目をつけ、身元を洗うが、名前は偽名、本籍・私生活も不明すべてが謎につつまれたウルフの正体をつかめない。

そして彼の周りで大量に挙がる死体の山――大企業の不正を暴き、マフィアと違法な取引を重ね、国に追われてまで危険な仕事に手を出す、この男の真の目的とは?(HPより抜粋)

 

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監督

 監督はギャビン・オコナー

 

過去作をサクっとご紹介。

アイスホッケーアメリカ代表がオリンピックで金メダルを取るまでの軌跡を描いた、カート・ラッセル主演の「ミラクル」、警察一家に生まれた男が、捜査を進めるうちに家族の絆を揺るがす真相にぶち当たり、選択を迫られる犯罪ドラマ「プライド&グローリー」や、愛する家族を守るため銃をとり立ち向かった女性をナタリーポートマンが演じた西部劇「ジェーン」があります。

 

そして、対照的な人生を歩んできた兄弟が、お互いに宿命を背負い挑んだ総合格闘技で戦う悲痛な運命を描いた「ウォーリアー」では、負けるわけにはいかない兄と勝ち続けなければいけない弟、元の家族に戻りたい父それぞれに共感し、互いのもの悲しさを感じながら、プロさながらのファイトを見せたトムハーディジョエルエドガートンのぶつかり合いに心躍らせ、クライマックスは涙を流してしまうほど熱く痛く感動しました。

 

キャスト

主演のクリスチャン・ウルフを演じるのはベン・アフレック。

 

彼の監督、出演作品についてはこちらをどうぞ。

 

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財務調査の依頼をした会社の経理担当デイナを演じるのはアナ・ケンドリック

 

あのマッドマックスフューリーロードを抑えて全米1位を記録した人気青春コメディの続編「ピッチ・パーフェクト2」が代表作となった彼女。

 

 

彼女の特徴は美貌とグラマラスなバディはもちろんのこと、ブロードウェイミュージカルで鍛えられた歌声にあります。

アカペラで1位を目指す青春コメディ「ピッチパーフェクト」でのパフォーマンスは、Youtubeで世界中で再生されたり、彼女たちが歌う楽曲が大ヒットと話題になるほど。

 

おとぎ話のその後を描いたディズニー映画「イントゥ・ザ・ウッズ」でもメリルストリープエミリーブラントに決して劣らない歌唱力で魅了してくれます。

 

もちろん演技も素晴らしく、解雇宣告人が社会人1年生の女性とキャリウーマンと出会うことで、身軽で気ままだった人生に疑問を感じ見つめなおしていくヒューマンドラマ「マイレージ・マイライフ」で典型的現代っ子の女性社員を演じたことがが評価され数々の賞でノミネートされています。

 

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 彼女の作品に関してはこちらもどうぞ。

 

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他にもウルフの正体を掴もうとする財務省の役人レイモンド・キング役を、アカデミー賞大本命「ラ・ラ・ランド」の日本公開が控えるJ・K・シモンズ

殺し屋ブラクストン役にNetflixドラマ「デアデビル」でパニッシャーで人気となったジョン・バーンサル

ラマー・ブラック役にジョン・リスゴー

財務省の女性アナリスト・メリーデス・メディナ役をシンシア・アダイ=ロビンソンが演じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ彼は天才的頭脳なのか、なぜ無敵の暗殺術を身に着けたのか、なぜ裏社会を目の敵にするのか、なぜ法を犯すのか、巨額の報酬はどこへ?

とにかく謎だらけな男の真の目的は何なのか???

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

 

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感想

ウルフのキャラが面白いのに、会話劇7:アクション3の比率が残念。

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは率直な感想。

基本的には現在と回想を行き来しながら、財務省の分析官がウルフの存在を突き止めていくミステリーな展開。

そして不正調査を途中で中止されたことに納得のいかないウルフが、真相追及を経て黒幕を暴くというお話なのですが、どうにも会話が多く、中だるみしてしまう部分が多かったように思えます

 

ウルフの腕前を披露するための射撃シーン(銃声デカすぎ)や、メリーデスの過去の罪や経歴などを話す序盤をもっとリズミカルにテンポよく見せる、もしくは端折っても良かったのかな、とも感じました。

 

 

確かにウルフの過去が少しづつ明かされていくことは大事だし、クライマックスに向けての伏線の回収に驚きを見せるうえで各々のエピソードも必要なんだけど、もっとうまく簡潔にできたような気がします。

編集が問題なのか脚本が問題なのか。

 

とにかく盛り上がりに欠けたのが残念な要因です。

 

 

個人的にはやはり夜は(昼間もガンガン殺してたけどw)殺し屋なのだから、アクションモリモリにしてほしかったんですよ。

黒幕までたどり着いてガンガンアクションするんですけど、それ以上に苦笑レベルのサプライズが上回っちゃって、どんなアクションしたか思い出せないw

ウルフのキャラは最高!

ただその弛んだ物語を引き締めたのはウルフの萌えすぎる行動でしたw

 

実はウルフはアスペルガー症候群という、普通の人よりコミュニケーション能力が劣る病気を抱えているという設定。

幼少期から父の教えを受け、人並みの生活は克服したものの少々難ありといった行動が、体格の大きさというギャップもあり非常にかわいらしく映っていました。

ただのシャイなおじさんにしか見えませんでしたけどもww

 

監査するため出勤すると、過去15年分の資料を徹夜で用意してくれたデイナが会議室で寝てしまっていました。

普通なら声をかけて肩を揺らして起こすんだろうけど、ウルフの場合、まず大きくドアを閉める!

ガラス窓を叩く!

そして机をたたく!

咳払いをする!

まだ起きない!!

最後の奥の手!

ん~っ!!椅子を揺らす!!

 

 

触れても怒らんけぇ・・・。

 

 

ようやく起きたデイナはウルフを手伝うよう命令を受けたが、ウルフはかたくなに拒否!

 

手伝わせてあげぇや・・・。

 

そして不正を暴いちゃったもんだから、ウルフとデイナは殺し屋であるブラクストン一味から狙われます。

何とかデイナを助け、ホテルでいい感じになるんだけど、ウルフはまず座らない。

ひたすら腕を組み立っているか歩き回る。

 

落ちつけぇや・・・。

 

二人は数学が好きということと、いわゆる日陰の道を歩いてきたという共通点があり、過去バナをすることで距離が縮まっていきます。

 

デイナがすっとウルフに近寄り、

キース!キース!キース!

の雰囲気になるのに、ウルフは思い出したかのように真相に近づく術を見つけてしまいます。

 

女に恥をかかせるなや・・・。

 

他にも、自分の顧客である老夫婦が殺し屋に狙われる場面でも、間一髪で仕留めるのはいいが、軽く手を振って帰ってしまう。

 

ワケを説明したれや・・・。

 

というように素っ気ない、その気ない、笑わない。

でもどこかかわいく見えてしまう,萌えウルフを堪能していただけたらと思います。

 

そもそも、殺し屋と会計士をきちんと分けられるベンアフの演技のさじ加減に拍手ですよね。

 

 

作中に出てきたもの

ソロモン・グランディ

ウルフが正気を保つためにある歌を歌うのですが、イギリスの古い童謡で「マザーグース」の中の一つ、ソロモン・グランディという歌を歌っています。

これは、人生の誕生から死ぬまでを一週間=7曜日で例えた歌だそうです

ウルフはこの歌をリズムも音程もテンポを声量も一定にして歌い、整えていました。

 

 

ちなみにどんな内容かというと、

月曜に生まれ、火曜日に洗礼を受け、水曜日に結婚し、木曜日に病気になり、金曜日にそれが悪化、土曜日に死に、日曜日に葬儀をする、といった内容です。

 

人の一生など、一週間で例えられるほど短くはかないものと皮肉も混じった意味なんだとか。

ソロモングランディという名前も、ソロモンは賢いという意味で、グランディは庶民的な意味を持つ言葉だそう。

 

作中での深い意味はないとは思いますが、韻の踏みやすい歌ということでウルフも整えやすかったのだと思います。

 

ポロック

ウルフが倉庫として使っていたトレーラーの寝室の屋上に飾られていた絵画はジャクソン・ポロックという画家の絵でした。

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こんな絵。

 

彼は20世紀の抽象表現主義の代表的な画家だそうで、アクション・ペインティングと呼ばれる画法で脚光を浴び、彼を起点にニューヨークこそ美術の中心と考えられるようになったんだそう。

 

最初ヴァンヘイレンのベストアルバム!?と思いましたが、配色が同じなだけで全然違いましたw

 

そうそうジャクソン・ポロックは「エクス・マキナ」でオスカー・アイザック演じる変態CEO・ネイサンの家の壁にも、彼の絵が飾られていましたね。

 

ルイス・キャロル

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ウルフが使っていた偽名はルー・キャロル。

後に彼からとったのでは?とメリーデスは予測していきます。

 

不思議の国のアリス」の作者として有名な方ですが、数学者という肩書もありました。

そして、てんかんを患っていたとも言われています。

数学が得意で発達障害を持っていたとなると、ウルフも親近感がわくわけですね。

 

モハメド・アリ

幼少のころのウルフが黙々とジグソーパズルを組み立てているシーンが冒頭映し出されます。

表は真っ白(むしろピースを逆にして作っていた)でしたが、裏には伝説のプロボクサー・モハメドアリがノックアウトする写真の絵が映っていました。

 

モハメドアリもまた失読症という発達障害を抱えながらも、ボクシングの頂点に立った男。

ウルフも無意識に彼に憧れ、どんなハンデも乗り越えられるという意味合いを込めた演出だったのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

まとめ

正直宣伝に煽られた感じがします。

裏の顔を持つ男がものスゲー頭脳で相手を欺き、超絶アクションで敵をぶっ倒していく、ウルフ無双なのかな、と。

 

アクションもカット割りのせいもあってか、動きが鈍く感じキレのないアクションに見えてしまった気がします。

というか全体的に少ないんですよアクションが!

 

話も黒幕は大方予想がついてしまうかもしれませんが、終盤での苦笑的サプライズ(これウォーリアーでしょww)、そして、ウルフをサポートする謎の女の正体が出てきたときはちょっと感動しました。

 

そんな本作の続編が2025年に公開されるということで、1作目をもう一度鑑賞したうえで臨みたいですね。

というわけで以上!あざっした!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10

映画「バッドボーイズ4 RIDE OR DIE」感想ネタバレあり解説 真のハリウッド映画が帰ってきた!

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バッドボーイズ RIDE OR DIE

刑事モノでバディモノの映画、最近では全然製作されなくなっちゃいましたね。

アメリカでは白人警官の差別的な行動が未だ強く問題視されてることもあって、製作されにくいのかもしれません。

 

今回観賞する映画は、そんな絶滅しそうな刑事バディモノでシリーズ最高興収の記録を持つと言われている「バッドボーイズ」の最新作。

 

アカデミー賞でのビンタ事件以降表舞台から遠ざかっているウィル・スミスが本作で完全復活されるかもしれないですし、彼のいつも通りの饒舌なセリフ回しと派手なアクションを堪能したいと思います。

というわけで、早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ジェリー・ブラッカイマープロデュースの元、大ヒットを遂げた「バッドボーイズ」シリーズの第4作。

第2作までは「爆破王」マイケル・ベイを監督に、約20年ぶりに復活した第3作以降は、若手監督のアディル・エル・アルビビラル・ファラーを起用し、それまでのシリーズ累計4億ドルの記録を1作品でたたき出し、大ヒットをおさめた。

 

そんな彼らを従えて製作された第4作は、過去シリーズにおいてもピンチの時に何度も彼らが唱えてきた合言葉「共に生き、共に死ぬ。一生悪友(バッドボーイズ)」の意味を込めたサブタイトルとなっており、年季の入った2人の掛け合いと、生きるか死ぬかの決死のアクションと共に、シリーズ史上最も強い2人の“絆”が描かれる。

 

汚職疑惑をかけられた亡き上司の無実を証明するため捜査する二人が、敵の組織によって容疑者とされてしまう罠にはまりながらも、いつも通りの掛け合いをしながら派手に暴れまわる姿を、シリーズ史上最高のアクションで描く。

 

最強のバディであるマイクとマーカスによるカーチェイスや激しい銃撃戦が見どころの本作。

今回は「スカイアクション」に挑戦するという、正に命がけなアクションが繰り広げられる。

また恒例の舞台であるマイアミから離れて戦うのもポイントの一つ。

壮絶なアクションが期待される。

 

シリーズの主演であるウィル・スミスマーティン・ローレンス、上司のハワード警部演じるジョー・パントリアーノバネッサ・ハジェンズなどが本作でも登場。

馴染みのあるメンバーが、バッドボーイズをさらに盛り立てていく。

 

 

バッドボーイズ (字幕版)

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バッドボーイズ2バッド

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あらすじ

 

マイアミ市警のバッドボーイズことマイク(ウィル・スミス)とマーカス(マーティン・ローレンス)の上司、故ハワード警部(ジョー・パントリアーノ)に麻薬カルテルと関係があったという汚職疑惑がかけられる。

 

無実の罪を着せられた彼のために、独自に捜査を始めた2人は、〈容疑者〉として警察からも敵組織からも追われる身に――。

 

上司が残した最後のメッセージ「内部に黒幕がいる。誰も信じるな!」という言葉を胸に、汚名返上のための命がけの戦いがマイアミを離れて繰り広げられる。

四面楚歌の中、頼れるのはお互いに一人だけ――。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

前作のおさらいまたは予習すればなお楽し。

老齢への道を歩むバッドな二人が、それでも正義と絆を貫きながらバカをやる。

最高じゃねえか。

監督の職人的な作りにも脱帽!!

これこそ真のハリウッド映画だ!!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。

前作で恋仲になった理学療法士のクリスティンとの結婚式へ向かうマイクとマーカス。

あまりの猛スピードにマーカスは「ジンジャーエールが飲みたい」と言いだす。

90秒だけ時間をやるとマイクの許しを得たマーカスは急いでコンビニへ。

 

するとそこには出来立てのホットドッグが。

匂いに釣られて一緒に購入しようとすると、そこへ拳銃を持った強盗が出現。

早く帰らないとマイクに怒られるから見逃してくれとマーカスはお願いするが、そんなこと耳すら貸してくれない強盗。

そこへマイクが登場し、いつもの調子であっという間に強盗を成敗する。

 

 

結婚式には、マイクの同僚や上司、市長まで参列し大いににぎわう。

前作で命を落とした上司ハワードの家族もまた、マイクの結婚を祝っていた。

 

パーティータイムが始まりノリノリで踊り出すマーカスだったが、突然発作を起こして倒れ込んでしまう。

マーカスは自分の肉体と魂が分離される感覚に陥いる。

すると暗がりの海辺にたどり着き、死んだはずのハワード警部と対面。

「ここに来るのはまだ早い」と忠告され、無事生還する。

 

命のありがたさをかみしめたマーカスは、病院の屋上で生きていることの素晴らしさを讃え、マイクを困らせてしまう。

退院後、家に帰るとクリスティンやマーカスの家族が出向かう。

 

退院できたことで大好きなお菓子を食べようとキッチンを漁るマーカスだったが、医者から塩分や糖分を控えるようきつく言われていたため、隠していたお菓子はすべて捨てられており、マーカスはご立腹。

 

 

一方某所。

何者かが銀行家と接触。故ハワード警部の銀行口座に黒い金を送金するよう指示する。

送金を実行した直後、銀行家と愛人は射殺されてしまう。

 

その後、故ハワード警部の口座に麻薬カルテルから金を受け取ったという報道が流れ、犯罪組織と関与していた罪が問われていく。

マイクとマーカスは会議室で捜査の指揮を執っているFBI捜査官に、「ありえない」と直談判。

ハワードの娘であるジュディ刑事も直談判しにやってくるが、手掛かりと思われるマイクの息子・アルマンドの話をすると、ジュディの表情は一変。

父を殺した男を報復すると脅すのであった。

 

マイクとマーカスは手がかりを突き止めるため、刑務所に送還されたマイクの息子・アルマンドに話を聞きにいく。

ハワードが濡れ衣を着せられたのは、麻薬カルテルと戦ったことが原因ではないかとさ推測、アルマンドはその黒幕の顔こそ覚えているが、名前まではわからないと告げる。

 

銀行家を殺した黒幕は、ネット上で足がつかないためのクリーニングをしている最中、あるメールが特定の人物へ自動的に送られていることを知る。

その相手はマイクとマーカスだった。

 

彼らのスマホに送られたメールは、亡きハワード警部の遺言だった。

「これを見ているということは俺は死んでいる、とにかく厚底メガネの巨人に会え」というメッセージを頼りに、かつての同僚フレッチャーに会いに行く。

 

彼の経営するクラブへ向かい、事情を話そうとする2人。

フレッチャーが「壁の液晶を見ろ」と告げた瞬間狙撃されてしまう。

クラブ内での銃撃の最中、散らばるジェリービーンズを頬張ろうとするマーカス。

マイクはすかさずツッコみながら、狙撃手たちを追うことに。

 

外の道路まで追いかけ、あと一歩のことろでマイクはパニック発作を起こす。

間一髪でマーカスに助けられたマイクだったが、動悸と汗が止まらない。

 

 

上司のリタへはハワードからの密告があった事実を伏せ、同僚であるドーンとケリーに事情を話し、壁の液晶に隠されたQRコードを解析させることに。

するとハワードから次のビデオメッセージが表示される。

 

ハワードは「麻薬カルテルを追っていたが、別の同僚が殺されてしまったことからマイクとマーカスには参加させなかった」という経緯を話し、「カルテルと裏でつながっている人物が警察内部にいる可能性がある」と警告する。

 

 

一方アルマンドは、刑務所内でトレーニングをしている最中、囚人らに襲われてしまう。

黒幕へつながる唯一の手掛かりであるアルマンドを、マイクはヘリで移送するよう上司に説得。

ヘリで出発する一行だったが、既に敵の手下がヘリに乗っておりハイジャックされてしまう。

パイロットは脅されながらブラックボックスに救難メッセージを話し、殺されてしまう。

 

やがてマイクとマーカスとアルマンドは彼らの襲撃に遭う羽目に。

先に脱出された敵たちをよそに、マイクたちは墜落しかけているヘリを何とか操縦、湖に不時着させる。

 

警察は、パイロットが遺したブラックボックスを証拠に、マイクとマーカス、アルマンドを指名手配犯に、黒幕らは彼らをさらに追い込むため、懸賞金をかけギャングたちに追わせる計画を立てる。

 

果たしてマイクとマーカスは、亡きハワードの遺志を受け継ぎ、黒幕までたどり着けることができるのか。

そしてマイクは心を閉ざす息子との仲を取り戻すことができるのか。

 

 

・・・というのが、中盤までのあらすじです。

 

素晴らしい職人監督。

まず大前提として、俺「バッドボーイズ」シリーズを大好きってわけではないんです。

一応全部見てるし、2人の掛け合い好きだし、アクションもめちゃんこド派手だから、な~んも考えずに観れるって意味で「好き」って程度なんですよ。

 

ただ本筋から逸れて派手なアクションを長く見せるマイケル・ベイの作劇だけがどうしても許せなくて。

好きな人は良いですよ。ずっとベイのアクション見てられるんですから。

でもさ、モノには限度ってのがあるんですよ。

それが俺的にはきつかったんですよ。

 

そして17年ぶりの新作となった前作では、懐かしさと巧さが際立った作品ではあったものの、急にベイ臭が薄まると、「あれ…」って感じだったんですね。

濃い味の食べ物ばっか食ってたもんだから、急にマイルドだったり薄味だったりすると、口が淋しくなるみたいな。

 

そんな気持ちから、正直本作も「適度に楽しい」程度の期待をして臨んだんです。

そしたら!!

まぁ~~~面白い!!!

 

ハリウッド映画は終わったなんて昨今言われてますけど、本作を見て「まだ捨てたもんじゃないな」なんて思ってしまったほど。

今や作家主義だかクリエイターファーストだか知りませんが、テーマ性ばかりが先行されてこうした大作映画にまで物語が冗長化されてることもしばしば。

 

やはり「娯楽」として楽しませるには、それ相応の編集や構成力、見せ方ってのをちゃんと理解してる「職人監督」が必要だと俺は思うんですよ。

 

そして久々に出会えたのがこの「バッドボーイズRIDE OR DIE」だったわけです。

 

 

もうね、冒頭から素晴らしいんですよ。

マイクとマーカスが運転しながら舌戦を繰り広げ、輩に絡まれ口論にまで発展するけど、瞬間的にしょっぴいてタイトルどん!てのが恒例。

ですが今回はコンパクトに尺を縮めつつもちゃんとインパクトのあるユーモアで、スパッと決めるという。

あぁ~素晴らしい。

 

 

そこからというもの、上司が遺したメッセージに従って単独捜査に踏み込み、あれよあれよと敵の術中にハマりながらド派手なアクションを展開していくわけです。

もちろんその間にマイクとマーカスのしょうもない会話を挟むから、丁度いい塩梅の緩急が保たれていく。

 

こういう風に語ると「いつもと同じじゃん」となるんだけど、とにかくダラダラやらない、無駄がない、本筋から逸れない。

でもって潔く次のシーンで場面変えちゃうんですよ。

これが凄くテンポよくて職人的で、俺ちょっと感動しちゃったんですよ。

 

 

 

今回マイクには「息子との不和の解消」と「パニック発作」が課題となってるんですね。

一方、食事制限やら塩分当分制限やらと半分ん病人的なキャラになったマーカスは、一度の死の淵から蘇ったことで「死」に対しての恐怖がないんですよ。

前作とえらい違いじゃないかと思いがちですけど、「守る者ができたことで起こる不安」と「死ぬことなんて怖くない」というネガとポジを持ったコンビになっているわけです。

 

年齢を重ねたことで行き着く壁を前に、茶々入れつつ鼓舞し合っていく関係性が、これまで以上に凄く魅力的なんですよね。

 

また今回は今まで以上にサブキャラにもスポットが当たるのが最高。

キャラとキャラが対峙し決着や和解をするといった関係性が構築され、さらに「見せ場」も用意されてます。

 

僕が映画に求める「絶対欠けてはいけない」ことと思っているのが「キャラの見せ場」なんです。

それこそシリーズものは、回数を増やせばキャラも増えることで、別に登場しなくていいのに出さなくてはいけないキャラもいれば、登場してるにもかかわらず大した活躍をしないキャラがいる作品をよく見かけるんです。

 

でも本作は、増えてしまったキャラの見せ場をしっかり作ってるんですよ。

マイクはアルマンドとの関係を、マーカスはそんなマイクをしっかり支えながらコメディリリーフとして体が余り動けない分笑いで掴む。

アルマンドは、ハワード警部の娘と対峙をするけど、孫娘を救うことで手打ちに。

マイクとマーカスの上司のリタは、旦那である市長が黒幕であることを知り、けじめをつけていく。

そんな彼らを今回恋仲が発覚したドーンとケリーがサポートし、しっかりアクションもこなす。

 

前作と同じ尺の中に、こうしたキャラの見せ場をちゃんと自然に作っているのが、僕が求めてる映画の形としてものすごく感動したんですよね。

 

 

そして今回一番最高だったのが、マーカスの娘婿であるレジーが大活躍するところ。

 

これまでマーカスとマイクに脅されてばかりで、大した活躍もなくいじられてきたキャラでした。

しかし今回はマーカスの留守中に家に侵入してきた敵を、軍人上がりの格闘術で一網打尽するんです!

 

分割された監視カメラのモニター越しで見せてくれるので、どこかゲームっぽい映像になってるんですけど、あまりの強さとそれが「ゲームキャラ」に見えてくるという笑いに繋がっていて、ものすごく楽しく見れるんですよね。

 

こういうキャラの使い方と見せ場を自然に物語に組み込んで見せ、さらにタイトに編集して詰めながらテンポよく楽しませる本作。

僕が求める「真のハリウッド映画」に認定したいくらい最高でした。

 

 

 

最後に

他にもアカデミー賞で問題となったウィル・スミスの「ビンタ騒動」を本作で自虐的に描くシーンもあったり、マーカスが飼い主でマイクがロバだというよくわからん例え、過去作に通じるネタやキャラがちょいちょい出たりと、単発の物語だけどしっかりシリーズとして繋がってるのも、ファンとしては堪らなかったんじゃないでしょうか。

 

これは多分僕しか唱えてない説なんですけど、配給のソニーピクチャーズって、ここ数年大作モノに関して言うと、一昔前の「娯楽映画」を今凄く追及してると思うんです。

だからと言ってシステムとか多様性とかが一昔前の体質ではなく、あくまで「作品の中身」。

 

ゴーストバスターズにしても、マダムウェブにしてもヴェノムにしても、はっきり言って「テーマ性」や「メッセージ性」ってものすごく薄いんですよ。

もちろん全くないのではなく、そこに重きを置くよりも「スペクタクルな瞬間」とか「シリーズものだけど続編からでも問題なく楽しめる」ような、誰でも気軽に色々考える必要もなく、「映像そのものを楽しんでもらう」所を重視してるというか。

 

今の映画って、映画そのものが描く中身を紐解かないといけない風潮ってあると思うんです。「これは○○の事を背景に描いてる」って。

そういうのも正直大事だし、今を映すのが映画の役割だったりするし、自分もそこに視点を向けるようにしてるけど、ぶっちゃけ「疲れる」。

本来ハリウッド映画が我々に見せてきたモノ、もしくは根底にあるモノって「楽しさ=娯楽」だと思うんです。

 

ソニピク、もしくはコロンビア映画が100周年という節目に、こうしたバッドボーイズはじめ、「一昔前の娯楽に特化した映画」を甦らそうとしてるんじゃないかって説をね、もっと知ってほしいというか気づいてほしいというか。

だから正直つまらなかったとしても僕は応援したいんですよねw

こんなもんでいいだろうっていう寛容な受け止め方。

 

その中でも本作は、マジで俺が求めてた真のハリウッド映画=職人気質な監督による娯楽特化型映画として、最高の映画だったんじゃないかと。

 

ぶっちゃけ内容に関して全然触れてないんですけど、マジで編集が巧くてテンポが良くて、キャラの見せ場があって、それでいてずっと笑えて楽しく、アクションも最高にかっこいいっていう。

こういう映画、ホントにもっと増えてほしい。

できればシリーズものでなく、オリジナル映画で。

がんばれソニピク!!!

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★8/10


映画「コンティニュー」感想ネタバレあり解説 1万回ダメでも1万1回目は何か変わるかもしれない。

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コンティニュー

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 ゲーム性を秘めた映画はかなり昔から存在していますが、00年代以降テクノロジーの進化により、現実と虚構の見分けがつかなくなるほどクオリティを増しており、ゲーム性を秘めた映画に一役買っていると思います。

 

80年代には「ウォーゲーム」や「トロン」、90年代にはタイトル通り「ゲーム」なんてのもありました。

00年代以降は「デスゲーム系」が台頭しましたが、10年代には「ミッション:8ミニッツ」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、「ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングル」など、残機や無限リセットシステムなどを利用した、どストレートなゲーム性を秘めた作品が製作されていきました。

 

そもそも「ゲーム性を秘めた映画」の定義って難しいと思いますが、基本的には主人公が目の前の問題や難関をクリアすれば大体が「ゲーム性を秘めた映画」なんですよね。

 

また、「キャラクター」に感情移入しやすい構造にしていくことで没入感を高めた、全編FPSの「ハードコア」や、「スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団」なども作られ、ゲーム性の強い映画はさらなる進化を遂げています。

 

 

今回鑑賞する映画は、有野課長も真っ青の「無限コンティニュー」的SFアクション。

何度死んでも繰り返される世界で、コンティニューしながら攻略していく「タイムループ」モノの映画です。

 

ゲーム少年だったあの頃を思い出させてくれるようなワクワクする設定に惹かれ、早速鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

作品情報

キャプテンアメリカ:ウィンター・ソルジャー」などで活躍するアクション俳優主演のSFアクション。

 

謎の殺し屋集団から狙われ同じ一日を繰り返す男が、何度もコンティニューを繰り返しながら世界を攻略し、真相を究明していく。

 

指にまめができるほど難易度の高いゲームに熱中した頃を思わせるかのような、「リセットシステム」を採用した本作は、まるで対戦型格闘ゲームを延々とプレイしながら、レベルアップしクリアしていくといった、高い満足度を得られそうな新感覚のアクション映画となっている。

 

本作を「特攻野郎Aチーム」をはじめとする「漢の映画」を数々手掛けてきた監督の手によって、ゴリゴリのアクションを見せながらもゲーム性の高い作品に仕上げた。

 

また「ラスボス」を大御所メル・ギブソン、「ヒロイン」をナオミ・ワッツといったベテラン勢が脇を固めているのがナイスなキャスティング。

 

一体どうすれば「死のループ」を抜け出せるのか。

 

観る者はきっと自分がプレイヤーになった気分になり、なかなか抜け出せないステージに歯がゆくなり、「ファミ通」や「大技林」を欲しがることだろう。

 

 

 

 

あらすじ

 

朝目覚めた瞬間から謎の殺し屋に襲われ殺される元デルタフォース特殊部隊員のロイ(フランク・グリロ)。

 

銃で撃たれることもあれば、爆弾で吹き飛ばされることもある。

首を切られることもあれば、刃物で刺されることもある。

ところが何度殺されても生き返り、同じ1日を繰り返している。

 

死のループから抜けだすために何度もトライ&エラーを重ねる中、科学者である元妻からタイムループの鍵を握る極秘計画「コードネーム”オシリス“」の手掛かりをつかむ。

 

ロイは真実を暴くため、追われる身となった元妻(ナオミ・ワッツ)を救うため、今度は自ら殺し屋集団の元に出向き追い詰め、計画の責任者である軍属科学者ヴェンター大佐(メル・ギブソン)の居場所を突き止めていく。

 

果たして、タイムループを抜け出し、明日にたどり着くことはできるのか―(HPより抜粋)

 

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監督

本作を手掛けるのは、ジョー・カーナハン

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おい見てくれよ、この素晴らしい笑顔!!

まるで少年のような眼差しで本作を手掛けてくれたのかと思うと、これは期待大なんじゃないかとワクワクしております。

 

そんな監督の作品をサクッとご紹介。

監督自身が主演した「ブラッド・ガッツ」で長編映画監督デビュー。

 

その後、2人の刑事が其々の葛藤を浮き彫りにしながらも事件を追う姿をクールに描くクライムサスペンス「NARC/ナーク」、マフィアへの背信によって賞金首となったマジシャンを巡り、暗殺者やFBIらが壮絶な工房を見せるバイオレンスアクション「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」など、ゴリゴリの男の映画を手掛けていきます。

 

そして1980年代に日本でもブームを巻き起こした海外TVドラマを映画化した「特攻野郎Aチーム」の監督に抜擢。

パラシュートで降下する戦車は荒唐無稽ながらアガるシーンだったのではないでしょうか。

 

 

他にも特攻野郎Aチームで主演を飾ったリーアム・ニーソンを主演に迎え、極寒のアラスカを舞台にサバイブする羽目になるアクション映画「THE GREY/凍える太陽」、型破りな刑事コンビが暴れまくる人気シリーズ第3弾「バッドボーイズ:フォーライフ」では原案と脚本として参加しています。

 

とにかく野郎が好きそうな要素が盛りだくさんの作品を数多く手掛けているようです。

恋愛映画よりも800回目のダイ・ハードを選ぶくらい根っからのアクション大好き野郎なので、本作もどんなアクションが見られるのか楽しみですね。

 

 

 

キャスト

元デルタフォース特殊部隊員のロイを演じるのはフランク・グリロ。

 

キャプテンアメリカ/ウィンター・ソルジャー」でラムロウ、後のクロスボーンズ役として出演したのが有名だと思います。

 

 

実は彼がブレイクしたのはMCU作品ではなく、共に負けられない理由を抱く兄弟が総合格闘技で戦うことになるドラマ「ウォーリアー」に出演したことなんだそう。

 

それからというもの、ジョー・カーナハン監督作品や、全編ファウンドフッテージ形式で描いた二人の警察官の姿を描いた「エンド・オブ・ウォッチ」、ビンラディン殺害の真相を描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」などアクション系の作品に多数出演しています。

 

1年に一度だけ全ての犯罪が合法になる近未来のアメリカを舞台にしたスリラー映画の第2弾「パージ:アナーキー」で初主演。

宇宙人に征服されてしまった地球を舞台に、宇宙人への反逆ののろしを上げる人間たちを描いた「スカイラインー奪還ー」などにも出演しています。

 

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

クライブ・ヴェンター大佐役に、「リーサル・ウェポン」シリーズ、「ブルータル・ジャスティス」のメル・ギブソン。

ロイの元妻ジェマ・ウェルズ役に、「マルホランド・ドライブ」、「ダイアナ」のナオミ・ワッツ。

ダイ・フォン役に、「007トゥモロー・ネバー・ダイ」、「クレイジー・リッチ!」のミシェル・ヨー

ブレット役に、「ハング・オーバー!」シリーズ、「魔女がいっぱい」のケン・チョンなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

死ぬ度にレベルアップしながら無限コンティニューを繰り返す男が、一体どんな攻略法で敵を一網打尽にするのか。

壮絶なアクションとゲーム要素満載な物語に期待大です!

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

元妻と息子のために何度死んでも立ち上がる不屈の男フランク・グリロが大活躍!!

凄く良い題材なのに、なぜこうも先に進まねえ!オチもひでえっ!悔しい!!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

設定はクソ楽しい

元妻の計らいによりひたすら同じ毎日を繰り返してしまう事態に陥った元デルタフォース部隊員が、押し寄せる謎の殺し屋たちやトラップを攻略しながら真相を突き止めるために戦い抜く姿を、8bit調の文字表記やサウンド、「ギャラガ」や「ストリートファイター」などの懐ゲーを巧みに使い、変えられない過去を受け止め自身を変えることが大切だという答えもしっかり描いた、ゲーマーならワクワクしそうな内容なのに残念なことにクソゲー確定な映画でございました・・・。

 

 

どんなゲームも何度もプレイしないと全クリなんてもってのほかで、次のステージにも進むことができない。

ましてや子供の頃はお母さんに「ゲームは1時間まで!」なんてルールを作られ、誰もがあの時「大人になったら無限にやってやる!」なんて思いを抱いた人も多いでしょう。

 

そんな元ゲーマー、現ゲーマーの人にうってつけな本作。

 

朝起きたらいきなり「モーニング野郎」なる殺し屋が襲い掛かり、無事倒したとしても外からドでかいガトリング銃の雨が降る始末。

まだステージ1だというのにハードな展開は、ゲーマーなら腕が鳴るといったところでしょう。

 

一応主人公は元デルタフォースの部隊員ということで、戦闘能力の高さはピカイチ。

だから朝すぐ起きても相手の攻撃を見事に回避し、余裕綽々で攻略していくんですね!

 

・・・って言っておきながら、物語の始まりはチャレンジ140回目というww

 

おいおいおいおいあんだけ戦闘能力高くてもまだステージ1をクリアできてねえじゃんww

 

まぁまぁ慌てなさんな。

そもそもこのゲーム、我々が思うゲームではなくある機械によって作られた「タイムループ」な世界。

だからセーブポイントもないし、残機もない。

とりあえず死んだら、最初からやり直しってだけなんですね。

 

だから主人公ロイは物語の冒頭こそ140回目のチャレンジですが、結構先まで行ってるんです。

 

ヘリコプターを攻略した後は、マンションの高い場所からトラックの荷台に落ち(何度も失敗したそうw)、オレンジのオープンカーをぶんどり、女二人組の殺し屋に車で追われながら向かってくるバスを回避し、落ち着いて酒が飲めるバーまでたどり着くんですね。

でもここから先がどうしても進めずに、既に半分諦めモードの気持ちからスタートするってわけです。

 

物語は、そんなやっつけ感でステージを進めていくロイが、これまでどうやって攻略してきたかをテンポよく駆け足で進めていきます。

 

モーニング野郎に、ヘリ野郎、ヒトラー崇拝の女殺し屋二人組、主人公を車で引きずり回すサイコ野郎もいれば、背のちっちゃいボマーと、あらゆるタイプの殺し屋と対決しながら、何度も何度も攻略していきます。

 

 

普通の日常で襲われるため、ネクストステージもなければ中ボスが待ち構えるような設定はなく、どこを行ってもいいし、何をしててもいいのです。

だけどなぜか敵に見つかりゲームオーバーを繰り返すから、突破口が見つからない。

 

 

主人公同様、ゲームやってる時も壁にぶつかるとやる気無くしますよね~。

どうしてもクリアできなくて、しかもセーブできないから、ここで諦めるとまた最初からやり直して目的地まで行かなきゃいけない。

だから諦めたくないけど、お母さんがご飯だっていうから泣く泣く電源切るみたいな。

 

序盤のロイの表情は、そんな当時ゲームに夢中だった自分の子供時代とがダブりますw

 

 

また彼を悩ませるのは、いつも同じ話ばかりする周囲の人たち。

オレンジのオープンカーを盗む際に持ち主から「車泥棒!」と何度も叫ばれるもんだから、自分も一緒に叫んじゃう茶目っ気たっぷりなシーンもあれば、なかなか先に進めないバーのカウンターの隣に座る安全保障局のデイヴの話も丸暗記してしまうくらい同じ話で、ロイ曰くアルコール度数の強い酒を注入しないとやってられないんだとか。

 

ドラクエとかでもありますよね、話しかけてもいつも同じ話しかしてくれない人たち。

たまには違う話してくれって何度思ったかw

ロイも同じ気持ちなんでしょう。

 

しかし!

モブキャラだと思ってた人物や敵たちは、ロイが違う対応や要求をすれば別の対応をすることを発見。

これがロイの突破口へと繋がってくのであります!

 

 

 

どうやらロイは、元妻の職場で募集していた警備員の仕事に応募するため履歴書を持ってきたんですが、どこかよそよそしい元妻の態度や、やけに大柄の警備部長の姿に「どこか変だ」と感じ始めます。

 

元妻は急にロイの寸法を測ったり、体重を聞いて来たり、いきなり髪を切り始めるなどして、ロイのデータを取っていく。

そして耳元で「オシリス」という言葉をささやき、ロイはそのまま職場から離れることに。

 

一体全体元妻が自分に何をしようとしたのかわからないし、理解しようともしませんでしたが、とりあえず行きずりの女と性欲任せにイチャイチャしちゃうロイ。

 

そして、彼のタイムループはその翌日の朝から始まるのであります。

 

 

黒幕は元妻が働いている研究施設の上司であるヴェンター大佐。

「オシリス」と呼ばれる計画を実行するためにロイの元妻をひたすら働かせるんですが、大佐は世界が歩んだ過去の失敗をチャラにしてリブートしたいという野望があり、この装置を開発したことが明かされます。

 

装置の完成が遅れていることや元旦那を職場に連れてくる元妻に忠告するために、「イノシシを襲うヘビ」の話を長ったらしく語るんです。

要はヘビはただイノシシを襲ったのではなく、イノシシが自分の卵を襲おうとしたから愛故に襲ったって話なんですが、結局「装置を早く完成させろ」っていう意味の話だったってことなんすね、わかるか!

 

話が雑すぎて悔しい

血がバンバン飛び散ったり軽く吹っ飛ぶような死に方を、テンポよく編集して見せる過去のトライ映像を、自身のナレーションによって状況説明しながら見せる序盤は非常に楽しいです。

 

このテンポで進んでいけば、こりゃ面白いぞ!と期待値を上げて見ていきましたが、なぜか急に失速しちゃうんですよね・・・。

 

恐らく監督の意図で「このシーンはゆっくり丁寧に見せないと伝わらない!」とでも思ったのか、ロイが前日を振り返るシーンはやけにテンポが悪いんです。

 

元妻との再会からヴェンター大佐の凄み、その日の夜のロイの営みまでを結構な尺を使って見せるんですけど、せっかくのオープニングの面白さを損ねてしまうくらいのダラダラした内容。

 

なんとか失ったテンポとテンションを取り戻そうと、再びアクション満載で行くんですけど、せっかく難易度の高い殺し屋たちを一網打尽しちゃうし、攻略の糸口を見つけるんだけど、なぜか別のルートを進んでしまって息子のことを考えたりしなきゃいけなかったり、逆にラスボスばかり考えてしまって息子のこと忘れてしまったりと、全然先に進まない残念さ。

 

おまけにコンティニューし過ぎて「世界の終わり」を迎えてしまい、冒頭以上に戦意喪失になってしまうロイが出てきて、せっかくのゲーム性を秘めた映画が台無しになってやしないかと。

 

で、冒頭のシーンからいきなりヘリコプターを強奪してラスボスのいる場所までひとっ飛びしてしまう「超ショートカット」攻略で興ざめ。

 

結局一番強いのがラスボス手前で現れる中国刀使いの観音ていう女剣士で、肝心のメル・ギブソンは大して強くない…。

 

 

どうしても手前の女剣士より先に進まないから、再びコンティニューしてバーで出会った中国系のおばちゃん「ダイ・フォン」に剣術を教えてもらうことに。

マトリックスでネオがモーフィアスに武術やら拳法やら教えてもらうシーンがありましたけど、正にアレです。

 

フォンが国内にいるのが1日しかないからってことで、1日中稽古つけてもらってからコンティニューを繰り返して、あっという間にレベルアップ。

観音をあっという間に倒しちゃうんですよね。

 

 

ゲーム性を高めるためにはやっぱりいくつものルートを作るのでなく、ひとつひとつステージを作って、ロイの戦闘力が上がっていく姿だったり、キーアイテムやらキーパーソンやらを一つの道筋に散りばめたりする方が効果的だと思うんです。

要はもっとロールプレイングな物語にした方が面白いんじゃないかと。

 

日常が舞台なので難しいとは思うんですけど、あれこれ行き過ぎなんですよねロイ自体が。

バスを回避してバーにたどり着いてから手がかりを見つけ、殺し屋たちとたっぷり戦った後に息子を救出、ラスボスがいるアジトで出くわす観音がどうしても倒せないからフォンに稽古をつけてもらって、ラスボスまで行く。

こういう手順通りの道筋で行けばよかったのかなぁと。

 

あとはもうラストよ。

正直ポカーンで終わってしまった。

ラスボスをあっけなく倒してしまう爽快感の無さから、元妻と息子を守るために自己犠牲のような解決策で幕を閉じるんです。

 

ハッキリ言ってよくあるパターンですよ。トム・クルーズがこの手のパターンでハッピーエンドさせる映画、ありますよね。

あれと大差ないんですが、まだトム・クルーズが自己犠牲して終わる映画の方が爽快感がある。

 

せめてロイがいなくなった後の日常を見せるとかすればいいんですよ。

元妻と息子が朝食をとって、ロイの話をするとか、劇中で出てきた「イシスとオシリス」の話を息子にするとか、要はその後の世界を見せれば物語としては締まるんじゃないの?と。

 

希望に満ち溢れてるかのようなロイの表情をドアップで見せて終わりって、なかなかの投げやり感がして「え?これで終わり?」ってなっちゃったんですよね。

 

 

最後に

色々文句が出てしまう映画なんですけど、こういうゲーム性の高い映画って今やトレンドで、題材や設定をうまく活かせば超面白い映画になる素質があるんですよね。

だからこうして足を運んで見に行ったわけで。

 

やっぱりオープニングのあのテンポでガンガン突き進んで、ロイがどんどん死んではリトライして攻略していく展開をもっとスマートに見せたら最高かなと。

途中自分で死んでリトライするってアイディアとかもすごく良かったんで、いわゆる「ゲームプレイあるある」をもっと巧みに使ってほしかったなぁと。

 

とりあえずB級映画として見る分には最高です。

残念だったけど嫌いにはなれない、そんな映画でした。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「バービー」感想ネタバレあり解説 人間の世界で見つけたものとは。

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バービー/Barbie

続編モノばかりがひしめく昨今のハリウッド映画大作に、ようやく光が差し込みました。

玩具を題材にした本作「バービー」が、クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」と同日公開ということも手伝って、北米では空前の大ヒットを記録しています。

 

「バーベンハイマー」なるミーム化も含め(是非はともかく)、海の向こうでの盛り上がりが非常にうらやましいです。

 

北米での初週は、早朝から満席が続き、劇場をピンク色に染めたという異例の事態となった「バービー」。

なぜ皆がそこまでして映画館に足を運び、絶賛の声を上げているのか。

その理由を探りながら、早速観賞してまいりました!

 

 

作品情報

UNOやホットウィールなどを手掛ける玩具メーカー「マテル」が生んだ着せ替え人形「バービー」を、「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 birds of pray」、「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」のマーゴット・ロビーを主演に実写映画化。

 

完璧でハッピーな毎日が続く“夢”のようなバービーランドで暮らすバービーとケンが、ある日完璧とは程遠く悩みの尽きない“人間世界(リアルワールド)”に迷い込む姿を、歌やダンスシーンを交えながらポップに描く。

 

自身の青春時代を投影した「レディ・バード」や、名作小説を新たな視点で描いた「ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語」などでアカデミー賞に数多くノミネートや受賞を果たしたグレタ・ガーウィグ監督が、バービーランドを大胆かつ繊細にぶっ飛んだ世界に構築し、「完璧な存在=バービー」の変化を通じて、世の中の女性やそうでない人たちにもハッピーになれる物語を作り上げた。

 

バービーのボーイフレンド・ケン役には、「ラ・ラ・ランド」でのミュージカルパフォーマンスや、「ナイスガイズ!」でのコメディ演技が記憶に新しいライアン・ゴズリングが演じる。

 

他にも、「シャン・チー テン・リングスの伝説」のシム・リウや、クリス・エヴァンスの弟スコット・エバンス、MCUドラマ「シークレット・インベーション」のキングズリー・ベン=アディル、BBCドラマ「ドクター・フー」の14代目主人公に抜擢されたチュティ・ガトゥなどが「もう一人のケン」を演じる。

 

女性陣では「ゴーストバスターズ」のケイト・マッキノン、世界的歌手デュア・リパ、「ナイル殺人事件」のエマ・マッキー、トランスジェンダーモデルとして活躍するハリ・ネフ、「アグリー・ベティ」のアメリカ・フェレーラ、「プロミシング・ヤング・ウーマン」を監督しアカデミー賞を席巻したエメラルド・フェネル、「ワイルド・スピード」シリーズでも活躍する大女優ヘレン・ミレンなどが出演する。

 

またウィル・フェレルマイケル・セラジョン・シナといったコメディ映画御用達の面々も忘れてはならない見どころの一つ。

 

撮影で大量に使用されたピンク色の塗料が、全世界で品薄状態になってしまったともいわれる本作。

完璧な世界から人間の世界へとやってきたバービーとケンは、何を見つけるのか。

 

 

 

あらすじ

 

すべてが完璧で今日も明日も明後日も《夢》のような毎日が続くバービーランド!

バービー(マーゴット・ロビー)とボーイフレンド? のケン(ライアン・ゴズリング)が連日繰り広げるのはパーティー、ドライブ、サーフィン。

 

しかし、ある日突然バービーの身体に異変が!

原因を探るために人間の世界へ行く2人。

 

しかし、そこはバービーランドとはすべて勝手が違う現実の世界、行く先々で大騒動を巻き起こすことに─?!

 

彼女たちにとって完璧とは程遠い人間の世界で知った驚きの〈世界の秘密〉とは?

そして彼女が選んだ道とは─?

 

予想を裏切る驚きの展開と、誰もの明日を輝かせる魔法のようなメッセージが待っている─!(HPより抜粋)

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キャラクター紹介

  • バービー(マーゴット・ロビー)…カラフルでおしゃれな衣装に身を包み、いつもハッピーな人気者。ある日体に異変が起こり、空は飛べなくなり、シャワーからは冷たい水。かかとの上がった“バービー・フィート”も床にべったり。どうしたらいいのかわからなくなったバービーは、自分の持ち主を見つけるため、人間世界へと旅立つ。
  • ケン(ライアン・ゴズリング)…バービーの幼なじみでボーイフレンド。ピュアすぎてちょっぴり暴走しがち。“みんなバービー!みんなケン!”の中のひとりで、その他大勢のただのケンにすぎない存在だが、おしゃれで人気者なバービーに恋焦がれ、バービーの気を引くために目立とうと必死な毎日を送る。

 

  • マーメイドバービー(デュア・リパ)

  • 大統領バービー(イッサ・レイ

  • ノーベル物理学賞受賞の天才博士バービー(エマ・マッキー)

  • ベストセラー人気作家のバービー(アレクサンドラ・シップ

 

  • “ケン”と何かと張り合う“ケン”(シム・リウ)
  • ケンの仲間のケン(スコット・エバンス)
  • 同じく仲間の1人であるケン(キングズリー・ベン=アディル)

 

  • 世界の秘密を知る変わり者のバービー(ケイト・マッキノン)…リアルワールドに行くのよ!と選択を迫りつつ、この世界の真実を知ったら元に戻れないと…とバービーに話す。
  • グロリア(アメリカ・フェレーラ)バービーとケンが人間世界へと迷い込むきっかけとなる人間。
  • 「マテル社」の社長(ウィル・フェレル)…“人間の世界”で出会う玩具メーカー「マテル社」の社長。バービードールの生みの親。

(Fassion Pressより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

トイ・ストーリー」や「トランスフォーマー」、「G.I.ジョー」など玩具を題材にした映画とは違う面白さになりそうですね。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

お人形が人間の世界で見つけたのは「完璧でなくていい」という答え。

・・・というオチでいいんですかこの映画は。

正直、凄く現代的なメッセージで自虐的な笑いもあっていいのだけど、個人的にはNot for me でした。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の世界で見つけたものとは

毎日パーティー三昧で女の子たちだけが活躍するバービーランドを舞台に、定番バービーとただの添え物扱いだったケンが、人間の世界で自分の存在価値を見出していく物語。

バービーの世界を見事に映像化しながら如何に男性社会の中で女性が役割を与えられているかや、有害な男性らしさが何をもたらすか、そして「理想」を与え続けたバービーが自分の価値をどう見出すかを表現した作品でしたが、楽しい部分はありつつも僕が望む「映画」ではないことにがっかりした作品でした。

 

 

お話の内容はザックリ説明します。

バービーだけが職業を与えられることを筆頭に、バービーだけが主役の世界に住む主人公のバービーに「死を考える」ことや「セルライトが出た」などの異変が生じる。

その最たる理由は、バービーランドと人間の世界との間に「裂け目」が生まれたから。

 

彼女が心配なケンと共に人間の世界にやってきた二人は、男性ばかりが活躍し、女性は男あっての存在であることや、理想を押し付けてきたことで女の子たちに飽きられた存在とみなされていたことなど、驚きを隠せないでいた。

 

バービーの持ち主であるグロリアと娘は、バービーと共にバービーランドに向かうが、一足先に帰っていたケンによって男社会化されており「ケンダムランド」になりつつあった。

 

ケンに触発されたその他のケンたちの横暴を阻止するために、グロリアとバービーたちはその他のバービーたちの洗脳を解き、元の世界に戻そうと画策。

 

作戦に成功し、バービーのための世界に戻ったが、バービーはこれでいいのか自問自答。

ありのままの自分を見つけるため、人間の世界で人間として生きるのでした。

ちゃんちゃん、というお話。

 

 

バービーだけが総理大臣はじめ様々な職業を持ち、毎日が幸せで楽しくて完璧な日々を送る一方で、ケンを始めとした男どもはバービーあってのケンという役割にされ、全く陽の目を見ることなく、パジャマパーティーすら参加もさせてもらえない陰の存在と化してるわけです。

 

正に、現代社会を逆にしたかのようなバービーランドなんですね。

 

そんな中、ヒールばかり履いていたバービーの踵が地面にくっついたり、太ももにセルライトがついたりと、「おもちゃ」として完璧でない状態となってしまったバービーが、原因究明のために人間の世界へとやってくるわけです。

 

 

バービーの発売開始当初は冒頭での「2001年宇宙の旅」のパロディのように赤ちゃん人形ばかりで遊んでいた女の子たちの前に革命的に現れた存在でした。

しかし、時代の変化と共にその「女性とはこうあるべきだ」といわれてるようなバービー人形は世間の女子から飽きられていることを、バービーは知る羽目に。

 

「そのままでいい」ことに気付いた女の子たちにとって、バービーは害悪と見做されたわけです。

 

 

今や様々なタイプのバービー人形が作られ販売されてるそうですが、全てにおいて役割があるのが特徴。

それを押し付けることは人間にとって果たして善なのか悪なのかという問題を、バービーの体験を通じて、我々は考えていくのが本作の見どころの一つなのでしょう。

 

しかも人間の世界では女性という存在が、男社会の中で生きる上でどれだけ大変かをグロリアが代弁します。

 

女性に権利を与えるとか言いながら、こうしろああしろこうであれといちいち言われ、それで頑張ってみれば目立つなと言われ、キレイでいたいけどキレイ過ぎると叩かれる。

とにかく他人から見て「過ぎる」といちいち目くじら立てられる、と。

 

このシーンは中々辛辣でありながら芯を突いた言葉で、如何に男社会の中での女性が日々こんなにも「人の目」を気にしながら生きなくてはいけないのかと思わされたセリフでしたね。

 

こうした中でバービーは、完璧という概念から解放されるかのような道を辿っていくわけです。

 

 

こうしてみると本作がいわゆるフェミニズム映画として括られるのかと思いがちですが、ケンがしっかり役割を果たすのもポイント。

 

これまでバービー&ケンとして売り出されたものの、あくまで「バービーの添え物」扱いだったケン。

実際バービーランドでも職業に就くことはなく、ただビーチでバービーに声をかけてもらうことだけが生きがいかのような「ホントにそれだけで満足か?」と思えるような存在でした。

 

そしてバービーと共に人間の世界に行くと、そこがバービーランドとは大違いな「男社会」であることを知ります。

 

ちゃんと勉強して職業に就けばなんにでもなれることや、ただの置物扱いだった自分が「今何時ですか?」と聞かれたことに驚くほど存在が認識されていること、やがて自分が活躍できる世界であることを知ります。

 

ただ、ケンがここで学んだことはあくまで「男は力強く逞しく」といったようなマッチョイズム(なぜか馬を強調してたけどw)。

それだけを持ち帰り、バービーランドに混沌を招き入れてしまうわけです。

 

 

結果、バービーとケンの立場が逆転し、人間の世界と同様な関係性を作り出してしまいます。

 

 

あくまでケンはバービーと対等でありたかったのだと思います。

決して男がイニシアチブを取って世界を牛耳るつもりはなかったのだと思います。

その根源はバービーに振り向いてもらいたかったからなのかと。

 

人間の世界では「有害」とされている「男らしさ」を武器に振り向いてもらおうとしたケンの末路に、いろいろな思いがこみ上げます。

だから本作を側面的にみると、ケンの悩みと悲哀の映画とも見れるんですね。

 

総じて本作は決してフェミニズムな映画なんかではなく、一人一人が互いに役割を押し付けるようなことのない、平等を目指すことが大切だと。

そのためにバービーは人間の世界で、ケンはバービーランドで「ありのままの自分」を見つけるという着地をしたのだと思います。

 

正直そこまでの面白さはなく

このように本作は、2つの世界を行き来することで、人形としての役割や人間のとしての役割から解放することを目指した物語だったと思います。

 

人形から映画を作るというアイディア然り、それをどこまで映像化し物語に落とし込むか、キャラクターを通じて如何に鋭い風刺や自虐的なセリフで笑いと気づきを与えるかなど、監督の想像力と創意工夫には驚くばかりでした。

 

また、監督が本作を製作するにあたり参考にした映画がいくつか公にされてるんですが、バービーを始めとする早口なやりとりはハワード・ホークス監督の「ヒズ・ガールズ・フライデー」や、キャサリン・ヘプバーン主演の「フィラデルフィア物語」でしたし、ピンク色で塗りたくられたバービーランドの世界観は「ロシュフォールの恋人たち」や「シェルブールの雨傘」、色味の強さ的なことで言えば緑を基調とした「オズの魔法使」の如く鮮やかでしたし、ダンスシーンは「オール・ザット・ジャズ」のクライマックスのようなミュージカル調のものでしたし、序盤のダンスパーティーではミラーボールで煌びやかにした「サタデー・ナイト・フィーバー」でしたし、クライマックスでのルースと歩く場所は「天国から来たチャンピオン」での天国のような風景でしたね。

 

グレタ・ガーウィグはこうした名作をヒントに映画を作ったことが、映画ファンとしてさすがだなあと感心しました。

 

 

しかし、しかしですよ。

果たしてこれが面白いのかどうかと言われると、個人的には×です。

 

大前提として映画としての面白さが感じられませんでした。

どのキャラクターを見ても自分のような存在がいないし、そのキャラクターたちが、全てにおいて説明的。

ギャグやユーモアは特に不満はないんですが、突如問題が発生したり何か答えを見つけ出す度に、それが教科書的な言葉にしか聞こえず、ただの「説明」になってしまってると。

 

行間もなければ感情も全部吐き出してしまっている辺りが、僕の映画を見る評価の基準として既に「なし」なんですよね。

 

 

またおもちゃの世界ということもあって、バービーランドの世界観がどうも平面的に見えてしまう。

その奥行きの無さが人間の世界でも表現されているんですよね。

そうなってくると、虚構と現実という見た目的な区別はできるけど、映像としての区別ははっきりしてほしいなと。

 

例えば、映像として平面と奥行きをはっきりさせるとか、人間と人形なんだから動きを区別化するとか、人間には魂が宿ってて人形にはそういうのがないとか、いろいろな点で区別がされてないというか。

 

恐らくグレタの考えは、そういう線引きを無くして一つの世界を生み出し、あくまでガーリーなポップ感とキャッチーなルックを表向きに、セリフの内容から深みを出そうと試みたんだろうけど、どうも俺が求めてる映画からかけ離れたものになってるというか。

 

ギャグに関してもバービー人形自体をもっと知っていたり馴染みがあれば笑えたんでしょうけど、男の俺からすれば全くの別世界で、廃盤になった人形を登場させたり高価なおもちゃを登場させたところで、俺にとってはそれが笑いだったりワクワクに繋がらず。

とはいえ40歳越えのライアン・ゴズリングが金髪でプロテインの偽マッチョとして、バービーの周りではしゃぐ姿はゴズゴズ好きとしては最高によかったんですけどね(もちろんI'm Just Kenの歌も込みで)。

 

 

最後に

「バーベンハイマー」というミーム化、それを本国の公式が乗っかったせいで日本の評判が地に落ちた本作。

決して本作がミーム化されたコラ画像のような原爆を小バカに扱った内容では100%なく、確かに良くないことだなぁと思う反面、向こうで盛り上がってるだけだから俺としては特に反応することないです。

 

 

結果、名作を引き合いに色々パロディやオマージュを捧げていても、作品のメッセージ同様監督の主張でしかなく、それが映画に機能していたかというと個人的には微妙でした。

 

映画は道徳の材料としてアリである一方で、決してそこだけが大切ってわけじゃないって思うんですよ。

人形とはいえキャラですから、セリフや動きや表情で肉付けして、他のキャラと交わることでドラマが生まれるわけです。

そのドラマがどうも定型的なものだったし、何より物語としての工夫が、過去作である「レディバード」や「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」より欠如してるというか。

あれだけ実力がある人なのになぜ今回は、と疑問しか生まれませんでした。

 

 

どこかで「スナイダー・カット」をdisったセリフがありましたが、多分あれこそ女性が眠たくなるような映画なんでしょうね。

ざけんな、クソおもろいわ。

・・・こういうのが男らしさを押し付けるんでしょうかねw

まさかゴッドファーザーをそういうことで引用するとは。笑えないです…。

 

とにかく、様々な問題を茶化したり真面目に見せたりしながら、自己肯定の道を開いていく意味では現代映画としての役割を見事に果たした映画と言えるでしょうが、僕は正直映画にそういうのあまり求めてないんでNot for me でした。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10

映画「#真相をお話しします」感想ネタバレあり解説 すごい結末。あなたならどうする?

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#真相をお話しします

現在話題沸騰中のアイドルグループ「timelesz」の中心メンバーにして、ドッキリはじめバラエティで爪痕残しまくりの菊池風磨と、現在人気ナンバー1バンドといっても過言ではない「Mrs.GREEN APPLE」のボーカル大森元貴が主演を務めるという、いかにも東宝らしい「旬」を集めたキャスティングの本作。

 

興行というビジネス面において話題性は非常に大事ですから、個人的にこの座組は決して問題はないんです。

 

ただ、お芝居の方は少々気がかり。

特に大森さんは違和感なく演じることができるんでしょうか。

 

今回鑑賞する映画は、そんな旬の二人がメインを張る「真相を語る」物語。

大どんでん返しと社会問題を売りにした短編集が原作だそうで、コミック版を一つだけ試し読みしたことがきっかけで見ることを決めました。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

新時代のミステリの旗手・結城真一郎原作による短編集を、話題のキャストを主演に迎えて製作された、「違和感」だらけのゴシップエンターテインメント。

 

多額の報酬をかけた暴露系生配信チャンネル「#真相をお話しします」に参加することになった警備員と謎の男を中心に、様々なキャラのエピソードを交えながら、驚愕の暴露ネタが待ち構える、大どんでん返しのミステリサスペンス。

 

怪談新耳袋」でおなじみの豊島圭介が監督を務める本作。

5つのエピソードを見事に一つの映画にまとめながら、いくつもの「違和感」を仕掛けることで、果たしてどれが「真相」なのか読めない構造になっているとのこと。

 

そしてキャストには、Mrs.GREEN APPLEの大森元貴と、timeleszの菊池風磨というトップアーティストとトップアイドル夢の競演が実現。

特に大森は今回演技初挑戦。忙しい音楽活動の合間を縫って周囲に助けられながら挑んだとのこと。

 

他にも、「ある閉ざされた雪の山荘で」の中条あやみ岡山天音、「少年と犬」の伊藤健太郎、「お嬢と番犬くん」の福本莉子、「ゴールデンカムイ」の桜井ユキ、「レジェンド&バタフライ」の伊藤英明などが出演する。

 

投げ銭文化が加速する現代に、ゴシップで荒稼ぎするという画期的なシステムが、二人の男の人生をどう変えるのか。

 

 

 

あらすじ

 

かつて一流商社の営業マンだった桐山(菊池風磨)は、友人に裏切られ、借金を抱え、以来、人と深い関わりを持たず、ビルの警備員として暮らしている。

しかし、ビル内に事務所を構える、不思議な雰囲気の男・鈴木(大森元貴)の出現で、桐山の人生は再び動き出す。

 

人懐っこく話しかけてくる鈴木を始めこそ煙たく思っていたものの、荒み切った桐山に多くを聞かず、受け入れてくれる姿勢に、桐山もいつしか心を許していた。事件以来三年ぶりにできた友人だった。

 

 

そんなある日、鈴木が桐山に一つの提案をする。

それは、世間を騒がす暴露チャンネルで桐山自身の身に起きた事件の真相を語ることだった。

バーチャル生配信暴露チャンネル【#真相をお話しします】、それはランダムに選択された視聴者が匿名で“有名人のゴシップ” “殺人事件の報道されていない真相”などとっておきの暴露話を披露し、そのたびに多額の投げ銭が投じられる前代未聞のチャンネル。

 

「投げ銭なんかじゃんじゃんきますよ。 桐山さんの話、すごいから。
そしたら桐山さん、大金持ちじゃないですか。」

 

思いもよらぬ提案に舞い上がる桐山だったが、勇気を出して一歩を踏み出すことに。

 

「これは三年前、僕の身に起こった本当の話です。」

 

殺人がらみの壮絶な物語に観衆は過去最大の盛り上がりを見せ、一瞬にして、100万、200万と投げ銭が積みあがっていく。遂に借金地獄から救われた桐山は鈴木への感謝の気持ちでいっぱいになったのだった。

 

「次のスピーカーは僕です」

 

隣から聞こえた大きな声とともに、警備室で不敵な笑みを浮かべる鈴木の顔が画面いっぱいに映し出される。

 

唖然とする桐山を横目に鈴木が語る、すべてを覆す「真相」とは――。(HPより抜粋)

youtu.be

 

キャラクター紹介

  • 鈴木(大森基貴)…あるビルの警備室で知り合った桐山と気が合い、共に話題の生配信チャンネル「#真相をお話しします」を楽しむ。しかしその真の姿は「???」
  • 桐山(菊池風磨)…自身が心を閉ざすきっかけとなった体験を披露して、投げ銭で金儲けをしようと、スピーカーに願い出るが、「???」になってしまう。
  • ヨガ教室経営者(中条あやみ)…今話題の美人経営者。幼い時に「???」。
  • チャンネル管理人(岡山天音)…「???」に頼まれてチャンネル主になる。
  • 桐山の友人(伊藤健太郎)…普段は温厚。恋愛の悩みを抱えて、「???」しまう。
  • 桐山の親友(柳俊太郎)・・・仕切り屋で女たらし。友情のために桐山を「???」。
  • 桐山の知人(斎藤京子)…港区女子。「???」中。
  • サラリーマン(綱啓永)…元・家庭教師の営業。「???」を目撃。
  • 主婦(桜井ユキ)一戸建てに住む。「???」している。
  • OL(田中美久)…大金が必要でパパ活をしてるが、実は「???」である。
  • タトゥーの男(原義孝)…「???」グループの一員。
  • 美容室経営者(伊藤英明)…娘のために、何度も「???」したことがある。
  • 女子大生(福本莉子)…独り暮らしがしたくて、「???」を売る。

(以上HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

一体どんな暴露ネタが飛び出すのかも見ものですし、出演者がどういうキャラなのかも気になります。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

「他人の人生晒してお金稼ぐってクズですね。」

決して上質なミステリーではないけど、ネット社会が生み出した悪しき構造に痛烈な一発をお見舞いしたのは間違いない。

知らぬ間に俺も…。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ちゃんとひとつの映画になってた。

暴露系ライブ配信「#真相をお話します」には100万を超える視聴者や、投げ銭システムで一攫千金を狙うスピーカーたちが集う超人気コンテンツ。

そのMCを務めるのが、かつて一世を風靡したYouTubeチャンネル「ふるはうす☆デイズ」の砂鉄という男性。

 

このYouTubeチャンネルは、人口わずか50人という離島で暮らす子供たちの成長をドキュメンタリーチックに映す内容で、子供たちをキャラデザ化したグッズまで発売されるほどの人気ぶり。

どうもそれが一切の予告なく閉鎖されたことで、ファンたちはその真相を知りたくてウズウズしていた、という設定。

 

よってそのチャンネルに出演していた砂鉄がMCの「#真相をお話します」に集まる視聴者のほとんどは、なぜあのチャンネルが突如閉鎖されたのかを聞きたくて集っているということ。

 

こんな感じで始まる物語。

僕は観賞前に無料で公開されている「拡散希望」と、コミカライズされている「ヤリモク」の二つのエピソードを把握して臨んだんです。

これらをどうやって一つの映画にするんだろう、きっと誰かがこのライブ配信で暴露してってのを繋ぎ合わせて、ラストに「拡散希望」で締めて終わるんだろう。

そんな予想をして臨んだんですが、これが意外や意外、なかなか胸にグサッと来る内容でした。

 

まずどんなエピソードが語られたかというと、

  • 家庭教師の営業で訪れた家で起きた真相を語る「惨者面談」
  • 娘のパパ活を案じながらも父親がマチアプにハマる「ヤリモク」
  • リモートのみで再会した友人同士の間に起きた「三角奸計」

そして、離島で暮らす子どもたちのYouTubeチャンネルに隠されたとんでもない真相「#拡散希望」の4つのエピソードから連なる流れ。

 

菊池風磨演じる警備員は、借金返済をかけて「#真相をお話します」のスピーカーに立候補をする男、それを横で見守るのがミセス大森が演じる鈴木という男。

 

4つのエピソードはどれも、メディアで取り上げられるほどの有名な事件のため、視聴者はそこで得た情報は理解しているモノの、実はマスコミが発表していない隠された真相をスピーカーは持っていて、それを暴露することで7桁レベルの投げ銭をもらうという仕組みになっているんです。

 

どれも「それ喋ってしまっていいの?」と思うような真相である一方、それを打ち明けてくれたことへの対価として皆が金銭を渡す気持ちもわからなくはない。

 

こうした「刺激」を求めて集う人たちの心理には、どこか現実では味わえない非現実的な何かを本能で求めてしまうモノがあるんだろうと、普段そうした配信に投げ銭などしない自分ですら、話にのめり込んでしまいました。

 

 

それこそ普段利用するSNSでも、あまりにも非常識な内容の投稿に、つい自分なりの正義を振りかざして一言モノ申す節は皆あると思うんですけど、結局それは匿名だから強く言えたりできるわけで、果たして個人情報晒してまで他人のあれこれに突っ込むことってできるんだろうか、誰かの事に言及できるのかとも思えるんですよね。

 

また今じゃ認証バッジ付けてるアカウントが、政治やらゴシップやら何やらに一丁前に語気を強めて煽ってインプレッションで銭を稼ぐような輩もおり、気味の悪い仕組みが出来ちまったもんだなぁと思うこの頃。

 

そんなネット社会の中で気づかぬうちに「一部」になっている僕ら。

本作は、#拡散希望のエピソードを用いて、我々現代人に痛烈な問題提起を投げて幕を閉じます。

 

#拡散希望のエピソードがエグい。

実は警備員の横で応援してるだけの鈴木という男は、#真相をお話しますのMC砂鉄と共に「ふるはうす☆デイズ」に出演していた渡辺珠穆朗瑪(ちょもらんま)という男だった。

 

過去の体験によって人間不信に陥り借金まで作って人生のどん底に警備員だったが、暴露系ライブ配信によって心を許せる友人ができたことに救われたことを打ち明けると、500万円を超える投げ銭を獲得する。

 

涙を流しながら喜びをかみしめる警備員を横目に、急に正体を現したちょもらんまは、砂鉄と共に「ふるはうす☆デイズ」の真相を語り始める。

 

このエピソードを要約すると、ちょもらんま、サテツ、そしてルーと呼ばれる女の子・口紅(ルージュ)と、凛子という4人組の子供たちが仲良く離島で過ごした日々を送っていたが、ある日凛子が事故死してしまうことに。スマホを手に入れたことで伝えたいことがあった凛子がなぜ死んでしまったのか悲しみに暮れるチョモとサテツだったが、彼女が持っていたスマホを手に入れたことで驚愕の真実を知ってしまうことに。

 

それが「自分たちの生活がYouTubeで垂れ流しされていた」ということ。

彼らの親が共同で編集し、自分たちの子供を使って金儲けをしていたというわけ。

 

動画を見ていくうちに、ルーはその事実を知っていたのではないかと疑惑を持ち、さらにルーは凛子を殺害したのではまで発展、チョモとサテツは彼女を問い詰めていく。

結局事故死として処理され前向きに生きようとしてきたが、大人になったことで復讐を決意。

暴露系ライブ配信を立ち上げ、集客数を上げたことで復讐を実行するというものでした。

 

自分の人生が知らない間に他人に覗かれ、それを「見守る」という建前であれこれ物言う視聴者たち。

大人でさえメンタル的にやられるのに、幼い子供がこんな目に遭っていたらどれだけ傷ついたことだろう。

 

原作ではもっと具体的な描写が書かれているので是非読んでほしいが、名前決めも「どのキラキラネームがウケるか」や「ルーレットで生活拠点を決める」など、人生における大事な拠点や一生を背負う名前など全て視聴者への受け狙い=投げ銭のためにやっていたというなかなかエグい内容が記されています。

 

挙句の果てには凛子の葬儀で子供たちがどんなリアクションをするのかまで動画として収めており、金のためなら何をやっても良いのか?と頭を抱えるエピソードまで出てくる始末。

 

アメリカでも子供におもちゃを与えて動画を撮ってYouTubeにアップしていた親がいました。

そのおもちゃを楽しそうに遊んでいる姿が、おもちゃの売れ行きまで左右するという逸話もあるほどの影響力だったそうですけど、今考えればそれも「子供の人生の切り売り」でしかなく、一体何を考えてるんだろうと本作を見て改めて思います。

 

 

白状しますがこのブログで僕は広告収入を得ています。

沢山の人に読んでほしいという思いから始めたこのブログが、いつしか時間をかけて書き上げた分の対価を求めるようになり、それで映画代金を賄ってるのが現状です。

極論かもしれないけど、他の何かを使って金を儲けているという面においては、俺も彼らと何ら変わりないんだということ。

 

だから一丁前に「他人の人生で金を儲けている奴ら」に対して正義感ぶったことなど言える立場ではないんだなと。

そうした負い目を感じながらも、映画の感想の中に自分の過去のエピソードを入れることでチャラにしようと思ってますけど、やはり変わりはないんです。

 

 

物語が佳境に入ると、チョモとサテツは大人になってヨガ教室を経営しているルーを拉致し、手製のボウガンを向けて椅子に縛り付けます。

そしてチョモは、凛子を殺したと思われるルーに復讐をするのではなく、他人の人生で金を儲けるクズや、それを傍観しコンテンツとして消費する視聴者に向けて復讐を始めます。

 

自分の個人情報を晒されるか、それともルーを殺すかという二択をつきつけ物語は幕を閉じます。

もちろん退出すれば即時に個人情報は流出され、逃げ場はありません。

3つのエピソードを語ったスピーカーは、正に「他人の人生を暴露して金稼ぎした罰」によって、二人から個人情報を暴露され、窮地に立たされます。

一方警備員はチョモと特別な間柄になれたことを尊重し、個人情報の流出は免れましたが、究極の二択を最初に押すよう責められます。

 

一度は保身からルーを殺すを選択しますが、我に返ったことで選択を変更、視聴者に「殺しちゃダメだ」と訴えます。

その言葉に動かされた人も一定数いましたが、ルーを殺すの票を上回ることはありません。

 

結果がどうなったのか判明することなく物語が終わるんですが、チョモの切実な表情からは、人生を晒された痛みがあふれ出ており、なぜこんな現代になってしまったのかを考えさせられます。

 

 

このように、複数のエピソードをオムニバス形式で見せながらも、後半からは暴露した彼らに制裁を与えることでキャラクター全員を巻き込む仕掛けが施されていた本作。

事件そのものも不気味だし、その真相も不気味。

そうしたエピソードに食い入るように見てしまうゲスい本性を、ラストで試すという幕切れは、僕としては驚きの結末ででした。

 

 

最後に

ミセス大森の演技に不安がありましたが、基本的には問題ないです。

寧ろ菊池風磨より爪痕を残すほどのインパクトがありましたね。

どちらかというと他者との掛け合いはイマイチでしたが、カメラに向かって行う一人芝居はどこか舞台調の強弱ある芝居になっていて、ハマってました。

 

逆に菊池風磨くんは大森君の影に隠れてしまった印象が強かった一方で、喜怒哀楽の引き出しをしっかり出した面もあり、決してダメだったわけではなかったです。

 

他にも「悪の教典」ばりにサイコなキャラを演じた伊藤英明や、謹慎後初めて見た伊藤健太郎のお芝居の変わり様が良かったですね。

多数の演者が出演していたため、他の俳優陣にはこれといったものはなかったですが、その中でも二人はすごく印象に残るキャラを演じられてました。

 

いやぁ、前々期待してなかったんだけど、オムニバスホラーを手掛けてきた監督だけあって、エピソードの結び付け方やちょっとしたホラー描写もしっかりハマってたので良かったです。

 

しかし、二宮和也はどこで声の出演をしていたんだ??

最近サプライズゲスト多すぎないか?w

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

映画「異端者の家」感想ネタバレあり解説 あなたが見たのは奇跡?それとも?

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異端者の家

ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今」で、無事生還を果たし再登場したダニエル役のヒュー・グラント

3作目で「この歳で女たらしの役を演じるのはつらい」といって降板した彼が、当時のキャラクターのまま復帰してくれたのは感激でした。

 

そう、ヒュー・グラントといえばやっぱり「ロマコメ」の人。

ブリジットジョーンズの日記」や「ノッティング・ヒルの恋人」、「トゥー・ウィーク・ノーティス」そして「ラブ・アクチュアリー」とロマコメの帝王と呼ばれるほどイギリスのロマコメ映画には欠かせない存在でした。

 

そんな彼が今回鑑賞する映画で演じるのは「怖い人」。

家に招いたシスターを監禁して恐怖に陥れる謎の紳士を怪演するということで、非常に気になっております。

 

パディントン2」でも悪役を演じましたが、いやな奴ではあったけどどこか憎めない可愛らしさがありました。

本作ではそんな可愛らしさなど1ミリも出ていないことでしょう。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

クワイエット・プレイス』の脚本で注目を浴びた監督が、『ミッドサマー』や『LAMB/ラム』など規格外の狂気を提示し続けてきたA24製作によって新たに仕掛ける、信念を試す異端の脱出スリラー。

 

宗教の布教活動の一環で、一見優しい紳士が住む屋敷を訪れた二人のシスターが、侵攻を揺さぶられながら悪夢のような体験をしていく姿を、様々な仕掛けが張り巡らされた屋敷を裏の主役のように見せながら、観る者を翻弄させていく。

 

監督のスコット・ベック&ブライアン・ウッズは、常々「宗教」に関心を持っており、本作を製作する前にとある映画を製作した地が「モルモン教」の聖地だったこと、そこからあまたのカルト宗教について学ぶ機会を経て、本作の製作にたどり着いたそう。

 

主演は、これまでロマコメの帝王として君臨してきたヒュー・グラント。

近年では「パディントン2」や「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」などコミカルなキャラで観衆を楽しませてきた彼が、恐ろしい知性を武器に不安を掻き立てる役を完ぺきにこなし、本作でゴールデングローブ賞にノミネートを果たした。

 

他にもシスター・バーンズ役に「ブギーマン」のソフィー・サッチャー、シスター・パクストン役に「フェイブルマンズ」のクロエ・イーストが出演する。

 

音を立てたら即死というアイディアでヒット作を生み出したクリエイターが、今回どんなアイディアで我々に恐怖を与えるのか。

 

 

あらすじ

 

シスター・パクストン(クロエ・イースト)とシスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)は、布教のため森に囲まれた一軒家を訪れる。

 

ドアベルを鳴らすと、出てきたのはリード(ヒュー・グラント)という気さくな男性。

妻が在宅中と聞いて安心した2人は家の中で話をすることに。

 

早速説明を始めたところ、天才的な頭脳を持つリードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開する。

不穏な空気を感じた2人は密かに帰ろうとするが、玄関の鍵は閉ざされており、助けを呼ぼうにも携帯の電波は繋がらない。

 

教会から呼び戻されたと嘘をつく2人に、帰るには家の奥にある2つの扉のどちらかから出るしかないとリードは言う。

 

信仰心を試す扉の先で、彼女たちに待ち受ける悪夢のような「真相」とは——。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

 

感想

あぁ~顔のシワってそうやって使うと怖いよね~。

全ての宗教の矛盾と盲点を突くオタクなおっさんに、信仰心を揺さぶられるシスターがどう「挑戦」するかを描く会話劇中心の本格スリラー。

宗教なんてわからなくても「神なんかいねえ」って思ってれば絶対楽しいはず。

結末のショットは何を意味するのだろう。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

信じる?信じない?どっち!?

冒頭シスターによる「コンドーム」の話。

人がどう信じてしまうかは「マーケティング」によるものだと語る2人。

確かに、我々は知らぬ間に宣伝や口コミといった評判を鵜呑みにし、勝手に「信じてしまう」傾向がある。

その商品に対する背景や検証をしてこそ「信じられるかどうか」ではないだろうか。

 

そんな下ネタ話が飛躍し、「神は存在する」というよくわからん着地に降り立ったシスターの会話が、実は本作に重要な意味をもたらした作品だったと思います。

 

あらかじめ教会にリード邸を訪ねることを知らせておいたシスター二人は、道中ガキンチョに「魔法の下着」とイタズラされながらも辿りつき訪問。

モルモン教徒としてしっかり勧誘するために、用意した文言を流ちょうに語るシスター。

 

どうやらモルモン教は、男しかいない家には入ってはいけない掟があるようでしたが、妻がいるから安心だと、ちょっとしたジョークを挟みながら招くヒュー・グラント。

家に入ると小奇麗にされた空間とシンプルなインテリアが、暗めの照明によって浮かび上がっていく。

 

 

モルモン教に関心があるってことで、早速本題に入ろうとするリード。

最初こそ相手の話に耳を傾けつつ経口を叩くリードが、メガネをかけた瞬間モルモン教の盲点を突き始める。

「オタクんとこの宗教、一夫多妻制やってたよね?あれ、何で廃止にしたの?」と。

 

今から100年以上前の話で、実際にこの一夫多妻制が物議をかもしたそうでしたが、末日聖徒イエス・キリスト教会通称モルモン教の設立者、ジョセフ・スミスは「神から啓示を受けた」といって撤廃したんだそう。

 

リード曰く、それって物議をかもしたことで信者が減っちゃうから、自分で勝手に撤廃しただけなんじゃねえの?と言いがかりをつけてくるわけです。

 

全く知らない俺がシスターの立場なら、反論する余地もないので「いやもう~リードさん中々鋭い所をついてきますね~御見それしました!で、どうです?うちのモルモン教」なんてスルーしますけど、弱気なパクストンに対し信仰心の強いバーンズは反論に打って出ます。

 

この議論を発端に、リードは彼女たちに不穏な空気を与え家に閉じ込め、さらに「君たちの信じている宗教はこんなにでたらめなんだ、それでも信仰するのかい?」と揺さぶってくるのであります。

 

 

この序盤では玄関から入ってすぐの居間でテーブルを挟んで行われるのですが、演者の表情の切り返しをしながら、徐々にカメラを寄りで捉えていく手法で緊張感を高める演出をしており、相当学習してこの場に臨んだんだなと感じるリードのヤバさを強調させ、それに対して反論するのが難しいこと以前に、おいおいただの勧誘だと思ってたのにこのおっさん手ごわすぎるだろ出直そうぜ、その前に奥さんのブルーベリーパイまだかよと、議論以前にビビリ散らかす表情をしっかりみせることでスリリングな展開へと持っていきます。

 

 

やがて隙を見てお暇しようと画策するも、玄関は開かない、他に出口はない、形態の電波もないのないない尽くしで、あわてふためくシスター二人。

しかもチャリ鍵が預けたコートの中に入ってることに気付いたため、奥の部屋で待っているリードの元へ行かざるを得ない状況に。

 

奥の部屋に入ると、沢山の書物やレコードがラック一杯に敷き詰められた書斎に入るシスター。

教壇の横には二つの扉があったり、奥には鹿威しまである奇妙な空間で、シスターは「帰りたい」と懇願することに。

しかしリードは、「帰る前に俺の話聞いて~」と再び数多の宗教の穴を指摘してくる。

 

見てるこっちはか弱い女の子が帰りたいって言ってんだから、帰してやれやおっさん!どこまで宗教マウント取ったら気が住むんじゃ!と少々苛立ちを募らせたのですが、当事者であるシスターは脅える一方。

 

リードはとある曲を流し始めながら、キリストよりも前に存在した神話が、キリスト誕生について非常に酷似していることを指摘。

さらには、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の宗教ビッグ3をモノポリーに例えて、全ては「反復」によって新たなモノを生み出しているという独自の証明を突き付けてくる。

 

具体的にどういうことかというと、我々が良く知るモノポリーにはオリジナルがあり、そのオリジナルを盗作して大々的な宣伝によって世間に浸透したせいで、モノポリー自体がオリジナルだと錯覚してるだけだと。

実際オリジナルとされるユダヤ教の信者は世の中の0.2%しかおらず、何故キリスト教のほいウが信者が多いのかは、そうした宣教師による宣伝の有無によるものではないのかという言い分なわけ。

 

徐に流し始めた曲も、ホリーズが1973年に発表した楽曲「The Air that I Breathe」だったが、俺はその曲を聴いて「あれ?これレディオヘッドのクリープのカバー?」と思ったが、実はクリープ自体がこの曲の盗作なのでは?と物議をかもしたことがあり、これらを例に挙げ、結局お前たちが信仰するモルモン教は、そうした反復によって生み出されたものなんだ、だから神から受けたお告げだの啓示ってのは、ぜ~んぶ嘘!でたらめなのだぁ!とふっかけてくるのであります。

 

もうね、ぐうの音も出ません。

全てはオリジナルをかき集めただけのものに過ぎない=反復だという言い分に対して、俺の様な脳みそ数%しか機能してない下民は何も言い返せません。

如何にして相手を傷つけないように持ち上げ、なるほどと一旦受け止め、どう話題を変えてこちらのペースに持ち込むか、ディベートのデの字も知らない俺がやるとしたら「回避」することしか思い浮かばない。

 

でも信仰心が強く頭がキレるバーンズは、頭でっかちのリードの矛盾点をすぐさま見つけ反論するのであります。

あなたが言ってることは上っ面だけ、ユダヤ教が少ない理由の一つに迫害されたことが入ってない、イスラム教だって一側面からしか物事を捉えてないと。

 

思いもよらない反論になぜかフリーズしてロウソクの火ばかり見つめるリード。

何だよお前言い返されたら黙っちゃうのかよwwと思わず笑ってしまいましたが、徐々にヒートアップしてく議論は、二つの扉を選ぶ選択を余儀なくされたシスターの行く末によって、別の映画へと姿を変えていくのです…。

 

 

リードが指摘した反復に関して、もうすべての創作物に「オリジナル」など存在しないという指摘は俺も同感です。

 

これまで語り継がれてきた神話を寄せ集めて生まれたのが、我々が娯楽として消費する「映画」ですし、リードが例えたように「スターウォーズ:ファントムメナス」で不評だったキャラクター、ジャージャー・ビンクスが1000年後に神の代わりになってる可能性もなくはない。

音楽に至っても、あらゆる発明をしたビートルズの楽曲にインスパイアされて生まれた楽曲が数知れずだし、俺が敬愛してやまないミスチルだって、そんなビートルズやピンクフロイドのフレーズをパクりまくって「深海」というとんでもない名盤を生み出したのも事実。

 

ただ、文化も宗教も、そうやってオリジナルを模倣して新たなモノとして世に出していることの、何が悪いのかって話なんですよ。

私は好きだから信じてるから、それ以上の理由に勝てるモノなんてないんですよ。

 

 

しかしリードは、彼女たちに「俺はとうとう見つけてしまったんだよ、唯一絶対の宗教を」と語り始め、それを証明するために彼女たちを地下に閉じ込め「奇跡」を目撃させていくのが後半のメインとなっていきます。

 

ヒュー・グラント怖いって。

本作の一番の強みは、宗教に対する矛盾にどう抗うかという、不信仰者VS信仰者のディベートバトルではあるんですが、それに匹敵するほど魅力的なのが、これまでロマコメの帝王として君臨したヒュー・グラントがとんでもなく怖いということ。

 

最初こそ紳士的な振る舞いで、レディたちの緊張をジョークで解しながらも、徐々に自分のペースに持っていく術に震えます。

賢い人ってこうやってマウントとって満足してるんだろうなぁ、そんな風に思わせる「上から目線」のおヒュー様。

 

徐々に表情を寄りで捉えていくと、20年前はあんなにブリティッシュイケメンダンディだったおヒュー様にも、加齢によって刻まれた多くのしわが目立つんです。

でもそのシワが、薄暗い照明によって作られた影によって、恐怖のシワへと変貌を遂げているではありませんか。

 

語り口だって普段のおヒュー様と特段違うわけではなく、滑らかなセリフ回しが心地よい、いつものあの感じなんです。

なのに怖い。

 

やはり盲点を突いてくるあのいやらしい言い分と、何も言い返せないでいる彼女たちを鼻で笑うかのような態度が、序盤での不気味さを現してたと思います。

 

もちろんそれだけじゃない。

彼女たちを地下室に閉じ込めた後半からは、これまで伏せていた怖さが覚醒していくんですよ。

 

一度死んで蘇生するという「預言者」を彼女たちに見せつけるも、それは単なるトリックでしかないと言い返すバーンズの首根っこをカッターナイフで掻っ切るリード。

その時の表情はただの真顔です。

無論暗がりの地下室で行われているのではっきりとは見えませんが、そのはっきりしないにもかかわらずかけているメガネの奥に見える冷たい目が、怖さを物語っています。

 

それ以降も、恐怖におびえながらも独自の勘でバーンズに代わって反論を続けるパクストンを追い込んでいくリード。

冷静に聞いたら明らかにリードが劣勢なのに、平然とした顔で聞いたふりして次の一手を企んでるのか黙ってるだけなのか奥底が読めないリードが終始不気味なんですね~。

 

終盤では「唯一絶対の宗教とは何か」を語るんですが、檻に閉じ込めて憔悴しきっている女性たちの爪を切りながらいきなり指を切る瞬間も不気味ですし、やはりそれも平然とした表情で語りながら相手を物理的に攻撃する仕草は、本当に怖い。

 

やっぱね、「それってあなたの感想ですよね?」ってニコニコしながらあれこれリクtこねくり回して議論するひろゆきって怖いですよw

彼も劣勢な時があるけど、感情をむき出しにして反論しないですもん。常にニコニコ。

これ見たらひろゆきの見方がわかるかもしれませんw

 

 

最後に

劇中で胡蝶の夢について語るシーンがあります。

思想家の荘子が「夢の中で胡蝶(蝶のこと)としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも実は夢でみた蝶こそが本来の自分であって今の自分は蝶が見ている夢なのか」という説話なんですけど、要するに夢だろうが現実だろうが、結局自分であることに変わりはなく、それを受け入れて生きることが正しいと仰ってるわけです。

 

それを踏まえたかのようなラストショットは、かろうじて脱出を遂げたパクストンの手には蝶が止まってるんですね。

でも、次のカットでは蝶は映ってない。

リードに腹を刺されて重傷のパクストンは果たして現実にいるのか夢にいるのかって所で幕は閉じられます。

どっちも解釈もできそうですけど、荘子の話を踏まえて語るとすれば、「パクストン次第」ってことなんですよ。

考察とか解釈とか要らないと。

 

 

しかしクワイエットプレイスの脚本家だけあって、かなり面白い脚本でしたね。

2人で色々言い合って議論して作り出したかのようなお話でした。

 

唯一絶対の宗教が「支配」ってのも興味深い。

如何に相手を信じ込ませて身動きできないようにさせるって、もはやそれ以上の信仰はないでのはないかと。

信仰というか、従う以外ないんですけどね。

 

途中でリードの言い分に丸め込まれそうになったパクストンは正にリードに「支配」されようとしてましたもんね。

そんな彼女が生き残って彼の言い分に「挑戦」する姿は、弱々しいながらも立派だなと。

何を信じ何を信じないかは其々で、そこが現実だろうと夢だろうと、自分が「生きている」心地がすればそれでいい、どう信じるかが大切だというお話だったのではないでしょうか。

 

いやぁホント面白かった。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10

映画「シンプルフェイバー」感想ネタバレあり解説 例え仲が良くても切り札は先に見せるな。

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シンプル・フェイバー

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家族や兄弟、夫婦、そして親友。

どんなに仲が良くても決して言えない秘密があると思います。

僕も決して人にはいえない秘密があります。それは、

 

 こんにゃくが食べられないこと。

 

しょうもな。

 

はい、というわけで今回鑑賞する作品は、消えた友人の行方と秘密を探るお話。

 

美人女優二人が織り成すオトナのミステリーをフレンチポップスに乗せて描くそうで、外見はオシャレ、中身はドロドロな予感。

 

とはいえ、監督が「ブライズメイズ」や「ゴーストバスターズ」のポール・フェイグですから、ユーモアたっぷりの会話劇の連発だろうし、ただのミステリーでは終わらせないはず。

 

とりあえずだ、ブレイク・ライブリーアナ・ケンドリックって絵面だけで既にマンマン満足だろう!!

というわけで早速鑑賞してまいりました。

 

作品情報

ビデオブロガーで生計を立てるシングルマザーと、セレブリティなファッション業界で働く野心的なキャリア女性。

全く対照的な二人が、息子が同じ学校という共通点から仲を深めていくが、キャリア女性が突如息子を残し失踪したことで、シングルマザーは彼女の行方を追うことになってしまうサスペンスミステリー。

 

2017年にダーシー・ベルが小説家としてデビューした作品「ささやかな頼み」。

当時「ゴーン・ガール」と比較する評論家も多かった今作を、出版前に映画化権を取得し製作に取り掛かったことで話題となった。

 

この稀有な作品を、「ブライズメイズ~史上最悪のウェディング・プラン~」や女性版でリブートさせた「ゴーストバスターズ」を監督した女性コメディ映画のパイオニア、ポール・フェイグによって、フレンチポップ・ノワールへと昇華させた。

 

女性二人の間に生まれる嫉妬や羨望、友情と利害、そして言えない秘密。

オンナ同士のしたたかさをブラックユーモア満載のポップなサスペンス映画、あなたはこの結末を決して読めないだろう。

 

 

あらすじ

 

ニューヨーク郊外に住むステファニー(アナ・ケンドリック)は育児や料理についてのブログを運営しているシングルマザー。

ある日、同じクラスに息子を通わせるエミリー(ブレイク・ライブリー)に誘われて、豪華な邸宅を訪ねることになる。

 

事故で夫を失い、保険金を切り崩しながら子供を育てている朗らかで気立てのいいステファニーと、スランプに陥っている作家の夫、ショーン(ヘンリー・ゴールディング)と愛し合い、華やかなファッション業界で働くどこか気怠くミステリアスなエミリー。

対照的なふたりだったが、お互いの秘密を打ち明けあうほど親密な仲になっていった。

 

 

 そんな中、ステファニーは息子を学校に迎えに行ってほしいとエミリーから依頼される。

その後、エミリーは息子を引き取りには現れず、失踪。

親友を助けたいと思ったステファニーは、残されたエミリーの息子とショーンの身の回りの世話も買って出て、自身のブログでも情報を募る。

 

手がかりを求めてエミリーが働いていたオフィスを訪ねたりもしたものの、彼女の行方はなかなかつかめなかった。

やがてミシガン州でエミリーを目撃したという情報が入るが……。(HPより抜粋)

youtu.be

 

監督

今作を手がけるのはポール・フェイグ。

 

冒頭でも書きましたが、「ブライズメイズ」や「ゴーストバスターズ」、それから「SPY/スパイ」など、「サタデーナイトライブ」出身者のコメディエンヌたちを起用して大ヒットさせたお方です。

 

男の監督が女性を撮ると、どうしても男目線になってしまいがちだと思うんです。

例えばエロく撮ったり、美しく撮ったり。

でも彼の場合、女性同士の醜い部分を包み隠さず見せて笑いにすることで、女性が共感できるように手がけているのが魅力です。

ある意味女性らしさを前面に出したコメディ映画を作り続けていると思います

 

ですが、今作の主演は正統派の女優さん。

あれ?コメディ女優たちの姿は?

ちょっとこれ僕の中でがっかりなところ。

クリステン・ウィグのスケジュール抑えられなかったのでしょうかw

 

キャスト

ビデオブロガーのシングルマザー、ステファニーを演じるのはアナ・ケンドリック。

 

はい、歌うまい、踊れる、美人、胸大きい。

完璧です。これ以上彼女に臨むものはありません。

 

そしてこのブログでも結構登場してるのでこれ以上書くことがありませんw

 

今回の役どころ、ブログの運営をしているという点が僕と共通しているので、何か参考になるシーンがあればいいなぁと。

彼女に関してはこちら。

 

www.monkey1119.com

 

 

そして、アパレル業界に勤めベストセラー作家を夫に持つも、失踪してしまう人妻エミリーを演じるのは、ブレイク・ライブリー。

 

はい、こちらの美女です。

ブロンドヘアがまぶしい、長身でスレンダーなプロポーション。

おまけにダンナはライアン・レイノルズ

関係ないかw

 

僕がレンタルビデオ屋に勤めていた頃に空前のブームだった「ゴシップ・ガール」のおかげといっても過言ではないんでしょうが、とりあえず世界的に売れてよかった。

 

昔からこの美貌だもんね。

旅するジーンズと16歳の夏」とか見ると、ひときわ美人だってのがよくわかる。

でもって、あれから変わってない。

 

グリーンランタン」も「ザ・タウン」の彼女もいいんだけど、彼女のエロスな部分を見たければ「野蛮なやつら/SAVAGES」とかオススメです。

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

 エミリーの夫ショーン役に、「クレイジーリッチ!」のヘンリー・ゴールディング。

 エミリーに執着する女ダイアナ役に、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」、「グリーンブック」のリンダ・カーデリーニ

エミリーに無関心な上司デニス役に、「プライドと偏見」、TVドラマ「ホームランド」のルパート・フレンドなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

赤と青が強く主張された2人の物語。どんな女の秘密と皮肉がこめられたサスペンス映画になっているんでしょうか。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

感想

ん~!やっぱりセリフどっさりの会話劇!

でもでも!真実に近づくにつれて二転三転するサスペンス要素が非常に面白かったぞ!!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かにゴーンガールの要素がある。

NY郊外に暮らすシングルマザーが、息子同士が同じ学校という縁でセレブリティなママと親密になっていく中で、突如の失踪。

 

好奇心旺盛な性格から、彼女の素性と行方を追っていくシングルマザーが、愛にうつつを抜かしながらも二転三転していく物語の展開に、見終わった後整理するの大変だけど中々よくできた映画でございました。

 

前半はコミカルな雰囲気を醸し出しながら進むんだけど、中盤からはエミリー捜索に奔走するステファニーを中心に、シリアスなミステリー要素を徐々に膨らませ、その過程で禁断の恋愛要素を入れていく。

 

後半は一体なぜエミリーは姿を消したのかに焦点を絞った話かと思いきや、正反対の2人の女性の壮大な駆け引きと、それに巻き込まれるエミリーの夫ショーンのマヌケっぷりがどんどん正体を現してきて、「切り札は先に見せるな」的な絶妙な駆け引きが繰り広げられる、緻密な脚本に唸った作品でした。

 

 

「ゴーンガール」と比較された原作ってことでしたが、なるほどその意味が凄く分かるぞ!という印象を強く感じた映画です。

 

表面的には金持ちで理想的な夫婦に見えるけど、裏側はかなり切迫した状況で関係も順風満帆ではなく、妻の行動によって謎が謎を呼ぶエミリー夫妻って設定はよく似ている気がします。

 

そこに割って入るシングルマザーのステファニーが、もしかしてエミリー失踪の犯人なのか?ってのを匂わせたり、

ジリ貧階級ならではの成り上がり根性が根っこにあったからか、実はステファニーって相当したたかな女だったのか?ってのも匂わせたり。

中々の曲者同紙によって謎めく展開の行方を創意工夫させてる点が非常に良かったです。

 

 

またBGMもフランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」が強いインパクトをあてている通り、フレンチポップ中心で構成されてる点がよく、このラインナップにエミリーのセレブリティなファッションや赤と青の色彩を下地に、郊外にある住宅街の均等的なデザインや、中に映える緑の自然が、この映画の世界観をうまく作っていましたね。

 

要するにオシャレな映画だったってことです、はいw。

 

 

このように外身はオシャレですが、中身は女性二人が持つヒミツによって、どんどん複雑な物語になっていくミステリーサスペンス。

ミスマッチに思えながらもアンバランスに見えない雰囲気になってるのがとてもよかったと思います。

 

 

 

他人の秘密は蜜の味。

シングルマザーといっても実際はビデオブロガーとしてジリ貧ながら生計を立てる、いわゆる自立した女性ステファニー。

 

学校行事にも積極的に顔を出し、いつも明るく清く美しく周囲に振る舞う姿は、端かられば結構なおせっかい。

PTAの中にもこういうお母さんいるよね・・・ってくらい。

その持ち前の明るさで、全く対照的な立場にいるエミリーと親しい仲になっていきます。

 

 

エミリーはファッション関係のお仕事をしているキャリアママ。

タイトなスーツにハットをかぶり、降りしきる雨の中現れるファーストカットは、ある意味笑えます。

 

明らかに子供に一生懸命な母親のイメージはそこに無く、昼間っからマティーニをカッくらって奔放に生きている、そんな感じです。

 

もちろん仕事ファーストですから学校行事なんか顔を出さず、ステファニーが彼女の子供を預かるときに、嫌いな食べ物は?アレルギーは?と聞くと、食べたくないものは食べさせないで、なんて結構放任的。

 

 

こんな対照的な2人ですが、お互いの秘密を語っていくうちに距離を縮めていくんですね。

 

ただ客観的に見ると、ステファニーはエミリーに好意を持っているけど、エミリーは彼女をシッター程度にしか見ていない感じもします。

劇中では客観的に見てくれる人物もちゃんと登場するので、彼らがこの映画のツッコミ役になってるのがナイス。

 

だって彼女たちの関係、どう見ても釣り合っているように見えないでしょう。

どの社会にもヒエラルキーがあって、上の階級と下の階級が仲良くなるなんて、まずありえませんもの。

どっちかが無理してるとしか。ねえ。

 

 

さて、冒頭でも書きましたが、どんなに近しい人物でも誰にも言えない秘密があると思います。

でもそれを打ち明けた時、一つの壁を壊した感覚になったり、その秘密の内容によっては共犯くらいな気持ちを持つことってないでしょうか。

 

砕いていうと、相手と急接近した感覚になるってことです。

 

だって誰にも言えない秘密を言える間柄になったわけですし、それってもう親友同然てなりますよね。

 

ステファニーはエミリーと互いのい秘密を打ち明けあったことがきっかけで、階級の枠を超え深い関係になれたのであります。

 

だから第三者が見て不思議がっても彼女らは気にしないのです。

 

 

ただこの打ち明け話には小さな駆け引きがあったのです。

エミリーはその駆け引きを行っており、ステファニーは気づくのが遅かったんですね~。

 

実際どんな話をしたのか。

 

エミリーは旦那と助手と3Pをしたことがあると打ち明けます。

なんて夫婦だ!

なかなかの暴露につられたステファニーは、父の葬儀に現れた父そっくりな青年、これが父の浮気によってできた子供であり、義理の兄だったことが判明、しかもその彼とエッチをしてしまったことを打ち明けます。

 

これ聞いたとき、明らかにエミリーの秘密よりもヘビーな内容だなぁと。

 

多分エミリーはもっと大きな秘密を持っていたはずなのに、ステファニーはいきなりデカい秘密を話してしまった。

カードゲームでいきなりジョーカーを出してしまったようなものです。

それだけ彼女と親しくなりたいという気持ちの現れだったのでしょう。

 

だって彼女と親しくなれば、彼女の優雅な生活を味わえるわけですし。

心のどこかで彼女に対する嫉妬と羨望が顔を出したに違いないのかと。

 

さてさて、突然子供を預け姿を消したエミリー。

 

ステファニーとしては、彼女の子供をいつまでも預かっておくわけにはいかないということで、連絡が取れないことに苛立ちと不安を抱えていくんですけども、結果ショーンと相談し警察に連絡することに。

 

それでも不安が消えないステファニーは、単独でエミリーの会社に赴き、彼女のオフィスを漁ったりします。

 

会社の人間はマイアミに出張中ということしか行方を知らず、しかも上司は彼女に無関心で、全然役に立たない。

 

すると彼女のデスクから、写真撮影を嫌がっていたはずなのに、彼女の写真が出てきます。

それもちょっとうつむいた表情で、プラス謎のメッセージ付き。

 

 

こうなったら自分のブログで「エミリー失踪事件」を世間に伝え情報を集めようと考えたステファニーは、毎日お手軽レシピの配信と共に拡散。

すると一つの情報が舞い込みます。

 

ミシガンで彼女に似た人と、提供された情報と同じ車を見かけた…と。

結果、湖で彼女の溺死した遺体が発見されます。

 

左腕にはステファニーが見せてもらったタトゥーと、旦那の母から譲ってもらった指輪が。

どうやら彼女、ヘロインを常用していたことが判明。

 

ん?確かに昼間からマティーニ飲んでるくらいのアルコール依存症だったけど、薬は手を出していたっけか?

 

落ち込むショーンに、子供の面倒を見ながら励ますステファニー。

やがて二人の間に、何かが芽生えていきます。

 

ステファニーはエミリーがいたポジションを徐々に奪い、憧れていたセレブリティな生活に。

そこに警察からエミリーに400万ドルの保険金が掛けられていたことを教えられ、ステファニーは心を許してしまったショーンに疑惑の目を向けていく。

 

日々の生活をショーンと息子2人の4人で過ごすことが多くなったんですが、ある朝食の日、ショーンの息子がママを見た!と言い出します。

 

別の誰かがそう見えることもあるでしょう、子供ですから。

でもあまりいい加減なこと言いなさんな、ママは死んだんだと真剣に話すショーン。

 

しかしステファニーはどことなく彼女存在を感じていたのです・・・。

 

エミリーの子供におやすみのキスをしたとき、ほのかに香る彼女の香水の匂い、

クローゼットにある彼女の服を処分したはずが元に戻っていたこと、

極めつけは自分の秘密が書かれた写真が送られてきたこと・・・。

 

 

なぜ死んだはずの人間が自分の周囲で気配を感じるのか、

もしや彼女は生きているのか、

それともこの罠を仕組んだのは、彼女に保険金をかけた夫ショーンなのか、

それとも行方を追っていながらも、憧れの生活を手に入れたステファニーが本当の犯人なのか。

 

真相は誰も予想しなかった展開へと進んでいく。

 

 

最後に

終盤は怒涛の展開です。

失踪の謎は解けたけど、どう片付けるのか、決着をつけるのかってなるんですけど、これが凄い勢いで真犯人が誰かって視点が変わっていくんですね。

 

そして切り札を先に見せてしまった者が、最後の最後で切り札を出す様は爽快です。

 

 

ただこの見せ方は面白かったんですが、意外と失踪の理由がありきたりというか新鮮味がなかったのが少々残念な所。

 

そしてポールフェイグならではのコメディ要素があまり多く感じなかったのが残念

 

会社の受付嬢のロボット的対応とか、妻が死んだあと妻の親友と親密な関係になる確率は90%とか、学校行事ででしゃばるステファニーとか、色々細かい点で笑える部分はあるんですけど、「ゴーストバスターズ」ほどのギアではなかったんですよねぇ…。

 

まぁこれはいつもですが、アナ・ケンドリックの早口はいつ見ても笑えますw

どういう舌をお持ちなのか。

 

今回の映画の教訓としては、まず秘密を打ち明けるなら小さいことからにしましょうと。切り札は先に見せるなってことで。

というわけで以上!あざっした!!

 

 

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「アナザー・シンプル・フェイバー」感想ネタバレあり解説 再びささやかなお願いから事件が勃発!

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アナザー・シンプル・フェイバー

シングルマザーの女性とファッション業界で働くセレブな女性という対照的な二人が親密になるも、突如失踪したセレブな女性の行方を追ううちに、驚きの展開を迎える傑作サスペンス「シンプル・フェイバー」。

 

個人的にも大好きなアナ・ケンドリックブレイク・ライブリーが競演だったことや、「ブライズメイズ」以降大好きなポール・フェイグ監督作品とあって、いったいどんな物語になるかと思いましたが、少々整理するのが大変なほど二転三転する展開、そして二人がいったい何を隠してるのか見えない中で行われるミステリーな要素に、心躍った作品でした。

 

今回鑑賞する映画は、その続編。

あれだけ騙しあった二人がどうして再会するのか、そしてどんな事件が起きるのか。

Amazon prime videoなのがもったいないですが、自宅で鑑賞しました!!

 

 

作品情報

「ブライズメイズ」や「ゴースト・バスターズ」のポール・フェイグ監督のヒット作で知られ、シングルマザー役のアナ・ケンドリックとセレブリティなブレイク・ライブリーが様々な嫉妬や羨望、友情や利害、そして「言えない秘密」を駆け引きしながら対峙するフレンチポップ・ノワール「シンプル・フェイバー」の続編。

 

イタリアのカプリ島を舞台に、ママブロガー兼私立探偵のステファニーが、刑務所に送ったはずのエミリーの結婚式に介添え人として招待されたことをきっかけに再び事件が巻き起こる物語を、前作以上に贅沢で華麗に、そして危険なほど魅惑があふれた内容のミステリーサスペンス。

 

本作は、2025年3月にテキサス州で開催された「サウス・バイ・サウスウエスト映画祭」のオープニング上映作品となった。

 

これまで女性を主人公にしたコメディ中心だったポール・フェイグ監督。

前作「シンプル・フェイバー」で一気にノワール調のミステリーに舵を切ったが、やはり根底にあるのは「女性の本音」。

本作も前作以上にオンナのしたたかさをブラックかつ鋭く描いているに違いない。

 

キャストには、前作同様アナ・ケンドリックとブレイク・ライブリー、「アンジェントルメン」のヘンリー・ゴールディング、「マイ・インターン」のアンドリュー・ラネルズの他に、「ザ・クリエイター創造者」のアリソン・ジャネイ、Netflixシリーズ「愛は、365の日々で」のミケーレ・モローネなどが出演する。

 

互いの秘密を知る二人の再会。

ステファニーの名探偵ぶりが炸裂するのか、はたまた今度は二人で事件解決?

 

 

 

 

あらすじ

 

ステファニー・スマザーズ(アナ・ケンドリック)とエミリー・ネルソン(ブレイク・ライブリー)は再会し、エミリーとイタリア人実業家との豪勢な結婚式が執り行われるイタリアの風光明媚なカプリ島へと向かう。

 

しかし、そこには華やかな招待客たちに混ざり、招かれざる客もやってくる。

 

入り組んだ殺人と裏切りが巻き起こり、ステファニーとエミリーの華麗な再会の先には、予想外の展開が待ち受けていた。(映画.comより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

刑務所にいたはずのエミリーが結婚!?

復讐される疑念渦巻く中利用されていくステファニーの才能がさらに開花する、イタリアンポップノワール。

しかし、ささやかな頼みはどこへやら。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。

イタリアのカプリ島。

いつものようにスマホからライブ配信を行うステファニーだったが、どうも様子がおかしい。

彼女は部屋から軟禁状態にされていると告白する。

どうやら事件の容疑者として疑われているらしく、視聴者にアドバイスを求めているようだ。

 

なぜそうなってしまったのか、話はおよそ5年前に遡る。

 

 

エミリーが殺人の容疑で逮捕さされて以降、ステファニーはシンママインフルエンサーとして活動を続ける一方で、趣味が高じた探偵稼業も兼業。

エミリーが起こした事件をノンフィクション小説として出版するまで活動の幅を広げたモノの、売り上げはイマイチ。

売り上げアップを図るために朗読会を行うことになる。

 

息子をキャンプへ送った後、当時の担当刑事と出版代理人が同席した朗読会でハプニングは起こった。

なんと、刑期を務めているはずのエミリーが出所に、ステファニーに会いにやってきたのだ。

しかもそれだけじゃない。

多額の保釈金を払えるほどのリッチで、なおかつステファニーの本がきっかけで所在を知ったカプリ島のマフィア・ダンテと晴れて結婚することになったのだ。

 

エミリーは、親友であり自分を刑務所へ追いやったステファニーに花嫁介添え人として招待しにやってきたのだった。

自分の人生と子供を奪われた復讐にやってきたとばかり思いこんだステファニーだったが、もし拒否したら肖像権侵害で訴訟を起こすと半ば脅され、渋々承諾する。

 

こうしてステファニーは、本の売り上げを期待している出版代理人と共にカプリ島へと赴くのであった。

 

現地へ到着すると、結婚相手のダンテを紹介される。

彼をグーグルで検索してもヒットしないことから、本当に本人なのかを疑うステファニー。

そんな不安をよそに、今度はエミリーの前夫ショーンと気まずい再会を果たす。

彼は裁判所からの要請で息子を結婚式へ同行させていたが、前妻のせいで仕事も人生もパーになったことを酒の勢いに任せてエミリーとステファニーにぶつける。

 

介添え人としてパーティーに出席したステファニーは、今後の事も想定してビデオ撮影を敢行したが、ダンテと敵対するマフィアから撮影をやめるよう促される。

ダンテが仲裁に入って事なきを得たステファニーは、エミリーに誘われ、絶景の崖に向かうことに。

エミリーは、確かに人生を狂わされたが、今回自分の結婚を見届けるためにどうしても必要だったと本心を語る。

エミリーへの疑念が晴れないステファニーだったが、当初よりは気持ちが和らいだかのように思えたのだった。

 

パーティー会場に戻り食事をとるステファニー。

しかし相変わらず酔っ払ってクダを巻くショーンは、周囲を不快にさせる言動をとったためにダンテから退席を命じられてしまう。

 

エミリーは独身最後のパーティーを一緒にしたいということで、時差ボケで眠いステファニーをナイトプールへ誘う。

色々なことがあったが、当初のママ友の時と同じような関係性を見せていく2人。

 

そしてプールから帰ると、ショーンの息子がカギを無くして部屋に入れないでいる所を目撃。

フロントから鍵をもらうよう助言したステファニーだったが、ドアの足元を触ると濡れていることに気付く。

そしてスタッフに鍵を開けてもらうと、そこにはシャワー室で血まみれになっていたショーンの死体が目に飛び込んでくる。

 

警察はマフィアに脅されているためか、今回の騒動を「事故」と断定。

シャワーを浴びている最中に目や鼻や耳から血が流れて死ぬなんてありえないと詰め寄るステファニーだったが、事を荒立てたくない警察は全く耳を傾けようともしなかった。

 

事件は起きたが挙式の予定を強行することになったエミリー。

ショーンがいなくなって一番都合がいいのは、親権争いの相手であるエミリーであることは事実。

ステファニーは彼女を尾行して探りを入れていく。

 

するとステファニーも誰かに尾行されていることに気付く。

その相手は朗読会にも姿を見せた女性だった。

問い詰めると彼女はFBI捜査官だった。

彼女はステファニーに、結婚式に招待されたエミリーの叔母を尾行していたことを告げる。

朗読会に出向いた際中、彼女は誰かと密会していた画像を見せると、その相手が左上でのタトゥーの絵柄からエミリーであることを知る。

 

エミリーはアメリカにいる担当刑事に連絡をして、エミリーの叔母を調べてもらうよう依頼する。

 

ようやく挙式を迎えた当日。

夜の食事会でダンテは婚前契約書を燃やすサプライズで周囲を驚かせ、ダンスパーティーへと場面は映る。

バーカウンターからエミリーを目で追うステファニーは、叔母と親密な会話をする姿を目撃。

ダンテや敵対組織の男の動向も目で追うようになったステファニーは、ダンテを尾行してみると、何者かに脅され射殺される姿を見てしまう。

花火が置かれた小屋ごと爆発した現場を目の当たりにしたステファニーは、一同の前でダンテが殺されたことを知らせるが、なぜか自身が犯人だと疑われてしまう。

 

こうして冒頭の軟禁状態に場面は戻る。

警察にスマホとパスポートを没収されたステファニーは、後に部屋にやってきたエミリーと二人で会話をすることに。

しかしエミリーは悲しみに暮れる姿を装って近づき、ステファニーにナイフを渡して自分を傷つける行為をしはじめ、暴行されたとでっちあげるのだった。

 

警察の目が疑惑から確信へと変わりつつある状態の中、濡れ衣を晴らしたい一心のステファニーは、突然やってきたルームスタッフから手紙を預かる。

それはFBI捜査官と落ち合う場所だった。

エミリーの叔母の情報を入手した捜査官の元へ直行する前に、ステファニーは叔母と同じく招待されたエミリーの母親の元へ向かう。

 

すると、母親から衝撃の事実を知らされる。

前作で三つ子として生まれたことが明かされたエミリー。

エミリーには殺した妹以外にもう一人妹がおり、生まれてすぐに亡くなってしまったことが明かされていたが、実は叔母が死んだと見せかけて子供を奪っていたことが判明。

今回の一件のどこかでエミリーと入れ替わっていることを知らされる。

 

急いで捜査官の元へ向かうステファニーだったが、エミリーになりすました妹チャリティが捜査官を殺して密会を妨害されてしまう。

再び警察に捕まったステファニーだったが、連れ去られた場所はダンテの母親の前だった。

 

自白剤を撃たれ全てを正直に告白するステファニーだったが、全ての犯人と思い込んでいたダンテの母親は中々白状しないステファニーに嫌気がさし、手下に殺害を命じる。

そして殺されようとした瞬間、エミリーが助けにやってくる。

 

チャリティの事を聞かされたステファニーは、エミリーの息子を人質に捉えているチャリティの姿を動画を通じて知る羽目に。

果たして、ステファニーとエミリーは、叔母とチャリティの犯行を阻止することができるのだろうか。

 

・・・というのがざっくりしたあらすじです。

 

前作よりだいぶ探偵ものに。

前作では2人の交友関係を前半で描いたのち、行方不明から遺体となったエミリーの真相を追う後半という分かりやすい構成になってましたが、今回は続編ということもあって二人の関係性は険悪な状態からスタート。

 

にも拘らず互いが執着してるかのように描く序盤は、この後一体どんな展開や事件が勃発するのか楽しみな内容でした。

そりゃ自分が刑務所へ送り込んだ相手から結婚式に招待されるなんて何かあるに決まってるし、向こうからしたら人生をめちゃくちゃにされたわけですから、何しでかすかわからない。

親友なんて言葉がめちゃくちゃ嘘くさい間柄になってるせいで、結婚式で何が起きるかドキドキしましたね。

 

恐らくステファニーはエミリーの計らいによって濡れ衣を着せられるんだろうと予想を踏んでいましたが、展開としてはその通りに。

しかし黒幕が、死んだはずの妹と突如現れた叔母だなんて読めもしませんでした。

 

また今回はショーンやダンテはじめ殺害される人物が多かったせいか、話自体の面白みが薄れてしまった印象があります。

具体的に言うと、一つの事件を深掘りするようなミステリーではなく、一人ずつ被害者が増えることで尺を伸ばしてるようにしか思えなかったという点です。

 

飲んだくれて精神不安定のエミリーの母親まで殺害する必要はなかったんじゃないかなと。そこ深く扱ってないし。

 

さらには冒頭からステファニーがアマチュア探偵としてたくさん動くんだろうなと予想出来てしまうのも面白みに欠ける。

実際ステファニーは小児性愛者の教師を問い詰めたことで、自害する姿を目の当たりにしたことからライブ配信からは遠ざかっており、探偵稼業への代償のデカさを痛感していた矢先の結婚式だったんですよね。

 

結局本能からは逃れられないのか、エミリーを尾行したり、叔母を怪しんだりと何の迷いもなく行動してる姿に疑問も感じました。

にも拘らず、これといったなぞ解きをするでもなく、真相が転がり込んでくるあたりは、少々都合が良すぎる展開でしたし、何よりエミリー自身が助けにやってきて犯人を追い詰めるのは違った劇的な方向で、個人としてはもう少し工夫の余地があったのではと。

 

例えばステファニーが自力で軟禁状態から抜け出し真相を足で掴むとか、チャリティによって眠らされているエミリーをステファニーが助けに行くなど、それまで疑惑の目を持っていたステファニーが本心で救いたいと思うような気持の変化を見せてこそ、関係性が深くなったのになぁと。

 

とはいえ、罪を犯したことで不信感を募らせている相手に水面下で守ってもらうための招待だったわけですから、本来ならもっとエミリーの視点を増やしたほうがよかったのかもしれません。

 

 

最後に

絶景のロケーションミステリーとしては抜群で、カプリ島の青々とした海と白で統一された建造物は、正に旅行気分を味わえるという意味で眼福。

さらにアナケンの庶民的な衣装から解放的なバカンス風衣装にうっとりですし、さらにエレガンスで妖艶なライブリーのファッションも楽しめるた前作以上の良さがありました。

 

掛け合いに関しても、前作とは違い互いが本音で毒づける間柄になっていることもあり、本当に無神経な言葉が飛び交う会話はクスッと笑えます。

そこに今回の「ささやかな頼み」が思いもよらぬ方向で事件へ向かっていく内容に、安定した楽しさがあったのは事実。

 

最後には姑からダンテが死んでしまってもあなたはうちのファミリーだと告げられるシーンから、続編を匂わせる終わり方になっており、終身刑を言い渡されたチャリティと共に、ステファニーとエミリーはマフィア絡みの事件に関わることになっていくんでしょうか。

全然シリーズ化されても良いんだけど、もっとステファニーの謎解きを楽しませてほしいですね。

これまで以上の掛け合いも忘れずに。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「サンダーボルツ*」感想ネタバレあり解説 新たなアベンジャーズがここに。

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サンダーボルツ*

2025年はMCUにとって「変革」の年なのでしょうか。

キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」では、過去作を引用しつつ初期にあった「手堅く面白い」空気を醸し出していたのが印象的でした。

果たして本作も監督の作風や作家性を表に出さない「娯楽に特化」した作品になっているのでしょうか。

 

とはいえ、これまでのMCU(ドラマ含む)に登場した敵キャラやサブキャラといった「無法者たちの寄せ集め」集団が世界を救うという内容は、スーサイド・スクワッドそのもの。

しっかり差別化した内容になってないといけないなと思っております。

その辺を踏まえて早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

かつてマーベル・シネマティック・ユニバースに登場したスーパーヴィランたちがチームを結成し、己の過去と向き合いながら世界の脅威に立ち向かっていく姿を描いたアクションエンタテインメント。

 

アベンジャーズが姿を現さない中、突如襲来した黒い影に立ち向かうため、かつて世界に混乱を招いたならず者たちが一堂に会し、世界を救うため決死の闘いに挑む姿を、盛りだくさんのアクションを泥臭く映しながらも、スタイリッシュに洗練された現代的な描写で鮮やかに魅せる。

 

Netflixシリーズ「BEEF」の高評価によって本作の監督に抜擢されたジェイク・シュライヤー監督。

彼含め多くのスタッフやキャストが新鋭スタジオ「A24」作品に携わっていたこともあり、本作はどこかアート感が漂う映像になっているとのこと。

また「スパイダーマン」を手掛けたジョン・ワッツ監督と大学時代からの友人で、自身も作品に携わっていた経験から、監督を引き受けたとのこと。

 

また、アンソニー・バッキ―はじめ、フローレンス・ピューデヴィッド・ハーパーハナ・ジョン=カーメンワイアット・ラッセルオルガ・キュリレンコジュリア・ルイス=ドレイファスらがそれぞれのキャラを続投。

 

既にほとんどのキャラが26年公開予定の「アベンジャーズ:ドゥームズ・デイ」に登場することが決まっており、本作はその足掛かりになる可能性が高い。

果たして、瞬く間に人々を消し去ってしまう能力の持ち主に、肉弾戦を得意とする彼らはどう立ち向かうのか。

 

 

 

 

あらすじ

 

ある時、ニューヨークの街に突如として大きな黒い影が出現。

瞬く間に市民を消し去っていく謎の敵により、世界は再び大きな脅威に直面するが、そんな人類の危機にも、数々の敵から世界を救ってきたヒーローチームの「アベンジャーズ」は姿を現さない。

 

CIA長官のヴァレンティーナ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)は、誰がこの脅威から世界を救うのかを問いかけるが、そこで立ち上がったのが、かつてヒーローたちと対立したことのあるバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)だった。

 

バッキーは、エレーナ(フローレンス・ピュー)、ジョン・ウォーカー(ワイアット・ラッセル)、レッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー)、ゴースト(ハナ・ジョン=カーメン)、そしてタスクマスター(オルガ・キュリレンコ)という、全員が過去に悪事を犯したことのあるならず者たちに声をかけ、「サンダーボルツ*」というチームを結成する。

 

そんな彼らの前に、バッキーの強力な武器でもある義手すらも簡単に打ち砕く、謎の敵が現れる。(映画.comより抜粋)

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キャラクター紹介

  • エレーナ・ベロワ(フローレンス・ピュー)…“レッドルーム”出身の暗殺者であり、ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウの義妹。
  • バッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)…サンダーボルツのリーダー。スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(初代)の親友にして元相棒。フラッグ・スマッシャーズとの戦いにて自分の過去と向き合い、サム・ウィルソン/ファルコンのキャプテン・アメリカ襲名を見守った。
  • エイヴァ・スター/ゴースト(ハナ・ジョン=カーメン)…幽霊の如くあらゆる物質をすり抜ける量子フェージング能力を持つ女性。ジャネット・ヴァン・ダインを巡る戦いにて、スコット・ラング/アントマンとホープ・ヴァン・ダイン/ワスプと戦って敗北し、その後保護者であるビル・フォスターと共に逃亡。現在は量子フェージング能力は彼女自身で制御している。

 

  • ジョン・ウォーカー/U.S.エージェント(ワイアット・ラッセル)…かつてアメリカ政府に新しいキャプテン・アメリカ(2代目)に指名され活躍した、元アメリカ陸軍の兵士にして超人兵士。不名誉除隊になったあと、フラッグ・スマッシャーズとの最終決戦にてバッキー達と協力をし、事件解決に貢献した。その後、ヴァレンティーナからU.S.エージェントのコードネームと役職を授かる。
  • アレクセイ・ショスタコフ/レッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー)…“キャプテン・アメリカ”に対抗する目的でソ連が生み出した超人兵士であり、以前の任務ではナターシャとエレーナの“父親”を演じていた男。レッドルーム壊滅後は、エレーナ達とアントニアを保護し、行動を共にする。
  • アントニア・ドレイコフ/タスクマスター(オルガ・キュリレンコ)…かつてエレーナ、アレクセイと戦った観察するだけで相手の動きや武装の使い方を完全にコピーできる能力を持つ、レッドルームの長だったドレイコフの娘。レッドルーム壊滅後は、エレーナ達に保護され行動を共にする。

 

  • ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)…“ヴァル”のニックネームを名乗る謎の伯爵夫人で、CIA長官。CIA捜査官のエヴェレット・ロスの元妻でもあり、彼の上司でもある。
  • ボブ・レイノルズ/セントリー(ルイス・プルマン)…サンダーボルツの任務中に突然現れた謎の男。後に無敵であり、大地を暗闇で染め、人々を影に変えることができる能力を持つ“ヴォイド”と化す。

(以上Wikipediaより抜粋)

 

 

 

 

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

私たちは「影」の存在だった。

其々が抱えるトラウマと向き合って戦いに挑む孤独なヒーローたちが見つけた「我が家」。

新たなアベンジャーズの物語が今、始まる。

しかし、ルックとキャラが合ってねえなぁ…。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。

高層ビルの屋上で黄昏るエレーナ。

姉であるナターシャがいなくなって以降、どんな任務をしても「虚無感」しかないエレーナは、OXE社のラボに潜入し、ヴァレンティーナから依頼されたミッションに取り組んでいた。

 

爆弾を仕掛けようとするが、拳銃を持った研究員が「ヴァレンティーナは間違っている」と語気を強めてエレーナに近づくが、彼女はあっさり任務を終えてアレクセイの家を訪ねる。

 

一方、ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌと秘密兵器製造会社オックス社との取引をめぐるスキャンダルと議会調査の波を受け、米国政府は弾劾手続きを開始する。

新米下院議員を務めるバッキー・バーンズは、ヴァレンティーナの個人秘書メルに近づきながらヴァルが秘密裏に関与している証拠を掴もうと奔走していた。

 

裁判でヴァル「アベンジャーズのいない今、誰が国を守るのか」を引き合いに、オックス社との関与はないと強調。

しかし裁判終了後「全て掃除しろ」とメルに指示。

虚無感に追われ、仕事を辞めたいとアレクセイに語ったエレーナは、父親の助言により再び前向きな気持ちになり、ヴァルから頼まれた任務をさっそく実行する。

 

エレーナはオックス社が放棄した基地に潜入して資料を盗もうとする者を排除する任務に就く。

基地に入ると、人体実験が行われた資料や謎のエンブレムのイラストが描かれた紙を見つけるエレーナ。

すると突然何者かが襲い掛かる。

 

それはU.S.エージェントだった。

さらに建物に侵入したのはかつてアントマンと戦った過去を持つゴーストで、3人は事情を聞く余裕もなく拳を交えていく。

そこにタスクマスターも参戦するが、ゴーストの発砲により即死。

さらに格闘の拍子で木箱の中から見知らぬ男性が起き上がることで事態は混迷していく。

 

銃を構えながら対峙する一行は、全てはヴァルの仕業であることに気付く。

彼女にとって不都合な資料や存在は、ここで消されるということに。

 

察した一行は争いを中断し、閉じ込められたこの施設から脱出することを試みる。

しかしゴーストの壁をすり抜ける能力も超音波によって遮られ、焼却開始のカウントダウンも残り2分という危機的状況にあった。

音を出す電源を断ち、ギリギリで脱出することに成功した一行だったが、見知らぬ男性ボブと手が触れた瞬間に、向き合いたくない過去の闇の幻覚をみることになる。

 

エレーナはレッドルームに入隊するためのテストで友人を見殺しにしたこと、ウォーカーは公衆で人を殺めたことで失墜したことに執着し、家族に見放されてしまった過去と、その場で硬直してしまうほどのトラウマを見せられていた。

 

ボブは臨床実験に志願したものの、何も覚えておらず、気がついたらここにいたと語る。

昔からメンタルに自信のなかった彼は、強くなりたい一心で志願したとのこと。

役に立たないせいかいちいち苛立つウォーカーに対し、エレーナはボブに寄り添っていく。

 

故障したエレベーターを4人でなんとか登り切った一行だったが、既に証拠隠滅に失敗したことを嗅ぎつけたヴァルの軍隊が基地を取り囲んでいた。

 

手分けして脱出する術を探る一行は、倒した伏兵の戦闘服を着てなりすまし外に出ること成功、車を手配したゴーストの手引きによって脱出に成功したかに見えたが、ボブが自分たちの身代わりのためにヴァルらの前に現れ、銃で乱射されてしまう。

 

ヴァルはボブを殺すなと命令していた。

その理由は、彼こそがオックス社と共に進めていた「セントリー計画」によって生み出されたスーパーソルジャーだったからだ。

謝って射殺してしまったことを悔やむヴァルだったが、すぐさまボブは立ち上がり一気に上空へと飛び立つ。

能力が覚醒したと思われたが、ボブはすぐさま地上へ落下してしまう。

 

それを見たエレーナたちは、広い砂漠を彷徨いながら逃げるのみであった。

 

朝日が昇ったころ、たまたまヴァルのハイヤーを担当していたアレクセイが娘のピンチを聴きつけ現場までやってくる。

オンボロのリムジンで逃げる一行を、ヴァルの手下が追いかけてくる。

スピードの上がらないリムジンでは逃げ切ることもできず、防戦一方の一行だったが、そこへバッキ―が現れ敵を一網打尽にする。

 

助けにやってきたと思われたが、バッキ―は彼らを捕らえるためにやってきたのだった。

 

拘束された一行は、事情を説明するもバッキ―は聴く耳を持ってくれない。

しかし、内密に連絡を取っていたメルからの電話を聞いたバッキ―は、セントリー計画の全容を聞き態度を変える。

諸悪の根源であるヴァルを裁判にかけること、そして捕らえられたボブの救出を行うため、かつてエレーナが所属していた女子サッカーチームの名にあやかり「サンダーボルツ」は、一路ニューヨークへ向かう。

 

トニー・スタークがかつて所有していた「スタークタワー」を「ウォッチタワー」という名称に変え買い取っていたヴァル。

そこはセントリー計画が成功した際に使用する予定のラボを賄った施設だった。

 

意識を失ったボブを言いくるめたヴァルは、セントリー計画が成功したことをマスコミ向けに発表するためにマスコミを呼びつける手配をする。

そして彼女の筋書きは、裏でバッキ―と繋がっていたメルを利用してサンダーボルツを呼び寄せ、セントリーに始末することで「新たな正義の誕生」を世に知らしめることだった。

 

人体実験を隠し証拠を隠滅しようと企んでいた現CIA長官を野放しにできない、そのために下院議員にまでなったバッキ―は、チームを引き連れて行動を開始。

ヴァルのいるバールームへとやってきた一行だったが、まんまと言いくるめられたボブ=セントリーの力に押され、全く歯が立たないことから白旗を上げて退散するしかなかった。

 

ヴァルからとどめを刺すよう命令されたボブだったが、なぜ自分よりも力のない存在から指示されなければならないのか理解できず、一方的に断る。

万が一セントリーが機能しなかった場合を想定していたヴァルは、キルスイッチを使って制止しようとしたが、ボブに見つかってしまい首を絞められてしまう。

そこにメルが現れスイッチを起動し窮地を免れた。

 

死んだと思っていたボブは、突然体が黒で覆われた状態で息を吹き返し、ニューよーくの上空に現れ、人々を「影」そのものにしてしまう。

攻撃に失敗し落下するヘリから人々を守るため、そして暴走し「ヴォイド」と化したボブを止めるため、サンダーボルツは再び立ち向かうのだった。

 

アベンジャーズよりも遥かに強い能力をもつセントリー=ヴォイド=ボブに、肉弾戦でしか戦う術のないサンダーボルツに勝機はあるのか。

 

・・・というのがざっくりしたあらすじです。

 

やっぱりヴァルが悪役でしたね。

フェイズ4以降、ちょいちょい顔を出しては一体何を企んでるのかよくわからなかったヴァレンティーナ。

ちゃっかりCIA長官にまでなっていたのは前夫のロス捜査官のセリフからわかっていましたが、裏で「セントリー計画」、いわゆるスーパーソルジャー計画を復活させていたなんて全く予想もできなかったですね~。

 

今回も新たな敵が襲来したわけではなく、身から出た錆とでもいいますか、自らまいた種を回収する羽目になるチームという構図だったわけで、あいかわらずMCUは話を大きく見せようとするけど実際は小さいコミュニティの中で尻拭いをするだけの争いしかやってくれないのが残念なところ。

 

きっと外部からの新たな敵ってのはアベンジャーズまでお預けってことなんでしょうね。

 

また今回は「鬱」や「心の闇」といった部分にフォーカスを当てながら、これまで「影」の存在だった彼らに光が当たるという展開のメンタル改善映画でもありました。

内容として面白かったのは、新たなキャラクターボブが闇落ち化した「ヴォイド」を通じて、過去にトラウマを持ってるせいで虚無感に覆われてしまう彼らが、どうやってそれに決着をつけるか、どうやって向き合うかに繋がっていく構成。

 

不安と孤独を抱えてきたエレーナ、かつての英雄になりたいのになれないでいたアレクセイ、ずっと葛藤を抱えて生きてきたバッキ―、誰も近づけないことに孤独を抱えていたゴースト、そして名声や承認欲求に捉われ歪んだ正義感で暴走し、大事なモノを失ってしまったウォーカー。

それぞれが不安を隠し強がっていたからこそ、終盤で吐き出す本当の気持ちがグッとくる作品でしたね。

 

影の存在だった彼らに光が当たる瞬間は眩しかったですね。

 

 

しかし、個人的にはせっかく調子をとりもどしつつあるMCUだったのに、話に面白みがないと感じてしまいました。

120分というちょうどいい尺だったにも拘らず、中盤まで基地内で4人がダラダラおしゃべりしながら行動する内容で、テンポよく描けばそんな尺にならないのも腹立つし、それをA24あがりだか何だか知りませんが、妙にシックに描こうとしているのがミスマッチに思えてしかありませんでした。

 

劇中では結構手持ちカメラで撮影している箇所があり、ある種新鮮に思えたんですが、どうもこれが鼻に突く。

この手の人は、映像にこだわりがあり過ぎて編集が疎かな傾向にあると思っており、実際アレクセイがユーモラスに喋るシーンも、テンポが悪いせいかイマイチ笑えない。

というかアレクセイをギャグ要因にしてロクなツッコミもなければ、他の誰かがそっちに回る気配もなく、1つのシーンの締めとしてアレクセイに一言面白いことを言わせて次のシーンへ行くのも何か嫌。

 

挙句の果てにはNYの街中で、コスチュームを着た二人が真剣に親子の話をする姿を、落ち着いた配色とトーンで映しだす。

背景にたくさんの人が歩いているのに、誰も見向きもしない演出とかめちゃくちゃノイズでした。

 

僕はジェームズ・ガンをそこまで評価してないんですけど、彼がやったスースクよりもカッコつけて見せてる気がして、ものすごく嫌気がさしました。

別にあれをやれよとまではいいませんが、もっとリアル路線の様なカメラワークとか演出とか求めてないんで、ヒーロー映画ならではの誇張した描写が欲しかったです。

 

MCUには職人監督を起用してほしいとずっと思っていて、どうしてもここ最近はそれがないのが一番の不満。

闇を抱えてようが、鬱っ気があろうが、一応はアメコミキャラで、エクスペンダブルなキャラなわけですよ。

もっと泥臭い人間臭い、無様でももがくようなキャラを外連味たっぷりにユーモアたっぷりに、そして編集を意識した絶妙なテンポで描いてほしかったですね。

 

 

最後に

蓋をかけて見ればヴァルの策略にまんまとハマり、いやむしろ乗ってあげたくらいの態度で「ニュー・アベンジャーズ」となったサンダーボルツ。

 

ポストクレジットではファンタスティック4が乗っているであろうロケットが映り、いよいよ「アベンジャーズ:ドゥームズデイ」へ向け加速したのはテンションが上がりますね。

彼らがどうやってやってくるのかは、次回作までおあずけですが、別の並行宇宙からやってくるんですかね。

 

またアベンジャーズを名乗ったことでサムがお怒りだってのも気になるところ。

リーダーを差し置いて勝手にチーム作るなよってことなんでしょうか。

何とかバッキ―に仲を取り持ってもらいたいですね。

 

とにかく個人的にはあまり乗れない映画でした。

次のファンタスティック4に期待したいと思います。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10


映画「クィア/QUEER」感想ネタバレあり解説 バロウズの原作読まないとわからない気がする。

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クィア QUEER

ブロークバック・マウンテン」や「アデル ブルーは熱い色」、「BPM ビート・パー・ミニット」、「ムーンライト」に「キャロル」、そして「パワー・オブ・ザ・ドッグ」。

これらに共通するのは「クィア」にまつわる物語。

社会的に語ると話が長くなるので割愛しますが、この20年の映画史において「LGBTQ」は欠かせないテーマになっているのは事実。

 

今回鑑賞する映画は、そんな「クィア」映画を描き続ける監督の新たな物語。

孤独な男が求めた愛を渇望する物語とのことで、「君の名前で僕を呼んで」や「チャレンジャーズ」など、どれも見る際に性別を意識しなくなるほどまっさらな愛を描くルカ・グゥアダニーノ監督らしい作品になっていることを期待します。

 

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

裸のランチ」で世界的影響を与えたビートニク文学を代表する作家ウィリアム・シュワード・バロウズが、1950年代に執筆しながらも、85年まで出版しなかった未完の小説を、男性二人が一人の女性を取り合う姿をアート性を含め外連味たっぷりに描いた「チャレンジャーズ」の監督脚本コンビで実写化。

 

1950年代の南米を舞台に、薬物依存に苦しむアメリカ人駐在員の作家と、彼が執着する謎めいた青年との関係を軸に、現実と幻覚の狭間で揺れながら愛を探し求める姿を、一流の衣装デザイナーと音楽家の手によって、深く根ざした愛の物語へと完成させた。

 

監督のルカ・グゥアダニーノは、10代のころ「多様な、異なる」という意味を持つ原作に強烈に惹かれ夢中になったという経緯から、この未完の物語をどうにか完成させたいという思いで製作。

バロウズが遺したトーンを意識しながら、脚本家のジャスティン・クリツケスと共に原作を映画に翻訳していった。

 

孤独な主人公を演じるのは、ダニエル・クレイグ

満を持して「007」でのジェームズ・ボンドを務め終えた彼が、少しずつパブリックイメージを壊そうと挑んだ本作で、意中の男性に無様なまでに愛を渇望する姿を表現し、各国で高い評価を得た。

そんなクレイグの相手を演じたのは、新星ドリュー・スターキー

300人の中からオーディションで選ばれた彼は、気まぐれに応じる若者の心の揺れを当時の男性像を意識しながら熱演した。

 

他にも「アステロイド・シティ」のジェイソン・シュワルツマン、「ファントム・スレッド」のレスリー・マンヴィルなどが出演する。

 

また、音楽をトレント・レズナー&アッティカス・ロスが、衣装デザインをJW Andersonのジョナサン・アンダーソンが担当するなど、「チャレンジャーズ」で生まれた絆が本作でも活かされている。

 

一途な恋のために地の果てまで行く男の物語。

愛したいのか、それとも愛されたいのか。

男の切なる願いがもたらす錯綜を、ロマンティックに映し出す。

 

 

 

あらすじ

 

1950年代、メキシコシティ。

退屈な日々を酒や薬でごまかしていたアメリカ人駐在員のウィリアム・リー(ダニエル・クレイグ)は、若く美しくミステリアスな青年ユージーン・アラートン(ドリュー・スターキー)と出会う。

 

一目で恋に落ちるリー。

乾ききった心がユージーンを渇望し、ユージーンもそれに気まぐれに応えるが、求めれば求めるほど募るのは孤独ばかり。

 

リーは一緒に人生を変える奇跡の体験をしようと、ユージーンを幻想的な南米への旅へと誘い出すが──。(HPより抜粋)

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感想

「君の名前で僕を呼んで」よりも生々しい壮年男子と美青年の濡れ場。

なぜそこまでして手に入れたいのかが紐解けるであろう後半の幻覚シーンは非常に難解。

よって感じたままに見るのが吉。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

良い歳して何に溺れてるんだか。

恐らく終戦後のメキシコシティ。

バロウズを反映させたと言われるリーというキャラクターは、とにかく四六時中酒を飲んでは男を漁っている。

部屋の様子から執筆活動をしているんだろうけど、仕事をする姿は一切見られず、4時55分のタイマーと共に家を出て馴染みのバーに赴き、テキーラを駆けつけ3杯流し込むという酒豪ぶりを見せるリー。

 

数少ない友人に「あの子、クィアかな?」と同性愛者かどうか確かめるリーを見るに、50過ぎのおっさんが、何女子中学生みたいなノリで相談事をしてるんだかと一瞬興醒めした気持ちになったけど、いざユージーンという美しい肉体と端正な顔立ちを持つ男性を前にすると、茶目っ気たっぷりにお辞儀をしたり、今すぐにも触れたい気持ちを抑えながら理性と距離を保つ振る舞いに、もはや乙女心は性別も年齢も関係なのだなと思わされた。

 

劇中何か説明めいたことを語るでもなく、なんてことのない会話をしながら「このあとどう?」的な雰囲気や徐々にスキンシップを積極的に試みてみるなど、ゲイコミュニティならでは(?)の持っていき方を描写する。

 

いくらボーイハントを実行してもリーの心は一向に埋まることがない。

寧ろ男を抱いても隙間なんて埋まるのだろうかさえ思えて仕方ない。

というのも、リーは酒にも溺れるしドラッグにも溺れており、ユージーンと出会うまでは本当にこの地で死ぬことを意識しながら余生を過ごしてるだけにも思える。

 

アメリカでそんな生活をしていたら異常者且つ犯罪者になるということで、この同性愛者が集う街にやってきたようで、ようやうその「希望」となる男に出会った時のリーの表情は忘れなれない。

50年代にも拘らず堂々とニルヴァーナの「Come As You Are」が流れ、ディストーションの効いたギターストロークが、まるで青天の霹靂を彷彿とさせる演出になっており、個人的にはナイス選曲だなと感じた。

 

前半は、そんなユージーンとの恋の駆け引き、体の駆け引きを中心に描いていく。

 

常に行きつけのバーで女生徒チェスをたしなむユージーンは、たまたまラムコークをオーダーしにカウンターに座るリーの横にやってくる。

そのまま意気投合して酒を飲み交わすが、その日は家まで送り届けて終了。

 

それからというもの、友人に相談したり、しょうもないジョークで場を盛り上げるなどして、彼に「その気」があるのかを探りながら距離を縮めていく。

家にナポレオンがあるからと口実を作り誘った夜、ユージーンはあまりの苦さに悶絶、ベッドに横たわってリーが体に触れようとした瞬間、来る前に食べたであろう肉料理を嘔吐。

リーは心配をするもそのまま服を脱がし、晴れて体を重ねることに成功する。

 

「君の名前で僕を呼んで」でもティモシー・シャラメとアーミーハマーによる生々しくも美しい性描写を余すことなく描いたグァダニーノでしたが、本作もそれに負けじと見せる見せる。

ボンド役で培った分が未だ残っている鍛えた体に中年ならではの脂肪がついた、叔父さん好きには堪らないであろう成熟されたリーの肉体、そして若さあふれるユージーンの引き締まった肉体が、窓からこぼれる月夜にさらされて青白く光り出す。

 

戦時中に痛めたユージーンの肋骨に優しく触れながら、蓄えた胸毛を風に揺れる草原の草の如く撫でていくリー。

やがて興奮を抑えられなくなったリーは、徐々に下半身へと顔をうずめ、青い下着から浮き出た巨大な肉棒を頬張りながら、我慢できずに下着を降ろし口で頬張っていく。

 

肌を重ねるごとに呼吸が荒くなっていく2人の生命のスタッカートと、トレント・レズナー&アッティカス・ロスらしからぬオーボエメインの楽曲によって、人間と人間による営みが神々しく見えてくる。

 

ようやく意思疎通できたはずのリーだったが、初夜を迎えて以降ユージーンの態度がどこか冷たくなっていく。

リーがいくら冗談を言っても、明日の約束をこぎつけても、あの時の高揚感を得られることはなかった。

 

酒におぼれたリーは、「君と話がしたい、言葉でなく」と言い寄る。

 

この言葉に倣うかのように、後半二人はメキシコを離れ、テレパシーができるというドラッグ「ヤヘ」を求めて南米のジャングルに向かうことになる。

 

こうして前半は、リーとユージーンの出会いと中々思いが交差しないすれ違いの感情を描写した内容になっている。

 

メキシコシティの街並は、多分そうなんだろうなという雰囲気の建物が並び、常に酒を飲んでは汗だくになるような気候が感じられる空気感を持っていたが、どうも背景は合成のように見える。

そう考えると全てセットなのではと思うほど、小奇麗な風景ではあった。

とはいっても普通に町の人は行き交うし、奥行きも意識された構図になっているので、実際のものとセットと合成とがごちゃまぜになった作りになっていたんだろうか。

 

この作りモノ感含めて、かなり個性的な作品でもあった。

 

後半からよくわからなくなる。

本作は4章からなる構成になっており、後半の2章はメキシコシティを離れ、ヤヘを求めて旅する2人の冒険の模様を中心に、2人の関係性が映し出されていく。

 

他国に興味のあるユージーンの気を引き旅行に同行させることに成功したリーは、列車やバス、飛行機とあらゆる移動手段を用いて各国を回っていく。

 

ヘロインやコカインし放題の国とあってか、ついつい調子にのったリーは、赤痢の激しい寒気によって体調不良に陥ってしまう。

そんなリーを優しく開放するユージーンの温かさに触れながら旅をするリーは、ようやくヤヘの在り処を見つけ出す。

 

植物園の館長から聞きだし訪れたジャングルの奥地、そこで研究を進める博士の家に世話になることになった二人は、興味本位で手を出すには刺激の強すぎるヤヘをついに口にする。

 

館長曰く「テレパシーなんてもんじゃない、まるで鏡を見てるかのような幻覚に陥る。仮にそれが求めてなかったモノでも受けれいるしかない」と語るほど幻覚作用の強いドラッグ。

相手の行動も言動も心の奥さえも全く読めずにやきもきしてばかりのリーにとって、ユージーンを知る一番の近道はそれ以外考えられなかったのかもしれない。

 

口にした当初は騙されたんじゃないかと思うほど効果が出ず、笑うしかなかった二人だったが、突然口の中からカエルのように膨らんだ喉仏が口外に飛び出てしまう。

さらに心臓が破棄されたことで、二人は感じたことのない領域へと足を踏み入れていく。

 

前半ではリーが幽体離脱をしてユージーンの体に触れる描写があり、気持ちが一方通行であることが示唆されたものだったが、ヤヘを口にして幻覚モードの入った二人は、ついに言語を超越したコミュニケーションを図っていく。

 

土が汗で張り付いた体をくつけあいながら、互いが互いの肉体を貫通し、まるで一つの体にでもなったかのような状態が映し出される。

 

ここから「一体俺は何を見せられているんだ」モードに入ったので、この後何がどう描写されても正直理解できないシーンが続く。

 

説明するとなれば、結局正気を取り戻した二人は、ヤヘ体験を途中で断念し、ユージーンと口数を増やすまでもなく足早に博士の家を後にする。

前を歩くユージーンを見失ったリーは彼を追いかけるが、忽然と姿を消してしまう。

やがて空を見上げると、夜空を舞うリーが真っ逆さまに墜ちてきて、物語は2年後にワープ。

 

最終章となったエピソードでは、ヤヘ体験をして以降二人は遭ってない様子で、再会した旧友からユージーンは南米に向かったとのこと。

半年前にリーに会いたいと願っていたようだが、それもかなわぬものとなった。

 

その言葉を聞いてうっすら微笑むリーは、一人部屋に戻ると幻影であるユージーンと対面。

頭の上にコップを乗せたユージーンめがけて銃を向け、発砲するも彼の額に命中し幻影のユージーンは息絶えてしまう。

そして一気に老けたリーは、ベッドで横たわり、何者かに足を絡めながら息を引き取っていく姿で幕を閉じる。

 

結局リーはあの強烈なドラッグでユージーンとテレパシーに成功したんだと思う。

それまで彼の一挙手一投足に翻弄されていたリーだったが、2年の歳月で一度も出会わなくとも余裕ある生活を送れたのは、やはりいつでもユージーンを近くで感じていたからなのかもしれない。

 

また、「僕はクィアじゃない」と時折語っていたリーは、代々クィアの家系であったことを劇中で語っており、自分も同じだった当初は戸惑いが大きかったそう。

だからこそ「僕はクィアじゃない」という言葉は、当時の自分の思いから出た言葉であり、同じように語るユージーンを経て、かつての自分を受け入れる作業を劇中でしていたのかもしれない。

よって、彼がずっと追いかけていた幻影は、ユージーンであり、かつての自分かもしれない。

それを受け入れたリーは、ようやく自分自身を肯定し、余生をおくることができた、のかもしれない。

 

 

最後に

もう、こうでもしねえと感想にピリオドが打てないので半ば強引に解釈をつけてみました。

 

「もっとも個人的な映画」とあって、本当に置いてけぼりにされた映画でした。

特に後半の幻覚描写は、ひとつひとつのシーンにかなりの尺を使っており、注射を打つシーンも1から10まで見せるほど個人的には不要なシーンが連発して、さすがに眠気が着ました。

なぜそんなにも行間とも思えないような間延びしたショットばかりを見せるんだろうと首をかしげていましたが、それもこれも「個人的な映画」で片付く話だったのかもしれません。

 

しかしダニエル・クレイグはよくこんな役を受けたなと感心しっぱなしでした。

濡れ場でもがっつりはだかで肌を重ねるし、ディープキスも積極的に行う姿勢。

それ以前に、ひたすら酒に溺れてる設定もあって、常に頬を赤らめながら時に声を荒げたりするけど、理性を保とうと真摯に振る舞う姿を見せるなど、とにかく感情が忙しそうな役を見事にこなしてましたね。

 

一番すごいとおもったのは、ユージーンを口でイカせた時の「がんばったね~!」みたいな褒め方。

両頬をやさしく撫でながら、口に含んだアレが残った状態で接吻していいかアイコンタクトを取ってキスをするまでを満面の笑みでやるんだから大したもんですよ。

正直見たかったような見たくなかったような複雑な気持ちではありましたが、いやぁよくやったよと僕も褒めたいです。

 

また、ニルヴァーナを始め、プリンス、シニード・オコナー、ニュー・オーダーなど、80~90年代ロックが流れる違和感は好みでした。

風景含めてそういう異物感のある作品とも思えたなぁと。

 

このように意外と見てられた作品でしたが、やはり作品に対する自分の理解度は弱く、感情移入する点も少なければ、前作「チャレンジャーズ」を超える面白さは見当たりませんでした。

グァダニーノはDC映画の作品を監督する話もあるので、そっちに期待したいと思います!

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「パディントン3/消えた黄金郷の秘密」感想ネタバレあり解説 シリーズ中一番あっけなさを感じた。

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パディントン 消えた黄金郷の秘密

結構マジな話、パディントンがいたら世界は平和になると思ってる。

これだけ紳士に振る舞い、礼節を重んじ、他者に優しさを与える。

おっちょこちょいだし、お風呂の排水溝がしょっちゅう詰まってしまいそうだけど、今の人間にはないモノを持った存在なんだから、彼がいれば争いもなくなるんじゃないかと思ってしまうわけですよ。

 

そんな英国公式認定の紳士「パディントン」の3作目がお目見えです。

今回はロンドンを離れて故郷ペルーで叔母さん探しを家族で行う物語だそう。

 

マッシブ・タレント」のニコラス・ケイジ同様、2作目っ大号泣した身としては期待しかありません。

彼の優しい心に涙したいと思います。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

1958年に発行されて以降150タイトルも出版され、アニメやグッズなどを通じて世界中で愛されてきたマイケル・ボンド原作の児童文学を実写化した3作目。

 

クマだけど中身な立派な紳士の主人公パディントンが、行方不明となったおばさんを探し出すため、お世話になってるブラウン一家と共に故郷ペルーで大冒険を繰り広げる姿を、英国ユーモアをふんだんに盛り込みつつ、パディントンのルーツを辿っていくシリーズ史上最大のアドベンチャー。

 

1作目と2作目を手掛け、抜擢された「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」ではティモシー・シャラメをパディントン化させたポール・キング監督は、本作で製作総指揮と脚本を担当。

変わって抜擢されたのは、本作で監督デビューを果たしたドゥーガル・ウィルソン

初めての監督業に不安が絶えなかったが、馴染みあるスタッフや魅力的なキャストに温かく迎えられ、仕事ができたと語る。

 

またロケーションでは南アフリカに滞在しながら、舞台となるペルーの名所などで大規模な撮影敢行を行い、はしゃぎまわるパディントンのアクションが映えるような映像を生み出すことに成功した。

 

キャストは、パディントンのCVを「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」のベン・ウィショー、「ノッティングヒルの恋人」のヒュー・ボネヴィル、「リトル・ダンサー」、「メリー・ポピンズ:リターンズ」のジュリー・ウォルターズ、「ハリーポッター」シリーズのスラグホーン役でお馴染みジム・ブロードベントらが続投。

 

またこれまでブラウン夫人を演じてきたサリー・ホーキンスに代わって、「シャッターアイランド」のエミリー・モーティマーが担当。

他にも、「ベイビーガール」のアントニオ・バンテラス、「ファーザー」、「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマンらが出演する。

 

故郷ペルーを訪れたパディントンがどんな冒険を繰り広げ、どんな結末を迎えるのか。

涙なしでは見られないクマの大冒険をご堪能ください。

 

パディントン(字幕版)

パディントン(字幕版)

  • ベン・ウィショー(声の出演)
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あらすじ

 

ロンドンでブラウン一家と平和に暮らしていたパディントン(CV:ベン・ウィショー)のもとに、故郷から1通の手紙が届く。

育ての親のルーシーおばさん(CV:イメルダ・スタウントン)の元気がないというのだ。

 

パディントンとブラウン一家が休暇をとってペルーへ行くと、ルーシーおばさんは失踪、里帰りは一転、彼女を探す冒険へと変わる。

 

だが、都会暮らしになれてしまい野生の勘を失ったパディントンは次々と大ピンチに遭遇。

 

果たしてルーシーおばさんを見つけることができるのか? 

そして、パディントンを待ち受ける「消えた黄金郷の秘密」とは?(HPより抜粋)

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キャラクター紹介

  • パディントン(声:ベン・ウィショー)
    ペルーからロンドンへやって来て、ブラウン一家の一員となったクマ。"紳士な"性格から街の人気者に。ついに正式に英国民と認められる。
  • ブラウンさん(ヒュー・ボネヴィル)
    リスク管理の保険会社に勤める。新しいボスに「リスクは友達よ」と諭され、パディントンと一緒に冒険へ飛びこむ決意をする。
  • ブラウン夫人(エミリー・モーティマー)
    冒険物語のさし絵画家。大らかな性格で、想像力豊かで好奇心旺盛。家族がバラバラになっていくのに危機感を覚えている。
  • バードさん(ジュリー・ウォルターズ)
    ブラウン家に同居する親戚。口は悪いが心根は温かい。一手に引き受けていた家事と子育てが一段落し、やりたいことリストを実行中。

 

  • ジュディ(マデリン・ハリス)
    ブラウン家の長女。大学進学と同時に家を出る予定で勉強中。ペルー旅行も論文にまとめるべくトラベルログの作成を怠らない。
  • ジョナサン(サミュエル・ジョスリン)
    ブラウン家の長男。「チル」したいと部屋にこもりきり。動かずに生活できる道具を発明して特許出願中。ペルー旅行で久々に外へ。
  • グルーバーさん(ジム・ブロードベント)
    アンティークショップの店主。自身も移民だったために、パディントンの良き理解者で、何かと親身に相談にのってやる。
  • ルーシーおばさん(声:イメルダ・スタウントン)
    幼い頃、川に流されて迷子になったパディントンを引き取り育てあげる。老グマホームで穏やかに暮らしていたはずが行方不明に。

 

  • ハンター・カボット(アントニオ・バンデラス)
    ペルーの観光ボートの船長。イケオジでユーモアに溢れて魅力的だが、秘密の匂いを漂わせている。黄金郷関連に激しく反応する。
  • ジーナ・カボット(カルラ・トウス)
    ハンターの娘。ボートの操縦だけでなく、何でも器用にこなす働き者。父親のことが大好きだが、人に言えない心配事を抱えている。
  • 老グマホーム院長(オリヴィア・コールマン)
    ギターと歌が得意で、入居者に対して明るく親切、シスターたちをまとめる一見理想的なリーダーだが、言動がどこか怪しい。

(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

 

ケモナー必見の3作目。もしかしてこれで最後になってしまうのか。

ここから観賞後の感想です!!

 

 

感想

インディジョーンズよろしく、ペルーでパディントンがしっちゃかめっちゃかの大冒険!!

しかしロンドンを離れたこととブラウン夫人役の交代、そして監督の交代が、大きな弊害を生んだように思える。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

こんなもんじゃないだろう。

ポール・キングは脚本に専念、サリー・ホーキンスもスケジュールの都合で降板と、続編でよくある交代劇に一抹の不安を感じていたが、その不安は的中したというのが率直な感想。

 

元気のないルーシー叔母さんに会いに、はるばるペルーへやってきたパディントンとブラウン一家が、行くへ不明となったおばさん探しのためにジャングルを彷徨う中、ガイド役のハンターが一族の呪いによって欲を出すことで、さらに困難を極めていくというのがざっくりしたあらすじ。

 

鍵となる地図が黄金郷=エルドラドを指しており、そこを目指す中で家族とはぐれたり、呪いと葛藤するハンターの一人芝居を見せながら、ともに旅を続けるパディントンの安定のおっちょこちょいぶりにクスっと笑いがこみあげる。

 

しかしながら、シリーズお決まりの家族の特性を全く活かせてないことはもちろん、パディントンがロンドンの培ったはずの「礼儀」や「作法」によって突きつける社会性が大きく失われており、せっかく専念したはずの脚本がどこか「やっつけ仕事」でもしたのかというほど、シリーズのクオリティが落ちてしまっていると感じました。

 

僕がパディントンで感動したのは、古典的な喜劇を用いて笑いを取る姿勢と、移民としてやってきたパディントンが誰よりも紳士である行動をすることで変化する周囲の「優しさ」をちゃんとみせること、そして何よりも歯車のように伏線回収される家族の特性を生かした物語の組み立てが素晴らしかったからです。

 

今回それが大きく薄れてしまったのはなぜなんだろうと頭を抱えてしまいました。

 

特に感じたのは、家族を活かせてない点。

お父さんはリスク管理部門の担当になり、上司から「リスクは友達」だという概念を植え付けられてしまう。

夫人は家族が共に過ごす時間が減ってしまったことに悲しさを感じている。

娘は大学進学のための準備、息子は部屋から出ずにチルってるという設定。

 

シリーズでは毎回おばさんに出す手紙を読むパディントンが、家族の近況を我々画に伝える仕組みは今回も同じで、それがどう物語に活かされていくのか楽しみだったんですが、活かされたのはお父さんと息子程度。

 

乗った飛行機のタイヤが出ないトラブルを回避するために手動のハンドル口を開くと、紫タランチュラが出現、蜘蛛が苦手なお父さんは躊躇するが、リスクは友達という概念に感化され、意を決して蜘蛛を素手で捕まえ、挙句の果てには顔にくっつくという最悪なシチュエーションを迎えるが、なんとか回避してトラブルを解決する。

 

息子は部屋で動かないための発明を数々製作しており、飛行機の窓を覆ってしまった大きな葉を剥がすため、てこの要領で動く掴み棒を作って取る活躍をしたり、たどり着いたエルドラドでマーマレードを作るための機械を作ってクマたちに振る舞う見せ場がありました。

 

いつも通り設定を物語に組み込んだ見せ場が用意されていたものの、その特性を活かした見せ場に対しての驚きもなければ意外性もなく、過去2作であったような活かし方にはなってなかった印象が強かったです。

 

そして夫人と娘に至ってはこれといった見せ場が無かったのも残念。

夫人は基本ジャングルで不安な表情をしてばかりで、草むらの中で怪しい動きをする人影を対処するために率先して前に出る行動はあったものの、過去作でサリー・ホーキンスが見せたような肝っ玉ぶりは見受けられません。

 

娘に至っては写真撮影と旅行用の記録をする程度で、家族のためにそれが活かされたような部分も薄ければ、行動もない。

 

またサリー・ホーキンスにあった強い母性と献身的な母親像はほぼなく、もしかしたらパディントンはこのまま故郷に残ってしまうのではないかと危惧して悲しむ姿を通じて、やがて離れていく子どもたちの巣立ちを受け入れる覚悟をする程度。

その巣立ちという部分も本作では何か回収されるわけでもなく、母親としての役目や活躍、そしてかつてあった夫人の映画内における頼もしさは、交代劇によってかなり薄れた印象です。

 

 

そしてパディントンが持つ優しさを通じて伝えるメッセージ性も弱かったです。

今回ハンターが娘か財宝かで悩まされる役柄だったことから、ともに旅をすることになったパディントンが、彼に「何が大切か」を伝える瞬間がありましたが、シリーズで伝えられた我々への気づきとなるメッセージ性は乏しく、どう考えても娘が大事なのは目に見えてるシーンで当たり前のことしか言わないセリフは、全く響きませんでした。

 

相変わらずのパディントン

不満ばかりが出てしまう本作ですが、やはりパディントンの持ち味である「おっちょこちょいぶり」は今回も健在で楽しかったですね。

 

冒頭、パスポート申請のための証明写真撮影では、赤い丸の中に顔を収めようとするもガラスにべったり顔を張りつけてしまい、再度撮影を試みようとすると椅子がとれてしまい、椅子の脚が硬貨口に引っかかって小銭がジャラジャラ、慌ててしまったパディントンは、ひたすら個室の中で暴れまわって、最後にはカーテンにくるまって隣の露店に突っ込んでしまうという安定のはちゃめちゃぶり。

 

船に乗った際もハンモックで上手く寝られずにミノムシ状態になって寝る羽目になる可愛らしい姿もあれば、船を操縦するはずのハンターと娘がいないことに気付いたパディントンが、家族に伝えるために船内用のアナウンスマイクを掴むも、線に絡まって身動きが取れず、足で舵を取らざるを得ない状況、さらには脱出を試みるも、今度は舵が体に絡まってしまって船が揺れる度にあっちへ行ったりこっちへ行ったりしてしまうおっちょこちょいぶりを見せ、楽しませてくれます。

 

辿りついた遺跡ではハンターと追いかけっこをすることになりますが、モノの拍子で抜けた石畳によって大きな岩が転がってきてしまうことで、追いかけっこどころじゃなくなるパディントン。

ラマにマーマレードサンドを与えて逃げ切る姿も面白かったですし、結局大きな岩に道を遮られ下まで逃げるしかない姿も楽しかったです。

 

 

最後に

前作でヒュー・グラントが演じた役回りを今回はアントニオ・バンテラスが担当したんですが、割と良かったです。

一族で一番欲に執着心がないキャラなのに、結局呪いによって欲をむき出しするキャラで、今回一番感情が忙しいキャラだったにもかかわらず、ユーモアを出しながら悪者を演じた点は、物語を掻き回す存在としてしっかり機能していたと思います。

 

逆にオリヴィア・コールマンの役どころはもっとうまくやるべきだったように思えます。

コールマン自身がダメだったのではなく、素性を隠した存在であるにもかかわらず、あからさまに怪しい表情をするかと思ったら、実は味方…と見せかけてもう一度騙すという裏の裏をかいた存在が、物語を邪魔してるだけにしか思えないキャラになってしまってやしないかと。

だったら最初から怪しい表情なんかさせずに家族をサポートして、最後に本性を出せばいいだけ。

 

終盤での「別れ」を匂わせるパディントンと夫人のやりとりも、勿体ぶって溜めに溜めたやり取りが描かれており、シリーズらしい締めのシーンではありましたが、それまでの過程にワクワクもしなければカタルシスもなく、涙は出ませんでしたね・・・。

 

一応「家」とは「故郷」とはといったテーマが敷かれた内容で、故郷を訪れたパディントンが、どんな決断を下すによってそれが強調されはしたものの、肝心の子供たちが巣立つシーンがないのであまり意味を成さないものになってしまいました。

 

ラストのおまけでブキャナン役のヒュー・グラントが登場し、ユーモアセンス抜群のやり取りを見せてくれたことで元が取れた感覚です。

彼は出所してまた悪さをするんでしょうか。それともクマたちと演劇をする興行を展開するんでしょうか。

続編が作られれば見に行きますが、是非過去作に匹敵する感動の物語を作ってほしいものです。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10

 

映画「サブスタンス」感想ネタバレあり解説 美と若さを追求し続けたらバケモンになるぞ。

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サブスタンス

元々老け顔だったので若いころはおじさん扱いされていました。

30代になってようやく「見た目より若い」とか「年相応」とか言われるようになりましたけど、ここ最近はそんなことも言われない。

たぶん実年齢よりも若くない顔になったってことです。

 

「見た目より若い」ってもう少し言われたかったなw

 

今回鑑賞する映画は、そんな「見た目至上主義」な社会に捉われた主人公の変貌ををグロテスクに表現したという物語。

第97回アカデミー賞作品賞ノミネート作品で一番見たかった映画です。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

血みどろのバイオレンス描写とスタイリッシュな映像で描いたリベンジスリラー「REVENGE リベンジ」で注目を浴びたコラリー・ファルジャ監督が、「美と若さへの執着と狂気」をテーマに描いたボディ・ホラー。

 

本作は第77回カンヌ国際映画祭にて脚本賞を、第49回トロント国際映画祭のミッドナイトマッドネス部⾨では観客賞(ピープルズ・チョイス・ミッドナイト・マッドネス賞)を受賞。

さらに、第82回ゴールデングローブ賞では主演女優賞受賞を果たしたのち、第97回アカデミー賞においても、作品賞や主演女優賞、監督賞など5部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。

 

容姿の衰えによって仕事が激減した主人公が、ある新しい再生医療に手を出して再び脚光を浴びるが、ルールを破ってしまうことで起きる変化の末路を、ショウビズ界の暗部に触れながら、ジャンル映画の枠組みを超えたストーリー展開と突き抜けたエンタテインメント性の高さで、主人公の暴走と狂気を観客に提示していく。

 

本作を手掛けたコラリー・ファルジャは、40歳を過ぎて監督デビューをしたものの「若さのない自分に居場所などない」という負の感情を抱いてしまったことから、本作の着想を得たそう。

何故年を取ることに不安になるのかや、根本的な原因、自身が抱いた痛みや違和感をベースに本作を生み出していった。

 

そんな自身の思いを投影したと居ても過言ではない主人公エリザベスの役を、デミ・ムーアが演じる。

かつては「ゴースト ニューヨークの幻」や「素顔のままで」などアイドル女優として一世を風靡したものの、00年代に入ると人気が凋落したことなど、キャリアに波のあった彼女が本作で完全復活を遂げた。

そして彼女の上位互換とナルスーの役を、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」や「憐みの3章」のマーガレット・クアリーが、二人を番組に起用するプロデューサー・ハーヴェイ役を、「ライトスタッフ」、「オーロラの彼方へ」のデニス・クエイドが演じる。

 

永遠に美しく…」や「ヘルタースケルター」など美にと若さに捉われすぎたキャラクターの末路を描いた作品は多いが、そこにホラーやスリラーで表現することで生まれた新たなエンタメ作。

執着した先に直面する恐怖の先に希望はあるのか。

 

 

 

あらすじ

 

元トップ人気女優エリザベス(デミ・ムーア)は、50歳を超え、容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。


接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい、“エリザベス”の上位互換“スー”(マーガレット・クアリー)。

抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。

スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。

 

一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、一週毎に入れ替わらなければならないのだが、スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。(HPより抜粋)

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感想

お薬の処方を間違えたらそりゃ副作用が起きるでしょ。

でも欲は抗えないってか。

社会がどうとか自分の価値がどうとかそんなことよりも、アート=みてくれってことを強調した画作り。

やりたいことは理解した。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

好みではない。

50歳を過ぎてこれからってときに番組降板。

プロデューサーはもっと若い子が欲しい。

じゃあ若い子になってやろうじゃないの!ととっておきの秘策で起死回生!

 

しかし、ついつい欲深さがでちゃって秘策のお薬のルールを無視しちゃったらさぁ大変。

ドンドンしっぺ返しが膨らんで、壮大なツケ。

結局みんなからバケモン扱いされておしまい。

 

要約するとこんな物語なのを、140分かけて「アート性」を見せつけるという非常に僕の好みでない作品でした。

 

確かに言いたいことはわかる。

若さと美に執着するエリザベスは、サブスタンスに手を出す以前に執着してるのが見え見え。

しかも若さと美だけじゃない、オスカー女優としてのプライドが見え隠れしているから、番組降板は相当のダメージを受けたはず。

 

そんな若き日の栄光を今でも追いかける、もしくはしがみつくエリザベスは、自分の価値を「他者によって」つけられていることが窺えるという話。

 

笑っていいともの最終回でタモリは、「皆さんに価値をつけていただいて長くやることができた」と感謝の意を述べていたのは今でも忘れない。

若い頃は生意気で不遜で濡れたナメクジみたいなやつだったと自虐していたが、周りの人に支えられることで、社会的にも人間的にもそれにふさわしい人物になるという意味においては、他者から価値を付けられることは決して悪くないんだと、タモリの言葉を聞いて感じたのを強く覚えている。

 

しかしエリザベスにとっては、そうはいかない。

他者に見られているのは、あくまで「みてくれ」であるということ。

社会的にどうだとか人間的にどうだというよりも、男性のための女性としてしかみなされていない現代社会にとって、男性が決める視点でなければエリザベスは価値を見出すことができないってわけだ。

 

そんな男たちをギャフンと言わせるには、権力を手に入れるとかよりも「若返る」ことは何より手っ取り早く、それを実践し掴んだことでエリザベス自身も「幸せ」になれるということ。

それじゃあ社会が変わらないじゃないかという言い分もわかるが、なにより本人がそういう社会の中で自分の価値をそう定めているのだから、別にとやかく言うつもりはない。

 

 

サブスタンスには色々ルールが存在する。

まず母体となる自分に緑色の液体を注入すると、背中がパックリ割れて「上位互換」の自分「スー」が現れる。

これだけで終わりと思ったらそうはいかない。

母体となったエリザベスには7日間かけて栄養を注入しなくてはならないこと、スーは母体のエリザベスから養分を吸い取って自分に注射することで、若い自分を7日間保てるという仕組み。

 

そして7日間経ったら「交替」をしなくてはならない。

エリザベスとスーの体にチューブを刺して血液を交換することで「交替」が成功する。

 

1つの肉体からもう一つの肉体が生まれるが、基本的にどっちがかが活動している時はどっちかが眠っている。

さらに眠っている間はもう一人の自分がどんなことをしていたか交替しないとわからない。

説明書には「わたしたちはひとつ」と強調した文言が書いてあり、互いが互いを思いやらないと痛い目に遭うことがほのかに感じる一文となっている。

 

こうした触れ込みがある以上、約束なんて守らないことに陥るのが通例であり、物語はスーのちょっとした欲望がエスカレートすることでエリザベスにツケが回り、それに腹が立ったエリザベスは精神的にも肉体的にも影響を与えるような仕打ちをし始めるという、互いが互いの足を引っ張る内容へとシフトしていく。

 

もちろん末路は見え見えで、老いた自分VS若い自分のある種嫁姑バトルの様な肉弾戦へと突入。

 

あれだけ養分吸い取られて足が上手く曲がらないのに、なぜ薬を取りに行けるほど歩けるのか理解不能、逆にいくら若いからってエリザベスをリビング中央に置かれたガラス製のテーブルめがけてケリをお見舞いし吹っ飛ばせるほどの脚力がなぜあるのかも理解不能。

 

そんな誇張した演出に一時の笑いが生まれる瞬間もあれば、最後は二つの自分が合体し「デビルマン」の百面相と幽遊白書の戸愚呂100%と妖怪人間ベムを足して2で割ったかのような面構えに大変身。

もちろんそれを見たオーディエンスは口をそろえて「It's a monster!!!!!」と叫ぶわけで、そりゃもう宣伝文句通りの「阿鼻叫喚」な地獄絵図が拝めちゃうから可笑しくて仕方ない。

 

終いには「エイリアン」とか「遊星からの物体X」のような物体に劣化して踏みつぶされてジエンドという。

 

 

 

結局予告編以上のビジュアルは拝めたものの、予想通りの顛末でそれ以上の収穫って俺としては全くなかったんですよ。

最後、バケモンと呼ばれてみんなに血しぶきを浴びせるんだけど、そこまでやるんだったら「自分の価値」を歪めてしまったあの忌まわしきプロデューサーをぶっ飛ばすくらいのスカッとしたモノがないし、バケモンになってしまったことが自業自得とか因果応報以上のモノが見えてこないというか。

 

じゃあ若返らなきゃよかったのか?ってことではなくて、あまりの若さへの執着と甥への恐怖をマジマジと感じなければこうはならなかったと。

でも感じてしまったが故にルールを破ってあんな結末になったのなら自業自得としか俺は受け止められないんですよ。

 

だからこそ男性が作ったルールにドロップキックを与えるくらいの復讐を最後に見せつけたら俺は拍手だったんですけどね。

 

 

さらに言うと、全体的なルックから演出から芝居からどれも気に入ってないです。

とにかくくどいほどカメラが近い。

演者の顔だけならまだしも、スーのケツからハエの動きに至るまでどれも近い!

寄りが映えるのは引きがあるからだと思ってるんですが、寄りばっかりはさすがにクドイ。

 

あの諄さがあるからデニス・クエイドの脂っこい顔面に嫌気がさすんだけど、エリザベスを寄ったところで確かに老けてはいるけど実年齢に伴った美しさがあるし、それで怒り心頭な顔されてもなぁと。

 

またカメラワークが流動的でないのがきつい。

庵野秀明のようにショットをとにかく細かく区切ってつなげる映像になっており、これがいちいち鼻に突く。

良いアングルだし現代アート性強めなセットになってるから、見ている分には問題はない。

でもそれが逆に血が通ってないようにみえるというか、無機質な空間がずっと漂っていて、ずっとだと心地よさはない。

 

スタジオの長い廊下も「シャイニング」の模様の様な絨毯に、壁にはデカデカとエリザベスの過去のポスターが並んでいて、どこか息苦しさを感じる。

 

こうしたアート性強めのセットや寄り過ぎな映像を解釈すると、アートとは「みてくれ」であると。

それはエリザベスが求めたものであり、固執しているものだと。

そんな彼女の視点は、目の前に寄り過ぎていてあらゆるものを俯瞰で見ることができない、故に視野が狭いということをあのような形で表現しているのではないかと。

 

そう考えると、自分の好みの画作りではないものの色々と合点がいくわけで、監督の思惑通りの作品にはなってるんじゃないかなあと思うことはできる。

 

 

では演者はどうだったか。

デミ・ムーアもマーガレット・クアリーもデニス・クエイドも皆良かった。

特にマーガレットはいつもやるへの字口をみれただけでも最高なのに、裸体は晒すわ食い込みMAXのレオタードを惜しげもなく開脚してみせるわと、いわゆる「男が求める若い女性」を見事に体現してくれたわけです。

 

「誰が女の価値を決めつけてるのか」というテーマに全くそぐわないことを言っているのは百も承知で、マーガレット最高だわ~と。

 

デニス・クエイドもスクリーンタイムがそれほど多いわけではないんだけど、あの油ギッシュな顔面を憎たらしいかおで見せつけたかと思ったら、エビをむしゃむしゃ食いながらエリザベスに降板を言いつける嫌味な奴を熱演。

さらには株主らと揃ってカメラの前で「女はいつもスマ~イル!」とかぬかす感じも最高。

実は劇中で一番スマイルみせてるのお前だったりしてw

 

とまぁ基本褒めなんですけど、肝心のデミ・ムーアが物凄く良かったのかと言われると、どうしても物足りなさが目立ったんです。

 

そもそもアカデミー賞で主演女優賞獲れるんじゃないか?と騒がれた役だったわけですよ。

一体どんな演技をしたんだろうとふたを開けてみたら、基本的に鏡越しやTVを見てのリアクション、電話越しに向かって怒鳴るなど「一人芝居」ばかりだったんですよ。

そりゃしっかり演技できたけど、掛け合いがないとどうしても賞レース級の演技をしてたかどうか俺には判断つかないんですよ。

 

確かにあれだけの特殊メイクをして、さらにアクションまでしなきゃならない。

実年齢より老いた自分の格好をしながら怒りを高めていく芝居も、一人だけどよかった。

でも、やっぱり物足りないんですよ、ノミネートした割には。

 

メイクが決まらなくてヤキモキした結果放心状態でベッドに横たわるのなんか、結構リアルだったりしてよかったし、そもそもがっつりヒアルロン酸やら整形やってるような顔をデミ・ムーアがこんな役をやること自体相当な覚悟で、自身もきっと気にしてたことだったんだろうと。

それを作品で葬ることをやったことに対する評価は理解できます。

 

やっぱり、どっちかが活動中はどっちかが寝ているって設定がね~掛け合いを失わせてますからね~。

仕方ないんでしょうけど、できないことはなかったよなぁ。

 

 

最後に

ルッキズムだエイジズムだミソジニーだと色んなものを風刺した内容をボディホラーでエンタメ色強く作られてましたが、やはり職人監督が好きな僕としてはそこにクリエイターファーストな面が色濃く出ていたせいか、期待値を下げて臨んでもやはり好みではなかったです。

 

EDMの主張も色々感情を煽ってくる面で機能してたけど、それが逆に今の映画として強調し過ぎていて、10年後もこの映画が語られるのかなぁ?とか考えちゃいましたね。

 

やっぱね、全体的にMVの域を抜け出せていないのも何か嫌だ。

後半、いや終盤こそ映画的カタルシスが滲み出ていたから形を成していたけど、全体を通してみたら僕が求める映画ではなかったです。

 

これはもう好みの問題。

テーマで見て楽しむのもいいけど、脚本だとか演出だとかカメラワークだとかそういう技術的な面で物語を活かすものになっていたかどうかは、僕からしたらなってなかったなと。

テンポは決して悪くなかったからなぁ、ホント勿体ない。

フランス映画はやっぱり相性悪いわ…。

 

あとどうしてもよくわからなかったんだけど、サブスタンスを中止した直後にとりやめたことで、精神分裂の如くスーとエリザベスが互いに起きた状態になったのはどういうことですかね?

 

結局サンセット大通りや永遠に美しく…、マルホランドドライブを混ぜた映画だったな。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10

映画「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」感想ネタバレあり解説 シリーズ集大成に感無量!

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ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング/M:I8

29年という歳月をかけシリーズ化されてきた「ミッション:インポッシブル」。

当初は「スパイ大作戦」を映画化する名目でブライアン・デ・パルマ監督のもと製作され話題を呼びましたが、シリーズを重ねるにつれトム・クルーズのアクションは限界を超えていきました。

 

ロッククライミングやロープ1本で移動するブルジュ・ハリファ、飛行機にしがみつくシーンや、スカイダイビングに6分間の水中スタント、そして高い崖からバイクごと落下する圧巻のアクションスタント。

 

もはやM:Iは、トムのアクションなしでは成立しない領域に達しました。

しかし僕としては「ローグネイション」でクリストファー・マッカリー監督が抜擢されて以降、「フォールアウト」含めアクションメインのトムの要求にあった脚本づくりによって物語に面白みがなくなってしまってきているのが非常に残念。

 

今回最終章となる「ファイナル・レコニング」の上映時間は2時間45分という、前作169分もあった「デッド・レコニング」よりも長いという辛さ。

前作でもアクションをするための寄り道ばかりに加え、いったい何の鍵かもわからずに追いかけっこをする四つ巴の争いに、僕はただただ疲れました…。 

 

今回もどっと疲れることでしょうが、イーサン・ハント最後の勇姿を目に焼き付ける所存です。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

1996年の1作目から続く人気スパイアクションシリーズ「ミッション:インポッシブル」の8作目。

前作「デッド・レコニング」のパート2として製作されたが、興行不振を理由にタイトルを「ファイナル・レコニング」へと変更。

製作費4億ドルという巨額を投資して製作されたシリーズ最終章は、IMFに所属する腕利きのエージェント、イーサン・ハントがこれまで決断した選択によって導かれる運命を示唆した物語となっている。

 

今回も主演のトム・クルーズは、沈没したロシアの潜水艦セヴァストポリ号内にあるとされるAI「エンティティ」に近づくため、極限の潜水スタントという危険なミッションに挑む。

他にも複葉機での危険な空中スタントシーンが映るが、なんとトム自身が撮影クルーをこなしながらスタントをしていたとのこと。

 

そんな俳優の枠を超えた超人技を見せるトム以外にも、ベンジー役のサイモン・ペッグ(ワールズ・エンド/酔っ払いが地球を救う!)、ルーサー役のヴィング・レイムスらチームの常連に加え、前作でチームに抜擢された泥棒グレース役のヘイリー・アトウェルパディントン/消えた黄金今日の秘密)、「フォールアウト」から出演するアラナ役のヴァネッサ・カービー(ファンタスティック・フォー、CIA長官エリカ・スローン役のアンジェラ・バセット(ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー)、エンティティと共謀する男ガブリエル役のイーサイ・モラレス、彼の部下だったが裏切られイーサン側につく暗殺者パリス役のポム・クレメンティエフガーディアンズ・オブ・ギャラクシーシリーズ)、イーサンの上司キトリッジ役のヘンリー・ツェニーなどが出演する。

 

様々な苦難を乗り越え、無事暴走したAIエンティティのソースコードとなる二つのカギを手に入れたイーサンたち。

彼らはガブリエルしか知らない潜水艦のありかを無事に探し出し、不可能なミッションをクリアすることができるのか!?

 

 

 

前作のあらすじ

 

自我を持つ高度なAI通称「エンティティ」が暴走し始めた。

制御するには、ソースコードとなる2つのカギが必要となる。

イルサと合流したイーサン・ハントは、すべてのネットワークに潜入できる脅威を持つエンティティをどの国にも渡さないために、二つのカギを奪取しエンティティを破壊することを誓う。

 

しかし、ホワイトウィドウに雇われた泥棒グレースに邪魔さをされたり、上司の命令に背いたことでCIAに追われたりと、なかなかミッションを遂行できないイーサンたち。

しかもイーサンがエージェントになる前に出会った男ガブリエルが、エンティティの僕となってカギを奪いに襲い掛かる。

 

ガブリエルにイルサを殺されたイーサンは、彼女の代わりとしてグレースをチームに招き入れ、ホワイトウィドウが取引をするオリエント急行に潜入し、一度奪われた二つのカギを奪い返すために奔走する。

 

幾度となく邪魔をするガブリエルと格闘の末、二つのカギを奪ったイーサンは、エンティティのありかを探し出すため、そして世界の均衡を保つために、再び不可能なミッションに挑む。

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感想

むっちゃ楽しい!!

前作のようなしょうもない追いかけっこの連続から解放されたことで、話が真っすぐに進みながら、どんどん話が転がってくワクワク感。

異常なまでの曲芸アクションもシリーズ中1のド迫力。

是非映画館でトムちんを堪能しよう!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。

イーサンの元にVHSテープで大統領から指令が下される。

前作から勢力を世界規模に広げたエンティティによって、世界は分断の危機に直面していた。

AIの暴走を制御するために再び協力を依頼されたイーサンだったが、未だ軍事目的のための支配を企むつもりではないかと不安を抱えるイーサン。

 

まずはベンジーと合流し、一人療養しながらエンティティの毒薬となるメモリを開発中のルーサーの元へ向かう。

イーサンの目論見は、まず潜伏しているガブリエルを見つける事。

そのために服役中の元部下パリスを救出して、彼の手がかりを見つける事だった。

 

パリスを護送していたCIAエージェントのブリッグスとドガを相手に、イーサンとベンジーは格闘。

ドガに理解を得られたことで、パリスとドガを仲間に引き入れる。

 

ロンドンのアメリカ大使館に現れると踏んだイーサンは潜入するが、運悪くCIAのエージェントに見つかってしまう。

するとそこへグレースが現れイーサンは救われるが、今度はガブリエルの手下に拘束されてしまう。

 

捕らえられたイーサンは、ガブリエルからロシアの潜水艦セヴァストポリ号へ向かい、眠っているソースコード「ポドコヴァ」を回収し人質となるグレースと交換するよう命じられる。

そもそもセヴァストポリ号にアメリカが仕掛けたものは、かつてイーサンが妻を解放するために盗んだ「ラビットフット」だった。

自分が選択したことが最悪の結果に繋がったことを責めるガブリエル。

 

ガブリエルはオリエント急行で鍵を奪うミッションに失敗したことでエンティティに見捨てられたことから、エンティティを支配しようと企んでいたのだった。

だからこそイーサンを巧く利用してポドコヴァ回収を命じたのだった。

 

落胆していたイーサンだったが、歯に仕込んでおいた毒を飲んで自殺を試みたふりをして、手錠を外された拍子で形勢逆転。

グレースと共に逃走したガブリエルを追う。

 

するとある場所で「エンティティ」と対話する道具を見つける。

意を決してエンティティとの対話を試みたイーサンは、エンティティが人類を撲滅しようと企んでいること、そして南アフリカに在る「ノアの箱舟」と呼ばれる隔離されたサーバールームへ連れていくよう命じられる。

 

そしてガブリエルがルーサーのいる場所に核爆弾を仕掛けたことを告げられたイーサンは、ベンジーにセヴァストポリ号の座標をソナーシステムを利用して見つけることを指示し、イーサンは急いでルーサーの元へ向かう。

 

療養中ルーサーは、ソースコードが入っているポドコヴァに差し込むことでエンティティを妨害するための装置の開発に成功していた。

それをガブリエルに盗まれてしまったルーサーは、ガブリエルが用意した核爆弾の解除に奔走していた。

イーサンは共に逃げるよう促したが、ルーサーはやるべきことをやると告げ、一人解除に勤しむ。

解除して天板を抜いたとしても、周囲数十メートルの爆破を免れることができないため、ルーサーは爆弾の解除と共に命を落としてしまう。

 

イーサンはわざと政府に逮捕されたが、移送中にCIAエージェントのブリッグスが「1」でジョン・ボイトが演じていたフェルプスの息子であることが明かされる。

復讐のために自分を追っていたのではないかと問われたブリッグスは、それが本当かどうかはこの事件の決着がついてからだと言い返す。

 

やがて大統領らの前で尋問を受けることに。

これまで正しいことをしたとはいえ、国家への反逆とも取れる行動に上層部は顔をしかめるが、鍵と空母を貸してくれれば絶対エンティティの暴走を阻止できると断言したイーサン。

かつてのCIA長官であり今では大統領となったエリカは、手紙をしたためた後、表向きにはイーサンを拘束すると皆に告げたものの、こっそり裏口からエンティティの阻止のために動くよう命じたのだった。

 

世界各国にある核爆弾の制御コードが次々とエンティティに乗っ取られていく中、残り72時間という短いタイムリミットの中、イーサンはセヴァストポリ号の捜索に急ぐ。

 

イーサンは空母ジョージブッシュ号に向かい、深海の中を捜索するためのレクチャーを受ける。

司令官には、別行動でセヴァストポリの座標を探しているベンジーたちから送られるはずのモールス信号を定められた時間に浮上して受信するよう依頼する。

 

一方ベンジーは、ルーサーが今回のためにもう一つ作った装置でエンティティを閉じ込めるミッションを皆に告げる。

セヴァストポリ号からポドコヴァを回収したイーサンが浮上するはずの場所にスタンバイし、心肺停止状態のイーサンを回収して減圧装置で回復を目指す。

 

その後エンティティが希望しているノアの箱舟に向かい、ガブリエルにポドコヴァとルーサーが作った毒薬を渡し、彼が差し込むタイミングを見計らってもう一つの装置に閉じ込めるという算段だ。

閉じ込めるには10分の1秒という瞬き程度の早さが必要であり、スリの達人であるグレースに託された。

 

イーサンがセヴァストポリ号内でポドコヴァ回収を目指していた頃、ベンジーたちは北極海に浮かぶ場所に在るはずのソナーシステムの在り処を探していた。

辿りついた場所に行くと、そこにはかつてイーサンがCIAに侵入しエージェントリストを盗んだ際に責任を取らされ飛ばされていたウィリアム・・ダンローに出会う。

 

セヴァストポリ号が沈没した12年前に受信を傍受した記録が欲しいとお願いしたが、先にセヴァストポリ号の在り処を探していたロシア軍に先回りされピンチに。

さらに12年前の事故の直後、CIAが記録が入ったフロッピーディスクを読み取る装置を没収しており、記録を探すための道具がないことをダンローから告げられる。

 

ロシア軍から1時間以内に読み取り装置を開発するよう脅されたベンジーだったが、ダンローはあらかじめ一つだけおかしな記録が入ったディスクに記載されていた座標を記憶しており、それを託されたダンローの妻は、犬にエサを与える名目でグレースと共に外へ向かう。

 

やがて銃撃戦が勃発。なんとか制圧に成功したベンジー一行は、イーサンがいる潜水艦USSオハイオへ座標を連絡、イーサンが浮上するはずの座標へと足を運ぶ。

 

セヴァストポリ号内で様々な困難に遭いながらも無事ポドコヴァを回収したイーサンは、心肺停止状態の中グレースに助けられ息を吹き返す。

チームに合流したイーサンは、ガブリエルが待ち構えているであろうノアの箱舟の在り処へ向かい、作戦を実行する。

 

ガブリエルはまたしても核爆弾を仕掛けており、イーサンにポドコヴァをよこすよう命じる。

しかしそこにキトリッジとブリッグスが待ち構えており、全員を拘束したのち、ポドコヴァが一体何なのかを問い詰めていく。

 

ガブリエルがあらかじめ用意していた伏兵によって劣勢となったイーサンたちは、ベンジーたちにサーバールームでエンティティを閉じ込めるための準備と核爆弾解除を促す。

 

単独でガブリエルを追うイーサンは、逃走用の小型プロペラ機にしがみつき、ガブリエルが持つ毒薬を奪おうと格闘する。

 

刻一刻と核爆弾のスイッチが押される時間が迫る中、無事イーサンたちはエンティティの暴走を阻止し、メモリの中に閉じ込めることができるのか。

 

 

・・・というのがざっくりしたあらすじです。

 

人生は選択の連続

デジタル化された神によって世界が二分にも三分にもなってしまった世界。

今やSNSでのフェイクニュースや先導に唆され、妄信してしまう人たちも多い中、一体何を信じればいいのかわからなくなってしまった社会。

 

そんな現代社会のいきつく先を投影したかのような状況を救うには、確かなモノを信じるイーサンの様な「影に生き、見知らぬ人たちを助ける」存在が必要なのかもしれない。

 

何かカッコつけて言ってますが、もうめちゃくちゃ楽しかったに尽きます。

確かにあらすじを書きながら、細かい部分が抜けていることもあり、ちゃんと把握していたかどうかはわかりません。

 

しかし、前作のように「一体何を追いかけてるのかわからないだけの追いかけっこ」を2時間30分以上も見させられた反省を踏まえたのか、とにかく話がどんどん転がって場面が変化していく展開、小さなサプライズから、絶体絶命の危機、そして限界突破の決死のスタントアクションなど、前作以上に長い2時間45分の尺を余すことなく見どころたっぷりに詰め込んだ本作を、僕は手放しで褒めたいと思ってます。

 

正直ハリウッド映画は死につつあります。

メジャースタジオが続編ばかりに巨額を投じ、半分も予算を拐取できるようなコンテンツを作れてない、さらにはオリジナル作品を生み出そうという勇気もない状態が続いたわけですから、そりゃドンドン影響は薄れていくし、客だって離れていくと。

 

それでも、それでも、トム・クルーズという男は、みんなに映画館で映画を楽しんでもらいたいという熱い思いから「トップガン:マーヴェリック」を作り、映画史上最高の予算を投じてこの「ファイナルレコニング」を作り上げたわけです。

 

並大抵の覚悟じゃないです。

前作だって超赤字だったのに、今回4億ドルもつぎ込んでる。

その覚悟と、これまでずっと支えてくれたファンに向けて最高の娯楽映画を提供したい思いが、本作には詰まっていたと思います。

 

まず驚いたのが過去作を巧く活用した物語の流れです。

そもそもイーサンはこれまで数々の仲間を失ってきました。イーサンにとっては悲痛な思いだったかもしれませんが、一方から見れば仲間の死はイーサンが招いたモノだと。

 

こうしたことから本作は「数々の選択が招いた結果」をテーマに描かれていくことが受け取れます。

個人的に一番驚いたのは、CIAエージェントのブリッグスがフェルプスの息子だったということ。

彼もまたイーサンのように選択を迫られ選んだ結果、イーサンを追う立場となった存在。

 

他にも「3」で元妻ジュリアを救うために盗んだ「ラビットフット」の存在まで飛び出す始末。

確かにアレ、一体何なのか劇中で明かされてませんでしたが、あれはステルスを解除するための装置だったんですね~。あれの初期版がラビットフットであり、結果アレを回収したイーサンのせいで、エンティティが生まれてしまったという「選択の結果」をイーサンは突きつけられるわけです。

 

こうして数々の選択が招いた結果によって、世界が未曽有の危機にさらされた責任はイーサンにあるのではないかとなるわけですが、時として選択が招いた結果は悪いことばかりじゃない。

 

劇中登場したダンローは、確かにイーサンのせいで責任を取らされはるばる北極海に浮かぶ場所に飛ばされてしまったわけですが、彼はそこでイヌイットの女性と恋に落ち、穏やかに愛を育みながら暮らしてきたという「結果」が訪れた。

 

イーサンは出会うや否や「申し訳なかった」と謝りますが、ダンローにとっては、不幸中の幸いどころかあんな息苦しい場所で一生を終えるよりも、最高に幸せな時間を手に入れたことでむしろ感謝していると告げます。

 

そしてルーサー。

彼は結果的には命を落としてしまうわけですが、イーサンのおかげでここまでたどり着けた、数々のミッションを遂行するイーサンを「正しい男」だと認め、彼についていく「選択」をしたことで今の自分がある、エージェントとしてそれは十分に誇らしいことだとイーサンを励ますわけです。

 

生きな計らいで毒薬に仕込んでおいたメッセージが流れた瞬間は、いなくなってしまったルーサーからの最後の言葉であることや、「たった一つの行動ですべてが決まるわけじゃない」、「小さな選択の連続が人生を決める」など優しい語り口でイーサンを労うことで涙を誘う、感動のフィナーレでした。

 

イーサンの姿を見ながら、自分の人生を振り返る時間にもなったことでしょう。

29年という歳月を追いかけてきた僕も、まさか「見続ける」という「選択」の「結果」を、このような形で目の当たりにするとは思ってもみませんでした。

そういった意味で、本作は最高の娯楽映画だったと強く言いたいです。

 

 

最後に

アクションもたくさんあってホントに見ごたえありました。

小さな肉弾戦はもちろん、セヴァストポリ号を探すための潜水シーンは音楽を抑えた演出で危機の連続に遭遇するイーサンを、息を飲みながら見守ることになったし、クライマックスでのプロペラ機にしがみつくイーサンは、「フォールアウト」でのヘリ機でのアクションシーン以上に手に汗握る時間でした。

 

できることならみんなでルーサーを悼むシーンがあってもよかったんだけど、ベンジーやグレース、パリスにドガと既存のメンバー以上に新キャラが増えた今回のチーム、非常に強いチームだったんじゃないでしょうか。

 

しかしひとつだけ納得いかないことが。

ダンローの家で占拠していたロシアの連中との対峙のシーンで、実はロシアは「合鍵」を持っていることが明かされたじゃないですか。

あれ持ってたのかよ!!!ってなりませんでした?

 

それ持ってんなら前作は一体何だったんだよってw

ガブリエルもそれを想定してなかったことになりますよね?

そこは伏せてくれないとさぁ、なんだかなぁってなっちゃいましたよw

 

とにかくシリーズ集大成に相応しい最高の娯楽映画でした。

今回物語を把握したい意味で吹替えを見たんですが、おかわりして字幕版を見ようと思います。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』感想ネタバレあり解説 人の気持ちを気にし過ぎる年頃なのよ。

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か「」く「」し「」ご「」と「

普通のタイトルになってないのには理由があるはず。

「かくしごと」の間のカギカッコにどんな言葉が入るのか、きっとそれが本作の「オチ」なんでしょう。

もしくは、鑑賞後にこんな行間が含まれていた物語だったのではないか、なんて解釈を楽しむ作品なのかもしれません。

 

今後の日本映画を背負って立つであろう若き俳優陣のアンサンブルも楽しみですし、僕はあまりはまらなかったですけど「少女は卒業しない」を手掛けた監督の新作ということで、早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

大胆なタイトルと衝撃のサプライズが涙を誘い、実写映画でも大ヒットを遂げた「君の膵臓をたべたい」の住野よる原作小説を、廃校の決まった高校を卒業する少女たちを瑞々しく描いた「少女は卒業しない」で長編監督デビューをした駿の手によって実写映画化。

 

少しだけ「人の気持ち」が見えてしまう5人の男女を中心に、ある想いが動き出していく様を、10代ならではの繊細な心情を眩しくも切なく描いた、現代の青春ラブストーリー。

 

企画段階から映画化が実現するまで、約6年もの年月を経たという中川駿監督。

新潟で実際に使われている高校や修学旅行先の博物館など、「生きた環境」で撮影できたことで、高校生の内面にフォーカスを当てた本作が、より「生きた」ものとして映し出せたのではないかと手ごたえを感じたそう。

 

そんな本作には、「MOTHER/マザー」「Cloud クラウド」の奥平大兼、「赤羽骨子のボディガード」「沈黙のパレード」の出口夏希、「真夜中乙女戦争」の佐野晶哉Aぇ! group)、「月の満ち欠け」の菊池日菜子、「違国日記」、「あのコはだぁれ?」の早瀬憩といった、将来有望な若手俳優陣が集った。

また、担任の先生役をお笑い芸人のヒコロヒーが演じ、主題歌をちゃんみなが担当する。

 

特別なちからを持つ高校生たちだからこそ揺れる心情に、誰もが涙する。

 

 

 

 

あらすじ

 

みんなには隠している、少しだけ特別なチカラ。
それぞれの“かくしごと”が織りなす、もどかしくも切ない物語。

 

「自分なんて」と引け目を感じている高校生・大塚京(奥平大兼)は、ヒロインじゃなくてヒーローになりたいクラスの人気者、三木直子・通称ミッキー(出口夏希)が気になって仕方がない。

予測不能な言動でマイペースな黒田・通称パラ(菊池日菜子)と一緒に、明るく楽しそうにしている彼女を、いつも遠くから見つめるだけ。
そんな三木の幼馴染で京の親友の、高崎博文・通称ヅカ(佐野晶哉)を通して、卒業するその日まで“友達の友達”として一緒にいるはずだった。

 

ある日、内気な性格の宮里・通称エル(早瀬憩)が、学校に来なくなったことをきっかけに、
5人の想いが動き出す――。(HPより抜粋)

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登場人物紹介

  • 大塚京(奥平大兼)…引っ込み思案な性格で自分に自信を持てずにいる。クラスの人気者である三木を想い続けているが、「気持ちがみえてしまう」ことで、言葉にできない気持ちを抱えることに。
  • 三木直子(出口夏希)…通称ミッキー。底抜けに明るい性格で、ヒロインよりもヒーローになりたいと願っている。
  • 高崎博文(佐野晶哉(Aぇ! group))…通称ヅカ。体育会系でいつも明るく笑顔な人気者。一見、キラキラした“王子様キャラ”を醸し出す一方、実は内面には複雑な想いを抱えている。三木とは幼馴染であり、京の親友でもある。
  • 黒田文(菊池日菜子)…予測不能な言動でいつもマイペース。通称はパラ。
  • 宮里望愛(早瀬憩)…通称はエル。内気で控えめな性格。優しい強さを持ち、周囲の人々にも影響を与えていく。ある日突然学校に来なくなってしまう。

(以上FassionPressより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

人の気持ちが見えるとはどういうことなのか、仮にあったらどうなってしまうのか。

あきらかに僕の好みの「ぱいすぅ~味」ありそうな青春ラブストーリーの予感。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

「人の気持ち」が見えてしまうことで大いに悩む5人の高校生たち。

誰もがあの頃手に入れたかった能力は、こうしてみるとかなり厄介で、こじらせてしまうものだなんて。

酸っぱさ高めで、甘さはそこまでない。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

厄介なチカラだこと。

この歳になると今高校生の間で何が流行ってるとか、どんな現象が起きてるとか、情報番組やSNSくらいでしか知ることがないせいか、それをみると「みんな」やってるように捉えてしまいがちなので、あってるかどうかわからないんだけど、「LINE」などのコミュニケーションツールがあるおかげで、離れていてもずっと「通話」状態にして過ごしている、なんて話を聞いたことがある。

 

決しておしゃべりするわけでもなく、仲の良い相手の生活音を聞くだけで「落ち着く」んだそうだ。

周知のとおりLINEは無料で通話ができますから、ずっと通話状態でも何ら問題はない。

ただバッテリーが減るだけ、でも家にいるから常に充電できる。

 

ウチらの時代では考えられない行動だなと、そのニュースを見て思った。

 

この行動心理がどういうものかはよくわからないけど、誰とでも繋がれる現代において、誰かと繋がっていないと「不安」なんだと思う。

それだけ今の子たちは、「不安」な気持ちになっているんだと思う。

 

映画館ではマナーとして「携帯電話の使用は禁止」となっているけど、そんなことおかまいなしに、まるで家にいるかのようにスマホを覗いたり、LINEで誰かとやりとりをしているなんて話も聞く。

彼らの言い分は、周りに迷惑かけてないとか主観過ぎる部分もあるけれど、それでもやってしまう根幹には、スマホの電源を切ると「不安」なんだと思う。

繋がりを絶ってしまうことになるから。

 

 

全然本作の感想からかけ離れた話になってしまいましたが、今とにかくみんな「不安」なんですよ。

自分の知らないところで、仲良い子が別の誰かと仲良くしてるんじゃないかとか、タイミング良い時に連絡取れないと「ハブられる」んじゃないかとか、とにかく「他人からどう思われてるか」を気にし過ぎて、自分のやりたいことややらなきゃいけないことを疎かにしてると。

 

全員がそうでないことは当たり前だけども、そういう傾向が実際見て取れるわけです。

 

そんな時、相手の気持ちを見たり知れたりしたらどれだけ楽だろうかと、ふと思ってしまうわけです。

 

本作はそんな「人の気持ち」が見えてしまう高校生たちが、その能力を駆使して人gン関係を良好にしていく話…ではなく、そのせいで色々気を遣い過ぎてこじらせてしまう物語。

 

主人公の京くんは「相手の?や!が見える」というチカラが、彼の親友ヅカには「喜怒哀楽が見える」というチカラが、京くんがひそかに思いを寄せるミッキーには「人の感情のバロメーターが見える」チカラが、彼女の親友パラには「相手の鼓動の早さが見える」チカラが、そして不登校をしていたエルには「相手が誰を好きかが矢印で見える」チカラがあるという設定。

 

彼らはこのチカラを誰にも明かすことなく生活をしており、そのせいで他人に上手く振るまえる利点がある一方で、相手の事を考えすぎて本性を晒すことができないというこじらせぶりを見せているのであります。

 

物語は、京くんを皮切りに、一人ずつその能力を我々に語りながら、高2の春から高3の夏までを描くという展開。

 

不登校だったエルが学校に復帰してから距離を縮めた5人は、演劇祭や修学旅行、進路など学校生活で重要なイベントの中で、仲睦まじく過ごしながらも、他人には言えない悩みに苦しんでいくというお話でした。

 

もちろん高校生活ですから、基本的には京くんの恋の悩みが中心。

さりげない一言が言えずに悩んでいた彼が、突然意中の女性ミッキーと距離を縮めることになるわけですが、それを応援しようと励ます友人たちにも、誰にも言えないチカラと、それによる悩みが描かれていくわけです。

 

 

僕は基本的に人の気持ちなど考えずに正直にズバズバモノを言ってしまう自己中な男なので、こうした「人への気遣い」ってのは皆無に等しいんですが、そんな僕でも今では色々気を遣うようになりました。

 

大人になると気を遣わないとやっていけません。

本音で話せるやつなんて中々出会うことはありません。

だからこそ映画の感想くらい好きに言わせてくれ、時にはその映画が好きな人を傷つけてしまうような批判も多めに見てくれ、そんな気分で書かせてもらってますが、いざ人と映画の感想戦をするときは、本音を言いつつフォローはしてる、つもりです。

 

そんな俺が本作を見て一番に思ったのは、「おまえら色々考え過ぎじゃねえか?」と。

自分に自信がないとか、自分をさらけ出すと相手を困らせるとか、相手の気持ちが見えちゃうせいで自分を偽るとか、なにもかも「自分をよく見られたい」ってことに執着し過ぎて、生活や関係が窮屈になってやしねえかと。

 

極論、そんな学校生活、何が楽しいんだと。

 

かといって、なんでもかんでも自分を主張し過ぎてまわりからハブられるのも嫌だってのはわかるし、親しい関係でも節度は持つべきで、この辺のさじ加減が彼らにはまだ身についてないのかなとか、余計なことばかり考えてしまいましたね。

 

とはいえ、かけひきとまではいかないけど人間関係や恋に悩みながらも、色々選択と行動をしていく彼らを見ていて、俺の時とは違う青春をしているんだなぁと遠い目をしながら堪能しました。

 

京くん、もっと自信持って!

僕の人生のバイブル、Mr.childrenの曲に「I'm talkin about Lovin'」て曲がありましてね。

好きな子に想いをぶつけるのに、リミットはねえぞ!一言でいいから伝えろ!って歌詞を、軽快なスウィング調のリズムでさわやかにアレンジした曲なんですけども。

 

本作を見ながらこの歌を脳内で流してました。

 

その最たる原因は京くんのウジウジ加減。

そもそも思いやりのある物静かな男の子ですが、エルの不登校のきっかけが自分に在るのではないかという過去がトラウマとなって、意中の女性ミッキーにさりげない一言が言えないことに悩んでるんですね。

 

もちろん当初はミッキーに対して「好きだ!!」って意思は弱く、草葉の陰から彼女を観察するような「イタイ」高校生だったんだけど、彼女の幼馴染で親友のヅカを通じて、他の子たちとグループ行動が多くなっていくわけです。

 

そこから演劇祭や進路相談など、彼女を励ますようになることで思いがどんどん膨らんでいくことになっていく。

他人の!や?が見える特性を持っているが、自分が他人からどう見られてるかは本人にはわからない。

だけども、その行動や言動、視線は周囲にはバレバレな様子で、パラの誘導が功を奏して2人の時間がちょっとずつ増えていく。

 

好きなら好きって言えばいいのに、どうせ自分は…と卑下して、中々思いを伝えようとしない姿が描かれていくのであります。

 

彼女にはもっと相応しい人がいる、僕とじゃ釣り合わない、僕といても楽しそうじゃない。

そんな控えめな性格の京くんを見ていて、僕はやきもきしてましたw

 

修学旅行のシーンでは、学校に古くからある風習で「好きな子に鈴を渡す」ってのがあるそうで、色んな子たちが二人きりの状況を作って渡してるなんて会話がありました。

もちろんパラに背中を押された京くんも、鈴を渡そうかと考えましたが、結局「どうせ僕なんて…」でした。

 

ね、やきもきするでしょ。

こんな行動ばかりとる彼を見て、正にミスチルの曲が脳内に流れたわけです。

 

3年の高校生活なんてあっという間。

リミットまでまだ時間はあるなんておもってたら、あっという間にリミットは刻一刻と迫ってるわけです。

 

もちろんタイミングもあるでしょう。

劇中では他クラスの男子生徒が鈴を渡すんだけど、大して話したこともないことを理由に、ミッキーは鈴を受け取らない選択をしました。

やはり恋愛成就させるには、色々関係を構築し、ここぞというタイミングで踏み切らないといけないのだと思います。

成功の確率を上げないと成就はしねえと。

 

またさ、学校生活っていう縛りがある故に、仮にフラれたりでもしたら顔を合わせるのもつらいわけですよ。

まして仲良しグループの一人ですよ。

ダメだったらそのグループから抜けるか、抜けてもらうかって話になるわけですよ。

ある意味告白するって、結構な賭けだったりするわけですよ。

 

ミスチルの歌詞にも「friendじゃ辛いけどTHE ENDになるくらいならあわてなくていいや」ってフレーズがあるわけで、現状維持も悪くないなって思考になるのも選択肢としてはありだよなぁってなるんですよ。

でも選ぶなって話。(シンゴジラっぽくいうと)

 

 

だからさ、京くんには、周りの友達に背中を押されて男らしくズバっと告って欲しかったわけですよ。

そしたらさ、なぜかミッキーが京くんのことを好きになっていて、逆に「はっきりして!」ってせっつかれる展開になってるわけですよ。

 

同じ大学に行きたいって言われて悩んで、それって脈あんじゃん!ってならない思考が俺にはさっぱりわからなくて。

彼女って結局俺にとってお焦がれの人なんだよとか、てめえで勝手に言い訳作って、しまいには「迷惑かけてごめん、こんな俺にごめん」て言い出す始末で。

 

も~わけわからん。

お前どれだけ自信ねえんだよ!

 

その前に、なんだこの展開は。

確かに京くんの控えめながら相手を思いやる気持ちが、ミッキーの気持ちを動かしたというまるでマッキーの「僕が一番ほしかったもの」みたいな、振り返ったらぼくがあげたものでミッキーが喜んでくれました、これが僕の一番欲しかったものでした、みたいな話になっていくから、そりゃねえよと。

ミッキーがマッキーになってんじゃんと(いいたいだけ)。

 

好きな人が自分を好きになってくれたのに、それを遠ざけるような行動をとる京くんの自信なさすぎる発言や行動に、今の子ってこんなにもオクテなの?こんなにも人に距離を取りたいの?結局どうなりたいの?と???がいっぱい浮かんだ映画でした。

 

 

最後に

京くんの話をメインにしましたが、中身はそれぞれがこのチカラによってどんな振る舞いをしているのか、一方でどんな弊害が出てしまっているのかを章立てのように描かれていました。

個人的には見やすさもあったように思えましたが、どうせなら恐らく原作通りに語られたであろう物語を、もっと脚色すれば面白くできたのではないかと。

 

特に、ヅカとエルとパラにフォーカスを当てるようなことをせずに、実は僕たちにはこんなチカラがあって、2人のために影でこんな応援をしていましたっていうのを、終盤でドバーッと見せてサプライズ!みたいな構成。

 

なんでかっていうと、結局メインの二人以外の内面を描いたところで、そこまで物語に反映されてなくね?と思ってしまったからなんですよね。

パラのエピソードはある種酸っぱさを与える意味で大事な部分かもしrないけど、それはサラッと描くからこそ酸っぱいわけで、あんなに尺を使う必要はねえよなぁと。

 

またヅカとエルに至ってはほんのちょっとしかチカラの説明と効果と代償しか画が亜kれておらず、群像劇として本作を捉えるならばエピソードとして薄いよなあと。

 

あくまで「かくしごと」がメインであるのなら、この辺のバランスの悪さを改善した方が面白かったよなぁ、逆に京くんのみの視点で突っ走った方が恋愛青春ものとして潔いよなぁ、など、色々思う部分がありましたね。

 

監督の前作「少女は卒業しない」も個人的にはあまり刺さってないんですよ。

ダニーボーイのシーンは泣いたけどさw

 

変な話彼の作品は全体的におとなしい印象があって。

それが逆に現代的なんだろうけど、例えばもっと劇的な演出をしてみるとか、外連味をちょっと入れてみるとか、映画なんだからもっと大袈裟な何かがあってもいいよなぁと思ってしまうんだけど、今回も彼の良さが出ている一方で俺好みの作品にはなってなかったなぁと。

 

ま、それもこれも人の好みということで。

とにかく相手に気を遣うことは大事だけど、人の気持ちを気にし過ぎて自分を疎かにしてしまうこんな世の中はポイズンということで。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

映画「見える子ちゃん」感想ネタバレあり解説 かわいくて可笑しくて、不気味に怖い幽霊たち。

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見える子ちゃん

僕はいわゆる「霊感」がないので、幽霊の存在を全く信じておりません。

一度金縛りのような現象にあったことはあるものの、それが霊的なことだとも思ってませんでした。

 

しかし霊感のある人は大変なようで、部屋に入るや否や「いる」とか言うし、眠るときも「死んだおばあちゃんが…」と遭遇するようで。

慣れてるならいいものの、見えたり感じ始めた当初はストレスフルで大変だったろうなと。

 

今回鑑賞する映画は、まさに「霊感」に目覚めてしまった主人公が「見ないふり」をして暮らすけど、友人が大変な目に遭っちゃったからさぁ大変というお話。

 

SNSとかに張り付いてるとどうしても「スルー出来ない」内容にイライラしたり、怒りをぶつけたり、お気持ち表明してしまう人を見かけますが、そんな時こそ彼女のようにスルーできたらいいな、そんなテーマがある…わけないと思いますが、ホラーコメディだそうなんで大いに笑えたらなと思います。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

SNSで発表された第1話が話題を呼び、現在も「Web comic アバンダ」で連載中の泉朝樹原作の同名コミックを、「残穢 ざんえ ー住んではいけない部屋ー」や「忍びの国」を手掛けた中村義洋監督の手によって実写映画化。

 

霊が見えるようになった女子高生が、ひたすら霊を無視してやり過ごそうとするも、徐々に「見過ごす」わけにはいかない事態に陥っていく姿を、絶妙なバランスでホラーとコメディを見せていく、全力無反応系エンタテインメント。

 

監督の中村義洋は、「霊は動かさないほうが怖い」というこだわりから、本作では“静のホラー表現”を追求した。霊が動くことで意味を与えてしまうことになるため、この後何をしでかすかわからない状態=静の状態を見せた方が、より恐ろしいという理論とのこと。

また、監督は近年こそホラー映画のイメージだが、ユーモア描写にも定評がある人。

特に伊坂幸太郎原作映画での表現や間は、つい笑ってしまうようなシュールな演出が多く、本作が掲げる「ホラーコメディ」というジャンルにうってつけの存在であることは間違いない。

 

そんな「霊が見えてしまうけどスルーしてしまう」主人公・四谷みこ役を、「すずめの戸締り」、「推しの子」の原菜乃華が演じる。

他にも、親友・百合川ハナ役を「おとななじみ」の久間田琳加、霊が見える女子高生・二階堂ユリア役をインフルエンサーのなえなの、生徒会長・権藤昭生役を、「【推しの子】-The Final Act-」の山下幸輝、荒井先生役を「妖怪人間ベラ」の堀田茜、みこの母・透子役を「マスカレードナイト」の高岡早紀、代理の先生として赴任する遠野善役を「言えない秘密」の京本大我、そしてみこの父・真守役を「ゴールデンスランバー」、「決算!忠臣蔵」の滝藤賢一が務める。

 

恐ろしさと笑いが同時に攻めてくるという難易度高めのホラーコメディ。

選ぶのは、「無視」か「友情」か。

彼女はどちらを選ぶのか!?

 

 

 

 

あらすじ

 

ある日突然「霊」が見えるようになった女子高生・みこ(原菜乃華)。

ヤバすぎる霊たちに囲まれたみこが選んだ生き残り術は「見えてないフリ」。

 

親友のハナ(久間田琳加)に霊が憑いても、同級生のユリア(なえなの)に見えるのがバレそうになっても、ただひたすらに全力スルー。

 

しかし、産休に入る荒井先生(堀田茜)代理として遠野先生(京本大我)が赴任してくる。

何やら異様な霊が憑いている影響か、ハナの様子に異変が生じついには倒れてしまう。

 

ハナを助けるため、みこはユリアや昭生(山下幸輝)と共に遠野の謎を追ううちに、驚くべき事実を知ることに。

 

果たして、親友を救い、文化祭を無事に迎えることができるのか——。

”見えてないフリ”を貫いてきたみこが、ついに「無視できない」恐怖に立ち向かう!(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

別に見なくていいか=「無視」をしないで良かった。

普通に楽しめる青春ホラーコメディ。

怖さや女優たちの可愛さよりも、伏線回収に泣いてしまった。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

そりゃ「無視」したくなるよね。

突如「霊感」が働き、幽霊が見えてしまう主人公みこが、親友に憑りついた霊を祓うため、仲間の協力を得ながら、「幽霊が見えてしまう」故の役割を果たしながら成長を遂げ、友情を深めていく青春ホラーコメディ。

 

みこは、子供のころから「幽霊」が見えるわけではなく、突如目覚めてしまうという特殊な役柄の設定。

 

文化祭の出し物をクラス内で決める話し合いで、何度数えてもみこだけ一人多く数えてしまうシーンや、YouTube動画で会得した対処法通りに幽霊を追い払おうとすると、家までついてきてしまうという可笑しさ、さらには昨夜のお通夜に行ったせいで憑りつかれてしまった親友の霊を追い払うために、わからないふりをして神社まで連れていくシーンなど、これまで体験したことないからこそ不慣れな振る舞いや、戸惑いや驚き、そんなたくさん用意されたリアクションを、主人公みこ演じる原菜乃華がコミカル且つフレッシュに演じていたのが好感触でした。

 

 

実際怖い人に遭遇したら無視しますし、無関係の人が怖い人に絡まれていても無視するし、世の中怖いことや気味の悪いことは「無視」するのが一番いいに決まってる。

 

しかし、親友がもし怖い存在のせいで危険な目に遭っていたら、あなたなら「無視」しますか?って話です。

親友とはいえ他人と割り切れれば、そのくらい自分で対処すべきって案件で考えられるならまだいいけど、その親友のおかげで日々の暮らしが楽しいのだったら、新湯が苦しい目に遭ってるということは、自分の日々の暮らしにも多大な影響を与えるわけです。

 

そんな自分を変えるため、親友を助けるために奮闘するみこの成長ぶりを可愛らしく可笑しく、ちょっぴり怖く見せる本作は、まさに原菜乃華、りんくまちゃん、そしてなえなのちゃんの「アイドル映画」として刻まれることでしょう。

 

彼女たちのリアクションはどれも眩しいショットばかり。

特に主人公を演じた原さんの何とも言えない絶妙なリアクションは、つい笑ってしまうものばかり。

初めて幽霊に遭遇した瞬間のとまどい、見えてるくせに「見えてないふり」をしないといけない素振り、実体なのか幽霊なのか判断に困る瞬間、そして実は実体だったと分かった時の焦りっぷり、自分だけ見えてるので怖いリアクションができずに、なぜか泣いてしまうショットなど、とにかくあらゆるばり―ションを駆使して、「もうどうしたらいいのかわからない」表情を見せてくれるのが最高です。

 

他にも親友を演じたりんくまちゃんも、天真爛漫な笑顔が魅力的。

クラス委員長として皆をまとめなくてはいけない役柄ですが、愛くるしい笑顔で諍いを起こさないようなふるまいはもちろん、文化祭の出し物が被ってしまったことによる抽選会で、憧れの存在である生徒会長を目の当たりにして激しく興奮する様、黄金の右手で当選を掴もうと自信満々で臨むも、あえなく撃沈した時の落ち込み様、そして!とにかく腹が減ってパンをむさぼる食いしん坊な姿。

振り返った時に顔中一杯クリームがついている姿は、そりゃもう100点満点です。

 

さらに、今回初めてお目にかかったななのちゃん。

インフルエンサーとして活躍されてるそうで、女優という肩書にはまだ程遠い方なのかなと思いましたが、しっかりお芝居をされていて好感を持てました。

「かまってちゃん」のあだ名で周囲からはみ出されてしまった存在故、どこかしら影を背負ってる感じで、お昼時間もトイレの個室でお弁当を食べる孤独っぷりがまた似合ってしまうほどのかわいい陰キャ的役柄でしたが、見えるはずなのに「見えない」と嘘をつくみこに低い声で「あ??」と発する瞬間や、「またみくびられた」とふてくされてほっぺたを膨らませる表情、除霊をする際に唱える「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字護身法も様になっていまたし、終盤では巫女の格好をしてえ除霊に挑む姿も見せ、ビジュアル面でも眼福のかわいらしさでした。

 

ラストではお化け屋敷ではしゃぐ3人のショットをスローモーションでみせるあたりから、やはり本作はこの3人の「かわいい」を押したい作品だった、しかもそれは大正解だったなと思った作品でした。

 

監督の演出と伏線回収はお見事。

そんな3人の可愛らしさとおかしなリアクションを撮った中村監督。

 

今回幽霊の「静の描写」にこだわって作ったと話しただけあって、いわゆるJホラーの類を彷彿とさせながらも、それとは一線を画した演出だったように思えます。

 

普通のホラー映画なら、実際する人間に特殊メイクを施して演じさせるのが一般的だと思いますが、本作はそこに「手ぶれ加工」したかのような合成技術で「実体があるのかわからない」ような見せ方をしているのが特殊でした。

 

この方法によって、みこやみくりに見える幽霊は、はっきりと輪郭のない姿で現れ、しかも基本的には「じっと」突っ立っているだけなんですね。

じっとしていることで、その後どんな行動をするか予測ができないため、普段とは違う「怖さ」が画面いっぱいに増幅されていたのが特徴的でした。

 

しかもこれだけじゃない。

体育館で行われた文化祭の出し物のの抽選会のシーンでは、おじいちゃんのような姿の幽霊が、臨月を迎えた女性教師に少しずつ近づいてくる姿を、みこの表情のリアクションをしながらカットバックしてみせていました。

これにより、さっきまで遠くにいた幽霊が、次のカットでは距離を縮めてきており、あと少しで先生に接触してしまうところまでみせていくことで、この幽霊が近づいたら一体何をしてしまうんだろうという怖さがありました。

 

またこれとは違う幽霊の見せ方として、遠野先生に憑いている幽霊も独特でした。

遠野先生には母親の霊が憑いていたわけですが、それまでの「ぼやけた」輪郭の幽霊とは違い、しっかりと黒髪がはっきり見える姿で背後に見え隠れしていたんですね。

こうした差別化によって、他の幽霊とはわけが違う、かなり強力な存在であることが明確に映し出されているのかが理解できたと思います。

 

こうした演出によって、Jホラー味がありつつも一線を画した見せ方が楽しい作品でしたん。

 

伏線回収がさすが。

また本作が面白かった理由の一つに、適度な違和感をキレイに回収してくれる気持ちよさがありました。

 

まず冒頭、クラスで文化祭の出し物を話し合うホームルームのシーンからはじまるわけですが、教室には男子生徒の姿は一人も見当たりません。

ですが抽選会のシーンでは、生徒会長や写真部、後ろでバスケをしている生徒たちは男子ばかりのため、この学校は「共学校」なんだろうと思わされます。

 

そしてみくりと共に姿を見せ、霊が見えるみこに近づく生徒会長が、やたら「人には役割がある」と連呼し、除霊や対処法を色々語る割に自分で何もしないことに違和感を持った人もいたでしょう。

 

他にも、みこが帰宅すると父親が気さくに家族に話しかけたり、母親と口論したみこに「今のうちに謝っちゃいなさい」と諭す場面でも、みこはだんまりを決め込むんですよね。

実際食卓にからあげが並んでいたものの、父親は一緒に食事をせず晩酌をしているなど、これも「在り得る」ことではあるけれど、どこか違和感があるシーンでした。

 

実は彼らもまた「幽霊」だったことが終盤明かされます。

上でも語った「幽霊」の可視化に様々な工夫を施して見せていたのに、実体がちゃんとあるにもかかわらず、実は幽霊でしたと明かすのも、意外性があってよかったです。

 

また、父親とのエピソードがほろりと泣けてくるではありませんか。

みこが取っておいた冷蔵庫のプリンを、父親がみこのものだと知らずに食べてしまい、大喧嘩をしてしまった、その翌日会社で心筋梗塞で倒れ、仲直りすることなくお別れをしてしまった。

そんな心残りを抱きながらも、父親の姿が見えてしまうみこは、ただ「無視」をしていたのではなく、どう顔を合わせればいいかわからなかったことが窺えるわけです。

 

夕食の支度を娘にさせて、自分はひたすら仕事に打ち込む母親が、夕食を作っていなかった娘に「作らないなら作らないと言って」と、母親らしからぬ発言をしており、それを見た自分は「さすがに母親としてどうなのよ」と思いましたが、父親が亡くなって17年ぶりに仕事に復帰し忙しい毎日を送っていたことが判った時には、なるほどと。

 

しかも口論をしたあと、泣きながらPCに向かう母親を姿を見て、そんな事情があったなんて…と当初の考えを改めて見た人もいたはず。

 

 

そんな仕掛けがあったなんてと思ったのもつかの間、ラストには実はこの学校が「女子高」であり、男子生徒は生徒会長含め全て「幽霊」だったことが明かされます。

生徒会長は校内から出られないわけで、色々口は出すが助けはしない理由が判明するんですね~。

 

劇中では「かつて学校で崩落事故があり、そこで亡くなった者たちがなぜ死んだのかわからないまま地縛霊として学校からでられずにうろついている」ことが語られており、悪意のない連中もいれば、危うい霊もいるなど様々。

さらにその事故が文化祭で起きたことから、文化祭間近は幽霊たちがうじゃうじゃ集まってくるため、みこの周りで様々なことが起こるというものでした。

 

これは一本取られました。

まさか生徒会長も幽霊だとは。

しかも彼の名前が「昭生」なんですが、これ、「昭和生まれ」だから「昭生」とのこと。

劇中で「アフター5」とか言ってたのも、ボキャブラリーがそこで止まっている証拠だってことです。

 

 

最後に

幽霊に話しかけたりするとついてきてしまう、だからこそ「無視」するのが一番の対処法。

それを鵜呑みにしたみこは徹底して目を逸らしたり無視することを決め込みますが、親友を助けるために幽霊にした対処法が「無視」。

遠野先生に憑りついた母親の霊の言葉から耳を背ける「無視」ではなく、母親との縁を断ち切るための「無視」をすることで、関係に終止符を打つことが、正しい対処法だったことがクライマックスで描かれます。

 

だからあの時、母親の言葉に耳を傾けてしまった先生を助けるために「先生、鳩がいます」と声をかけたんですね。

先生もそれを理解し、みこの言葉にのみ耳を傾け、母親を「無視」することで母親は諦めるしかなくなり、そこに追い打ちをかけるように神社の神様が祓ってくれる、そんなクライマックスでした。

 

しかもその神社はみこがかつて家族で七五三の際に使った神社。

神さまはみこに味方してくれた、という解釈なんだと思います。

 

 

正直、誰かがお芝居をしている最中、別の演者が棒立ちのままが多かった本作。

お芝居をするうえで「それはないだろ」と普段なら思ってしまうんですが、若手俳優や作品全体の「幼さ」があるからこそ、本作が持つ可愛さや可笑しさが微笑ましく感じたのかなと、肯定的に受け止めました。

 

色々解説しましたが、大体は観賞時に頂いたカードから入れる「公式の考察ページ」から抜粋したものですw

何かわかってる風に書きましたが、そういうことですw

ご容赦くださいw

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10

実写映画「リロアンドスティッチ」感想ネタバレあり解説 こんなかわいいエイリアン見たことない!

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リロ&スティッチ

なぜかディズニーの実写化は欠かさず見てしまうモンキーです。

今回も、キャラクター自体は認知してるけどアニメーションは全く見たことがない、でも「もふもふ好き」としてはたまらなくかわいいスティッチを堪能したいがために見ることに。

 

そもそもスティッチっていったい何なのか、リロとどんなおふざけをするのか、アニメーション映画通りの内容なのか、いろいろ知らないことだらけなので、楽しみたいと思います。

 

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

リトルマーメイド」「白雪姫」のディズニーが、2002年に制作されたアニメ―ション映画を実写化。

ハワイのカウアイ島を舞台に“オハナ(家族)”の大切な絆を描くファンタジーを新進監督が手掛けた。

 

両親を事故で亡くした姉妹の前に一体の暴れん坊のエイリアンが現れることで、島中大パニックに陥る中、奇跡の出会いが家族の絆の本当の意味を知っていく姿を、美しいハワイの自然と心躍る音楽にのせて描く。

 

実写とストップモーションを組み合わせ、モキュメンタリーの手法も取り入れたユニークな作風にエモーショナルな物語『マルセル 靴をはいた小さな貝』でアカデミー賞にノミネートしたディーン・フライシャー・キャンプが、本作の監督として抜擢。

今でも愛されている「リロ&スティッチ」を製作するにあたり、「アニメーション版のストーリーには荒っぽさがありながら、どこか共感しやすい不完全さと、本物らしさを兼ね備えていました。そのことに当時は衝撃を受けた」と語る。

 

自身が衝撃を受けた作品をどう実写映画として次世代に継承するのかに注目だ。

 

北米では同日公開だった「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」に大差をつけて初登場1位を記録、世界興収も6億ドル突破と、今年初の10億ドル越えという期待の声も出ているとのこと。

 

日本でもスティッチ旋風が巻き起こるか期待だ。

 

 

 

 

あらすじ

 

両親を亡くした少女リロ(マイア・ケアロハ)と姉のナニ(シドニー・アグドン)。
ひとりでリロを育てようと奮闘するナニだったが、若すぎる彼女は失敗ばかり。
離れ離れになってしまいそうな姉妹の前に現れたのは、家族の愛を知らない暴れん坊のエイリアン、スティッチ(CV:クリス・サンダース)。


予測不可能な彼の行動は、平和な島に大混乱を巻き起こすが、その奇跡の出会いはやがて、希望を失いかけた姉妹を変えていく…。(HPより抜粋)

youtu.be

 

キャラクター紹介

  • スティッチ(CV:クリス・サンダース)…破壊生物として開発された銀河連邦のエイリアン。別名は”試作品626号“。地球のハワイに不時着し、不思議な縁で両親を事故で亡くした少女リロと姉のナニと一緒に暮らすことに。行く先々で大暴れしてトラブルを巻き起こすが、リロとナニ姉妹との絆が深まるにつれて初めて”愛“を知り、”オハナ(家族)“の絆の大切さに気付いていく。

 

  • リロ(マイア・ケアロハ)…両親を事故で亡くし、姉のナニとハワイのカウアイ島で暮らす6歳の少女。フラダンスと観光客の写真を撮るのが大好き。想像力が豊かすぎるせいで変わり者扱いされ、友達ができずいつも独りぼっち。スティッチとの出会いによって”オハナ(家族)“の絆の本当の意味を知っていく。

 

  • ナニ(シドニー・アグドン)…両親を事故で亡くし、妹リロの親代わりをする18歳の姉。一人でリロを育てようと奮闘するが、若すぎる彼女は失敗ばかり。海洋生物学の仕事に就くことを夢見ているが、今は学校と仕事とリロの世話で生活はパンク寸前。このままではリロが施設に行くことになってしまい、家族が離れ離れの危機に。そんな中、スティッチとの出会いによって”オハナ(家族)”の絆の本当の意味を知っていく。

 

  • ディヴィッド(カイポ・デュドイト)…リロとナニ姉妹を優しく見守るハンサムな若者。ナニが働くハワイのホテルで、観光客に人気のファイヤーナイフダンスを披露している。ナニとは良きサーフィン仲間。実はナニに恋心を抱いているが、気持ちを打ち明けられずにいる。

 

  • ジャンバ博士( ザック・ガリフィアナキス)…銀河連邦のエイリアンで、試作品626号(のちのスティッチ)の発明者。スティッチを捕えるため地球に派遣される。
  • プリークリー(ビリー・マグヌッセン)…地球に詳しい銀河連邦のエイリアン。スティッチを捕えるため、ジャンク博士と共に地球に送り込まれた。
  • トゥトゥ(エイミー・ヒル)…リロとナニのご近所さん。幼少期から見てきた姉妹のことをいつも心配している思いやりある女性。
  • コブラ・バブルス( コートニー・B・ヴァンス)…CIAのエージェント。スティッチの正体を探るため、リロとナニを担当する社会福祉士として潜入捜査中。
  • ケコア(ティア・カレル)…リロとナニを担当する社会福祉局の局員。幼いリロ一人でを育てるナニに寄り添い、彼女たちの生活をより良くするために手助けしている。
  • 議長( CV:ハンナ・ワディンガム)…宇宙の平和を守る銀河連邦のリーダーのエイリアン。ルールを破る者には容赦しないが、正しいことをしようとする者は受け入れる広い心を持つ。

(以上HPより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

普通に楽しけりゃなんも文句はないですw

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

いやああたまらん、かわいいが過ぎる!!

共に孤独を感じていいた二人が寄り添い、姉を交えて「家族」になっていく姿を、SF要素やエンタメ要素を盛り込んで作った、最高に「かわいい」ファミリー映画。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。

 銀河評議会にて。

議長は、数々の危険な実験を行ったとして、狂気の科学者ジャンバを評議会にて尋問をすることに。

彼が作り上げた試作品626号は、凶暴且つイタズラ好き、さらに高度な頭脳をもっていることから、危険な存在と見做し、議長は626号を永久に追放することを判決する。

 

追跡装置をつけられた626号だったが、その賢さをフル活用し脱走。

ハイパースペースを利用して地球へ向かった626号を始末するため、一度は地球毎破壊を命じる議長だったが、地球を研究するプリークリーの説得によって、断念。

代わって、626号を作ったジャンバと共に、プリークリーは地球での捕獲を命じられる。

 

舞台は変わって地球。

海中で魚にエサを与えるリロは、釣り人のルアーを盗んでブレスレットを作ったり、勝手にスパ施設に忍び込んで体の海水を洗い流すなど、やんちゃな毎日を過ごす。

フラダンスの発表会に遅刻したリロは、周りの友達から変人扱いされハブられてしまう。

 

発表会を参観する予定だった姉のナニは、向かう寸前で車がエンストを起こしたことで発表会に間に合うことができなかった。

その間、リロは発表会で隣の子に押された腹いせに舞台から突き落としてしまう事故を起こしてしまう。

 

一人帰宅したリロは音楽を大音量でかけ、ナニを家に入れないよう鍵をかけてふてくされる。

そこへ社会福祉局のケコア夫人が到着することで、ナニは裏口から強引に家に侵入し、現在の状況を説明することに。

 

両親を亡くし、18歳という若さで妹を育てるには、あまりにも杜撰過ぎることを指摘されたナニは、状況を改善するための策としてケコアから「そうじをすること、請求書を全部支払うこと、そして医療保険に加入すること」を命じられる。

 

ケコアが帰った後リロとナニは喧嘩を始めるが、離れ離れにならないために二人で協力しないといけないことをリロに強く説得するのだった。

 

その日の夜、仲直りした二人の前に、流れ星が流れる。

「親友が欲しい」と願うリロだったが、星の正体は626号が乗った船が不時着したものだった。

島へやってきた626号はウェディングパーティー中の会場を荒らしまくったのち、バスに轢かれ、犬を保護する施設へと運ばれていく。

 

626号を捕獲するため地球へやってきたジャンバとプリークリーは、仲良さげな厨ン二人組の姿を擬態し、地球に溶け込む。

やがて昨夜の騒ぎを知った二人は、626号がいるとされる施設へと急ぐのだった。

 

隣人のトゥトゥおばさんと買い物にやってきたリロは、時間つぶしに保護施設へ向かう。

626号は自分を捕獲しにやってきたジャンバらの言葉を高度な耳で聞き取ったことから、6本ある手足を4つにし、触角を隠して犬になりすまし、リロと仲睦まじくじゃれれあうことに。

トゥトゥおばさんや職員らの引き留めにも耳を貸さないリロは、願いが叶ったとばかりにスティッチと名付けて連れて帰ることを決意する。

 

家に連れて帰るや否や暴れまわるスティッチ。

せっかくケコアに言われた通り家を掃除したばかりだったのに、散らかしまくるスティッチを見て、頭を悩ませるナニは、リロにちゃんと躾けるよう命じる。

 

一方謎の船が墜落した現場へ足を運ばせたCIAエージェント・コブラは、謎の生命体が存在することを危惧。

周囲を調査し始めていく。

 

 

翌日、友達にスティッチを見せびらかすリロだったが、気持ち悪いとバカにされ、さらに人形を引っ張られたことに頭が着て取っ組み合いをしてしまう。

 

見かねたスティッチは友達が乗っていたミニカーを奪ってリロと共に逃走。

都会へ向かい大暴れしようと爆走するが、ようやくここが「島」であること、嫌いな水に囲まれた場所であることを知り愕然とする。

 

リロはスティッチを海へ連れていき大はしゃぎする一方、水が大嫌いなスティッチはひたすら逃げ回っては砂の城を破壊するなど、凶暴性を秘めたままリロと戯れていく。

ナニの仕事場についていった2人は、おとなしくしているよう忠告されたものの、ドリンクバーの注入口で互いを撃ちあったり、ファイヤーダンスの火を無暗に放り投げたことで火事を起こしてしまい、ナニは仕事をクビにされてしまう。

 

その日の夜、スティッチを施設へ帰すことを告げられたリロは「もうスティッチとは家族=オハナだからそれはできない」と反発。

ナニは呆れながらもリロにちゃんとスティッチを厳しくしつけるよう促すことに。

 

それを盗聴していたコブラは、社会福祉局の職員に成りすますことができるよう部下に手配するのだった。

 

リロはナニからよく言われたことをスティッチに言い聞かせます。

スティッチは悪い子じゃない、時々悪いことをするだけ、完璧な家族はいないから、いい子になろうねと。

 

翌日ナニの面接についていく2人。

良い子になるために、まず悪い要素を無くし、良い行いを身につけるためのセミナーを開くことに。

モノを壊してはいけない、ちゃんとおそうじするなど、リロはいろいろ教えていきますが、スティッチは中々会得することができません。

 

2人のせいで不採用を連発するナニに、リロは「得意なことを仕事にしよう」とサーフィンのインストラクター募集のチラシを見せます。

見事採用されたナニは、リロとスティッチをボードに乗せて海を満喫することに。

すると人間に化けたジャンバとプリークリーがジェットスキーに乗ってスティッチを捕獲しようと襲来。

 

上手く回避できたが、スティッチは海中でパニックに陥り、そのせいでリロが意識を失う事態に。

急いで病院に運ばれ意識を取り戻したリロに安堵したナニでしたが、まだ医療保険に加入していなかったことに気付いたナニは愕然とする。

ケコアから保護者を拒否すれば州が医療費を負担してくれるとアドバイスを受けたが、それはリロと離れ離れになることが条件だった。

 

自分のせいで家族がバラバラになるかもと悟り落ち込むスティッチは、その夜離れ離れになることことを決意したナニとリロの会話を聞いて、一人施設へと帰っていくのでした。

 

翌朝、ケコアと職員になりすましたコブラはリロを迎えにやってくるが、ナニが部屋を覗くとリロがいないことに気付く。

リロは突然いなくなったスティッチを探しに足取りを辿って施設へと向かっていたのでした。

落ち込んだ表情で壊れた檻に座り込んでいたスティッチに、精一杯の愛情を注ぐリロ。

そこにスティッチを捕獲しようと再びジャンバが姿を現す。

 

高度な頭脳を持つ626号は、自分の身を守るために人間に近づいただけだと聞かされたリロは迷いを起こすが、リロと過ごした数日で「良い心」を手に入れたスティッチは、ジャンバの持っていたポータル銃を奪って、ループ状のポータルを作り、脱出の余地を生み出すことに成功する。

 

2人はその場を離れ家に戻るが、すぐさま追いついたジャンバは「執着」が人間の弱点であることを見抜かれ、家族の大事な思い出が詰まった家を破壊し始めていく。

必至に逃げようとリロを説得するスティッチだったが、リロは壊されていく家を見て思いとどまり、ジャンバにやめるよう忠告する。

 

あきらめのついたスティッチは自ら捕獲され、ジャンバの宇宙船に乗り込むことに。

しかしリロはこっそり宇宙船に乗り込み、スティッチを救出しようと企んでいたのだった。

 

果たしてリロとスティッチは、ジャンバの企みを乗り越え、再び元の暮らしを送ることができるのだろうか。

・・・というのがざっくりしたあらすじです。

 

暴れまわる青い犬

1億ドルという対策にしては比較的安価な製作費で作られたくせに、世界的に莫大なヒットをしている本作。

一体なぜみんなそこまで惹きつけれられるのか、半信半疑で見に来ましたが、まぁ楽しかった。

というか、もう全部が可愛かった。

 

アニメーション映画を見ていない、大体が静止画や切り抜き動画程度でしかスティッチを認知していなかった僕としては、様々な悪さや徐々に塩らしい表情になり、良い心を手に入れていくスティッチの全行動に、ときめきっぱなしの100分間でした。

 

物語に関しては、あらすじでも書いた通り、両親を亡くしたことでいっぱいいっぱいのナニの辛さや、それを何となく理解しながらも友達から見放され孤独を感じていたリロの前に突如現れた最高の親友が、色々な出来事に遭遇しながらも家族を形成していく姿は非常にハートフル。

 

さらに銀河連邦から送られた刺客、CIAも絡んだ三つ巴の逃走劇へと発展していく過程も分かりやすく、エンタメ要素を見事に生かした構成と大団円へと持っていくベタな展開に、誰もが感動し、誰もがかわいいといいたくなる、最高にハッピーな映画でしたね。

 

 

何よりも本作の最大の魅力はスティッチの一挙手一投足。

アニメーションでしか見れなかったキャラクターが、途轍もない素早い動きで駆けずり回り、破壊の限りを尽くしていく姿は、見た目とのギャップも相まってほっとけないレベルの無邪気さとかわいらしさ。

 

凶暴性の強い危険な存在だということが冒頭で説明されているわけですが、やってることは小っちゃい子供と何ら変わりないイタズラレベルなんですよ。

目に入ったものに釘付けになり、ケーキをむさぼり、周囲をひっかきまわり、泥だらけになるまではしゃぎまわる。

 

しかも徐々に言葉を覚え始め、コミュニティのルールや最低限やってはいけないことを学びながら、良い心を手に入れていき、家族の存在の大きさに気付いていく賢さまで秘めている。

 

なんていうんでしょう、幾ら人に迷惑をかけていても、自分がしでかしたことを冷静に見て事の重大さに気付いた時の、反省する表情とか、ホント子どものようで。

このギャップがとにかくたまらないんですよ!!

 

もうね、完全に良い子になった後の、ナニとリロと三人でベッドで寝る姿とか最高すぎます。

 

自分も実家で犬を飼っていたので、躾けたりとかしてたんですけど、段々こっちの態度や言葉を理解して従順になってく犬を見てるような気持ちですよ。

 

犬だって時にいたずらをしてしまうわけじゃないですか。

ティッシュをガンガン出しまくったりとか、家の中でオシッコしちゃったりとか。

そういう時にしっかり目を見て飼い主は叱るわけですよ。

その時の反省してますって表情、最高にかわいいじゃないですか。

 

うちの犬もとにかくやんちゃだったってこともあって、暴れっぷりやはしゃぎ様がなんとなくダブってみえたんですよ。

さらにスティッチは言葉を覚えて喋るじゃないですか。

うちの犬も喋れたらなぁ~~とか、そんな気持ちで映画を鑑賞してましたw

 

 

最後に

実際アニメーション映画版を見ていないので、実写との比較ができないせいでロクな感想をかけてないんですけど、これは日本でもしっかりヒットするだろうなと実感した、誰でも楽しめる作品だったなと。

 

キャスト陣はほとんど知らない人たちばかりでしたけど、唯一顔も名前も認知しているザック・ガリフィアナキスを久々に見れたのは嬉しかったですね。

ハングオーバーで危険因子だった彼が、ちょっとスリムになって悪役として機能していた姿を見て、懐かしの再会も含めてちょっぴり感動w

 

リロを演じた子役の演技もお見事で、合成にも拘らずよくあそこまで表情を最大限に発揮できたなぁと。

唯一デイヴィッドのキャラの使い方に難アリでしたが、それ以外は過度な説明もなく、お話のテンポも良くダレない話運びだったので、楽しかったですね。

 

ちなみに一番笑ったのは、強引に海に入れようとするリロに対し、どうしても入りたくないスティッチが「ぐわああああああ!!!」と叫ぶところでしたw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10


映画「ドールハウス」感想ネタバレあり解説 ドールミステリーという新たなジャンル爆誕。

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ドールハウス

人形を題材にしたホラー映画といえば真っ先に浮かぶのは「チャイルド・プレイ」。

連続殺人犯の魂がチャッキーという名の人形に憑依し、様々な殺戮を試みるホラー映画として大ヒットし、シリーズ化までされました。

 

他にも「アナベル」シリーズ、ニコラス・ケイジがアニマトリクスとバトルする「ウィリーズ・ワンダーランド」、AIを駆使した人形で続編が製作される予定の「MEGAN ミーガン」など、どれもホラーアイコンとして有名な作品ばかり。

 

そんなハリウッド映画に対抗したのかはわかりませんが、日本でも「人形ホラー」が爆誕。

ただひとつ不安なのは、本作が上に挙げたハリウッドホラーのような雰囲気ではないということ。

あくまで「ドールミステリー」なので、ホラー要素は薄いのかもしれません。

というわけで早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖監督が長澤まさみを主演に迎え、亡き娘に似た人形に翻弄される家族の恐怖をオリジナル脚本で描いたミステリー映画。

 

5歳の娘・亡くした主人公が、骨董市で娘によく似た愛らしい少女人形を手に入れたことが発端となって、一家に奇妙な出来事が起こり、やがて恐怖に見舞われていく姿を、「人形の謎を追う」ミステリーを軸に見せていくスリリング満点の作品。

 

ギレルモ・デル・トロアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥジョージ・A・ロメロなど歴史に残る名作を撮ってきたそうそうたる監督たちも受賞したポルト国際映画祭の最優秀作品賞を受賞した本作。

いつかオリジナルでミステリーをやりたいとアイディアを練っていた矢口監督は、本作に多数の「怖い仕掛け」を施したとのこと。

 

娘を亡くした母親・佳恵役には、監督作「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」以来のタッグとなった長澤まさみが演じる。

脚本にほれ込んで出演を決めたという長澤は、意外にもミステリー映画は初とのこと。

 

他に看護師の夫・忠彦役を、「コンフィデンスマンJP 英雄編」、「スオミの話をしよう」の瀬戸康史、呪禁師・神田役を「ハッピーフライト」、「正体」の田中哲司が、私服警官・山本役を、「愛しのアイリーン」、「35年目のラブレター」の安田顕、忠彦の母・敏子役を、「愛に乱暴」、「知らないカノジョ」の風吹ジュンが演じる。

 

コメディ映画を軸に制作してきた監督が、満を持して挑んだミステリー映画。

長澤まさみがくりだす「ムンク顔」はかなり恐ろしいとのことだが、果たして。

 

 

 

あらすじ

 

5歳の娘・芽衣を亡くした鈴木佳恵(長澤まさみ)と夫の忠彦(瀬戸康史)。
哀しみに暮れる佳恵は、骨董市で見つけた、芽衣によく似た愛らしい人形をかわいがり、元気を取り戻してゆく。

 

佳恵と忠彦の間に新たな娘・真衣が生まれると、2人は人形に心を向けなくなる。

 

やがて、5歳に成長した真衣が人形と遊ぶようになると、一家に変な出来事が次々と起きはじめる。

 

佳恵たちは人形を手放そうとするが、捨てても捨てても、なぜかその人形は戻ってくる…… !


人形に隠された秘密とは?

そして解き明かされる衝撃の真実とは―― !?(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

なんだこれむっちゃおもれえ~~!!!

日本人形に翻弄されるだけに留まらず、キャパを拡充し、新たなキャラを投入して物語をガンガン展開させていくテンポの良さよ!!

ホラー好きにはパンチ足りないかもだけど、それ以上に話が面白いんだって!!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ホラー映画ではありません。

矢口監督が「面白い脚本見つけたよ~」と言って持ち込んだのは、新人脚本家の「カタギリ」なる男。

これは面白いとほれ込んだプロデューサーがカタギリを検索するも、一向にヒットしない。

なんとフタを開けたらカタギリなる男は、監督本人だったという逸話。

 

監督は敢えて名を伏せ「物語の面白さ」だけで作品を興行させたい意思があったようだが、残念ながらその目標は果たせず。

とはいえ、その脚本に長澤まさみがほれ込み出演を快諾し、こうして世にでたのだから満足ではないか。

 

さぁ、その本作の中身についてあれこれ感想をいれつつ解説したいと思いますが、何度も言います「むっちゃ面白かった」です。

いつも僕は映画を見る上で、その尺に合った内容、キャラの使い方や見せ場の有無、物語のテンポなどを基準に満足度を決めているんですが、本作は僕が決めた基準を見事にクリアしていたのです。

 

まず物語のテンポについてですが、かなり速いスピードで展開されていきます。

というのも、公式のあらすじでは不気味な人形に恐怖を感じ、何度も投棄するが帰ってきてしまうところまでに留まっていますが、これは本当に序盤の序盤。

 

最愛の娘を失い、精神を病んでしまった主人公佳恵の前に、天の助けと言わんばかりに現れた古びた日本人形。

最初こそ受け入れがたい光景だったが、それに救われていく妻を見て「ドールセラピー」の一環として受け入れていく。

 

やがて新たな子を授かり、すくすくと成長していくわが子を見て、再び幸せな家庭の風景を取り戻せたかと思いきや、ままごとの相手として物置の奥から引っ張り出した娘によって、不可解な出来事が続発する。

 

これを体感時間10分~20分くらいのテンポで一気に畳みかけていく描写は、常にジメッとしたなかでジャンプスケアを放り込んでくるJホラーとはまるで違い、どこかB級ハリウッド映画の装いで我々に提示してくるではないかと。

 

この「いくら捨てても家に帰ってくる人形」が、やがて事件を起こし、他の人まで巻き込み、古くから都市伝説とされてきた人形であることが明かされ、夫婦で供養するためにとある場所へ向かうという、どんどん舞台の幅を広げていくことで、スケール感が増していくのが、テンポの良さも含めてものすごく楽しいんです。

 

 

またなぜそんなに面白いのか、その理由のひとつにキャラの使い方があります。

ポスタービジュアルや予告編では、あたかも長澤まさみの単独主演のように見せてますが、とんでもない。

彼女の出番はどちらかというと前半がメインとなっており、後半からは夫役の瀬戸康史がメインとなっていきます。

 

これはあの人形が怖いと訴える妻に半信半疑だった夫が、とあることがきっかけで「本当にこの人形はヤバい」ということに気付くことから、彼主体の物語へと変化を遂げていくんです。

 

ただの役立たずの夫なんかではなく、ちゃんと妻を気遣いながらも一家の主としてリードしながらも、妻のしたいことを受け入れていくという重要な役割があるんです。

だからさ、瀬戸康史ファンは怒った方が良いよw

これ普通にW主演よw

スクリーンタイム的にも。

 

そして!キャラは二人だけではありません。

夫の母親を演じる風吹ジュンにもしっかり役割や見せ場があります。

入院することになった長澤まさみの代わりに孫の世話をすることになるのですが、あの人形に翻弄されていくという役割をしっかり果たしています。

おんぶのシーンは、怖かったですね・・・。

 

さらに!このあと事件が勃発することで、刑事役の安田顕が登場。

防犯カメラに不審な映像が映っていたことや、人形の中身を知ったことで物語の中心へと割って入ってくる役割を担っており、その後彼の身に在る出来事が起こるところまで用意されており、メインの2人を軸に、ひとつひとつのシーンやエピソードの主役を脇役にスポットライトを当てて作っているのが、僕はすごく気に入りました。

 

そして!!一番のお気に入りは田中哲司!!!

彼は日本人形を供養する専門家の様なキャラクターとして登場するんですが、いかにも怪しい感じに見えるけど、ものすごく真面目でとにかくスペシャリティの強い職業を彷彿させる言い回しなんですよ。

 

「SPEC」で演じていた胡散臭い感じではない分好印象で、簡単に言えば一見バカげた大掛かりな除霊をクソまじめに描いた「来る」のような、日本人形相手にお経を唱えてバトルするような展開があり、個人的には彼が登場するや否やワクワクが止まらず、出来れば最後までいてほしいくらい頼もしいキャラクターでした。

 

他にもちょい役ではあるモノの、物語を次のエピソードへつなげる重要なポストを担った役柄になっているのが、僕としては最高でした。

 

 

そしてそして、さらに面白いのは物語がドライブしていくこと。

ツイストしていくと言っても良い表現だと思いますが、上でも書いたようにどんどん物語が転がっていくのがまた面白いんです。

 

序盤は家の中で起きた出来事を中心に描かれ、中盤からは夫を主役にバトンタッチして外ロケで物語を膨らませながら終盤の怒涛のクライマックスへと向かっていく。

 

本作がホラー映画ではなくドールミステリーと名乗っているのには、ただ日本人形でたくさん怖い描写を見せるのではなく、なぜこの日本人形はこの家にやってきて、娘を虜にさせたり、佳恵を狂わせるのか、まるで魂でも宿っているかのようなこの人形はどのようにして作られていったのかを追いながら、この人形をどう処分しなくてはいけないのかといった、まるで呪いを断ち切るために冒険をする羽目になる「リング」のような、ホラーからミステリーへとジャンルを横断するような物語になっているんですね。

 

 

もちろんちょいちょい怖い描写もあるんだけど、Jホラー特有の怖さはほぼないし、ジャンプスケアも確かにないわけではないけど、僕としては怖さよりも笑いや面白さの方が勝った印象。

そういう見方もできる作品だったと感じています。

 

でもやっぱり怖いって。

とまぁ、怖くないよ~アピールをすると怖いもの見たさで興味を示している人の脚を遠ざけてしまいそうなので、僕が「怖っ!!」となったシーンをいくつか解説できればと思います。

 

まず冒頭がもう陰鬱です。

長女のお友達を招くことになった佳恵はおやつとジュースがないことに気付き、娘に「家から出ないで遊んでね」と言い残し、買いだしに出かけます。

 

道中怪しい人相の男や、不審者の情報を耳にし、不安を高めていく佳恵。

帰宅すると、既にお友達は帰宅しており、娘だけ姿が見えないことに気付きます。

お友達も「かくれんぼの最中、お母さんを探しに外に出た」と思っており、誰もその姿を見ていません。

 

近所の人たちにも捜索に協力してもらい、やがて警察まで呼ぶ羽目に。

どんどん大ごとになっていく事態に、不安のピークを迎える佳恵。

夫が注いでくれたお茶をこぼしてしまい、テーブルクロスを汚してしまった佳恵は、それをドラム式洗濯機に放り投げます。

 

するとなぜか違和感を抱く佳恵。

放り投げたテーブルクロスを引っ張り出すと、そこには窒息死した娘の姿が…。

娘の姿は映っていませんが、今まで見たことのないリアクションをする長澤まさみの表情を見るだけでも、とんでもないショックであることが理解できるショットになっており、これはトラウマ級の怖さだなぁと感じました。

 

無論この後佳恵は洗濯機恐怖症に陥り、洗濯物は全て手洗いするというトラウマぶりを映します。

かくれんぼの最中、蓋を閉めてしまったことによる窒息死だと思うんですが、当初俺はてっきりお友達の誰かがスイッチを押してしまってバラバラになってるもんだとばかり思ってましたw

さすがにそれはキツすぎですねw

 

こうした陰鬱なシーンから始まり、メンタルがボロボロの長澤まさみ、人形を手に入れて180度メンタルが回復するもどこか狂気じみている長澤まさみ、新しい子を設けて普段の自分を取り戻すも、その人形に翻弄されて再びノイローゼになっていく長澤まさみと、前半は長澤まさみ七変化の如く、さまざまなまさみを堪能できます(やっぱり笑顔が見たい)。

 

 

そして他にも「怖っ!!」となった箇所。

人形を捨ててもなぜか戻ってくることで、徐々に苛立ちが募る佳恵。

生地をこねてクッキーでも作ってるんでしょうか、そんな中誰かが帰ってきます。

早番かと思っていた夫ではなく、そこには目の部分をくり抜いた紙袋を頭にかぶった人形の姿が目に飛び込んでくるではありませんか。

 

恐怖心でいっぱいになった佳恵は、持っていためん棒でひたすら頭部を叩きまくります。

かなり力を入れて殴っているので、さぞボコボコになったことでしょう。

しかし、カメラはそんな殴りまくっている佳恵の奥も捉えており、そこにはいま殴っているはずの人形の姿がチラチラ映っているではありませんか・・・。

 

ふと我に返った佳恵は奥にある娘の部屋を覗き、人形が座っていることを確認。

え…なんでそこにいるの…じゃあ私がいま殴っているのは・・・・娘!?

ぎゃああああっ!!!!というシーンでした。

 

これは一応夢だったというオチがつくわけですが、ここまで不穏な動きを見せる人形が招いた出来事だと認識しているせいで、夢だったなんて到底思えない構成になっています。

さすがにこれは「最悪…」ってなりましたね・・・。

 

 

他にも人形を連れて夜中に外に飛び出した娘の行方を捜しに、裸足で端まで向かう風吹ジュン演じるお婆ちゃんに、人形が襲い掛かる姿を防犯カメラがとらえた映像や、5人組の都市伝説ユーチューバーの映像になぜか知らない人が映っているシーンが一瞬映っていたり、人形の怒りを鎮めるために除霊を始める一行が、暗がりの中ポラロイドカメラのフラッシュを利用して人形の暴走を捉えるストロボ演出の際立ったシーンなど、意外と怖い箇所もたくさんあった作品でした。

 

 

最後に

クライマックスは、呪禁師の手引きによって成仏へと向かう夫婦が、なんとして成功するも、それだけでは終わらない呪いという「え!?そんな終わり方すんの!?」という驚きもあり、最後まで気が抜けない物語になっていたのも楽しかったですね。

 

おそらくたくさんの方が疑問に思う箇所も感じる作品で、見終わった後も「あそこって結局どういうこと?」などと語りがいのある作品になっていると思います。

 

実際、なぜ娘と人形が入れ替わっているのかとか、どうやって人形は家に戻ってきたのか、幻想まで見せてしまう底知れないチカラの理由など、得体のしれない人形の部分を大いに語れるのではないか、または考察できるのではないかと思います。

 

僕はそういう部分よりも、色々説明されてない箇所があったにせよ、今の大衆映画でこれだけドライブ感のあるオリジナル日本映画を見たのはいつ以来だろうという感心の方が強く、ぶっちゃけ全く持って面白くなかった「ダンス・ウィズ・ミー」から、よくぞここまで取り戻してくれた矢口監督に惚れ直しました。

 

元々コメディ中心の監督が、全く違うジャンルを描く時点で不安要素はあったんですけど、そんなの全然問題ありませんでした。

なんなら、次回作もこういう実験的且つ挑戦的な作品を作ってくれよと願っています。

 

きっとキャリア的にも折り返し地点なんでしょうか。

これまで惰性で作ってきたわけじゃないんだろうけど、ずっと温めてきたプロットをこうして今解き放つ意味が、きっと彼の中にはあったんだろうなと、勝手にストーリーを作ってしまっているくらい、良い作品を出せたんだなと思っています。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10