教皇選挙
ローマ教皇を題材とした映画はイタリアを中心にいくつか製作されてますが、教皇を決めるための選挙「コンクラーベ」を描いた映画って、僕はあまり知りません。
一番有名なのってたぶんラングドン教授シリーズの「天使と悪魔」くらいじゃないですかね。
それまで僕はどうやって教皇が決まるか知りもしなかったので、映画の評価は置いといて興味深く見た記憶があります。
確か世界中の枢機卿が集まって、完全に外界をシャットアウトして決まるまで何度も投票する仕組み。
投票結果を外で固唾を飲んで待ってる人たちに向けて煙が上がるんでしたよね。
決まらない場合が黒で決まった場合が白。
後の詳しいことはわかりませんが、概要はそんな感じだったでしょうか。
なので今回鑑賞する映画は、もっと内側のドロドロした駆け引きを見せてくれることでしょう。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
第95回アカデミー賞で国際長編映画賞ほか4部門を受賞した「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。
第97回アカデミー賞に作品賞含む8部門にノミネートし、脚色賞を受賞した。
カトリック教会の元首であるローマ教皇が亡くなったことにより、新たな教皇を決める選挙が行われる中、様々な陰謀や駆け引き、差別、スキャンダルが横行し、執り仕切ることになった主人公が政治闘争に翻弄されていく姿を、手に汗握るスリリングな展開で描く。
外部からの立ち入りが禁じられ、密室で行われる選挙。
監督のエドワード・ベルガーはそうした秘密の会議を探求したい気持ちから製作を決めたとのこと。
神聖な行事にも関わらず、保守対リベラルや、立候補を陥れようと画策するなど疑惑と野心が渦巻く中、信仰心さえも揺らぎ始めてしまう主人公の葛藤にも惹かれたそう。
そんな主人公で選挙を執り仕切ることになる枢機卿ローレンスを、「シンドラーのリスト」や「イングリッシュ・ペイシェント」、「ザ・メニュー」のレイフ・ファインズが演じる。
監督は、内面で起きている思いを表情で伝える演技が巧いファインズを抜擢し、より感情を抑制して演じるようリクエストしたとのこと。
キャストは他にも、「プラダを着た悪魔」、「キングスマン:ファースト・エージェント」のスタンリー・トゥッチ、「ガープの世界」、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のジョン・リスゴー、「ナルニア国物語第2章」のセルジオ・カステリット、「ブルーベルベット」、「永遠に美しく…」のイザベラ・ロッセリーニなどが出演する。
これは選挙か、それとも戦争か。
あなたの目で「知られざるイベント」の内幕を目撃せよ。
あらすじ
全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派、カトリック教会。
その最高指導者にしてバチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去した。
悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。
世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まった。
票が割れるなか、水面下で蠢く陰謀、差別、スキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まっていく。
そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発するのだった……。(HPより抜粋)
キャラクター紹介
- ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)…ローマ教皇の逝去に伴い、コンクラーベを執り仕切ることになった首席枢機卿。しかし、新教皇候補者の誰もが暴露されたら教皇への道を失うほどの秘密を抱えており、水面下でうごめく陰謀や差別、スキャンダルの数々に頭を悩ませる。信仰に悩みを抱える。
- ベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)…ローレンスの親友。米国出身で、バチカン教区のリベラル派急先鋒。テデスコやトランブレを敵対視している。
- トランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)…カナダ・モントリオール教区の保守派。心臓発作で突然死去した前教皇と、死の直前に会っていた?
- テデスコ枢機卿(セルジオ・カステリット)…ベネチア教区で、伝統主義の保守派。前教皇を批判していた。
- アデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)…ナイジェリア教区。もし教皇となれば、初のアフリカ系教皇となる。
- シスター・アグネス(イザベラ・ロッセリーニ)…枢機卿たちの宿泊施設を運営する責任者。ローレンスをサポートしつつ、トランブレに疑惑の目を向ける。
(以上FassionPressより抜粋)
熾烈なパワーゲームの中、文春もびっくりの特大スキャンダルが選挙にどんな影響を及ぼすのか。
案外ゲスな気持ちで見ることになるんでしょうかw
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#教皇選挙観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) March 20, 2025
うほぉー!閉ざされた選挙に文字通り「風穴」開けたねー!!
俺も「ん?」って思ってたんだよー、序盤で。
しかし何か起こるたびにレイフファインズをドアップで映すのやめてくれ。悲しくなるし、なんか笑ってしまう。
因みに好みの映画ではない。 pic.twitter.com/W4IxLbJZWM
票集めの根回しに画策など、誰もが野心に満ち溢れていた「閉ざされた選挙」に文字通り「風穴」を開けた1作。
正直好みではないが一筋の希望へ向かうクライマックスが、今起きている全ての争いに通じる答えになっていて胸がスカッとしました。
以下、ネタバレします。
ざっくりあらすじ
心臓発作で亡くなった教皇の周りに、ローレンス枢機卿が他の聖職者たちとともに集まる場面で物語は始まる。
教皇の死が宣告された後、ローレンスは涙を流し、友人のベリーニ枢機卿と亡くなった教皇について語り合う。
3 週間後、枢機卿団はローレンスの先導のもと教会に集まりコンクラーベを開始する。
他の枢機卿や修道女たちも投票の準備のために到着する中、リベラルなベリーニのほかに、伝統的保守派のトランブレ枢機卿 、社会的に保守的なナイジェリアのアデイエミ枢機卿 、イタリアのテデスコ枢機卿 が顔をそろえる。
ローレンスとベリーニは、テデスコ枢機卿の古風な考え方が教会を後退させると考えており、二人とも教皇の地位を望んでいないが、彼の支配下に置かれることを好ましく思っていなかった。
その夜、ローレンスは困惑している様子のウォズニアック大司教に呼び出される。
大司教はローレンスに、教皇と最後に面会したのは、教皇によって重大な不正行為で解任されたトランブレだったと震えながら打ち明ける。
その後、ローレンスはカブール大司教のベニテス枢機卿に会う。
他の男たちはベニテスが資格証明書を偽造したのではないかと疑うが、彼曰く、前年に教皇が枢機卿に任命したと語っており、戦地で宣教活動も行っていたことなどから、ローレンスはベニテスを新たな枢機卿として招き入れることを決断、食事の時間に他の枢機卿に紹介するのだった。
ベリーニ枢機卿はテデスコ枢機卿が教皇にならないようにしたいという希望を改めて表明。
その後ベリーニ枢機卿はトランブレ枢機卿と会い教皇がなぜ彼を解任したのかを訪ねるが、トランブレイ枢機卿は容疑を強く否定。
ウォズニアックが容疑を主張した当時は飲酒していたと示唆した。
コンクラーベの初日。
第1回の投票は、アデイエミがリードしているように見えるが、ローレンスにも5票はいるなど、トランブレ、テデスコ、ベリーニと共に有力候補の一人となっていく。
ベリーニはアデイエミの同性愛嫌悪を容認しないにもかかわらず、テデスコの勝利を避けるため、ローレンスと共にアデイエミを支持することにしぶしぶ同意。
ローレンスはモンシニョールに、なぜトランブレは相応しくないのかを尋ねようとするが、それを裏付ける証拠はないことが判明。
さらにローレンスは夜中に 2 人の修道女の口論を耳にする。
2 日目。
通りで爆発音騒ぎがおきたが投票者が左右されないようにするため、ローレンスは選挙民にこのニュースを隠すことに。
結果はアデイエミは引き続き投票でリードしているが、勝利に必要な 3 分の 2 の多数票は確保できず、次の投票に持ち越されることに。
しかし、昼食中にアデイエミはシスター シャヌミという名の修道女に大声で叱責される。
それを目にしたローレンスはシスター アグネスに許可をもらい、シャヌミと話すことに。
実は彼女は、19 歳のときにアデイエミの子を妊娠したと告白。
当のアデイエミは若気の至りだと言いますが、教皇の名に相応しくないどころか、教会全体が疑われる一大スキャンダルになりかねないことを告げる。
ローレンスは秘密にすると告げるが、結局あの騒ぎで噂は広まってしまい、アデイエミの票は大幅に減少します。
その後オマリーはローレンスに、教皇がベニテスをジュネーブに飛行機で連れて行き、非公開の医療処置を受けさせたという事実を告げる。
それを聞いたローレンスはベニテスと面会するが、ローレンスに投票したことを告げる。
自分に入れても意味がないとローレンスは少々怒り気味に話すが、ベニテスはそれでも「入れるべき人に投票する」と信念を曲げない。
アグネス修道女は、トランブレがシャヌミをバチカンに移送したことをローレンスに告げる。ローレンスは、トランブレがアデイエミを陥れて票をそらすためにそうしたのだと考えて、トランブレに詰め寄る。
トランブレは、シャヌミの移送を手配したことは認めたものの、それは教皇の要請にに従ったまでで、教皇は彼女がアデイエミと関わっていることを知らなかったと言う。
逆にトランブレは、ローレンスが教皇の座に就く野心を抱いていると非難するが、ローレンスは怒ってそれを否定する。
ローレンスは真相を確かめるため教皇の閉ざされた部屋に侵入。
そこでノートと、票を得るために他の枢機卿に賄賂を渡したトランブレの記録を見つける。
それが教皇がトレンブレイの辞任を求めた理由であると確信したローレンスは、ベリーニに文書を見せることに。
ベリーニはこれが公になれば選挙どころか教会全体の威信にもかかわることに繋がると考え、文書を燃やすよう促すが、ローレンスはベリーニも賄賂を受け取っていたことに気づく。
3 日目。
ローレンスとアグネスはコピーを作成し、トランブレの票買収を暴露。
トランブレは騒動を落ち着かせるため言い訳を話すが、アグネスはアデイエミを陥れるためにトランブレが画策したことを枢機卿らの前で打ち明ける。
ベリーニはローレンスに賄賂を受け取ったことの許しを得るが、テデスコを強行にさせないための策を練っていく。
次の投票中、自分の名を書いたローレンスが投票箱に入れ様とした瞬間、バチカンの外で自爆テロが発生。
システィーナ礼拝堂の窓が損傷し、路上で数人の死傷者が出た。
これを受けて枢機卿らは別の部屋に集められることに。
そこでテデスコ枢機卿はイスラム過激派を非難し、教会は彼らと戦うべきだと述べた。
皆が声を荒げる中、ベニテス枢機卿は立ち上がり、戦争の恐ろしさについて自分が経験したこと、暴力にさらなる暴力で対抗すべきではないことを熱弁。
果たしてローマ教皇は誰に選出されるのか、というのがあらすじです。
ローマ教皇にしてやられましたね。
普通の選挙のように、誰がどこに入れたとか言う出口調査がある「開かれた選挙」ではなく、枢機卿たちが一切の情報をシャットアウトして投票する「閉ざされた選挙」。
女人禁制という古臭い風習に沿って今もなお行われてる、我々の知らない世界をよくここまで見せたなぁという意味では非常に見ごたえある作品でした。
そしてその中身では、票集めのために用意周到な準備をしている者もいれば、その場で票集めをするためのロビー活動に勤しむ者などやり方は様々。
さらに投票を進めていくと、有力候補のスキャンダルがガンガン出てくるので、飽きることがありません、
そりゃ世界で一番有名な存在になるわけですから、素質はもちろんクリーンな人材でないと困ります。
しかし叩けばホコリが出るってもんで、どいつもこいつも保身のために色んな事やってますね~って話で、それを知るたびに主人公ローレンスの顔がやつれてくやつれてく…。
終いには目の下にでっかいクマまで出てたじゃないですか。
カメラがいちいち彼にクローズアップするので、段々彼に同情してくるように仕向けた作品でしたねw
アカデミー賞で脚色賞を受賞しただけあって脚本が優れた内容だとは思います。
流れるように誰かの秘密が暴かれる中、ローレンスはどう対処するのか、それがだんだん外の連中からしたら「あいつも強行狙ってるのか?」と見て取れる。
ベリーニらも交えた熾烈な票集めの争いと、その都度見せるローレンスの葛藤を上手に絡めながら見せた秀逸な作品だったと思います。
時折挿入される壁画や光が差し込む広間を引きで見せるショット、誰も入ってはいけない前教皇の部屋を奥行きを与えながら映すシーンなど、さすが「西部戦線異状なし」さながらの重厚感あふれる映像が、これまた素晴らしかったと思います。
とはいうものの、これ前情報なしで見るとキャラクターの名前を覚えるのが結構大変だったりするんですよ。
それこそジョージとかライアンとかトムとか聞き慣れた名前ではなく、ベリーニ、テデスコ、ベニテス、トランブレと聞き慣れない名前が飛び交うため、「え?誰だっけ?」となってしまう。
第1回目の投票で名前を呼ばれた枢機卿が抜かれる親切な見せ方があったのにもかかわらず、前情報を調べた俺でさえ「あれ、トランブレってどいつだ?」となってしまう。
要は結構集中力のいる作品だったんじゃないかなと。
ただでさえカトリックの事なんて知らない俺たちが、カトリックのトップを決める選挙の内幕を覗くんですから、宗教の事含めちょっと俺にはノットフォーミーな内容でしたかね。
具体的に言うと、室内劇ってこともあって動きがないんですよね。
顔と顔が抜かれ、サシでの会話が続く。さらには重厚な劇伴が入ることもあるけれど、基本的には無音状態。
結構眠くなってしまうという・・・。
でもね、物語が佳境に入っていくとものすごく面白くなっていくわけですよ。
有力候補がどいつもこいつも何かしらの秘密があって、幾らやっても強行が決まらない、自認しようと考えてるローレンスが、仕方ねえ俺が一肌脱ぐかって自分の名前を書いた紙を投票箱に入れ様とした瞬間、この選挙をどうにかしようと文字通り「風穴」が開くわけですよ。
そこから本音合戦が始まり、前時代的で他の宗教と戦う姿勢を見せるテデスコが主張して場が荒れる中、ベニテスが口火を開くことで、礼拝堂に空いた穴の如く、枢機卿たちに光が差し込んでいく。
無論教皇に選ばれたのは彼でしたが、彼にも秘密があったという。
これまでのコンクラーベがこんなゴタゴタの中で決められていた、それで仕方なく選び続けられていたってことを考えると、これ、全ては亡くなった教皇が裏で色々糸を引いていたんじゃないかって思えて仕方ないんですよ。
自分の命があとわずかとなった時に自分がすべきことは何か。
それはカトリック教会の未来なのではないかと。
次の教皇に相応しい人が選ばれるためには、不正を働くものを見過ごすわけにはいかなかったんだろうし、古い仕来りを少しでも変えるためにベニテスに事前に会って色々促すとかを見ていくと、そう思えてならないというか。
もしかしたらトランブレの言ってることは少しは本当の事にも思えるんですよね。
シスターを呼んだのもアデイエミの過去を知っていたからで、賄賂を送ってるトランブレに呼ぶのを頼んだのも、賄賂がバレなかった時の予備の策というか。
物語ではそこに直接言及はされなかったけれども、冒頭でベリーニが「前教皇はチェスで常に8手先を読んでいた」って言ってましたよね。
そう思っても良い解釈を与えてくれた作品だったのではないでしょうか。
最後に
選挙で勝たなければ政策を進めることはできないですから、票を集めるための策は必要です。
ただそれが保身のためとか戦いに勝つためなのなら、改めて何のためにトップに立ちたいのかを考えなくてはならない。
ベステスの発言は、正に今世の中で起きていることに対して今一度立ち止まって考えるべき発言でした。
こういう演説をする人の言葉を聞き逃さないために、我々は候補者をしっかり見極めなきゃいけないですよね。
ネットで書かれたことが正しいのか、それとも偏った報道ばかりするオールドメディアが正しいのか。
色んな判断材料を加味して選挙で投票しないとなぁと。
このままじゃほんとに戦争が起きちゃうよとさえ思ってしまいます。
どうかベニテスのような人が人の上にちゃんと立てる社会が訪れますように。
なんちゃって。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10